憮然とした表情の祐介を尻目に、指名された達也は、小さく返事をしてからスタスタとした足取りで扉のノブを手に取って回す。途中、なにかを言いたそうに動きが止まるも、くっ、と唇を締めて部屋を出ていく。二人を見送った浩太は、再び、床に置いた携帯へと声を落とした。
「中断させて悪かった。話しを続けてくれ」
「いえ......こちらこそ、申し訳ありませんでした。回りくどく語るべきではなかったかもしれませんね。それでは、ここからは、本題に入ります」
「......本題の前に確かめたいことかある。そこに野田はいるのか?」
田辺が濁さずに、はい、と答えると、浩太は深く息を吐いた。
「代われないか?話しがしたい」
「構いませんよ、では......」
僅かな雑音が受話器から聞こえ始め、重い声が流れ始める。祐介は、喉を鳴らして服を胸の位置で握った。
「アンタが野田か?」
「ああ......そうだ......」
苦しそうな声音は暗く、若干ではあるが言葉を選んで返事をしている節がある。浩太は、ちらり、と新崎を捉えつつ、区切ることなく一息に言った。
「こんな事態を引き起こした責任は感じているか?どんな罰も甘んじて受ける覚悟はあるか?」
「ああ、もちろんだとも」
「......分かった。田辺さんに代わってくれ」
残された祐介は、質問の意図を図りかねていたが、あえて口を挟まずに黙していた。ただでさえ、田辺の話しと浩太から感じる不一致で、積もった疑問が爆発しかけていたからだ。頭を振っり、改めて二人の会話に集中する必要がある。
浩太が身を乗り出す。
「田辺さん、アンタを信用するよ。それで、本題とやらは、俺達を救出する作戦、で良いんだよな?」
浩太の念押しに、田辺はすぐさま返した。
「はい、当然、そうなります。しかし、重大な問題がありますので、まずはそちらから説明します......あの、落ち着いて聞いてください」
沈んだ口調に違和感を覚えたが、先を促すために、浩太はなにも返さずに言葉を待ち続け、田辺は吐息をひとつつくと、ゆっくりと語り始める。
「アメリカが偵察の為に送った機体との通信が途絶えたことが判明し、先程、連絡がありました。これにより、明日の18時から、アメリカ軍による九州地方への空爆が開始されます。その後に、核の投下まで行われてしまうようです」
浩太を始めとする部屋に残った三人は、信じがたい内容に耳を疑った。新崎でさえ、双眸を限界まで剥いている。
一気に引き締まった声紋に、どうにか息を通した浩太が口角をひきつらす。
「......冗談だろ?一体、どうし......」