「アカンベェって怪物なんだけど…、
やっぱり“変な顔”…だよね?」
嘘偽り…邪気すらない彼女の言葉にサニー、ピース、マーチ、ビューティが揃って頷き…四体のアカンベェに衝撃が走った。
既に長い間プリキュアとバッドエンド王国は戦ってきたが、その間プリキュア達はアカンベェを“変な顔の怪物”として認識していたのだと云う事実が今判明したのだった。
アカンベェ達は一斉にウルフルンに向きを変え、何かを訴える様な眼差しを向ける。…が、ウルフルンはソッポを向いて一言だけ呟いた。
「…文句なら、ジョーカーに言え。」
『アカ~ンベェ~!?』
何とその場に泣き崩れる四体のアカンベェ。そのあまりの滑稽な姿に九人の少女達の心に少しだけ罪悪感が生まれていた。
「…あ、貴女達の言う可哀想と云う気持ち。何となく解ったわ。」
「ホント、ほむらちゃん?」
ハッピーが嬉しげにほむらを見つめると彼女は黒の弓を取り出し、光の矢を精製して一矢を放ち、何と一体のアカンベェの額を射抜いてしまった。
それを合図に杏子、さやか、マミが槍、剣、マスケット銃を手に取り額を射抜かれたアカンベェを一斉に攻撃して止めを刺した。
爆発炎上して消滅する一体の惨状に他のアカンベェとウルフルンが驚愕し、ハッピー達スマイルプリキュアは青醒める。
「そう、可哀想だから…、即闇に送り返してあげるわ!」
二度光の弓矢を引くほむら。マミの二挺のマスケット銃が火を噴き、二体目のアカンベェに命中。その弾痕から無数の“リボン”が吹き出してアカンベェを絡め取り拘束すると杏子の多節槍とさやかの二刀がアカンベェを切り裂き、放たれたほむらの矢がまた額を射抜き二体目を撃破した。
ウルフルンは歯軋りをして右手に黒い玉…“黒っ鼻”を出すとプリキュア…キュアハッピーを睨みつけた。
「何時もの呆け台詞に油断したぜ。
先手を打つ為の布石たあ、恐れ入った!
そっちがその気なら俺様も手加減はしねえっ!!
いでよ、ハイパーアカンベェーッ!!」
黒っ鼻をかざし、大型ダンプを媒体にしたハイパーアカンベェの中に乗り込むウルフルン。最強のアカンベェと一体となる事で手足の如く操り、毎回プリキュアを苦しめてきた。
ハッピーは困りげに右頬を人差し指で掻いてポツリと呟いた。
「別に油断させるつもりはなかったんだけどな…。」
「ハッピー、どっちでもええからウチらもいくで!」
サニーに言われて頷くハッピーだが、何時もより戦意の湧かない自分がおり、出遅れてしまう。
拳を握ろうとしたハッピーだったが、ふと妙な事に気付いた。バッドエンド王国のウルフルン達を前にして身体の動きが鈍く、心に抵抗を感じたのだ。
(何だろう、何故かウルフルンと戦いたくないって気持ちが強い?
わたしってばどうしたんだろう??)
此は怯えではなく戦意の問題であったが、ハッピーの気持ちとは裏腹に二体のアカンベェが巨大なバイクに変形して魔法少女達に襲いかかり、大型ダンプに太い手足を生やしたハイパーアカンベェは標的をプリキュア達に定めて巨大な拳を振り下ろした。
「ハアアイパアアアッ!!」
プリキュア達は四方へ飛び退き、その中心は巨大な拳により抉られる。それを遠目に見ていたほむらは冷静な顔付きの裏で内心驚いてはいた。
(かなりの破壊力だわ、魔獣でもあれ程の力はない!)
そして彼女の放った光の矢をバイクアカンベェは苦もなく回避して彼女に襲いかかるが、さり気なく投げた爆弾の爆発に巻き込まれて横転。その隙をさやかがエンジン部に片刃の剣を突き立てて大爆発を起こし三体目が倒された。
そして四体目もまた車輪を杏子に破壊され、走れなくなった所をマミの純銀の大砲が照準を定めた。
「ティロ・フィナーレッ!!」
巴マミの最大火力の必殺技が炸裂し、四体目のバイクアカンベェを撃破した。
「残るはあの“犬耳ダンプ”ね!」
マミは犬…もとい狼の耳を生やしたハイパーアカンベェにマスケット銃の銃口を向けて引き金を引くが、その鋼鉄のボディに跳ね返されて驚きの表情となる。