東方双神録   作:ぎんがぁ!

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ぬえはどこかお調子者なイメージです。

短め注意。

ではど〜ぞ〜。


第四十九話 腹を空かせたUNKNOWN

「落ち着いたか?」

 

「…うん」

 

私は封獣ぬえ。ここらをフラフラしてる妖怪だ。黒髪赤目でピッチピチの女の子!そして私が誇る物といえばこの"正体を判らなくする程度の能力"!!簡単に言えば見たものの想像通りに姿を変える能力だ! これのおかげでこの森では狩りがしやすいし、襲われる事もない!

…え?なんで狩りがし易いかって?…想像してご覧よ、夜のくらぁ〜い森の中で、後ろから足音がする…振り返ればそこには…!!……分かったかな?

でも最近狩りをし過ぎた所為か獲物も少なくなり、ずっとお腹を空かせている始末…能力を発動させて森の中をトボトボ歩いたんだ。そしたらいつの間にか目の前に人間!脅かしてやろうと(恥ずかしいけど)渾身の台詞を言ったのに……こいつは…こいつは……

 

「にしても面倒くさそうな能力だな〜。視覚情報に干渉するとか…」

 

「へ?…そ、そうだね…」

 

なんでこいつは見破れたんだぁぁぁあぁああ!!!!

しかも妖怪だって分かってるくせに怖がるそぶりも無い!挙句私を落ち着かせて隣に座らせてる始末!!

なに?自殺志願者なの!?隣に妖怪の座らせるとか自殺行為だよ!?ってかこんな森に入ってる時点で危険だって分かってるの!?

 

「えと、ぬえ?腹減ってるんだっけ?」

 

人間は平然と私に問いかけてきた。ムシャクシャするからお前を食べたい。でも正体バレてるし…あそうだ。

 

「えっと、うん。ここ数日何も食べてなくて力が出ないの。だからお兄さんを食べ----」

 

「何も食ってないのか!?ちょっと待ってろよ!」

 

人間はパッと消えてしまった。後には唖然として状況についていけない私が一人。て言うか最後まで話聞いてよ人間のくせに!!……でも一瞬で消えるくらいだし、普通の人間ではないのかもしれない。ここは…

 

「アイツが帰ってく前に…逃げ----」

 

ポンッ「食料狩ってきたぞ。コレで腹一杯に…どこか行くのか?」

 

「い、いや…何でもない…」

 

「?」

 

帰って来るの早過ぎ…しかもすごく大きい猪を一頭持ってきてるし…人間じゃないのかな?いやでも霊力だよねコレ?んー分かんない人間だな。わかんないことが立て続けでなんだかイライラしてくる。…もしかして舐められてる?女だから?こいつ……

 

「取り敢えず食うぞー」

 

なんで私は優しくされてんの!妖怪なのに!!人間なんかに舐められて……ああもう!!

 

「う、うるさい!!私は妖怪だぞ!森に迷い込んだ人間を食らう!お腹が空いたなら…猪じゃなくて人間を食べるんだぁぁあ!!」

 

私はこいつと自分へのイラつきを抑えられずに殴りかかった。ただのパンチだけど妖怪の腕力、簡単に殺せ----

 

パシッ「はいストップ。攻撃してくるなら反撃するぞ?大人しくしててくれるなら首元の刃は解いてやる」

 

「……え?」

 

私は首元を探知してみた。するといつの間にか首周りを一寸切る隙間を残して薄っぺらい霊力を感じられた。多分刃になっているのだと思う。

あ…この人には敵わないや…

 

「わ、分かったから!何もしないからコレ解いて!」

 

「よし、そしたら肉食うぞ。もちっと待ってなー」

 

そう言って男は準備をし始めた。……一体こいつ何者…?

人間は刀で木を斬って集めてくると、手をかざして火をつけた。そしてその上に猪をつる下げて丸焼きにし始めた。

 

「ほら焼けたぞ、いっぱい食え」

 

「あ、ありがと…」

 

私は渡された肉を食べ始めた。さっきのアレでもうとっくに敵対心が消え(正確には萎え)てしまい、特にイライラせずに食べられた。て言うかこの肉美味しい。私が調理するより断然美味しい。

食している間に人間の事を少し聞いた。名前は神薙双也。私の能力を見破った事といい瞬間移動の事といい、気になることが多かったので聞いてみたけど

 

「人間よりもちょっと強いからだよ」

 

といってはぐらかされた。身近で感じる限り"ちょっと"じゃあないとは思うんだけどね。怒らせたら殺されそう…。

 

(あ…眠くなってきちゃった…)

 

肉を食べていたら瞼が重くなってきた。ここ数日何も食べていなかった所為で、お腹いっぱいになった途端睡魔が襲ってきたようだ。私はそのままパタンッと眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぅ……あれ…?ここは…」

 

私は辺りが薄暗くなってきた頃に目を覚ました。一瞬何があったか思い出せなかったけど、空いていないお腹に気付いて思い出した。

 

「あ、猪食べてる間に寝ちゃったんだ…ってあれ?」

 

周りを見渡すと猪の姿が無くなっていた。私が寝た時にはかなりの量が残ってたはずだけど…

 

「まさか全部双也が食べたの…?本当に人間?」

 

双也が人間なのか疑わしくなってくる。そもそもアイツはここで何してたんだろうか?

 

「ん?…これ文字?」

 

居なくなった双也を探して見渡していると、木に刻まれた文字のような物に気が付いた。それを読んでみると

 

 

ぬえへ

本当は挨拶して別れたかったけど寝ちゃったからこの木に刻んでいく事にする。

俺は急ぎの用があるからもう行く。そもそも休憩の為に寄っただけだったし。でも、一時だったが楽しかったぞ。会えてよかったと思う。じゃあな。

 

PS.能力には誇りを持っといて良いと思うぞ。見破れるのなんか俺くらいだから。じゃ今度こそ、じゃあな

 

 

…と書かれていた。偶々休憩していた所に出くわすなんてなんとなく偶然な気がしない。また会える気がする。そしたら今度ころ脅かしてやろ♪

私は一応木に刻まれた文字をかき消し、少し浮き足立った気分で森に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜森を出た直後 双也side〜

 

 

食べている途中で寝てしまったぬえに書き置きをし、俺は森を出た。腹拵えもしたしコンディションは絶好だ。

それにしても…

 

「ぬえが居るって事は…やっぱり命蓮寺も既にあるのか?やっぱり見逃してたのかなぁ」

 

俺が会っておきたい残りの一作品、それは命蓮寺に住むと言うポヤポヤ宗教団体だ。言ってしまえば、この人達に会うために旅をしていた様なモノなのだ。まぁ結果見つからずに日本一周してしまったわけだが。

 

「封印が済んだらまた探せば良いかな…」

 

俺はそう結論付け、創顕の元へ急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、それじゃあ集め始めましょうかね…。待ってなさい…双也!」

 

 

 

 

 




この時点で展開分かっちゃう人とか居るのではないでしょうか?

ではでは。

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