東方双神録   作:ぎんがぁ!

97 / 219
双也視点ですっ

ではどうぞー!


第九十三話 知識の宝部屋

美鈴を撃破し、屋敷の中へと侵入した俺と魔理沙。

途中メイドのような服装をした妖精っぽい奴らが弾幕を放ってきたが、少し打ち返してやると簡単に被弾して逃げていくので、こちら側には然程被害は無い。

 

強いて困っている事と言えば……

 

 

「う〜む……こっちだな!」

 

「よし、じゃ行こう」

 

 

「今度はこっちな気がするな」

 

「お、私もそっちだと思うぜ!」

 

 

「ここはあっちだろ」

 

「こっちも怪しいけど…まぁ行ってみるか」

 

 

「あれ…」

 

「ここ一回通ったような…」

 

 

とまぁこの会話で察してくれたとは思うが、結論から言うと

 

「…完全に迷ったな」

 

「だな」

 

どう考えても外観に合わない内部の広さに加え、勘を頼りに進んできた為見事に迷ってしまった。

んだよ、霊夢のマネして勘なんかに頼るんじゃなかった。ここは無難に"右手の法則"を使えばよかったと今更後悔。

まぁそれでも迷った気がするけど…。

 

「どうすんだよ双也! お前があっちだこっちだ言うから迷ったじゃねーか!」

 

「はぁ? 俺の所為? そもそも前進んでたのお前だろ! 前歩くならしっかりしてくれよ!」

 

「前歩くヤツ=道を知ってるヤツだと思ったら大間違いなんだよ! 私だってここに来るの初めてなんだから道なんか知るわけないだろっ!?」

 

「なら堂々と先導するなよ! 自信満々で進むから安心仕切っちまったじゃんか!」

 

挙句どうでもいい様な事で喧嘩?になってしまった。

男勝りな魔理沙も一応"恋する乙女"らしいので取っ組み合いにはならない(弾幕勝負にはなりそうだけど)が、こんな事で喧嘩とはなんともまぁ情けない話である。主に俺が大人気ない的な意味でだ。

とは言っても、一緒に進んでる奴と仲違いしてもデメリットしかないし、ここは俺が引き下がって場を収めるしかなさそうだ。魔理沙は如何あっても引き下がらない気がする。

一応言うが単なるイメージだ。

 

「あーもう喧嘩はよそう! そもそもこんなに広いこの屋敷が悪りーんだ! そういうことにしとけ!」

 

「うぐぐぐ…それもそうだな……全く、二重の意味で傍迷惑な屋敷だぜ…」

 

異変の事と広すぎて迷う事…ね。

偶に上手い日本語を使うから魔理沙との会話は面白い。

会話して飽きない知り合いは大切なモノだし、改めて仲違いしなくて良かったと思う。

 

と、それは置いといて……

 

「しかし…どうしたもんか…このまま進んでもどうせ迷うしな…」

 

「もう…吹っ飛ばしていいかこの屋敷? 取り敢えずそこの部屋からドカーンと…」

 

「いや何言ってんだお前? 実は傍若無人なヤツなのか?」

 

不味い、魔理沙が暴走しかけてる。

言い出したらやり通しそうだしちゃんと止めておいた方が良いかもしれない。

あれ、でも吹っ飛ばしたところでなんだってんだ? 家主が怒ったとしても結局退治するんだから変わらない気も…いやでもいきなり人様の家をぶっ壊すのは人としてどうなんだろ? あーいや俺とか魔理沙はぶっちゃけ唯の人間じゃないし……………ああもう俺までこんがらがってきた!

 

魔理沙がミニ八卦炉を構える中でウンウン唸る俺。なんだか随分と魔理沙に振り回されている気が…………ん?

 

 

"ミニ八卦炉を構える魔理沙"…?

 

 

「おい魔理沙ーー」

 

「マスタースパークッ!」

 

言い切るより前に、構えられた八卦炉からマスタースパークが放たれ、ズドォオオン!!と向けられていた扉が消し飛んだ。

扉というか周りの壁ごとだったが、それは今どうでもいい。

重要なのは

 

……やっちゃったよコイツ…という事だ。

 

「いやースッキリするぜ! ずっと狭い廊下を進んでたから息が詰まって死にそうだったんだ!」

 

嘘つけ。ところどころ窓空いてたろーが。

 

「…やっちゃったもんは仕方ないか…」

 

おてんばと言うか理不尽と言うか、とにかくやる事がド派手な魔理沙に嘆息する。

流石、"弾幕はパワーだぜ!"とか口癖にしているだけはあるな。決して褒めてはいない。

 

そんな事を心の内で思いつつ、魔理沙を促そうと目を向けると、彼女は何故か吹き飛ばした扉の方をじっと見つめていた。いや、正確には目を輝かせていた(・・・・・・・・)

 

「どうした魔理沙?」

 

「そ、そそ、双也っ 見ろ! 見ろよこれ!」

 

まるで子供の様にブンブン手を振って指差す魔理沙。

声だけを聞いても彼女の興奮具合が伝わってくる。

 

彼女に近寄り、指を指す方を見てみると、そこに広がっていたのは……

 

「ほ〜……でっけぇ図書館……」

 

"無尽蔵"という言葉が最も似合うほどに本が並べ詰められた、巨大な図書館だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ヒャッホォ〜ウ!! 本の宝庫だぜぇ〜!!」

 

「おい魔理沙、はしゃぎ過ぎてぶつかるなよ!」

 

「私を誰だと思ってんだ双也ぁ! 魔法使いの私が箒に乗って事故るとかありえなうおぉおわぁああ!!!」

 

 

ガツンッ ドサドサドサドサ……

 

 

勢いよく図書館を飛び回っていた魔理沙は、余所見していたせいで本棚にぶつかって墜落した。

その上からは追い討ちのように本の雨が降り注ぐ。

魔理沙の姿はすっかり見えなくなっていた。

 

「はぁ…興奮し過ぎだろ全く。そんなに本が好きなのか…?」

 

この図書館を目の当たりにした時から、彼女の目は始終キラキラと輝いていた。

見つけただけでそれほどになる人は中々いないだろうし、それだけ本が好きって事らしい。

本っていうか知識? 知識欲が掻き立てられるーみたいな感じなのだろうか?

勉強なんて適当にしかやっていなかった俺からすれば理解し難い事だ。

 

「あっはははははっ!! いやぁこんなに本があるなんて最高だな!! 何冊か貰ってこう!!」

 

「いやもらっちゃダメだろ。せめて借りてくって言おうぜ?」

 

そう言いながら、本の山に埋もれて幸せそうにしている魔理沙に手を差し出す。

意図を察したのか、彼女は俺の手をとって立ち上がった。

 

「いやいや、私の"貰ってく"ってのは"借りてく"って意味だぜ?」

 

「返す気あるのかそれ?」

 

「あるある。拝借期間は私が死ぬまでだ」

 

「…………………」

 

ダメだコイツ。早くなんとかしないと。

 

無理矢理過ぎる理論を展開する魔理沙に頭を抱える。

もう一度見上げ、また抱える。今度は溜め息のおまけ付きだ。

呆れた様子で二度見した所為か、魔理沙は口をとんがらせてフイッとそっぽを向いてしまった。やれやれ。

 

 

 

「それは窃盗って言う立派な罪よ」

 

 

 

何かおかしな空気が漂う俺たちの耳に、小さめだがよく通る声が響いた。

初めは突然で声の主がどこか分からなかったが、次いで聞こえたゴホッ ゴホッという咳に吊られてそちらを見ると、口元に手を添えて少しばかり顔をしかめている少女と、その後ろに隠れるようにこちらを見ているもう一人の少女が居た。

 

「誰だお前? 悪いけど、私達は見ず知らずの病人を看病してやれるほどお人好しじゃないし、そんな時間持ってないぜ?」

 

「必要無いわ、これは持病よ。そもそも、看病してもらう為に他人の前にわざわざ出てくる人なんて居る?」

 

御尤も。

 

「私はパチュリー・ノーレッジ。この図書館の主よ。後ろのは小悪魔」

 

「ど、どうも……」

 

パチュリーの紹介に預かり、後ろから小悪魔がおずおずと顔を出した。怯えているのかカタカタと震えている。

 

「ここに侵入した以上、無傷で帰すわけにはいかないわ。レミィの邪魔にもなるし、何より……本を持っていかれるのは非常に不愉快なのよ」

 

そう言って、目の前に一冊の本を開いて浮かべるパチュリー。

感じる魔力から察するに彼女は魔法使い。そして完全に戦闘する気満々だ。

そんな圧力に晒された俺たち。

魔理沙は隣で一筋汗を流しながらも、口元を歪めていた。

 

「…へっ、結構強そうな相手だな……どうする双也ぁ、アイツは私をご所望のようだが」

 

「…譲ってやるよ。あいつも魔法使いだ、これも何かの因縁だろ。お前も本当は戦ってみたいんじゃないか?」

 

「早くも分かってきたじゃんか私の事! 」

 

箒に飛び乗り、魔法陣を展開させた。

魔力を溢れさる魔理沙は、相変わらず口の端を吊り上げながらも表情も引き締めていた。

 

「私は普通の魔法使い、霧雨魔理沙だ! パチュリーって言ったか? ここの本のためついでに異変解決のために! 潔く吹っ飛んで貰うぜ!!」

 

「やってみなさい。人間の癖に魔法を理解した気でいるみたいだけど…本当の魔法というものを、私が見せてあげるわ」

 

 

二人の弾幕勝負が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜会話中 パチュリー&小悪魔side〜

 

(あわわわっ、し、侵入者…こんな時の侵入者っていえば……こわぁああ〜怖いよぉぉお〜…)

 

(……なんか背中の方がムズムズするわね…こあ震えすぎじゃないかしら…?)

 

背中の痒さを密かに我慢していたパチュリーでしたとさ。

 

 

 

 

 

 

 




戦闘終わらせるつもりだったのに…!

ではでは。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。