「その葬式の合間に東京を抜け出したが、奴の手回しのほうが早くてな。結局は捕まっちまったよ」
計り知れない一般人との心の格差は、到底、納得のいくものではなかった。だが、安部は隣に座る東の影響か、それほど嫌悪感を抱かなかった。いや、そうなるべきなのだ。人としての生き方など捨てなくては、この世界で生き抜くことなどできない。
浅く腰をかけ直し、安部が言った。
「なるほど......まず、埋めていくのは外堀という意味ですか」
「ああ、そうだ。そういう根っ子の部分は一般社会と変わらねえ」
東が怪しく笑い続ける。
「まあ、見た感じでは、ここに芯がある奴はいないみたいだから、さほど気にする必要はない。そういう人間が現れた時の参考にでもしろよ。悪意を叩き込むってのは、もっと違う意味だ」
「......と言うと?」
「悪意ってのは、誰かに放出するもんだ。なぜこうなったのか、なぜこんな状況にいなければいけないのか、悪意ってのも感染する。悪いものほど、感染していく速度は早い。募金活動なんかより、よっぽど早いぜ」
東は、立ち上がると、その場に居合わせた男性へ手招きをした。不穏な空気が流れる。軽やかにステップを降りた東は、男と肩を組むと、いきなり腹部を殴り付ける。踞った男性への追撃は激しいものだった。容赦なく頭をふみつけ、顔面を蹴りあげ、髪を掴んで床に面を叩きつけた。
「見ろよ、こいつらの顔をよ......誰も止めにきやしねぇ......所詮は自分可愛さの連中だ。こういう奴等には警戒するなよ。それを見極めろよ?排除は俺がしてやるから、アンタは俺に命令をするだけで良い」
血塗れなった男性をゴミでも捨てるように開放した。手酷い暴力のあとは、床に広がる血溜まりを広げていく。安部を盗み見た東は、その表面のどこにも動揺や困惑がないことに対し、悦に入った様子で口角をあげた。
集められた武器の矛先を向けるべき相手は、どこにいるのかは分からないが、少なくとも、安部に刃先を沈める必要はなくなった。
適応力の高い男だ。いや、もとから素質はあったのかもしれない。
東は、着々と自分にとっての「完全なる理解者」を作り上げている喜びに胸を踊らせた。
※※※ ※※※
八幡西警察署内は、冷え込んだ空気に晒され、彰一が武道場の窓を閉めた所だ。くしゃみの一つでもしようものなら、即座に警察署内を徘徊する異常者に気づかれてしまう。それを防ぐ為の行動だったが、たちこめる死臭は堪えがたいものだった。
あーー、苦戦した!
ここ本当苦戦した!
あと、また短編書いてるので機会があればのせます
心配メールありがとうございました!大丈夫です、苦戦していただけです!
短編が終るまで少しペース落ちるかもですが……
とりあえず、いず様いず様いず様ーーーーーはい、気持ち悪いね、すいませんw