階段下では浩太が腕を組んで三人を見上げていたが、彰一の顔を視認してから口を切った。
「......どうした?」
「......なんでもねえよ」
彰一は階段を降りると、浩太よりも一段高い位置で止まる。これが、今の彰一にとって精一杯の姿勢だった。浩太が僅かに視線を上げる。
「その達也って奴は、やっぱり信じられない。けど、会うまでは俺の疑心を隠すようにする......それで良いか?」
「......二人には話さないってことか?」
安堵にも似た表情を浮かべた浩太に対して彰一は首を振った。
「いいや、それは駄目だ。ただ、俺の考えを変えるだけだよ」
浩太の憂慮はこの惨劇を聴いた祐介の反応にある。もしも、祐介までもが彰一のようになってしまえば、達也を救出せずに入手した武器で脱出の手段を探る方に作戦がシフトしてしまい、達也の件は、ついでになってしまう可能性がある。法がなくなった現在の九州地方は、民主主義が際立っていた。
しかし、彰一は少なくとも達也に会う気はある、その点だけ救われた。
言葉に買い言葉で強がってしまった時は、もう諦めてしまっていたが、説得してくれたのは阿里沙だろうか、と一瞥すれば微笑みを返された。浩太は、彰一を見据えて頷く。
「ああ、それだけでも充分だ。ありがとう。その、いろいろ悪かったな」
「......こっちこそ、悪かった」
浩太が差し出した煙草を受け取り、彰一がライターを点けた時、気分を一新するような明るい声音が頭上から降ってくる。
「よし、それじゃ改めて車に戻ろっか!」
阿里沙は、彰一の肩を尻に火をつけるように強く叩く。急がせて気を紛らわせようとしているのだろう。そんな阿里沙の姿に彰一は、小さく笑った。
「......強いなぁ、やっぱり」
「そうだな。女の子ってのは強いもんなんだよ」
浩太もつられて口の端をあげ、短く肩を揺らした。
精神的な問題で、男性が女性に勝てることはないのだろう。四人は、家を出ると特有の鉄錆の臭いに眉を寄せつつも歩きだし、車までの距離が半ば程になった時、阿里沙が口火を切る。
「そういえば、あの音はなんだったのかな?」
達也の問題で先伸ばしになっていた爆音は小さいものだったが、音の状態から考慮すれば、かなりの距離があるのは間違いないが、捨て置ける問題でもない。浩太は、少し考えてから振り返る。
「それは、全員が揃って話し合った方が良いと思うが......三人はどう思う?」
浩太の問い掛けに、彰一が返す。
「賛成だ。俺達だけで決めて良いとは思わない」
達也の件に触れなった彰一だが、暗にその話しも含まれているであろう口調だった。あえて浩太も何も言わずに、阿里沙へ視線を送った。
「同意見......ってことで良いかな?」
阿里沙が尋ねれば、加奈子が首肯する。
なぜ、俺は艦コレのアニメをちょくちょく見るのだろう……とくに4話……