感染   作:saijya

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第7話

 撃ち出された九ミリ弾が着弾したのは、獣の巨体を支える爪先だ。猛獣にとっては痛みもない箇所に過ぎないのだが、だからこそ、突然の強い衝撃に、揃っていた四つ足の一本が対応しきれなかった。熊の巨躯は、けたたましい騒音を辺りに散らしながら路上を転がっていき、ガードレールを突き抜けて、ようやく、その勢いを無くす。

 道路上に残された夥しい量の血液の線が、どれほどの衝撃だったのかを物語るように引かれており、それを視認してから、新崎を除くメンバーが安堵の吐息を洩らすも、冷たく場が凍りつき、新崎の一喝が入る。

 

「まだだ!小倉の入り口にある登り坂を過ぎるまで油断するな!」

 

浩太は、咄嗟に疑問を投げた。登りきるまでは油断するなとは、これから先、まだ何かがあるのどろうか。

 

「どういう意味だ?これから先に何があるのか?」

 

 浩太の質問に新崎が即答する。その声音は僅かな怒気を含んでいた。

 

「奴の性質が変わっていないと分かった以上、熊は長い前足のせいで下りに弱い!そこまでは、何事にも備えておけ!」

 

 言い切った直後、リアガラスの奥から、心臓を掴むような咆哮が轟いだ。車内にいる全員が一斉に身を縮め、真一が苦々しそうに振り返り、口を開く。

 

「確かに、ヤバそうだ。達也、出来るだけ急いだほうが良さそうだぜ......新崎、礼は言わないからな、分かってるよな?」

 

 脂汗が涌き出た額を拭っていた新崎が、分かっている、と荒い呼吸で呟き、乱れた呼吸を戻す為に、深呼吸を挟んだ達也が短く首を動かす。ドッとした疲れが押し寄せてきたのだろう。

 今もなお、あの猛獣は、起き上がろうともがいているのだろうか、その様子を想像してしまわないよう、祐介はきつく目を閉じた。朝日が真上に到着するまでは、残りあと数時間といったところだ。浩太は、田辺との会話を反芻する。田辺は確かにこう言っていた。

 昼までには、小倉のあるあるシティーに到着する予定、と言っていたはずだ。

  この調子ならば、どうにか間に合いそうだな、そんな気持ちを胸中に詰まった不安と共に、深い溜め息として吐き出し、車はついに、小倉北区へと到着する。小倉に戻ってきたことに、浩太は深い吐息をついて助手席から街並みを眺めてみる。見慣れた空間がsこいは広がっている。仲間とともに休日を過ごした最高の時間が脳裏をよぎっては消えていく。

 ここから、出口の見えない深い洞窟を抜けるような、命のやり取りが待ち受けていることを、七人はまだ知るよしもなかった。




saijya「な?ちぎっては投げされてたろ?」

ゾンビ「……納得できねえ!!!!!!!」

saijya「あとさ、しばらく東京、しかもラストに入るから、君らあんまり出番ないわ」

「……え?」

次回より新章にはいります
そして、すこし忙しくなってきたので、数日お休みします

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