足元がふらつく。もう、限界だった。身体の影響だけではなく、精神も朽ちてしまいかけている。このまま倒れてしまいそうだ。
その前に、この男はだけは......
人を躊躇なく撃ち、なにより、八幡西警察署の惨劇を作り上げた、この男だけは仲間を危険に晒さない為に、殺さなければいけない。
自らを鼓舞するように、肺にまで空気を送った。全力で殴って、首を踏んで骨を折る。それで終わりだ。
安部の怯えた表情が僅かしかない視界に入り、彰一は口内で含んだように唇をあげた。敵討ちなど、祐介の親父は望んではいないだろう。けれど、許してくれなくても良い。俺に大切なことを教えてくれた。俺に足りなかったものを補ってくれた。俺を人間でいさせてくれた。そんな家族のような奴等を守れたのだから、それで良い。
彰一は、右拳に、残っているだけの力をいれた。左肩から血が噴き出す。
「う......うおああああああ!」
咆哮をあげ、彰一は拳を振るった。安部の頬に、拳頭が当たり、そのまま横倒しになるはずだったのだが、彰一は腹部に違和感を覚え、動きを止め、視線を落とす。
「......あ?」
違和感の正体、それは、柄の部分が折れ、刃しか残っていない包丁だった。その先を辿れば、右手を精一杯伸ばした安部がいる。素手で掴んでいるのだ。出血量からしても、骨まで達している。それでも、安部は力強く握っていた。
なるほど、銃を捨てたのも、後ずさったのもこの為かよ。
安部が、この包丁を発見したのは、全くの偶然という訳ではない。安部と東が、中間のショッパーズモールを占拠した時に作らせた武器の一部だったものだ。小金井の行動により、反旗を翻された安部は、この南口まで逃げてきた。その時に、安部の策略に陥った集団が持っていたものだ。彰一の傷の度合いや目の焦点、それらを観察し、気づかれないように銃を放り、その後に蹴りを見舞われ仰向けに倒れる。床に両手を着けたまま、起き上がった時には、既に包丁を手にしていた。
必ず、どこかにあると信じていたそれは、彰一に肩を捕まれ、頭突きを喰らい、顔を揺らした際に、涙で滲んだ視界の端に写った。距離がとれないのなら、経験で負けるのなら、安部がとれる最善手はこれしかなかった。
尋常ではないほどの吐血を頭から被り、安部はこの死闘の勝利を予感する。
覆い被さるように、彰一は安部に寄りかかった。自然と笑い声が洩れ、ようやく肺に空気を満たした時、彰一の左手が安部の後頭部を握った。
魂のルフラーーーーーーン(?)
作者自ら台無しにしていくスタイル……すいませんでした……手が痛すぎて、テンション振り切れてますwww
俺、あげ終わったら橘田さんに癒してもらうんだ……w