感染   作:saijya

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第12話

「駐車場があるけど、駄目!高い植木に囲まれてて、とても乗り越えられそうにない!」

 

 中間のショッパーズモールは立体駐車場の他に、平地の広い駐車場がある。だが、事故の防止の為か植木で交通の制限を掛けていた。

 

「マジかよ......くそ!どうしたら......!」

 

「彰一!あそこだ!あそこから入れる!」

 

 フロントガラス越しに祐介が指差したのは、駐車場の一画に店を構えていた焼肉屋だ。彰一が目を向けると、確かに矢印の下に、南口駐車場の案内が確認できる。前も後ろも、左に広がる住宅街にも逃げられない今、四人の選択は一つしかなかった。彰一は奥歯を咬み、ハンドルを右に切った。

 

「掴まってろよ!」

 

 停車は出来ない。プレオは速度を維持したまま、ギャリギャリと、嫌な音を鳴らしながら平地の駐車場へと入った時、車内が左に沈んだ。負荷に耐えきれなかったタイヤがパンクしたのだろう。彰一は、ハンドルでの調整を試みるが、無駄な抵抗とばかりにプレオは大きくブレながら車体を横に向け傾いた。横転する、と祐介が大声を出そうとするが、軽自動車だからだろうか、一秒にも満たない時間だが、車が絶妙なバランスを保ち、そのコンマ数秒の間に南口の出入り口シャッターへ助手席側からぶつかり、激しい振動を車内に伝えながら、ようやく車は停まった。

                

               ※※※ ※※※

 

 安部は、突然の来客に目を見張った。一階のホールに戻ろうとした際に、中間のショッパーズモールの均衡を崩した元凶であろう戦車が南口の通路を塞いでしまう。なにかしらの事故によるものだろうが、これでは死者が容易に来れないメリットはある。デメリットは、戦車の下を潜り、中程から車内に入らなければならないことだ。いや、これはデメリットにはならないか。一人納得する。だが、こんなものがあるから、貧富の差が露呈するのだ。沸々と下腹からこみ上がる憎しみを込めた安部の蹴りは、鉄の塊に対し、何かを起こすことも当然ながら無かった。

 

「地はやせ衰えた。世界はしおれ、天はしなびた。地球は人間によって汚れた。人々は神の掟に背き、定めを変え、神の永遠の契約を破ったからである。それゆえ、呪いは地を食らい付くし、人は罪あるものとされる」

 

 予言書イザヤの書に記された一説、そこにはこうある。神に背いた結果の産物、それこそ、まさにこれだ。安部は、共産主義者という訳ではなく、理想主義者でもない。それをよく表した一説だと、喉の奥で嗤う。なにはともかく、退路を塞がれた安部に残された最善手は、中間のショッパーズモール内の喧騒が収まるまでは、この戦車に籠城することだろう。しかし、懸念がある。車内に誰かいるのか、ということだ。しばらく考え、二の足を踏んでいた時、安部の背後で轟音が鳴った。

 一体、何事だと心臓が跳ね上がった心臓が口から溢れ落ちるのを防ぐように息を止めて振り返る。




ああ……あああああああああああ!!!!
2話きたあああああああああああああ!!www

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