「随分と関門橋まで近づけたのは、有り難かったな」
門司港レトロを出た二人は、一度弾丸の補給を終わらせ、目的地である関門橋を目指した。トラックで走れば、約20分ほどで到着する距離だ。助手席に座る真一が言う。
「県越えたらどうする?」
「とりあえずは、救援の要請だ。それからは、その時に考えるとするさ」
ケラケラと陽気に笑う。慎重な浩太にしては珍しいなと思った真一だが、訳の分からない二人組や、死んで甦り、生きている者を襲う集団に数時間追われたのだから無理もない。そう考え窓の外を見やった。関門橋が徐々に形を現していき、やがてその全貌が見渡せるようになると、浩太のアクセルを踏む足にも自然と力が入る。
「浩太、後ろに車影がある」
真一の緊張が混じった声に、浮き足立っていた浩太も空気を張り詰めた。
「……奴らか?」
「いや、まだ確証はないぜ。ただ、覚悟はしておいた方が良いかもな」
真一は89式小銃のマガジンを抜き、弾丸が充分に装填されていることを確認して安全装置を解除した。浩太は無線での呼び掛けを提案するが、真一は首を横に振る。
「やめといた方が良いぜ、何がきっかけになるか分からない」
こくりと頷いた浩太も、自分の銃を真一に渡した。運転に集中する為だ。サイドミラーに目線を注ぐ真一に言う。
「少し距離を離す。スピード上げるぞ」
「待った、トラック停めても良いぜ」
「どうした?」
「仲間みたいだ」
後方のトラックから腕が出ている。それは、二人が着る迷彩服と同じ柄だった。
※※※ ※※※
会議室で寝ていた古賀達也が目を覚ましたのは警報ベルが鳴り響く前だった。
トイレに行こうと立ち上がり、他の隊員を踏みつけないよう、慎重な足取りで会議室を出た。
誰の話し声もしない静然とした空間、慣れた基地内とはいえ、いつもより冷えた風が吹いているみたいだと、達也はトイレに急いだ。休憩用のソファーに座る下澤と逢ったのはその途中だった。
「下澤さん、どうしたんですか?こんな時間に」
「古賀か、お前こそどうした?」
声を掛けられ、やや慌てた様子で振り返った下澤は、達也だと分かると胸を撫で下ろした。特に気にせずに達也は下澤の前に立つ。
「トイレにちょっと……下澤さんは?」
「俺は飲み物をな。どうだ、付き合わないか?一人は寂しくてな」
500円玉を親指で弾き、綺麗な弧を描いて達也の手に収まった。真後ろにある自販機でコーヒーを二本買ってから、達也は下澤の隣に腰を下ろし、断りを入れてからプルタブをあげた。一口飲んで、下澤が話し始める。
「今回の事故、お前はどう思う?」
突然の質問に、達也は首をひねった。
「なんですか?藪から棒に……」
「良いから、お前の感想を聞かせてくれ」
下澤は、真剣な目付きで達也へ詰めるように訊いた。達也は、少し唸った後、コーヒーを飲んでから言った。
「現地組みではないから、何も言えませんね。ただ、ニュースを見た限りでは、事故と判断しています」
下澤は、そうか、と独り言のように小さく呟いた。なにやら意味深な横顔を見て、訝しそうに達也が口を開く。
「何か気になることでも?」
復活!!
ご心配おかけしました!
あと、復活してから言うのもなんですが、両作品2P更新といったな?
あれは、嘘だ……
いや、本当すいません!理由は活動報告に書いていますので……
苦情は全力でお受けします……