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工場の一室に集まった一同は、浩太の話しを訊いて様々な感覚を持っていた。浩太、真一、達也、新崎、祐介、阿里沙、加奈子、それぞれが生き残る為に動き出さなければならないことを否応なく自覚する。
期限は僅か一日と差し迫っており、一刻も無駄にはできない。誰もが口を重くする中、切っ掛けを作ったのは真一だった。
「......核や空襲、銃や弾丸が入り乱れてのパーティータイム......まったくもって笑えねえ冗談だぜ。連中、戦争でもおっ始めようってのか、クソッタレ」
不意に真一が言いながら鼻を鳴らした。それに、浩太が同意するように頷く。
「ああ、だが、事実はどうあれ、この機会を逃す手はないと思う。みんなはどうだ?」
まず、浩太は阿里沙へ視線を投げ、察した阿里沙は、鳩首の場ということもあってか、遠慮がちに口を開いた。
「......あたしは、浩太さんに賛成です。その東京の人達を信用は出来ないけど、彰一君ならそう答えると思いますから......」
その返答に、人知れず影を落としたのは達也だった。隣に座る真一は、さっ、と一瞥したが、何も言わずに目線を戻して、意見を述べる。
「俺も阿里沙ちゃんに同意するぜ。けど、やっぱり不安材料は、しっかりと取り除いておきたい」
不安材料との言葉と共に、全員の目は自然と新崎へ向いた。凶悪な三拍眼を携えて、真一が詰め寄っていき、芋虫のような状態で横たわる新崎の胸ぐらを掴みあげた。
「新崎、そろそろ、手を借した理由を話さないとマズイことになるぜ?九州脱出の段取りはついたんだ。言うなれば、お前は蟻の巣穴に連れ込まれた虫だ。俺には、その程度の価値しかお前に見いだせないぜ」
両手足を縛られたまま、呼吸をしようともがく様は、まさにその通りだと、達也は納得しつつ、真一を制するように右手を突きだした。
怪訝そうに目を細めた真一だが、新崎を解放せずに振り返る。
「なんだ、達也?」
「真一、ひとまずは新崎を放したほうがいい。そいつ、窒息しちまうぞ」
真一は、新崎を睨目つけると、一拍だけ空けて乱暴に胸ぐらから手を放し、噎せ返る新崎を俯瞰して、一旦、その場から退く。
涙目で咳き込み続けている新崎に対して、聞こえてるか、と尋ねたのは浩太だった。首肯が見えると、少しだけペースを落として言う。
「悪いが真一の言う通り、今のアンタは全く立場がない。俺達はアンタを置いていくことも、外で死者の大群と出くわした際に囮にすることも出来る」