東方双神録   作:ぎんがぁ!

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切りが良かったので短めです。

あと総UA数20000件ありがとうございます!! 拙い作品ですがこれからもよろしくお願いします!!

ではどうぞー!


第六十四話 日常、プレゼント

「双也様」

 

「ん? なんだ映姫」

 

数ヶ月後の自室。書類を片付けていると映姫から声をかけられた。見てみれば彼女は不機嫌そうな、困ったような顔をしていた。

 

「私は何時になったら新世界へ異動になるんですか?」

 

「ああその事か…」

 

会議にて、映姫を最高裁判長として任命したはいいが、未だいつもの仕事を続ける毎日。映姫はその事に疑問を持っていたらしい。

俺は諭すように言った。

 

「映姫…異動になるのはかなり先だぞ?」

 

「……え?」

 

「だってまだ向こうの世界が完成してないし。この書類ちゃんと読まなかったのか?」

 

そう言って紫が送ってきた書類を見せ、本文の下の方を指差す。映姫は顔を近付けて読み始めた。

 

「………"完成したらご報告いたします。その後担当となった閻魔様をこちらへお送り下さい"って………」

 

映姫はとんでもないものを見たような表情をした。

ってなんで?そんなにショックな事か?

 

「なんでそんなにガッカリしてるんだよ」

 

「何故って……私はあの会議で異動が決まってからずっと待ってたんですよ!?ワクワクし過ぎて仕事が手に付かなかったこともあります!!荷物だって会議の夜に全部まとめて、いつでも出られるようにしてたのに……」

 

……なるほど、張り切ってらっしゃったのね……。

映姫は最後の方では涙目になってしまっていた。仕事が変わるってのにこの張り切り様…ホントに真面目だよねこの子も。

でもま、取り敢えずは慰めてあげないと。

 

「ゴメンな映姫、ガッカリさせたみたいで。最初に言わなかった俺が悪い。ゴメン」

 

「うぅ……双也様が謝る事ないです。私が勝手に思い込んでいただけですから…」

 

…………………。

 

う〜ん…何とも気まずい空気になってしまった。こういう時どうすれば良いのか分からない。なにぶん俺はこんな事になった事がないのだ。ホント、こういう時に経験は大事だと思い知らされる。

 

「………………」

 

「………………」

 

張り詰めた冷たい空気があたりを漂う。この無言と静寂がかなり心に負担をかけてくる。正直逃げたしたい気分だ。でも逃げたら後味が悪いし、何よりこれから先映姫と顔をあわせるのが辛くなる。逃げるわけには行かない。

とは言っても辛いのは確か。このまま進まないようならコーヒーでも入れに行って気を紛らわそうか……。

そうして現実逃避していると、ドアの開く音がした。

 

「双也様〜。ちょっと休憩しに………何?」

 

入ってきたのは綺城だった。俺は無意識のうちに向けていた"GOOD"のサインに気付き、引っ込める。

彼のみならず、裁判長たちはちょくちょくと俺の部屋に来て雑談していく。休憩時間だからではあるが、そもそも俺と裁判長たちは割と仲がいい。恐らくは"接しやすいから"というのが一番の要因だろう。

綺城はドアを閉めて近付いてきた。

 

「…あれ、映姫ちゃん泣いてる?…もしかして双也様に泣かされた?」

 

綺城は映姫の様子に気付いたらしい。ってかその聞き方悪意を感じるんだけど。確かに俺が泣かせたみたいなもんだけどさ。

映姫は特に何も言わず、綺城に頭を撫でられていた。

 

「ダメだよ双也様、小さい子泣かせあだっ!」

 

「小さい子じゃないですっ!」

 

ポカッと映姫が綺城の頭を叩いた。多分"小さい子"って言葉に反応したんだろう。かなり気にしてるし。

当の綺城は、叩かれながらもこちらを向いて小さくウィンクした。

……どうやら状況を察した上での言葉だったらしい。おかげで空気が少しばかり和んだ。ホントお前最高だよ。

 

痛くはなさそうだが、未だポカポカと叩き続ける映姫を宥めて三人でソファに座った。

 

「それで何しに来たんだ?大体予想つくけど」

 

「想像通りだよ。いつものヤツ飲みたいなぁ〜」

 

「全く…ちょっと待ってろ」

 

「あ、私もお願いします」

 

「……ハイハイ」

 

最早恒例となったこのやり取り。休憩時間に誰か来ると大抵俺がお茶を淹れることになっている。暗黙の了解というヤツだ。俺一応上司なのにね、何だろうねこの扱い?

 

まぁきっと友達感覚なのだろう。一応"様"をつけられてはいるが形だけ。友達感覚は嫌いじゃないから別に良いんだけどね。上下関係って苦手なんだ。

 

その後は三人で雑談していた。最近仕事で大変だったことや面白体験の話、裁いた魂の驚きの過去など、ネタは尽きなかった。

途中休憩時間が重なって来た魅九がちょっとアブナイ話を出して映姫がパニックになったり、同じように来た陽依と夜淑姉妹が乱入してきて危うく大騒ぎするところだったりしたが、総じてとても楽しかった。こういう日があるからここでの生活は心地いい。

気付けば時計の針はかなり回っていた。

 

「あ、そろそろ仕事戻らないと…じゃあね双也様、映姫ちゃん」

 

そう言って出て行く綺城に手を振る。バタンと扉が閉まると、映姫も立ち上がった。

 

「さて、私もそろそろ行きますね。今日は裁判が立て込んでいるので」

 

「おお、頑張ってくれ」

 

「はい、お邪魔しました」

 

映姫がカップをキッチンに戻して出て行こうとする。

と、そこで呼び止めた。

 

「ちょっと待った映姫!思い出したことがあった!」

 

「なんです?」

 

え〜っと…確かここに…あった!

机の引き出しをガサゴソと探し、取り出したのは一冊の本。閻魔が使える言語の辞典だ。

 

「……何ですか?そんなもの引っ張り出して」

 

「ちょっと待ってろ…探してる……あったあった」

 

ようやく知りたい言葉の翻訳が見つかった。

不思議そうな顔をしている映姫に向かってそのページを突き出した。

 

「せっかく最高裁判長になったんだから、何かプレゼントしようかと思って」

 

「ヤマと……ザナドゥ…ですか?」

 

「そう!カッコいいと思わない?"四季映姫・ヤマザナドゥ"!!」

 

何か良いものは無いかと考えた結果、カッコいい名前があれば良くね?という結論に至った。意味も吟味して考えた結果、思いついたのが"ヤマザナドゥ"だ。

 

「ヤマザナドゥ……楽園の閻魔…ですか」

 

「そう。お前が異動になった新世界は"楽園"とも称されるんだ。いい名だろ?」

 

そう聞くと、映姫は少し笑みをこぼした。

 

「ふふっ ありがとうございます。まさか双也様から名前を戴けるとは思っていませんでした」

 

「ん。気に入ってくれたなら良かった。また頑張ってくれ」

 

「はい!」

 

映姫は元気よく返事し、俺の部屋を出て行った。機嫌も良さそうだったし、いいプレゼントができたと思う。

 

………ん?なんか…映姫って元々そんな名前だった気もしてきたな…俺が今プレゼントした筈なのに。また何か忘れてしまったのだろうか?

ん〜…コレは本格的に原作知識が当てにならなくなってきたな。

 

少し不安にもなったが、持ち前の"面倒な事が嫌い"な性格に沿ってまぁいいか、と結論を出した。

 

「さて、流れで途中になっちゃったけど、俺も仕事に戻ろうか!」

 

俺は再びペンを取り、書類を書き始めた。

 

 

 

 

 

 




……何の為に書いたんでしょうねコレ?
書き終わってから疑問に思いましたw

ではでは。

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