伝えにきたのは同僚の古賀達也という男だ。浩太とは何度か同じ隊にも所属した気心知れる仲で、今日一緒に出掛ける予定だった。仏頂面のまま言った。
「来てたんだな、お前の事だからサボるのかと思ってたよ」
「その言葉、そっくりそのままお返しするよ」
達也は、イラつきを隠すように大袈裟に哄笑した。浩太もそうしたい気持ちだったのだが、事件の大きさから、それだけは憚られてしまっていただけあり、周囲の視線が突き刺さる前に、浩太は訊いた。
「それで、集合場所はどこなんだ?いい加減に決めてもらわないと、退屈で死にそうだ」
「ああ、一番格納庫だとさ。隊長は新崎だ」
その名前を聞いた途端に、慎一は項垂れた。
「マジかよ……あのおっさん嫌いなんだよな」
「まあ、そういうなよ。さっさと終わらせて帰る。それだけを目的にするだけでも気分は違うもんだ」
そんなもんかな、と他愛のない会話をしているうちに、三人は目的地である一番格納庫の扉を開いた。既に100名近い隊員が集結し、整列していた。三人は隊の後方に横一列で並んだ。
全員が見回せるように朝礼台のような台に乗った壮年の男が隊長の新崎だ。先頭に立つ者だけあって体格は良い。格納庫中に響かせるように拡声器を持っている。
「ええ---、集まってもらい結構だ。もう既に周知の事だとは思うが、我々にとっても良くない事態が起きている。今日の任務二つ!一つは生存者の確認と、極秘に開発されたという新薬の回収が主となる。そして、もう一つは関門海橋と関門トンネルの封鎖だ」
三つじゃないか、と呟いた真一の脇を浩太が小突いた。告げられた任務の内容で理解ができないのはそこだけではないからだ。関門海橋とトンネルを封鎖する理由が分からなかった。
「どうせ、薬品の漏洩があった場合に感染者を増やさずに内々で処理しようってことだろ。そんなに念を入れるようなことなのかねえ」
呆れたように達也は天井を見上げた。
「だけど、大切なことには違いないだろ?なにより現地に向かうんだ。感染するような科学薬品なら回収も入るし、封鎖もあり得るだろ」
「おや?もう、仕事モードか?相変わらず浩太は切り替え早いな」
「そんなんじゃない。周りの空気がさ……」
これは演習や訓練ではない。本番が近づいているのだ。真一ですらが空気を肌で感じているのだろう。先程までの浮ついた表情は消えていた。ピリピリとした雰囲気は勘違いではないようだ。
達也もまた、気を引き締めた時、拡声器を通した新崎の声が響いた。
「では、班を二つに分ける。A班は封鎖に回れ!B班が墜落現場を担当しろ!B班は防護服の着用、以上だ!みな迅速な行動を心がけろ!」
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