感染   作:saijya

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第2話

 門の前には、異常者が群がっていた。父親は、見通しの甘さを痛感する。こうなっているのは、当たり前だ。何故なら、その門の先には、異常者達にとってのご馳走がある。

 幸いにも、まだかかる圧力は低く、破られはしないようだ。

 

「親父、どうする?」

 

「裏口に回ってみるか......フェンスを越えれば入れるし、奴等がここに集まっているなら、向こうは手薄かもしれない」

 

 ギアをバックに入れ、車を後退させる。異常者達は、警察署に、救いを求めるように両手を伸ばしていた。さながら、宗教の信仰者のようだ。

 ぐるり、と外周を周り、二人はパトカーが停められた裏口駐車場に到着する。予想通り、背の高いフェンスに群がる異常者はいなかった。

 車をフェンスに沿って停め、二人は運転席側から降り、ボンネットからルーフに登る。もしも、登っている最中に異常者の接近に気付かず、襲われた際に、車が障害物として機能するようにと考えた結果だ。

祐介がフェンスに手を掛けた。

 

「......先に行くけど、親父、腕は大丈夫か?」

 

 憂慮の言葉に、父親は首を縦に振るだけだった。傷口の部分が血で隠れているが、間違いなく変色しているのが分かる。祐介にそういった知識はないが、素人目に見ても、それは異常だった。

 部活中に打撲や捻挫をした選手はいたが、そのどれとも違う。血の代わりに膿が流れ、パリパリとした、瘡蓋ではない薄い膜が張っている。腕を曲げれば割れ、隙間から新たな膿が溢れだす。

 父親には悪いが、祐介は吐き気を催し、これ以上は直視しないように、フェンスの頂上を目指すことだけに集中した。フェンスを登りきり、植木に着地する。

 八幡西警察署は二階建てだ。一階に、交通課や市民相談センター、簡易取り調べ室、二階は休憩室や武道場がある。二人は建物を周り込み、入口へ向かった。錆びの匂いが強くなる。門に遮られていた異常者達は、二人を見付けると同時に、狂ったように哮りたった。

 集団を、父親が火を吹くような勢いで睥睨した直後、警察署内から男が飛び出してくる。祐介も何度か見たことがある父親の後輩、加藤という男だった。

 

「上野さん!無事でしたか!良かった!」

 

「ああ、お前も無事でなによりだ」

 

 軽く会釈をした祐介の頭を撫でて、加藤は辺りを見回して言った。

 

「奥さんはどちらに?」

 

 途端に沈んだ父親の表情を見て、加藤は察したようだ。小声で謝罪を挟み、門を確認する。まだ、破られる心配はないだろうが、数が増えているのは間違いない。重なる唸り声が増えて言っている。




あああああああああああ!今、気付いた!
パスワード再発行あるじゃん!!!!!!
俺の馬鹿ああああああああああああああ!

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