同情するならチャクラくれ   作:あしたま

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自己解釈全開です。



004. 本戦

  

一ヶ月という長いぼっち生活が過ぎ、ついに本戦の日となった。俺は何とか製作が間に合った道具を持って準備万端で会場へと向かった。会場までの道では屋台が準備中であと少しすれば、さながら縁日のような光景が広がるだろう。

 

「まったく人を見世物にしやがって」

 

思わず道中で毒づいてしまう。

 

こんな人の見てる前で堂々と術を見せなきゃいけないなんて。でも使わないと日向には勝てないだろうし……

 

 

 

そんな思考に囚われている間に会場に着いてしまった。会場は円形で高い塀の上に観客席、その更に上にお偉方の席がある造りとなっている。

 

既に会場にはシズネやトンボといった同期達の他にも、シビ先生達の担当上忍組も応援に来てくれている。

 

「ヨフネ!久しぶりね、まったく一人で篭って修行なんて水臭いじゃない」

「そうだよ、ヨフネ君。アスマくん達の修行には僕らも任務の合間に手伝ったっていうのに」

 

シズネ、トンボが不満そうな声をあげながら声をかけてくれる。

 

「……そうだぞ師匠たる俺にも秘密にしてたんだ……勝てよ」

「すみません、シビ先生。拗ねないでくださいよ」

「拗ねてなどいない。何故なら俺は大人だからな。弟子の意見は尊重するがたまには俺にも……」

「……いや、拗ねてんじゃん」

 

どうやらシビ先生も不満らしい。まだ何かブツブツ言ってる。そういえばこの人からは特別に修行をつけてもらったことは少ない。任務中など学べることは多いんだけどね。

 

「ヨフネ、ようやくきたか」

「アスマか」

「一人で篭ってたんだって?新術は完成したんだろうな」

「まあ一応はな。まだまだ細かい所はあるが、使えるさ」

「そうか、なら良いさ。決勝で会おう」

「お前こそ、紅に当たっても気を抜くなよ?お前、紅にはなーぜーか甘いからな」

「なっそんなことねーよ」

 

もうこの時点でアスマと紅はくっついても遅くないのに、あと何年待たせる気だよ。モゲロ、アスマ。

 

そうこうしている内に観客は満員になりつつあった。ついに本戦が始まる。

 

 

 

第一試合だが観客が熱狂する間も無くすぐに決着がついた、日向の圧勝で。対戦相手も近接戦が専門だったのだか、体内でチャクラが流れる経絡系にダメージを受け行動不能となってしまった。

 

「まあ予想通りだな」

 

予選が終わって組合せが発表された時点で項垂れていた対戦相手を見て予想はついていた。次の審判の案内を待ちながら頭を切り替える。

 

『それでは続いて第二試合、うたたねヨフネVS犬塚ツメ!両者ここへ!』

 

スピーカーから流れる審判の案内と同時に俺とツメさんは上から飛び降りた。ツメさんは愛犬の黒丸を連れているが、まだ隻眼とはなっていなかった。

 

「へっ!分かっちゃいたけど、こんなガキとはね。悪いが速攻で勝たせてもらうよ」

「その無い胸借りさせて頂きますよ。下忍の大先輩!」

 

煽り耐性?そんなもの持ち合わせておりませぬ。煽られたら煽り返す!

 

煽られたツメはプルプル震えている。

 

「それでは、第二試合……始め!!」

 

合図と同時に相手がクナイを投げつけてきた。

 

「ぶっ殺す!」

「おお、こわっ。貧乳プラス癇癪持ちですか?」

 

減らず口を叩きながら、クナイは全部叩き落とす。この戦いに対して対策は練っている。この人意外と上手い戦い方するからな……

 

「っと起爆札かっ!」

 

叩き落としたクナイの一つに起爆札が付いているのを見てその場から離脱する。

 

「通牙!」

「っち!」

 

避けて着地したところに擬人忍法でツメの姿をした黒丸が攻撃を仕掛けてきたが、これも何とか躱す。コンビネーションは厄介だが、今の攻撃を見て想定していた弱点が確信にかわる。

 

「よく躱したね。でもこれならどうだい?……擬獣忍法・四脚の術!そんでもって、牙通牙ぁっ!」

 

今度はツメが身体を強化したうえで、黒丸とそれぞれ回転しながら突撃してきた。挟み打ちを狙われるがツメの方は無視して、俺は黒丸の方に走り出す。

 

「ヨフネ君何考えてるの?!危ないよ!」

 

観客席から珍しいトンボの大声が聞こえてきた。まあ、見てなって!ニヤリとしながら右腕にチャクラを集める。

 

「うらぁあ!」

 

俺は叫びながら黒丸の回転の中心を殴り地面に叩きつけた。さらに黒丸のワンバウンドした身体を掴みツメの方へとブン投げた。

 

「っち!小癪な!」

 

そう言いながらツメは回転をやめ黒丸を受け止めた。そして離脱するタイミングで広範囲の煙幕玉を投げつけてきた。

 

犬塚家の通牙は言ってしまえば回転をつけた体当たりだ。回転をつけることで体当たりの威力が増しているのはもちろんだが、その真価が発揮されるのは相手が避けようとしたときなのだ。

 

敵は高速の体当たりを嫌って避けようとするが、その際に強化した爪や脚による側面で攻撃される方が実はダメージが大きいのだ。

 

最初に黒丸が通牙を使って来たときに直撃ではなく、削るように攻撃してきた事で確信に変わった。怪力が使用できる俺はあえて突っ込み回転の中心を殴ることで攻撃を止めたのだ。

 

(それにしても、この煙幕だと何にも見えないな)

 

とツメ達は俺がそう思っていると考えているだろうが、甘い!俺にはコン平がいるのだ。最初の黒丸の攻撃のタイミングで、コン平の分身を離れた所に放っておいたおかげで、相手のいる方角は分かっている。

 

(新術を使うつもりなかったんだけど、折角誰からも見えないから使ってみるか。まだ人に使ったことなかったし)

 

そう考えると俺は印を結び術を発動させた。その瞬間、俺の前方で光がはじけた。

 

 

 

「うわっ!何だ、今の光は?」

「お、おい。あれ見ろよ!忍犬の方が倒れてるぞ」

 

突然煙幕の中が発光したと思ったら、黒丸が倒れていたのだろう。観客からのどよめきが聞こえてきた。おかげでコン平に確認を取るまでもなく相手に当たったことが確認出来た。

 

ツメからの反撃もなく、煙幕が晴れていく。

 

「お、おい黒丸!どうしたんだよ!無事か?!」

 

どうやら術の衝撃を受けた黒丸は顔の右側が血に染まっていた。ピクリともしないに愛犬にツメが必死に声をかけていた。が、今は試合中。俺はクナイを手にツメの背後に立った。

 

「……降参か?」

「するから!降参するから、早く黒丸を」

「……勝者、うたたねヨフネ!」

 

その言葉を聞いて俺が審判に眼をやると。俺の名前が読み上げられる。何が起きたのか分からない観客からはパラパラとした拍手のみだった。

 

何となく悪役にされた気分だ。これで原作通りに黒丸は隻眼になってしまうかもしれない。彼女らに背を向けて会場をあとにするなか、反対側の出口では黒丸が担架に乗せられて運ばれていった。

 

後でコン平に術について確認すると、黒丸の右側に術の後があったため、直撃は免れたが衝撃で負傷したようだった。

 

 

 

「やったね、ヨフネ君。楽勝じゃないか!」

「当たり前だ。何故なら俺たちを無視してまで修行していたのだからな」

「すみませんってシビ先生」

 

みんなの元へ行くとトンボ、シビ先生とハイタッチする。シビ先生がまだ拗ねてたけど。

 

「次はお前だな、アスマ」

「ああ任せろ、俺も勝ってみせるさ。それにしてもさっきの新術はなんなんだ?試験終わったら詳しく見せろよ」

 

ストレッチしているアスマにも声をかけるが、返すアスマの言葉に周りも頷く。

 

「次の試合だと使わざるを得ないだろうからな、よく観とくと良いさ」

 

もともと使うつもりだったので、先に使うと宣言しておく。仲間に隠すようなことでもないしな。

 

ちなみにアスマの相手は格上だ。何とか勝って欲しいのだが……

 

「大丈夫か?勝算はあるんだろうな?」

「修行してたのはお前だけではないさ。それに俺には親父から貰ったこれがある」

 

そう言って見せてきたのは、原作でも使っていたアイアンナックルに刃をつけた様な忍刀だった。まだこの時点では三代目との親子関係は良好なようで、嬉しそうに見せてきた。

 

『続いての第三試合、並足ライドウVS猿飛アスマ!』

 

ーーーオオォォォオ!

 

名前がコールされるだけで歓声が上がった。やはり三代目の子ということもあって注目されているようだ。

 

『それでは第三試合……始めっ!』

 

 

 

アスマとライドウさんの試合はお互いに武器を使用した接近戦となり、派手さは無いが観る者を熱狂させる何かがあった。

 

アスマはチャクラ刀に風属性をつけ相手との鍔迫り合いには勝っていた。しかしライドウさんも経験の差で反撃しており、徐々に押し始めた。

 

それでも中々倒れないアスマ相手に手こずっていたが、ついに蹴りがアスマの腹にはいりダウンを取る。

 

『勝者、並足ライドウ!』

 

アスマ、お前の仇はとってやるさ。負けたとはいえ格上にそれなりのダメージを与えたアスマには観客からの拍手が送られ続けていた。

 

 

 

第四試合は夕日紅と不知火ゲンマの試合だった。この試合は紅が幻術使いと知っていたであろうゲンマさんが試合開始直後に猛攻を仕掛け、ものの一分で終わってしまった。

 

 

 

「紅お疲れさん。アスマはモゲロ」

「「っっ?!」」

 

医務室のベッドに仲良く寝かされた二人に対して、気配を消した状態で声をかけると飛び跳ねるように驚いていた。

 

「なんだよ心配して来てみれば、二人で手まで繋いでさ。何が、まだまだだな俺たちだよ。さっそくイチャついてんじゃねーよ」

「べ、別にイ、イイイチャついてなんかないわよ!」

「馬鹿野郎、これはだな。あれだよ俺たち実力不足だなって言ってただけで」

「はいはい。んじゃまーそういうことにして、俺が仇とってきてやんよ」

 

真っ赤になりながら否定する二人の言い訳を背に俺は舞台に向け、医務室をあとにした。

 

 

 

「それでは準決勝第一試合……始めっ!」

 

審判の声を合図にきっかけにまずは後方へと大きく退いた。

 

「日向は木の葉にて最強。才能とは生まれた時点で決まっている運命だ。棄権するが良い、俺は手加減などできん」

「うるさいよ、そんなこと自分が一番わかってるさ」

 

そうだ、そんなことは嫌というほど俺が分かっているのだ。これまでチャクラ量が少ない事でどれだけ苦労してきたと思ってるんだ。修行の成果で習得したのに実戦で使えない。チャクラ量のせいで。それなら最初から習得可能なんて希望持たせるんじゃねーよ。持ち上げては落とされる。この気持ちを踏みにじる日向など許さん。

 

「でもな、才能なくても知識と努力でどうにかなることもあるんだよ」

「そんなものは夢物語だ。ここまではよく頑張った。だがこのさきには大きな壁があるのさ」

「それがあんただって言うのか?それじゃその壁ブチ抜いてやるよ!」

 

最初からあの術でこいつを、壁を壊してやる。腰のポーチから特注で作って貰った約1㎝程の鉄球を取り出す。もちろんただの鉄球ではなく表面は銅でコーティングされている。それを念力で自分の前に浮かべながら、この一ヶ月練習し続けた印を結ぶ。

 

「雷遁・電磁砲!」

 

レール状に形態変化させたチャクラで鉄球を挟み、そのチャクラに電流を流すイメージで一気に性質変化を行う!

 

そうすると一瞬眩い光を放つと同時に鉄球は日向へと音速をはるかに超えて向かって行く!

 

俺が選んだ新術はレールガンだった。レールガンとはフレミングの左手の法則を利用し、弾丸を高速で撃ち出すものだ。この世界では使用されていないが火薬式の銃では火薬の爆発によって発生する爆風を利用しているという性質上、その爆風以上の速度では弾丸を飛ばすことははできない。それに対しレールガンは音速を遥かに超えることが出来るのだ。

 

この術も多くの術と同じ様にチャクラの形態変化と性質変化、二つの変化を同時に起こして発動する技だ。なのに何故、チャクラの消費量が少ないのか。

 

正直に言うとまだ把握出来ていないが、一つはチャクラを垂れ流しにしていないという事である。

千鳥などは離れた位置で発動させてから相手に当たるまでの間、放電させ続ける必要がある。それに比べレールガンなら発射の際だけ済むのだ。

そして二つめはチャクラという科学では説明出来ない謎物質のおかげである。前世の義務教育で習ったように簡単にいえば電力とは電圧×電流で表すことができる。レールガンには大量の電力が必要とされているが、チャクラは電気そのものに変換してしまうほど電気伝導率、すなわち電流の値が高い。また電圧に関しては何故かチャクラコントロールである程度の操作が可能であった。

そのためチャクラ量をさほど必要とせずに大量の電力が確保できるため、チャクラの消費量は驚くほど少なくなったと考えている。

 

弾丸が飛んで行った先では、前に出して構えていた左手の小指と薬指が千切れていた。射線上に相手の顔が入らないよう気を使ったため、それだけで済んでいた。

 

相手はもちろん、撃った本人も眼で追うことが出来ない。それ程の速度ゆえ一瞬理解できていない相手だったが、あまりの激痛におもわず蹲る。

 

(あくまで術に関しては推測にすぎないんだけど……成功だな)

 

その隙に背後に回り首筋にクナイをあてて俺はこの術の成功を呟いた。

 

「し、勝者はうたたねヨフネ!」

 

堂々と人前で術を見せてしまったが本日二度目の勝利である。さすがに今回は観客も硬直が解けるのが早く、歓声が上がった。

 

 

 

「お疲れ様。ヨフネ凄いよ、まさか日向にまで勝つなんて!あの術はよく見てたんだけど……分からなかった」

「俺も見ていたがよく分からなかった。何故ならあの術は速すぎる」

 

今度はシズネとシビ先生が出迎えてくれた。上忍でも使うと分かっていても眼では追えないらしい。だいたいマッハ3は出ていたから眼で追える方が怖いのだが上忍はバケモノみたいな人がいっぱいいるからな。

 

「ま、今はそれよりも次の試合を見ましょうよ。対戦相手は観ておきたい」

 

準決勝の第二試合はガイやエビスさんと同じ班員であるゲンマ、アスマに勝ったライドウの二人の対決となった。接戦が予想されていたがライドウはアスマとの試合で疲労していたのだろう、動きが鈍くあっさりとギブアップした。

 

この判断の速さも中忍に上がるには必要なことだろう。状況判断の出来ない隊長など足手まといでしかないのだから。

 

そうして決勝の相手はは不知火ゲンマにきまった。

 

 

 

 

 

「皆さま大変お待たせ致しました。これより中忍試験本戦の決勝を執り行います」

 

長かった中忍試験もようやく終わりの時を迎えようとしていた。あれだけ騒がしかった会場も今は静まり返り、本人達と同じように審判の合図を待っている。

 

「決勝戦、うたたねヨフネVS不知火ゲンマ……始めっ!」

 

ーーーオオォォォオ!!

 

その言葉をきっかけに会場は本日最高の盛り上がりを見せている。ゲンマは俺に印を結ばせる隙を与えまいと合図と同時に猛然と突っ込んでくる。電磁砲を使われれば、戦いが厳しくなると分かっているのだろう。

 

俺は念力でポーチから鉄球を三つ取り出し身の回りに浮かべる。そして距離を取るために雷遁を纏わせた鉄球を一瞬放電させてから投擲する。

 

「なにっこいつ印を結ばなくても発動できるのか?!」

 

ライドウはそう叫びながら過剰に反応し、常に左右へとフェイントをかけながら大きく後退する。上手いこと電磁砲と勘違いしてくれたようだ。

 

「クソッ、陽動か!」

 

本当に電磁砲を使っていれば威力、速度ともにこんなものでは済まない。そのことにゲンマも気づいたのか咥えていた千本をこちらに飛ばしながら再度詰めてくる。

 

俺はその千本を避けながら印を結び、動いているゲンマに対し術を発動させる。

 

「雷遁・電磁砲!」

 

狙いはゲンマの予想進路の足元である。動いている相手の上半身に当てられるほど、俺はまだこの術に慣れてはいない。

 

ーーーゴォゥンン!

 

やはり直撃はしなかったが、ゲンマの足は止まった!土埃が舞う中、今度は俺から距離を詰める。

 

「なにっ!?」

 

相手は俺がこの試合、常に遠距離戦に持ち込もうとすると思っていたのだろう。土埃の中から俺が現れた瞬間、顔がひきつっていた。

 

こっちは一ヶ月前まで怪力をベースにした、バリバリの近距離専門なんだよ。ゲンマが思わずといった具合に顔をガードしていたため、腹部を全力で蹴りつける。

 

蹴られたゲンマは壁まで水平に飛んで行き、壁に叩きつけられた。俺はすぐに詰め寄り残っていた鉄球をゲンマの目の前に浮かべ、脅しのため発光させる。

 

「っそこまでだ!勝者、うたたねヨフネ!」

 

審判とゲンマの担当上忍が慌てたように俺とゲンマの間に入り試合を止める。

 

何か俺、容赦ない奴みたいな扱いになってないか?手加減出来るような相手ではなかったけど、殺さないように気を付けて攻撃はしていたんだけど。

 

 

 

 

 

中忍試験の合格者

うたたねヨフネ、不知火ゲンマ、並足ライドウ、犬塚ツメ、猿飛アスマ

以上、五名

 

 

 

既に中忍となっているカカシに加え、十歳で中忍となる者が三人となり、俺たちは豊作の世代と呼ばれることになる。





三つの戦闘を一話にまとめるという無謀。

ちなみに黒丸は無事です。
右眼が見えなくなってしまいましたが。

レールガンはいかがでしたかね?(怯)

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