感染   作:saijya

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第9話

 真一が浩太と並んだ時には、トラックが突撃した入口は、死者で埋め尽くされ、溢れた者達ですらが一斉にエスカレーターに集結していた。

 

「こりゃ、なんの冗談だよ!」

 

 叫ぶ真一に、浩太は弾倉を取り替えたばかりのAK74を投げ渡し、代わりに受け取ったM16の弾倉すらも手早く交換する。

 

「真一!二分だけ任せて良いか!?」

 

「ああ?なんか作戦でもあんのかよ!」

 

 銃声に負けないよう声を張り上げる。隠しようのない焦燥にかられているのか少し早口だが、浩太は軽く頷いた。

 

「OK!頼んだぜ!」

 

 浩太が踵を返したのを足音のみで認めた真一は、駆け上がってくる死者の頭部に狙いをつけ、引き金を絞った。弾き出された5.56ミリ弾は、死者の頭部を弾かせ、大群の歩みを僅かに鈍らせる。だが、焼け石に水と言わざる終えない。AK47の弾丸が尽くまで、真一は狙いをつけ、トリガーを引き続けるしかなかった。押しきられたら終わりだ。

 

「急いでくれ!」

 

 焦慮により、迂闊にも真一はエスカレーターからコンマ数秒だけ目を切ってしまう。その瞬間、二度目の生を終えた肉の壁を突破し、弾丸を受けながらも勢いを落とさなかった死者の一人がバレルを鷲掴みにした。残った腕は真一の右腕に伸ばされる。そのまま、引き寄せられてなるものかと、踏ん張るが、生暖かい吐息が左手を撫でる。咄嗟に手を離し、銃口を死者の口内に突き入れた。

 

「これでも喰ってろ!」

 

 引き金を引くが、カキン、と無情な音がした。弾切れだ。死者の圧力が増す。倒されまいと、右足を張り、左足を死者の腹部に預ける。

 真一の鼻先で、死者が必死に上顎と下顎を動かし、歯を打ち鳴らす。瞬きもしないその様、削がれた両耳と潰された鼻という容貌も相まって、真一の表情は一気に青ざめた。

 

「うわあああああ!」

 

 恐怖から、反射的に突き放そうと、腹に添えた左足に力を込めて、前蹴りの要領で押し出すが、それは、死者の腹部を文字通り貫いた。エスカレーターで詰まっている後続の死者へ臓腑と血をシャワーのように浴びせただけに終わる。

 そして、背骨を失った死者の体重を支えるには、真一の態勢は悪すぎた。押し倒され、更に死者との距離が縮まる。銃を下から持ち上げる形で、口の接近を阻むが、喉を突き破りながら、徐々に近寄ってくる。新たな傷が作られ、真一の顔に大量の血液が落ちてきた。加えて、エスカレーターからの足音も大きくなっている。いや、間違いなくエスカレーターの障害を突破している。獣声が二階のゲームコーナーに響き渡る。

 

「こ......浩太!浩太ァァァァァァ!」




た……ただいまです。
すいませんでした。いろいろ忙しかったんです……本当すいません

お休みしている間に、お気に入りしてくださる方もいらしたようで、嬉しくてもう……
ほんとうにありがとうございます!!
しばらくは、大丈夫そうです!!

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