暴徒の呻き声が聞こえる。どこにでも入り込む奴等だ。
旧門司税関の看板は粉々に砕け散り、丸い焦げ跡の広さがミサイルの凶悪な威力を物語っていた。浩太の気転が無ければ、これが直撃していたのかと思うと、真一は寒気を覚える。
「さすがの威力だな......」
浩太がぽつりと呟き、真一も達也も頷いた。過去にインターネットや映画で見たミサイルとは訳が違う。
改めて、命が晒されたという実感が沸き、生き延びた喜びが沸き上がってくる。そんな二人を尻目に、飛び去ったアパッチを探すように、真一は浮かない顔で空を仰いでいた。
「......おい、真一?どうした?」
浩太の問い掛けに、真一はやや間をあけて、意を決したように言った。
「二人とも、落ちついて聞いてくれよ?」
浩太はすぐに察した。関門橋で現れたアパッチに関することだ。真一の様子がおかしかったあの時、達也の援護射撃を受けたアパッチの腹に何が描かれていたのか浩太は知らない。だが、いつもは飄々としている真一がこれほど表面に深刻な影を落としていることから、ただ事ではなかったのだと分かる。
真一が、一度二人に目配せをする。準備は良いか、という意味だ。短くも濃い沈黙が流れ、真一は息を吸い込んだ。
「......アパッチの腹に、星条旗が彫られていた」
浩太と達也から血の気が引いた。それは、厭世をもたらすには充分すぎるほどの一言だったからだ。達也が堪らず、怒鳴り声で真一に噛みついた。
「ちょっと待てよ!お前の見間違いなんじゃないのか!?あの混乱した場所なら錯覚だって考えられるだろ!」
真一も感情のままに反駁する。
「俺だって信じたくなかったぜ!?けどな、確かに見たんだよ!」
「なら、なんでもっと早く言わないんだよ!」
「あの状況でか?言ってどうする?すんなり諦めちまえたのに、とでも言うのか?」
「ああ、そうだよ!少なくとも、生きてるよりは楽になったかもな!」
「二人とも落ちつけよ!それよりも気にすることがあんだろ!」
二人の口論に割って入った浩太自身も顔色が優れない。当たり前だ。襲い掛かったアパッチに刻まれた星条旗、それが何を意味するのか三人は瞬時に理解し、同時に絶望したからだ。
真一と達也が揃って浩太をみやる。浩太は、ある一つの確信を持っていた。
アメリカを動かすなんてことが出来るとすれば、それは国絡みではなくては無理だ。そして、記憶から引き出されたのは、航空機墜落のニュースでキャスターが読んでいた内容の一部だ、
確かに、キャスターはこう述べていた。
「厚労省のもと、管理・輸送されていた」
今回の事件の裏には、日本のトップないし、それに近い人物が関与している。はたまた、その両方か。それは、いまの浩太には計り知れないが、それは、もう一つのある可能性を示唆していることになる。
ちょっと書き直す可能性がります……
なんか納得いかないような……いくような……