同情するならチャクラくれ   作:あしたま

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025. 蛇手

  

カカシ達より一足早く里へ戻った俺達は普段通りの任務に就いていた。里への帰り道、三人のモチベーションを上げる為にも中忍試験へ推薦する事を既に告げてある。中忍試験を受けるにあたって最も必要なのはコンビネーションである。おそらく大丈夫だとは思っているが、合格の可能性を少しでも上げる為に三人のみで任務を行わせている。任務内容は吟味しているし、危機察知能力の高いコン平も付けているので死ぬ事は無いはずだ。

 

そして俺はその間に中忍試験中の警備の打ち合わせをしなければならなかった。中忍試験自体は半年に一回だが、合同で行われるのは年一回であり、この時は里をあげてのお祭りとなる。更に今回初参加となる音隠れの里はまだまだ情報が少ない為、より一層の注意が必要だと説いて猟犬がその任にあたる事が出来た。

 

その結果、死亡者の出る二次試験では猟犬が試験官を務める事となった。担当するのは連隊規模となる時に中隊長となったアンコで、彼女の隊を率いて試験官として警戒にあたる事となっている。ホヘトとゲンマは部隊の大多数を率いて里周辺の警戒をする事になっている。それに俺とシスイに加え、タシとサンタという選抜したフォーマンセルが最終試験時の要人警護を行う予定だ。

 

この警備計画がまとまり久しぶりに担当下忍の三人と修行をしていると、里の上空を緊急招集を報せる鳶が旋回した。

 

「お前らあと一週間で中忍試験だ。俺は今から三代目の所へ行って推薦してくる」

「とうとう……ですね」

「なに、俺らなら楽勝だぜ!」

「そうだな、何故なら俺達はどの下忍よりも厳しい修行をしてきたからだ。間違いなく」

 

俺達の世代は戦争に駆り出されており、こいつらよりも濃密な経験を積んでいたが、今の世代ではこいつらが間違いなく最も修行しているだろう。二次試験で落ちるような事があれば考え直さないといけないな色々。と考えた途端キバ達の顔つきが変わった。

 

「絶対、絶対受かるぞ!」

「うんそうだね……私達の平和の為にも」

「俺らはやれる。間違いなくやれる。大丈夫だ。辛くなったら修行を思い出せ。あれより辛い事なんてない」

 

妙に気合を入れ始めた三人を尻目に俺は火影の執務室へと向かった。部屋には三代目は勿論、下忍を受け持っている担当上忍に上役達、それにアカデミーの教員が集められていた。

 

「招集をかけたのは他でもない、この顔ぶれを見れば分かると思うが」

 

顔ぶれを見るまでもなく、この時期なんだからみんな把握しているでしょ。

 

「もうそんな時期ですかねえ」

「もう他国には報告済みなんですよね?見かけない顔をちらほら見かけましたから」

 

おい、カカシ何呑気な事言ってんだよ。アスマも物知り顔で偉そうに言ってんじゃねえよ。他国の忍を見てようやく思い出したんじゃないのか?

 

「でいつなんです?」

「今より一週間後だ」

「そりゃまた急な事で」

 

三代目が宣言するともうそんな時期かと驚く声が他の担当上忍からも聞こえる。いくら実力がある奴なら勝手に上に上がっていくとはいえ、下忍を受け持つ身なら皆それくらい把握してあげておいてやれよ。

 

「それでは正式に発表する。今より七日後をもって合同中忍選抜試験を始める」

 

いよいよ始まる。俺が最もワクワクして読んでいた中忍試験編が。ただ今はここで死者を減らすのが俺の役目でもある。

 

「さて中忍試験を開始するにあたって、まず新人の下忍を担当している者、前へ」

 

何故かやたらと背後から注目を集めている事にため息をつきながらカカシに俺、アスマが前へ出る。

 

「カカシにヨフネにアスマ。どうだ、お前達の手の者に押したい下忍はおるかな?言うまでもない事だが、形式上任務を八つ以上こなしている下忍ならばお前達の意向で試験に推薦できる。まあ通例その倍以上の任務をこなしているのが相応じゃがの」

 

当然ルーキーにはまだまだ早い、と無言のプレッシャーをまたしても背後から感じる。おそらくこの世界において最も良い人と評されていたあの人からだろう。

 

「それではカカシから」

「カカシ率いる第七班、うちはサスケ、うずまきナルト、春野サクラ以上三名、はたけカカシの名をもって中忍試験受験に推薦致します」

「「「えっ?!」」」

 

部屋全体が驚きの声に包まれる。だがここで驚いていたらもたないぞ。

 

「ヨフネ率いる第八班、日向ヒナタ、油女シノ、犬塚キバ以上三名、うたたねヨフネの名をもって左に同じ」

「「「まあここはそうだろ」」」

 

おい。これは信頼ととって良いんだよな?

 

「アスマ率いる第十班、山中いの、奈良シカマル、秋道チョウジ以上三名、猿飛アスマの名をもって左に同じ」

「三人とも推薦した?!」

「中忍試験にルーキーが出るなんて……」

「五年ぶりじゃないか?」

 

俺が推薦するのは織り込み済みだって言うのか?こりゃあいつらますます惨めな姿を見せられないな。

 

「ちょっと待って下さい!」

「なんじゃイルカ?」

「火影様、一言言わせて下さい。差し出がましいようですが、先ほど名を挙げられた九名は私の担当でした。確かに皆、才能のある生徒でしたがまだ早過ぎます。もっと場数を踏ませてから受験させるべきです」

 

イルカが生徒思いなのは分かるが、自分の指導が不十分だと言われたようで少し腹が立つ。カカシも少しカチンときたのか珍しく率先して反論する。

 

「私が中忍になったのはナルトよりも六つも年下の時です」

「ナルトは貴方とは違う!!貴方はあの子達を潰すつもりですか!!」

 

しかしカカシの反論はイルカに一刀両断されてしまった。確かに戦時中だった俺達と比べれば経験もレベルも落ちるのは事実だ。しょうがない俺がフォローしてあげよう。

 

「イルカ先生は俺達の指導が物足りないと?俺達に見る目がないと?経験が足りない?俺の班は通例の十六件の任務をこなしてますよ?何が問題なんです?貴方こそ個人的感情に流されていないと言えますか?」

「……こらヨフネ、そう凄むでない」

 

三代目に窘められてしまった。どうも断刀を持ってから凄むと今まで以上に恐れられている気がする。やっぱなんかオーラ出してんのかな?俺はそこまで怒ってないよー無害だよーと微笑むと余計に怖がられた。解せぬ。

 

「まあまあヨフネ、お前の気持ちは当然としてもイルカ先生の言いたい事も分かる。だがイルカ先生、口出し無用!もうあいつらは貴方の生徒ではない、私の部下です」

 

イルカ先生もそろそろ子離れしないとね。教員なんだし早く結婚でもして落ち着いちゃいなよ。

 

 

 

一悶着あったが、推薦してからの一週間は新術の調整と体調を整えさせる事に専念させた。今さら焦って修行した所で大した効果はない。既に三人は性質変化を拙いが習得する事が出来ている為、実戦での使い所を考えるだけで良かった。術を昇華させるのは予選を潜り抜けてからでも遅くはない。ただキバに関して早くから性質変化の修行をしていたおかげで例の術がとりあえず使える状態にまでなっていた。

 

三人が受験会場に到達したのを見届け、俺は久しぶりにカカシとアスマと一緒に試験結果を待つ事にした。分煙なんて文化はこの世界にはまだないが、アカデミーの教職員用に灰皿が設置してある部屋を選ぶ。紅が妊娠してアスマが禁煙中と知ってだが。そわそわしているアスマを尻目にカカシが寛ぎながら呟く。

 

「ま、でもしかし部下がいなくなってみると暇なもんだね」

「なあにすぐに忙しくなるに決まっているさ」

「なんでさ?」

 

だからアスマは一々そうもったいぶるなよ。この面子で格好つけても忘れられない醜態を晒してるんだぞ?

 

「今年の第一の試験官はあのイビキだからだよ」

「こりゃ第一の試験も危ないかな。よりにもよってあのサディストか」

「ヨフネの班は大丈夫だろうけどな」

 

カカシとアスマが目を合わせて頷いた。お、やっぱり信用されてるな俺。

 

「「担当上忍がドSだからな」」

「おいこら、どこがだ!」

「この場所を選んでる事だってそうだろうが!!!」

「まあそうイライラすんなよ。ほら一本やるから吸っとけって」

「ああ、ありがとう……って違うわ!誘惑すんな!」

「いや、俺そっちの趣味はないんで」

「俺もないわボケ!」

 

あの決闘騒ぎから一時は険悪だった俺とアスマだが、紅と正式に付き合いだしてから諭されたのか、後日もう一度ちゃんと謝りに来ている。あれからもう三年が経つ、さすがにもうわだかまりなくイジり倒している。

 

「ってかお前ってタバコ吸ってたのか?」

「いや嫌がらせの為にわざわざ買って来てやっただけだぞ」

「ドSめ!」

 

アスマは何事においても特徴がないんだ。イジられている時が一番輝いているぞ。

 

 

 

アスマをイジって待っているとガラスが破られる音が聞こえて来た。どうやら一次試験が終わったようだ。しかしアンコめ、上司がいないからって久しぶりに派手にやっているようだ。弁償代はキッチリ給料から引かしてもらおう。

 

騒がしさが過ぎ去った後、それぞれが担当している下忍達が無事合格したとイビキから伝えられた。これで各担当上忍は五日後まで試験結果を待つ他ない。

 

ただ俺は厄介事が始まる事を知っている為、どうせならと近くで待つ事にした。二次試験会場の“死の森”へ受検者達が入って行ったのを見計らって、団子を食べながらお汁粉を飲むアンコの元へと近寄った。

 

「お祭り気分は終了だ。窓の修理代にその飲食代、今回の任務経費とは別に引いとくからな」

「げェ!」

 

無心で団子を食べていたアンコの手が止まった。そもそもお菓子代を経費で落とそうとするなよ。アンコのテンションが急降下する中、一次試験で試験官をやっていた忍が瞬身の術で煙と共に現れた。

 

「ヨフネさん、アンコさん、三体の死体が出ました!すぐに来て貰えますか?どうも妙なんです」

 

切羽詰まった様子の忍にそう告げられ俺達は急いでその現場である林へと向かった。そしてそこにあったのは顔を盗まれた草隠れの忍三体の遺体だった。

 

「アンコ、お前も心当たりがあるよな?」

 

分かっていても聞かなくちゃならない。しかし聞き方がマズかったのか、現場に残っていたイズモとコテツがアンコを怪訝そうに見る。

 

「はい……大蛇丸です。間違いありません」

 

しかしアンコは周りのそんな様子など気にも止めず、首元にある呪印を抑えながらそう言った。やはりあの変態は木の葉にやって来たようだ。

 

「急いで火影様にこの事を伝えて!あとこの遺体は別の場所に移しておいてちょうだい。私は死の森に向かう!」

 

俺はそう言って飛び出して行こうとしたアンコの腕を掴み引き止めた。

 

「なに一人で行こうとしてんだ」

「でもあいつは……大蛇丸は私が食い止めなきゃ!」

 

アンコは下忍になってからずっと大蛇丸の部下をやっていたせいで長い間里の監視対象にされていた。心無い言葉をかけられた事もあった。そして使い捨てにされたという思いも合わさり居ても立っても居られないないのだろう。

 

「だけどお前一人で行っても大蛇丸はやれないだろうが。何の為にお前の隊が試験官をしている。何の為に猟犬として訓練をしてきた。冷静になれ」

 

支援を目的とした第四小隊は既に死の森の中央にある塔で待機しているが、他の三個小隊はまだ森へは入っていない。今の猟犬の力を測るにはちょうど良い相手だ。

 

「すみません。すぐに隊員を集めます!」

 

すぐに信号弾を打ち上げたアンコと共に正面入口へと向かい待機していると隊員達が集まって来た。今回の事を予想してアンコの隊にうちは一族の若手は配属していない。死者を出すつもりはないが万が一という事もある。

 

「草隠れの受検者が試験外で殺された。犯人は木の葉の伝説の三忍の一人……大蛇丸の可能性が高い」

 

流石に隊員達の間にどよめき起こる。人望が無かったとはいえ火影候補にもなった忍だ、不安もあるだろう。だが俺は今回の接触で大蛇丸が殺せるとは思っていない。あくまで今の猟犬と大蛇丸の力の差を測り、そこから対策を練る事が出来れば良いと思っている。

 

「無理はしなくていい。あくまで奴の狙いを知る事が最優先だ」

 

そもそも木の葉崩しはこの時点で予期できるはずなのだ。アンコに大蛇丸を尊敬する気持ちが残っており、その言葉を鵜呑みにした情報が三代目に伝わった事が悲劇の始まりなのだ。もっとも大蛇丸はそこまで計算しての発言なのかもしれない。

 

「隊列はアンコを先頭にする。大蛇丸の追跡に関しては最も優れているからな。他の感知タイプは周囲の警戒に全力を注げ」

 

その他の隊員については攻撃可能距離に応じて隊列を組ませる。第四小隊の小隊長であるアンコと俺を含む十四名で森を疾走し追跡を始める。死の森とは言うものの、流石に俺達なら苦労せずとも進む事が可能だ。ただチャクラを惑わす植物等も多く自生しており、アンコの呪印が無ければもっと時間はかかったかもしれない。とは言っても既に森は暗闇に支配され始めている。

 

「前方500m、木の幹に同化して休憩しているようです」

 

そう言われて目を凝らせば確かに木の幹に同化している大蛇丸がいた。逆立ちの状態で。不気味ではあるが何の意味があるのかさっぱり分からない。

 

「電磁砲を合図に突撃しろ。感知タイプは常に奴ではなく周囲を警戒するんだ。見失ってしまえばこちらが奇襲される」

 

全員が黙って頷く。それを確認して俺は腰にさしている雷刀を抜いてカウントダウンを始める。

 

「……5.4.3.2.1.開始だ」

 

ーー雷遁・超電磁砲

 

暗くなり始めた森を一筋の光が走り、弾は瞬時に大蛇丸を貫いた。しかし大蛇丸の体は泥に代わりドロドロに崩れた。第一小隊は大蛇丸を見失ってしまう。

 

(下かっ!)

 

しかし感知タイプのシグナルで大蛇丸が実際には俺の目の前にある太い木の枝に移動していた事が分かり、雷刀を納め今度は断刀を手に取った。そしてただ思い切り振り下ろす。断刀は普通の木の幹よりも太い枝を切り落とし地面を抉る。

 

大蛇丸はこれも躱し俺に舌を伸ばし攻撃してくる。しかしアンコを含めた第二小隊が舌を弾き、尚且つ大蛇丸へと忍具で攻撃する。

 

大蛇丸はそれを飛び上がる事で避けてから印を結んだ。

 

「風遁・大突破!」

(土遁・土流壁!)

 

第三小隊の二人が同時に壁を作り出し俺達を風遁から守ってくれる。そして一旦距離が離れる。

 

「師匠に対して随分な挨拶じゃない、アンコ」

 

受験票で見た顔写真の顔をメリメリっと剥いだ大蛇丸がようやく素顔を見せた。どこまでも不気味な人である。

 

「あんたは……全てをあんたに教わった私がここで殺す!」

 

激昂しやすいアンコのチャクラが大蛇丸を見た途端、急激に高まっていく。そんなアンコの肩に手を置いて押しとどめて、今度は俺が質問をする。

 

「お前はS級の指名手配犯だ。見つけ次第、俺達はあんたと殺し合わなきゃいけないんでね。でも分からないのは今まで尻尾すら掴ませなかったあんたが、何故このタイミングで木の葉に現れたのかって事だ」

 

そう言って頭を掻くフリをしながら、第三小隊に対しいつでも攻撃出来るように指示を出す。

 

「ふふふ、そうね。ちょっと欲しい物があってね、唾を付けに来たのよ。ついさっきアンコ、貴女と同じ物をその子にあげてきたわ」

「誰だか知らないけど、間違いなく死ぬわよ、その子」

 

やはり既に七班とは接触したようだ。今頃はサクラが一人で二人を看病しているのだろう。

 

「目的を果たしたなら里から出て行ってもらおうか。あんたが目星を付けた下忍なら血継限界を持った優秀な下忍……日向ネジは優秀だが鳥の籠の呪印がある。となると残りはうちはサスケぐらいだろう」

 

俺がこう言っても大蛇丸は相変わらず気持ち悪い笑みを浮かべたままである。しかしそれに構うことなく続ける。

 

「うちはサスケはこちらで拘束し、中忍試験もここで中止とさせてもらおうか」

「あら、それは困るわ」

 

俺がそこまで言うとようやく大蛇丸も口を開いた。

 

「今回の中忍試験には私が作り上げた音隠れの里もお世話になっているの。楽しみを奪うような事をすれば木の葉は終わりだと思いなさい」

 

既に木の葉崩しを計画しているくせにぬけぬけとよく言う。しかしこれで目的がサスケだけでない事をはっきりさせる事が出来た。奴が部下を思ってここまでする筈は無いのだから。とりあえず聞きたい事が聞けたので、第三小隊に対し合図を出す。

 

ーー風火龍演雷!

 

火遁・龍火の術を風遁、それに雷遁を合わせた混合忍術だ。通常複数人でやる場合には相手に合わせるだけの技量と連携が必要となり、三種類以上の性質変化を合わせるとなるとその難しさから机上の空論と呼ばれるほどである。これを可能としたのは日々の鍛錬の賜物である。

 

「猟犬の噂は聞いていたけど、これほどの物とはね……」

 

避ける事が叶わない程の広範囲に影響があり俺ならば間違いなく死ぬ術だが、龍が当たった跡から大蛇丸は姿を現した。どうやら口寄せした大蛇に隠れてやり過ごしたようだ。しかし流石に無傷とはいかなかったようだ。

 

「貴様は……貴様は誰だ?!」

 

大蛇丸の顔が更に剥がれ、少女の様な顔が見えているのだ。アンコは首元から感じるチャクラの気配と目の前の人物が一致せず戸惑いの声をあげる。

 

「あら貴女がよく知っている大蛇丸よ。酷いわねアンコ、忘れちゃったのかしら」

「まさか体を乗り換え……あの術、不屍転生の術を完成させたのか?!」

 

驚いているアンコには悪いが攻撃の手を緩める必要はない。俺は断刀を構えて大蛇丸へと肉薄し斬りつける。

 

「死神はせっかちなようね」

 

斬りつけた大蛇丸は泥分身だったようで、すぐに形を崩していった。流石に分身の術スピードは早いが、こちらとてその程度は予測済みである。

 

ーー電磁砲三連!

 

感知タイプから指示された三箇所に対し、すぐさま風遁を纏わせた電磁砲を放つ。二つはドロドロとなったが、一体は肩から血を流した。それを見て第一小隊が攻撃を仕掛ける。

 

「どうやら甘く見ていたのは私の方だったみたいね。やりにくいったらないわね」

 

そう言う大蛇丸のチャクラが練られるのを感じた一人が一旦離れるように指示を出す。そして大蛇丸の水遁から守るように第三小隊が土流壁をまた作り出した。

 

術が衝突し終わると同時に、今度は第二小隊が背後から奇襲を仕掛ける。術の発動までが早くとも印を結ぶ隙さえ与えなければ良いだけである。その奇襲は防がれたが、間を空けないようにすかさず遠距離攻撃も仕掛ける。

 

「優秀な指揮官によく訓練された部下。決して深追いはせずに間断ない攻撃を仕掛ける。理想的な軍隊ね」

「そりゃどうも。どうせならそのまま死んでくれません?」

「随分と偉そうになったわね。昔は私から逃げ回っていたっていうのに」

 

それでも決定打とはならず、こうして距離をとられてしまった。中忍主体のこのメンバーだと負けない戦いは出来ても勝つ事は難しそうである。だが絶対に倒せない相手でもない。

 

「相変わらず一人なら逃げてますよ。でも今は仲間がいるんでね」

 

俺は大技に対しての防御方法をほとんど持っていない。仲間がいるからこそ自ら戦う事が出来る。だがここは大蛇丸を見逃すしかなさそうだ。

 

狙いは原作と変わらずサスケという事は分かった。おそらく抜け忍でリスクの少ないイタチを狙ったが返り討ちにでもあったのだろう。そのイタチを上回るには弟であるサスケの体に乗り換える事にしたといったところか。

 

「これ以上長引くとますます不利になるわね。ここは一旦退かせてもらうわよ」

 

やはり悔しいが最低限の目的は達成したので、全員に動かないように指示する。だが納得出来ない者もいた。

 

「こいつを今ここで殺さなくては木の葉にとって災いとなります!私が命に代えても仕留めてみせる!」

 

アンコは今にも飛び出さんとする勢いだ。

 

「アンコ、貴女は邪魔よ」

 

そう言って大蛇丸は片手で印を結ぶ。そうするとアンコがいきなり首筋を抑えて蹲ってしまう。

 

「アンコ隊長!」

「さてくれぐれも邪魔はしないでちょうだいね」

 

そう言うと大蛇丸は姿を消した。

 

「一先ずゴール地点の塔へと向かうぞ。第二小隊はこの事を三代目に早く伝えるんだ」

「「「はっ!」」」

  





設定やIFストーリーを別小説としました。
お遊びですので本編とは何の関係もありませんが、紅ルートを一話だけ投稿してます。
気になられていた方がおられましたらそちらもどうぞ。

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