口にすることを憚られる恣意的な判断でもある。だが、成功すれば、確実に負担を減らせるだろう。しかし、予想が外れた場合、もっとも危険な選択をしてしまうことになる。祐介は懊悩するあまり、頼りない目付きで真一を見上げた。
「話せよ祐介、ここで手をこまねいていても一緒だぜ?それに......」
真一は、言葉を区切り、死者の群れへ顔を逸らす。重なりあう伸吟は、こうしている間にも、どんどん増えていっている。時間が足りないとも自覚した上で、改めて真一が言った。
「俺達がやれば、きっとどうにかなる。いや、絶対に巧くやれるぜ」
「真一さん......」
そうだ。このままでは、アパッチを撃墜する役目を受け持った浩太と達也に顔向けすることが出来ない。意を決して、祐介は指を上げた。
「あちらから、死者が一人も来ていないことには、気付きましたか?」
祐介の指先が示したのは、死者の群れから真逆の位置だ。真一は、神妙な顔で頷く。
「ああ、それには気づいていた。けれど、逆に不気味だぜ......」
真一の気持ちは、痛いほど理解できる。死者の侵入がない、とは言ったものの、死者がいないとは断言できない。慎重に、かつ、大胆な行動が必要な事態ではあるが、勇気と無謀は大きく違う。真一の意見は、そんなニュアンスが含まれていることを察した上で、祐介は首を振った。
「不気味ではありますが、ここで手をこまねいていても時間が過ぎるばかりです。なら、現状だけでも確認しておくに越したことはないでしょう?」
顎を引いて唸った真一は、ちらりと死者の大群を横目で認めた。
未だに、集い続けている死者達が、アパッチに釘付けにされている今ならば、祐介の提案に乗れるかもしれない。いや、今だからこそだ。一か八かの賭けになるが、新たな案が浮かばない。こうなれば仕方がないとばかりに、真一は首を縦に振った。
「分かった、それでいこう。いいか、祐介、俺が先にいく。背中は任せたぜ」
祐介が黙って首肯すると、真一が一歩を踏み出した。これほど、丁寧に地面へ注意を向けたことがあるだろうか。二人の足音一つが、そのまま、全員の死へ直結する。それを嫌というほど智見してきただけに、真一は、とても貴重な物でも扱うかのように神経を尖らせた。幸いにも、アパッチのプロペラ音が重なっており、死者から気付かれることもなく、二人は揃って吹き抜けを突破する。吐き気がしているのは、間違いなく気のせいではないだろう。
ただいま帰りました。ええ、本当にすいませんでした
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