感染   作:saijya

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第2部 感染拡大

 浩太と真一は、他の隊員と同じくざわついた格納庫で隊長の新崎を待っていた。その間に、この警報ベルについての情報を集めようとしたが、どの隊員に聞いても知らないと首を振る。時刻を考えれば、当然だ。

 拡声器を片手に現れた新崎の姿が見えると、先程までのどよめきが、ぴたりと止み、みなが一斉に列を作り耳を傾けた。一瞬で作られた静謐な空間に向けて、新崎が拡声器を構えた。

 

「早朝から集まってもらってすまない!しかし、今は一刻の猶予も惜しい!一度しか言わないからよく聞いてくれ!」

 

 浩太は新崎の部下になってから3年、これほど余裕のない新崎を見たのは初めてだった。必死の形相から察すれば、事態がどれほど緊迫しているのか伝わってくる。

 

「昨日の事故により漏洩した薬品が原因と思われる感染者が現れた!それに伴い、我々には銃の使用許可も下されている!速やかに武器、弾薬を荷台に積み込み、鎮圧にあたれ!」

 

 そう残すと、新崎は下澤に拡声器を渡し、早足で格納庫から飛び出した。指揮権を委任された下澤は、新崎の言葉通りに命令を下した。武器の積み込みだ。訓練でも行われるこの行為に、さほど時間は必要ない。わずか数十分で全ての車両の荷台に銃火器の準備が整う。

 あとは、下澤からの号令を待つのみだ。

 再び整列した隊員を見回した下澤が、大きく息を吸い込んだその時、唐突に基地内から格納庫に繋がる扉が乱暴に開かれた。

 肩で息をしながら飛び込んできた男に、数百人の視線が集まる。昨日、浩太と話しをしていた門番だ。

 

 

「大変です!感染者の大群がこちらに押し寄せてきました!」

 

 

 下澤は、固く閉ざされた門を振り返り、我が目を疑った。

 自衛官を遥かに上回る人数の暴徒が、門の前にひしめき合っている。先頭にいる集団に至っては、背後からの圧迫により鉄柵へ顔面が押し付けられ、今にも柵を突き破ってしまいそうだ。

 声が重なりすぎている為か、呻き声にしか聞こえないと思った浩太だが、それは違う。呻いているだけだ。

 

 正気の沙汰ではない。

 

「な……なんだよあれ……」

 

 

 酷く軋みをあげていた鉄柵は、浩太の呟きと共に、轟音をたてながら破られた。

 最前列にいた数十人は、その勢いに押されて後続を巻き込む形で倒れる。縺れたように蠢く集団の中、女性が一人立ち上がった。

 

「連中、薬でもキメてんじゃねえの?」

 

 真一がいい終える前に、こちらに気付いた女性が一目散に駆け出してきた。武装した自衛官になんの恐れもみせずに向かってくる様には、浩太を始め、多数の動揺の声が上がった。

 

「下澤さん!どうしますか!」

 

 浩太が射撃の確認をとるが、姿や形は遠目でみても一般人となんら変わらない。どうにも下澤は判断しかねているようだ。その迷いを断ち切るような一発の乾いた銃声が格納庫内に反響した。




皿倉山は車で頂上まで登れません
誤解されたかなんか申し訳ない気分になりそうなので、意味はないでしょうが書いておきますw


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