クロスアンジュも最終回に近づいてきました!
見る度に思う……次回スパロボ参戦の匂いが……
事の発端は、一本の機密通信からであった
ヒルダを〈アルゼナル〉に送り届け、司令官殿に脅迫されるが難なく離脱を計り今後のテロリズムをヒルダの仇討と言った名目で〈エンデラント連合〉を中心に行おうと思っていた矢先に、ブラック・サレナの機密通信に連絡が入ったのだ
ブラック・サレナに直接つながる通信番号を知っている人間はごく僅かな……片手で数えきれる程しかいない
その中でもミスティお嬢様とヒルダには、今度連絡を取られたら困るので通信番号を変えている。その為もっと人数は少なくなっており知っているのは、ジャスミンとメイとタスクの三人のみ
ジャスミンとメイは先程、ヒルダを送り届けた際に顔を合わせていたので連絡してくる可能性はゼロに等しいと断言出来る為、通信相手はただ一人……
「……なに用だ、タスク」
『アキト!アンジュが大変なんだ!手を貸してくれ!』
手のかかる弟分がまた厄介事を持ってきたのであった
◆
クロスアンジュ天使と竜の輪舞 ~黒百合~
第十九話 処刑台からサヨナラ
◆
『アキト、そっちはどうだい?』
「……目標は学院に侵入。引き続き監視を継続する」
『了解』
スコープ片手に覗いた先には、鳳凰院の扉を開き侵入するアンジュと荻野目の姿
その手並みは、熟練の兵士の如く一切の無駄を無くした洗礼されたモノと損色なく………この俺が参考にしたい位のレベルだ
「……アイツは本当に元皇女か?板に付きすぎだ」
『なにか言ったかい?』
「問題ない。……天才、と言うモノを考えていただけだ」
『天才?』
タスクは首を捻って意味が解らないといった顔を浮べているが、長い間『暗殺』や『侵入』、『隠密』を専門的に鍛えてきた俺から見ればアンジュの動きは裏稼業を営む俺から見ても合格点を与えられる程の動きであった
〈アルゼナル〉で訓練を受けていたとは言え、気配を消し死角に入ると言った専門的な技術に加え行動プランの構成知識など一朝一夜で習得できるモノではない。……彼女自身の才能がそう彼女を緊急時の対策として急成長させているとでしか納得がいかなかった
「こっちは長年鍛えて身に着けた技だと言うのに……憎いやつだ」
生憎と俺にはそう言った才能が無い為、長い年月をかけて博士の訓練で得るしかなかった
テロリストに必要な才能を皇女が持っているとは……気まぐれな神様もいたモノだ
『――ト―キト、アキト』
アンジュの才能に見せられていた様でタスクの声に気づくのに時間がかかってしまった
「なんだ」
『……今からでも遅くはない。アンジュ達に罠だと伝えよう』
タスクは、声を上げて訴えて来ないが気持ちが焦っていることは直ぐにも理解が及んだ
「無駄だ。ここで連れ戻したとしても結局は同じ結果になる」
『だけど!わざわざ彼女達を危険に晒す必要はない!』
「今は、回避出来るだろうが、いずれは同じ事を起す……アンジュは妹のシルヴィアに負い目を感じている。彼女が助けを求めるのであれば例え火の海でも泳ぐだろう」
以前の……皇女時代のアンジュリーゼを窺うにシルヴィアの幼少期に馬から落馬させて足を動かなくさせてしまった事がアンジュの中に留まり続けている。例え俺達が強行手段に出ようとアンジュは絶対にシルヴィアの前に出る……だったら余計な手間は省いた方がいい
『……わかった。でもアンジュ達は妹さんを助けた後、どうするつもりなんだ?』
「さぁな。人知れない土地でみんなで暮らすんじゃないか?」
頭では納得したが気持ちでは納得していないとばかりに不機嫌を隠そうともせずにタスクは俺に話しかけてくるが、アンジュが妹を助け出した後など俺には全く言う程興味はない。……所詮は同じ目的で一時的に協力しただけの仲なのだ。協力体制が終わった今は他人でしかない
しかし、俺はタスクに手を貸している為に間接的ではあるが、アンジュと関わる事になってしまった。だがら、ここは兄貴分らしく頭も働かせておくか……
「タスク、ジュリオ一世がアンジュを誘き寄せていると言う情報はどこから仕入れた?」
『え?……ミスルギ皇家に出入りする官職だけど』
「ふむ…」
官職か……。これがミスルギ皇国近衛長官にしてジュリオ・飛鳥・ミスルギの腹心リィザ・ランドッグであれば信用性が高い情報となるのだが、明確な名前も役職も知れない人間からの情報などに信用性は無い。意図的に情報を流しアンジュの耳に届くよう誘導したと考えるのが一般的だ。
そこで俺は、ある依頼を思い出した
以前、女一人を行き先不明の輸送機に誘導すると言った謎めいた依頼があった。もしその女があのメイドであり行く先が〈アルゼナル〉と考えれば辻褄があう……依頼人は確かミスルギ皇国。
……あぁ、なるほどな
意図的に皇内にシルヴィア殺害の雰囲気を流し、シルヴィアに自身の危機を感じさせアンジュに助けを求める様に仕向ける。だが、アンジュは隔離された『アルゼナル』にいる為、シルビアの危機を知る事が出来ない。その為に『マナ』を使えアンジュを慕っている荻野目をメッセンジャーとして差し向けた
後は簡単だ。長く家族として付き合っていた男だ。妹に負い目を感じるアンジュがどのように行動するかはお見通しだろう。しかし……
「……タスク、一戦交える準備をしておけ」
『え?閃光弾だけじゃ足りないのか?』
「……ジュリオ一世の策など見え透いたモノだが、人間の心はわからん。最悪の事態……アンジュが捕まったケースを想定して準備しろ」
「………わかったよ」
そう人の心はわからないモノだ。
ジュリオの策からシルヴィアの心境の変化が僅かだが感じ取る事が出来る
ジュリオの策には、シルヴィアがアンジュに助けを求める事が前提とされている
以前のシルヴィアなら迷わずアンジュに助けを求めたとしても不思議ではないが、『ノーマ』だと知った今、『ノーマ』であるアンジュを姉として見れるのだろうか?
もし、ジュリオの策に一枚噛んでいたとしたら……
「アンジュも裏切られることになる……実の姉妹に、な」
◆
アンジュ達は、学園からエアリアを奪取し検疫官との追跡劇を繰り広げていたが、水路を利用し検疫官の追跡を振り切った。しかもこの水路はそのまま公邸へと繋がっており、シルヴィアの元へと直ぐに向う事が出来たのだ
そして何故か公邸のベランダでアンジュを待っていたシルヴィア。…ここで可笑しいと思わないのはアンジュの中にも身内への甘えが合った為だろう
シルヴィアは、車椅子を巧みに扱いベランダから降りると姉との再会に喜ぶ振りをして手に忍ばせたナイフでアンジュの殺害を試みたのだ
結局のところ『ノーマ』であるアンジュを姉としてシルヴィアは見る事が出来なかったと言う事実。
助けを求めて来ていた存在は、実は自身の死を願っていたと知ったアンジュは、信じていた者の裏切りにより抵抗する気を失い容易に捉えられジュリオの策が成功したと言った結果が残るばかり………
あとは悪趣味な見せ物の始まりだ
服とは呼べない布を着せられたアンジュは柱に宙ずりで曝され実の妹から暴言を突き付けられながら鞭打ちを受けるしだい……兄はと言うとその光景を笑みを浮かべながら見えるといった茶番劇。ギャラリーは、ミスルギ皇家だけではなくミスルギ皇国民すべて……ジュリオの性格から生放送もしくは録画して後で放送する予定も建てているのだろうな?
題名は『裏切りの皇女アンジュリーゼの粛清』と言った所か?
その光景を俺はタスクと一緒に缶珈琲を飲みながら盗み見ていた。勘違いしない様に言っておくが珈琲を飲んでいるのは俺だけでタスクは、アンジュの姿を凝視し救い出す機会を淡々と窺っている
「……アンジュ」
「わかっていると思うが……今は行くなよ?まだ時期ではない」
「わかっている!でも……ッ」
タスクの言いたい事や感じている事は手に取るようにわかる
ミスルギ皇国の顔、国民の光であり、『マナ』信仰の代表として国民から慕われていた彼女が今では、ただ『ノーマ』と言うだけで憎悪の対象、粛清の対象にされている事が信じられない。さらには、思い人が痛めつけられていることが我慢できないのであろう
「あいつ等『人間』と『ノーマ』には絶対交わる事のない溝がある……それだけの話だ」
今を尚、アンジュが鞭打ちされる度に歓喜の声を上げる国民を見るとコイツ等がどれだけ生きる価値のないゴミなのか感じてしまう
「しかし、ゴミはゴミでも俺にとっては貴重な糧だ」
「アキト、なにを……ッ!アキト何をしているんだ!」
俺は、一つの場所に集まったゴミを一気に焼却する為に群衆にロケットランチャーを構えていただけだ
だと言うのにタスクは、ロケットランチャーを構える俺の手を引き止めて来たのだ
「駄目だ、アキト!関係ない人を巻き込む事なんて出来ない!」
「……貴様も見ただろう。人が憎悪に満ちた醜い存在となったモノを?そんな人間を助けて何になる。一時的な情で助けたつもりであってもそれは損にかなり得ない」
「だ、だけど!」
「貴様は自身が助けた人間に殺される事になるぞ?」
「ッ!」
歯を喰いしばり肩を震えさせるタスクは、俺を説得する為に口を開こうとするが言葉が見つからずに幾度なく口を動かしていた
言葉が出てこない。いや言葉が既に出て来ている。だがそれは、俺を肯定するモノであり、タスク自身も理解しているのだ。『マナ』信仰を掲げる人間は世界を壊さない限り変わる事がないと言う事を……
黙るタスクを横に俺はロケットランチャーの標準を群衆へと向けた
スコープから覗ける光景は変わりなく、中にはアンジュの醜態に歓喜したゴミが卵を投げつけていた。………ゴミが生ゴミを投げ捨ている姿は愉快で笑えるモノがあったが、女学生と口論をしていたアンジュは、衛兵に連れられて処刑台へと足を運ばれる事になった
・・・・・・・・アンジュに群衆の目が向いた今がチャンスだ
俺は群衆に向い引き金を引こうとした瞬間・・・・・・・・処刑場ではありえない事が引き起ったのだ
「これは…」
「………歌、だと?」
歌の発生源はアンジュであり、あの残念な性格からは想像できない綺麗で澄み渡った声で奏でなれる歌は、群衆を黙らせ今この場にいる全ての人間を魅了させた
タスクも予想もしない事態に驚いているが、驚愕よりもアンジュの歌に聞き入っている様に感じた。実際に聞き入っているのだろう
その事態だけで、この歌には何らかの『力』がある事がわかってしまう。俺も彼女の歌に魅了され聴き入ってしまう………のだろうな?
しかし俺は、この歌と同じ様な魅力を持つ歌も歌い手も知っている。彼女との開拓がなければ俺もタスクと一緒に魅了されていた所だ
サラマンディーネ……
彼女の機体である『焔龍號』に搭載された空間破壊兵器【収斂時空砲】は彼女が奏でる歌によって発動する。その歌は自然な程に当たり前で俗物など感じさせない澄み渡った神秘的な歌であった
歌詞やリズムは違うと言うのに、なぜ彼女とアンジュが歌うソレが同じ様に聞こえるのかは定かではない………しかし根本的なモノが同じなのだろう
例え辛い現実を突き付けられようと未来を信じ進もうと思える歌……
いつの間にか俺の指はロケットランチャーの引き金から離れており、俺自身も群衆に襲撃をかける気が無くなっていた
「……周囲の目が全てアンジュに向いた。歌が途切れた瞬間に突入するぞ」
「……え?」
「聞き入ってアンジュを殺してしまったら元も功も無い。……襲撃は止めだ、正攻法でいく」
「ッ!あぁ!行こう、アキト!」
タスクのパラメイルに跨り、アンジュ奪還の時を待つ……そして―――
「いまだ!」
床が開きアンジュの首が縄によって絞められた瞬間、閃光弾を投げ入れた
突然の閃光に群衆を含め衛兵共々、動きが止まる。
後は、騒動に交えてアンジュを助け出せば……
「ッ!タスク、低く飛び過ぎた!」
真っ直ぐにアンジュの元へと飛べばいいモノをタスクは、低空飛行のままジュリオに突撃していたのだ
「…アンジュだけでは駄目なんだ!指輪が…ッ!」
「指輪だと!?」
俺の事など構わずにタスクは、ジュリオに突撃し彼から緑色の指輪を掠め取ると、そのまま先頭を処刑台へと向けた
案の上、そんな急な方向転換を二人乗りで安定していないパラメイルで、しかも片手を放した状態で行えばどうなるか結果は見えていた
バランスを崩し蛇行するパラメイルはアンジュ目掛けて真っ直ぐに突撃していく。このままだとアンジュ自身にパラメイルが衝突してしまう
俺はタスクの駆けるパラメイルから飛び降りるのと同時にアンジュの首にかけられた縄に向ってナイフを投げ、縄を切断した
着地後直ぐに俺は銃器に手をかけた
幸い群衆は、突然の乱入者に動きを止めている。衛兵たちは・・・・・・群衆と同じ様に事態を把握できていないのか動きを止めていた。
近衛兵の行動としては褒められた事ではないが、いまこの時はありがたい!
銃器に手をかけながらゆっくりと下がり、アンジュ達の安否を確認の為に声をかけた。が……
「……何をやっているんだ、タスク」
「ふがふがふが」
「ちょっと!口を動かさないでよ!変態!」
……縄で両手を縛られ抵抗の出来ないアンジュの秘部にタスクが顔を埋めていた
………うん、まぁ、久しぶりに再会した思い人と会って嬉しいのはわかるが時と場所を考えようか?
呆れ半分、咎めはしないが……随分と図太い精神をしている
俺は絶対に出来ない行為だともう半分を何故か尊敬の意で二人を見ていたが、一部の近衛兵たちが動き始めていた
「遊びはそこまでだ。撤収するぞ、タスク!……おい、タスク!」
俺達を包囲する為、集まってくる近衛兵に気を向けながらタスクに声をかけるが一向に返事が返って来ない。若干、イラつきながらもタスクの方を向けば……なぜかタスクがのびていた
隣のアンジュを見れば顔を赤く染めながら俺に向ってごめんと手を合わせていた………ごめんじゃねぇよ!
「くそが!余計な手間をかけさせるな!アンジュ!荻野目を奪還!その後、タスクを連れて
「あ、アンタはどうするのよ!」
「俺に構うな!今は逃げる事を考えろ!」
アンジュに怒鳴りつけながら俺は荻野目を拘束する近衛兵に向って走り出す
「狩り取る!」
大振りで振り下げた大刃のナイフは近衛兵の張った『マナの障壁』に弾かれる。咄嗟の判断で『障壁』を張った技量は流石だと褒めてやりだいが―――
「足元がお留守だ」
「ッ!?ぎゃぁぁァァァ!!!「うるさい、黙れ」ッ!?………」
弾かれた反動を使用しこのまま、近衛兵の足を切断し転倒させる。たかが足が斬られた位で喚く近衛兵がうるさく吼えるモノだから心臓にナイフを突き刺し絶命させ黙らせた
「そ、その者達を逃がすな!」
辺りが騒然する中、ジュリオが声を詰まらせながら指示を飛ばすが……遅い
既に荻野目はアンジュの手によって助けられタスクもパラメイルに積まれている
人の絶命を目の辺りにして動きが止まってしまうのは生物として理解できるが仮にも皇帝と近衛兵、もう少し殺りがいがあると思っていたのだが……期待外れだ
当初は、パラメイルの機動力が低下するのを危惧して三人だけをパラメイルに乗せて俺は、混乱に乗じてエスケイプを計ろうとしたが………そんな心配は必要無かった様だ
銃を構える近衛兵に過剰な程の手榴弾を投げ込みパラメイルに乗り込む。……さすがに四人乗りは狭いが我慢しよう
「出せ」
「えぇ!でもその前に……」
何を思っての行動なのか理解できなかったが、アンジュはパラメイルを浮上させ先頭を翻し裏切った妹に向って声をかけた
「ありがとうシルヴィア、薄汚い人間の本性を見せてくれて」
「ひぃっ!」
声を掛けられて怯えるシルヴィアを尻目に今度は群衆に向かって声をあげた
「さようなら、腐った国の家畜共!!」
……なんだかな~、今のアンジュの行動がどうしてもヒルダとかぶる
なんだかんだヒルダはやられたらやり返す女だ。そういった行動を察するにアンジュが次に起こす行動は……
「……これを使え。刃には毒が塗ってある」
「あら?気が利くじゃない」
アンジュは、薄らと笑みを浮かべながら毒付きナイフを俺から受け取ると―――
「おのれ…アンジュリーゼ!衛兵!奴等をッ!!??ひぃぃぃぃ!!」
何の躊躇もする事無く実の兄目掛け投げつけたのであった
遠目で判りづらいがジュリオの頬から血が噴き出ている所を見る限り当った様ではあるが……
「次からは心臓を狙え。……毒も掠るだけでは効力が弱い」
「頭を狙ったんだけど……そっちの方が良かったかしら?」
まぁ、塗った毒は『マナ』を用いた特殊なモノ。特別な解毒方法を使わない限りは余命一週間といった所だろう。……良薬は毒薬にもなるとはよく言ったモノだ
新皇帝ジュリオ一世の負傷に慌て立つ近衛兵達に弾幕を張りながら俺達は処刑場からの脱出に成功するのであった
◆
検疫官達の追跡を振り切り無事に予定の場所に到着した俺達は、各人『アルゼナル』へ向かう為の準備を行っていた
ここから『アルゼナル』に帰還するには長距離の運航を余儀なくされ四人乗りは流石に堪える。
荻野目に水や食料の確保をお願いし俺とアンジュはタスクのパラメイルに移住キャビンを取り付けていた。……本来ならタスクが行い俺も食料の確保に向かうはずだったのだが、生憎タスクはまだ伸びている
………一刻も早くミスルギ皇国から離国したい俺達にとって人手を余らせる事はしたくないと言うのに
「アンジュ、スパナ」
「……はい」
荻野目には悪いが四人分の食料の調達をお願いし俺達は作業に没頭した。
と言ってもアンジュは俺に言われた工具を手渡すだけで事実上なんの役にも役には立っていない。俺自身の作業に集中したら言葉が減る性格のが後押しし2人きりだと言うのに会話は全くない、もとより気軽に話し合う仲でもないし構わないと思っていたが、以外にも、アンジュが彼女無しからぬ態度で話しかけて来たのだ
「…ねぇ貴方、ヒルダと一緒に行ったんでしょ?ヒルダはどうしたの?」
………まぁ、そうだよな?
俺達の話で共通する話題など世界への恨みかヒルダの事の二択になる
その中でも共に協力してきた仲のヒルダを話題にあげる事は必然か……
「……道中で別れた。どうなったかは話せない」
「……随分と大雑把ね?もっと何かないの?」
嘘は言ってはいない。ヒルダの意識がなくなったのは道中だし、俺の知る事実を話したくはないから『話せない』
だが、アンジュも安々と引き下がる筈がなく、更に質問してくる
「…前から思っていたんでけどアンタ達って付き合ってんの?それともストーカー?」
「……なぜだ?それとストーカーではない」
心外だ、俺達は互いに愛し合っている。………と思いたい
別れが一方的過ぎて嫌われたかも知れないが、俺がヒルダを思う気持ちは変わる事はない
そして尾行をストーカーと一括りするのは止めろ。そしたら俺は政府の要人全てをストーカーしてしまった事になるだろうが!
そんな俺の気持ちなどつゆ知らず目を細めながら俺を追い詰めるように続けてアンジュは、言葉を口にする
「なんか輸送機の中の雰囲気とか偶に私をヒルダと重ねて見て来たり……アンタってヒルダが絡むと異常に反応するじゃない?」
「………誘導尋問か?貴様に答える義務はない」
適当に誤魔化せば引いてくれると思っていた時期が私にもありました。ですが、アンジュはヒルダと同じく口で駄目なら行動で対応する人物。結果―――
「いいから教えなさいよ!」
「うぉッ!?」
痺れを切らしたアンジュはキャビンの取り付けで地面に寝そべる俺に向けてスパナを叩き突けたのでした。当然、当る義理はないので避けるが……また同じことをされてはたまったモノではない。…………時間を無駄には出来ないし、ここは素直に話しておくのがベストか・・・・・
「……俺とヒルダは幼馴染なんだ」
「……幼馴染?」
「あぁ、ヒルダが〈アルゼナル〉に送還される前まで共に遊んでいた。そして彼女は俺に生きる意味をくれた」
「………」
黙って俺の言葉に耳を傾けるアンジュを確認し作業の手を進めた
「幼少期に親に捨てられ村からは邪見視され厄介者扱いを受けていた俺をヒルダは受け入れ救ってくれた。恩は返す……今度は俺が守る番。それを実行したまでだ」
「……あんたやっぱり」
アンジュは、俺達の関係に気づいたようで眼を見開きながら驚きを露わにしている
恋人ではないと臭わせてみたが、アンジュには感づかれてしまったか……
「あぁ、俺はヒルダを愛している。例え恨まれ裏切られようと構わない。俺は俺のやり方でヒルダを守る」
「それなら一緒に「話は終わりだ」ッ!……わかったわよ!好きにすれば!」
もう語る事はないとアンジュの言葉を遮る
これ以上、俺の気持ちを語ってしまっては、自身の気持ちを抑えが出来なくなると恐れたのだ
俺が今を尚、ヒルダを欲している気持ちが………
悪態をつきながら荻野目の様子を見てくると残し俺に背を向けたアンジュは、一歩進むと直ぐに足を止めて背中越しに最後の問を掛けてきた
「最後に一つだけ……」
「……なんだ」
「ヒルダは無事なんでしょうね?」
「……俺の女に手を出したんだ。……ミンチにしたさ」
「そう……ならいいわ」
その後、食料調達に行っていた荻野目と合流したアンジュ達を移住キャビンに入れ、『アルゼナル』へ送り届けたのであった
………しかし、目覚めたタスクの顔が何故かボコボコになっていた。一体中では何が起きていたのであろうか?
余談
「死ね!変態騎士!」
いきなりの振動で揺れるパラメイル
居眠り運転をしていた俺は、危うくパラメイルから落ちそうになるが何とか踏みとどまる
「うぉ!な、なんだ!?それに打撃音がずっと中で聞こえる?」
中で何があったのかわかるのは後日……
予告でエロリストとテロリストの共演と合ったがあれは嘘だった
なぜならエロリストは股間に顔を埋めるまでが仕事だったからさ………
ログホラ書かなきゃ……
コンテナ→キャビンに変更