時刻は、18時前、そろそろ夜にかかろうとしている。季節が冬ならばもう夜の帷が降りる時間だ。
九州地方に異常が現れてから、初めての夜を迎えようとしている。太陽が落ちることを、これほど恐ろしく感じたのは、初めての経験だった。途端に不安も強くなっていく。失ったものが大きすぎ、多すぎた。
阿里沙にとって、いや、この場にいる全員にとって、今日以上に無事、朝を迎えられるのだろうか、という考えになることはないだろう。だが、この狭い世界の中で、ただ肉と身体があるからというだけで生きている。そんな無意味な朝を迎えるのは、ごめんだった。
浩太は、奮い立つように、勢いよく立ち上がった。
「なあ、みんな。ここから......いや、この九州地方から脱出した時にさ、まず何をしたい?」
突飛な発言に、彰一は呆れたような視線を祐介に投げた。
「そんなこと、今はどうでも良いだろ?」
「どうでも良くない。暗い雰囲気に呑まれてたら、良い案なんか浮かばない。なにか持とう。みんな、一人一人の目的を胸に刻もう!そして......」
祐介は、彰一を、阿里沙を、加奈子を順番に見た。いろんな人に助けられ、生き延びている仲間へと言った。
「絶対に生きて、やりたいことをやろう!死んでたまるかって意思を持とう!そうすれば、きっとどんな困難にも立ち向かえる。じゃあ、まずは彰一から!」
「はあ?なんで俺からなんだよ。ふざけんな」
ふい、とそっぽを向いた彰一だったが、他三人から流れてくる濁った空気に耐えきれず、深い吐息をついて小声で言った。
「......誰かを助けるために、自分の犠牲を省みない人間になる」
その言葉に、祐介は深く追求することはなかった。ただ、分かった、と首を縦に動かしただけだ。警察署で初めて会った時から、彰一の中で変わった出来事があったのだろう。それを追求してまで聞き出すのは無粋だ。彰一は、後味が悪そうに視線を三度外へ向けた。祐介の背中を遠慮気味に叩いた加奈子は、ポケットノートを祐介の眼前に掲げた。
【おかしをたくさん食べたい】
子供らしい大きな瞳が、ようやく輝きを取り戻したように感じた。最後に、阿里沙が手を挙げて、発表のように立ち上がった。
「私は、甘いものを一杯食べたい!」
阿里沙の堂々とした発言は、三人を失笑させた。
「なんだそれ、加奈子ちゃんと同じことじゃないか」
笑いを堪えながら、祐介は阿里沙の頭をくしゃくしゃと撫でる。膨れっ面だった阿里沙は、それだけで赤面し、機嫌を直したようだ。怖いという感情は、明日に不安があるという意味だ。彼らは、確かに、今を生きている。
久しぶりの和やかな空気の中、すまし顔で外を眺めていた彰一が目を剥いて、うわずったような声を出した。
「おい!トラックだ!トラックが近づいてきてるぞ!」
なぜか一日だけ凄く伸びてる日がある……調べてみた結果、すごく嬉しい出来事が!
ありがとうございます!!
例えで出していただいた作品は自分も大好きです
キャラならグレン最高ですw
ああああ……一人称が書けない……