感染   作:saijya

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すいません、風邪ひいてました……
復活します


第7部 悪意

 中間市にあるショッピングモール、建物は連絡通路と吹き抜けを介し、大きく二つに別れている。一号館は大通りに面し、二号館は所謂裏通りに出入口を構えていた。

パチンコ店やゲームセンターまでも有した広大な敷地は、使徒達にとって半ば楽園になりつつある。

 一号館においては、もはや巣穴のような状況だった。何故なら、その敷地面積の広さ故に中間市内に住むほとんどの住民への避難場所となっていたからだ。一号館のバリケードが破られたのは、約一時間前、投げ込まれた手榴弾による一撃を皮切りに、雪崩れ込んだ使徒達による大規模な食事会、備わった音楽は、悲鳴と叫びだ。

二号館の搬入口に車を停めた二人組は、真っ白な服に身を包んでいた。

 その内の一人、長身の男が手榴弾を片手にシャッターの解放を要求したのは、約三十分前だ。

 つまり、この状態を僅か十五分で作り上げたという意味だ。

 二号館に立て籠っていた数十名は拘束され、テレビや本屋といった娯楽品販売テナントが連なる広間に集められている。

一号館に繋がる外通路、そこに群がる使徒達へバリケード越しに十字を切った安部に対し、気味の悪いものでもみるように、目を細めた男の後頭部に銃口が当てられた。

小柄な男が、容赦なくトリガーを引いた。短い破裂音と共に、男は額から弾けた脳を撒き散らしながら倒れた。隣に座っていた女性は、初めて浴びる他人の血に気を失った。途端、耳をつんざくような叫びが響いた。

 

「みなさん、お静かに」

 

 突然、安部が口を開いた。それでも悲鳴は止むことはない。パニックになる要素があまりにも多すぎるのだ。限界を迎えた集団は、いとも簡単に恐怖が感染する。安部は溜め息混じりに銃を構え、適当に狙いをつけた男性の頭を吹き飛ばす。一瞬だけ作られた静然な空間、全員の視線が集中するまで安部はあえて何も言わなかった。ただ、硝煙をあげる拳銃を携えているだけだ。

 それは、いつでも、自分は殺せるのだと拘束された側にとって一定の心理を突き付けていた。

 安部は、十分に注目を集めてからも、更に数秒の間を空け、完全に意識までも集中させてみせた。

 とある有名な政治家が使った手法だが、いまでも効果は期待できるようだ。

 

「まずは、不躾な訪問を心より謝罪致します。このような結果になり、大変申し訳ありません。ですが、これは我々にとって重要な事柄なのを、皆様の寛大な心で理解下さればと思います」

 

 誰もが何も言わなかった。それは、不用意な発言はそのまま死に繋がる可能性があるからだろう。全国紙の一大スクープに取り上げられた東がちらつかせる拳銃に付着した血は、恐怖心を煽るには十分だった。




ああ……まだ喉痛い……
橘田さんに癒してもらいたい……w

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