生き延びたら何をしたい、その問い掛けに真一は、まだ見つかっていない、と返し、希望を手にしなければ平和を掴めないと言ったのは、他ならぬ達也だ。真一にとっての希望、その芽を摘んでしまったことに、達也は涙を流す。
「真一……俺は……お前になんて事を……」
ナイフが手から滑り落ち、小さな音をたて膝から崩れた。語るべき言葉が見付からず、嗚咽を漏らすことしかできない。そんな中で、深く息を吸い込んだ真一は、片足を引摺りながら項垂れる達也の肩に手を置いた。
「お前が悪い訳じゃないんだぜ?全部、俺が自分で招いたことだ……」
「達也……」
低く呟いた浩太に振り向き、真一は口角をあげる。汗が浮いた額をみるに、耐え難い激痛に苛まれているのだろう。それでも、真一は笑っていた。
「こうなっちまった以上、どうするかな……お前達をこの地獄から助け出す、それしか残っちゃいないけど……ケジメの付け方がな……」
自身の手にあるAK74を裕介に差し出す。困惑しながら、裕介は真一から受け取った。
「俺は真一さんを撃てません……これは、仲間を守る為に使いますが良いですか?」
真一はひとつ頷き答える。
「ああ、充分だぜ……」
俺達には、お前みたいな奴が必要なんだよ。だがよ、仲間がピンチの時は頼んだぜ、八幡西警察署での約束、裕介がそれを覚えており、はっきりとした決心を口にした。それが嬉しくもあるのか、真一は充実した表情を浮かべる。
「浩太、俺には時間が残されちゃいない。だから、この命はお前らの為に使わせてくれ……頼んだぜ」
浩太は言葉を返さずに首を縦に動かし、懐から手榴弾を取り出すと真一の掌を両手で包んで渡す。肩を揺らし微笑した真一は、頼もしいぜ、そう呟く。
上階から甲高く卑俗な声が降ってきたのは、まさにその時だった。
全員が見上げる先には、スーダンを着た小柄な男がいた。悦に入って笑う様は、まるで死神そのものだ。達也にとっては聞き慣れた佞悪な哄笑を携え、男が口を開く。
「地はやせ衰えた。世界はしおれ、天はしなびた。地球は人間によって汚れた。人々は神の掟に背き、定めを変え、神の永遠の契約を破ったからである。それゆえ、呪いは地を食らい付くし、人は罪あるものとされる」
語り口もさることながら、男が歩く度に異質な空気が場を支配していく。浩太は生唾を呑み込もうとしたが、急速に口内の水分を奪われていき、喉を鳴らすに止まり、真一ですらも咬傷から意識を外し、新崎は化け物でも眼にしたかのように眉を寄せた。
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