戦乙女は死線を乗り越えて   作:濁酒三十六

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激突する戦乙女と魔少女…

 そんな二人を見守るマーチだったが、頭上から埃が微かに落ちたので上を向くと…、真上の天井から少しずつ亀裂が走り其れはどんどん大きくなっていき、キュアマーチは叫んだ。

 

「ハッピー、暁美さん離れてっ!!」

 

 マーチの掛け声で二人はその場から飛び退き、マーチも直ぐに飛び退くと同時に天井が崩落し、砂煙が立ち込めた。その中から三つの人影が姿を現し突如疾風が砂塵を吹き飛ばした。

 

「厭らしいわね、女の子同士で見つめ合っちゃってさ~。」

「ホンマお暑いこってな~。」

「全く、興醒めしてしまいますわね…。」

 

 天井をぶち抜いて現れたのは黒と青の魔少女…バッドエンドビューティ。赤と黒の魔少女…バッドエンドサニー。

 そして黒き心と桃色の笑顔を見せる魔少女…バッドエンドハッピーであった。

 ほむらはまだ彼女達“バッドエンドプリキュア”とは遭遇しておらず、あまりに外見が自分達の知る“スマイルプリキュア”と似ていたので言葉を失う。

 

「そん…な…、プリキュアが…!?」

 

 キュアハッピーとキュアマーチは三人の偽物を前に拳を握り構えた。

 

「やっぱりピース以外にもわたし達の偽物がいたんだね!」

 

 キュアハッピーは敵意を持って対峙し、バッドエンドハッピーは侮蔑を持って嘲笑する。

 

「偽物ですって…?

わたしから見ればお前達こそ偽物だわ、偽善者共っ!」

 

 バッドエンドハッピーの挑発にキュアマーチが眉をつり上げて憤慨する。

 

「偽善者だと…、あたし達はみんなが笑顔でいられる為に戦ってるんだ!」

「笑顔やて?

アカンわ、この汚れ切った世界にそんなもんいらへんねん。」

 

 バッドエンドサニーがキュアマーチを白けたと言わんばかりに否定をし、バッドエンドビューティが続いて冷ややかに微笑む。

 

「えぇ、世界に必要なのは美しくも凍れる絶望です。」

 

 似て非なる双方にほむらは何となく納得をし、魔少女達に負けない程の冷たい視線で悪のプリキュアのリーダーであろうバッドエンドハッピーを射抜いた。

 ほんの一瞬であったが、バッドエンドハッピーは暁美ほむらの視線に畏怖を覚える。

 

「いいえ、この世界で本当に必要がないのは貴女達の様なブレた存在…“BUG”だわ!」

 

 ほむらはバッドエンドプリキュアそのものを拒絶否定をした。それを聞いた三人のバッドエンドプリキュアは口を閉ざしてほむらに殺意を剥き出しにするが、ふとバッドエンドハッピーの表情が変わり邪な嘲笑をその可愛らしい顔に刻んだ。

 

「ああぁ、あんまり口が悪いから分かんなかったけど…、

お前が“御父様”が探していた女か~っ!」

 

 意味不明な言動を言うとバッドエンドハッピーはサニーとビューティに目配せをし、二人は素早い動きでキュアハッピーとマーチと対峙をしてバッドエンドハッピーはほむらの前に立ちはだかる。

 

「何のつもり…?」

「お前を御父様の元へ連れて行ってあげる。

…その際なんだけど~、別に腕や脚の一本や二本失くても良いよね~♪」

 

 そのふざけた言葉と同時にバッドエンドハッピーがほむらの懐に飛び込み、攻撃を仕掛けた。単純なストレートだが拳は確実に頭を狙い、ほむらはすかさず回避する。

 

「腕か脚じゃなかったのかしら?」

「ウフッ、頭だって同じでしょ。無ければ動く事ないんだから。」

 

 そしてバッドエンドハッピーは二度ほむらに飛びかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バッドエンドサニーの燃える拳をキュアマーチは疾風を帯びた蹴撃で此を相殺した。

 

「器用な真似しくさってからにっ!

大人しくパサパサの灰にでもなりなやっ!!」

 

 バッドエンドサニーの両拳の炎が肘まで広がり、ボクシングの構えを取りキュアマーチを威嚇する。

 

「…お前の炎なんか、キュアサニーに比べれば小さな焚き火みたいな物だ!」

 

 キュアマーチは相手が動くより先に風を纏い突進。二度バッドエンドサニーとキュアマーチの拳と蹴がぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バッドエンドビューティの二刀の氷剣がキュアハッピーに幾度となく振り下ろされる。バッドエンドビューティはまるで踊る様にクルクルと回り、縦割り、横薙ぎ、斜め斬りと何度も凶刃はハッピーを狙うがカッコ悪くも紙一重に躱されてその度にその綺麗な顔立ちは悔しさに歪んだ。

 

「美しくありませんわ!

大人しく腐った自分の血に塗れて逝きなさいな!!」

「そんな恐い事、わたし達のビューティは絶対言わない!

貴女なんかには絶対にやられないんだからっ!!」

 

 キュアハッピーは剣の軌跡を見ながら動きを見極めようと目を凝らした。そしてバッドエンドビューティが両肘を後ろに引いた所で攻撃が両胸への刺突だと確信した時、鋭い切っ先がハッピーを襲った。

 

「見切ったああっ!!」

 

 まるで達人の如くキュアハッピーが叫びで絶妙なタイミングで二刀の刺突をジャンプして回避し、空中から回し蹴りをバッドエンドビューティの顔面ヘをめり込ませた。バッドエンドビューティは蹴りの勢いに押され、後ろのめりに後頭部から倒れ落ちた。バッドエンドビューティは両手で顔を被い、ワナワナと震えながら体を起こしキュアハッピーを睨んだ。

 

「よくも私の美しい顔を…、

貴女も同じ目に遭わせてやる!

その小憎らしい顔をズタズタに斬り刻んでやる!!」

 

 魔少女の残忍な罵詈雑言にキュアハッピーは戦きながらも拳を握り、敵を見据えた。

 

「べっ、別にそんなおっかない言葉言われてもコワくなんかないもん!

さあ…、何処からでもかかってこい!」

 

 キュアハッピーとバッドエンドビューティは互いに視線を交わしたその時、バッドエンドビューティが氷の礫をキュアハッピーの顔目掛けて飛ばした。ハッピーは即座に両腕をクロスして防御するが其処に大きな隙が出来た。バッドエンドビューティはその機を逃さず氷の双剣で襲いかかった。

 

「しまっ!?」

「殺(と)りましたわ!!」

 

 双剣を鋏の様に交差してキュアハッピーの首を腕ごと跳ねようとするバッドエンドビューティ。だが窓越しに“一つの影”が見えたかと思うと其れは窓ガラスが激しく砕けてハッピーとBEビューティに降り注ぎ、ガラスの破片と同時に何と小夜が飛び込んで来てBEビューティの顔にダブルニーキックを叩き込んだ。BEビューティは向かいの壁に倒れ込みキュアハッピーはその後ろ姿を見ながらも驚きが隠せなかった。

 

「小夜さん、ココ、三階!?」

 

 紺のセーラー服に身を包み、長くボリュームのある黒髪をハッピーと同じく項で結った背の高い少女…更衣小夜は後ろのキュアハッピーに視線を向けた。

 

「そんな事はどうでもいい!!

この娘の相手はわたしがする。お前は他の者の助成に行け!」

 

「えっ…、あっ、ハイッ!」

 

 キュアハッピーはその場を小夜に任せるのを躊躇ったが、彼女なら負けはしないと確信してほむら達の助太刀に向かった。


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