少しでも戦闘風景が想像出来たならば幸いです。
準モブキャラ視点
ではどうぞ!
「ぬぅ……全然動かないな…もう六日経つぞ…」
僕の名は士郎。この都である貴族の方に使える家臣だ。
まだ二十と少しの歳である僕は当然大勢居る家臣の中でも新米の新米。失敗する事も多くて怒られてばかりだった。
そんな僕に、主様が仕事を下さった。
「いいか士郎。これから言う者を一週間見張るのだ。かぐや姫の難題に挑戦している者の一人だ。
……成功出来るとは到底思えんが、万一に備え記録を取り、成功しそうならば邪魔してやるのだ!方法は問わん。して、その者の名は…」
「お〜うめ〜!!さすが都の宿!料理のレベルが違う!」
宿の自室にて、今昼飯を食べている神薙双也と言う男。
れべるだとか訳のわからない言葉を言っているが、未だ動きがない。もう六日も経つと言うのにだ。
あ、記録取っとかないと。"おかしな言葉を言いながら昼飯を食べている"…と。
そうやって記録を取っていると、神薙さんが宿を出て行きそうな雰囲気だったのでコッチも準備を始める。
もちろん尾行の準備だ。
「じゃあ宿屋さん。ちょっと出るから」
「あいよ〜。しっかり頼むね〜!」
神薙さんは宿に泊まり始めた時からお金を払っていない。なぜそれで宿を貸してもらえてるのかと言うと、こうして宿屋さんの頼み事を全てこなす代わりに泊めてもらっている。今回は買い出しのようだ。
僕はバレないように物陰に隠れながらついていった。
〜一時間後〜
(やっと終わりか……って言うか、あの人人間か……?)
神薙さんの買い出しは一時間後に終了した様だ。しかし一時間前とは姿が大きく変わっている。
両手に大量の野菜や干物、酒などが入った袋を三袋ずつ。背中に背負った大袋には、なんと豚が一頭入っている。首からも袋が下げられ、中には調味料などが大量に入っている。もう普通の人間が耐えられる重さではなくなっていると思うのだが、神薙さんは平然と歩いている。
周りの人も驚愕の視線を送っている。
と、神薙さんは寄り道をしていくようだ。
「すいませーん。この紙貰えませんかー?」
「はいはい。三勘文ね。まいどー」
神薙さんは花屋に寄って行って花を包む紙を買っていった。
確か神薙さんへの難問は花に関することだったはず…もしかして!やっと難問の解決に向かうのか!?
六日も見張った甲斐があった様だ。コレで成果を上げれば先輩方も僕を見直すハズ!
その後神薙さんは真っ直ぐ宿に戻り、荷物を下ろすとまた宿の外に出てきた。その手には花を包む紙が握られている。僕は慎重に着いていった。
(こんな所に何を………ん? アレは…)
神薙さんが来たのは都から少々離れた林の一角。まだ日は出ていて明るいが、木が邪魔で少々見失いそうになった。それでも尾行を続けて神薙さんを見つけると、隣には何やら紫色の不思議な服を着た女性がおり、神薙さんと話をしていた。
(むぅ、話は聞こえないな……)
僕が話を聞き取ってやろうと耳を澄ませていると、紫色の女性が手をかざし、そこに目玉がたくさんある気持ち悪い物を作り出した。
(あの女の人妖怪だったのか!そんな人と話しているとは…記録記録。それにしても…うわぁなんだアレ、気持ち悪い……。!? アレに入るのか!?)
僕が記録をし、目玉の物を気持ち悪がっていると、なんと神薙さんはそこへ入っていった。正気か!?
それを見届けると妖怪は去っていった。目玉の物はまだ残っている。
…あの妖怪、去り際にコッチを見た様な……。
ともあれ、尾行は続けなければならない。主様の為にも、先輩方を見返すためにも。
「くっ…なるようになれ!!」
僕はそう言って、決死の覚悟で目玉の物に飛び込んだ。中は紫色で、やはり目玉がたくさんある。しかも全てがコッチを見ているものだからタチが悪い。
暫く浮遊感があった後、出口が見えてきた。
「痛い!…うう…」
僕は着地に失敗し、打ち付けられてしまった。ちょっと足を捻った様だが、尾行が続けられないほどではない。
ゆっくり立ち上がって辺りを見渡すと…
「うわあぁぁ……何だこれ…凄い綺麗だ…」
そこには僕の知らない花が一面に咲いていた。花びらが黄色く、中央からはたくさんの種が付いている。太陽みたいな花だ。
「神薙さんはこの花を取りに来たのか?それだけなら別に難問でもなんでも……!」
そう考えながら歩いていると、声が聞こえてきた。僕は素早く花に身を隠し、しゃがんで声のする方へ近づいた。
そこでは神薙さんと、傘を持った緑色の髪をした女の人が話していた。
「この花を十本と種を十粒…?あなた、本気でそれを私に言っているの?」
「ああ、本気だ。出来れば穏便に済ませたいが…」
ガキィン!!…と突然耳をつん裂く様な音がなった。気づけば、神薙さんが振り下ろされた傘を刀で受け止めていた。
「まぁ…こうなるよな」
そう言って傘もろとも弾きかえす。
凄い…目で追えない様な攻撃を受け止めてはじき返した…。神薙さんは人間じゃないのか…?
僕は記録の事を忘れ、その戦いに目が釘付けになった。
「仕方ないから、力尽くで説得して貰ってく!」
「やってみなさい。人間が、この
風見幽香と名乗る人(おそらく妖怪)は神薙さんにすごい速さで突っ込み、傘で横に薙いだ。しかし神薙さんはそれを空へ跳んで避け、刀を構えた。
「旋空!!」
神薙さんが刀を振り抜いた瞬間、何か青白い物が八つ風見さんに飛んで行く。
しかし風見さんは動くどころか笑みを浮かべていた。
「甘いわ。この程度で私を倒せるとでも思っているの?」
風見さんは笑みを崩さぬまま、傘をものすごい速さで振るうとバキキキッと音がして、神薙さんの放った青白い何かが砕けて舞った。神薙さんは少し苦い顔をした。
「今度は私の番…」
そう言って風見さんは傘を構えた。そこには光が集まっていく。
「喰らいなさい!」
風見さんの傘から大量の光の弾が放たれた。それは嵐の如く神薙さんに襲いかかっていく。神薙さんは初弾が届く前に地面の方へ素早く着地し、回避したり斬ったりしていく。
「ちっ! 密度濃すぎだろ! お前ほど強かったヤツは今まで居なかったよ!」
「光栄ね。でも……まだ本気じゃないわ!!」
風見さんがそう言うと弾の嵐がさらに強くなった。神薙さんは苦しそうな顔をしながらも的確に捌いていく。
なんだよこの戦い……次元が違い過ぎる……。
「仕方ねぇ…集束型だ!」
神薙さんがそう言うと、彼の姿がパッと消えた。僕はすぐに見つからなかったが、風見さんはすぐに見つけたようで自らの横へ傘を向けて弾を放つ。
当の神薙さんは、薄っすら青いモノを纏って刀を風見さんへ向けている。
「神鎗『蒼千弓』!」
風見さんの弾は神薙さんに嵐のごとく襲いかかる。しかしそれは神薙さんから放たれた大量の青い矢の様なものによって貫かれ、消えていく。青い矢達は勢いを失わずに風見さんへ迫っていった。
「!? くぅっ!」
意外だったのか風見さんは反応が遅れたが、所々擦りながらも避けた。その隙に神薙さんが懐へ入り、刀を振るう。
「はあああ!!」
風見さんは不安定な体制から上空に跳び、神薙さんの一振りを避けた。そしてそのまま落下し、勢いを使って傘を振り下ろす。土煙が舞って見えにくいが、微かにガキッガキッと音が聞こえる。
「やるじゃない…!私も、ここまで強い人間に会ったのは初めてだわ!」
「そりゃどうも!なら記念に花の数本種の数粒くらい分けてくれよ!」
「それはダメね。何故なら…」
煙が晴れ、二人に目を凝らすと神薙さんは焦った顔をし、風見さんは深い笑みを浮かべている。
よく見れば神薙さんの足に植物の根の様なものが巻きついていた。
「あなたはここで、私に負けて死ぬんだから!!」
風見さんは地に足を踏ん張り、とんでもない速さの拳を神薙さんの腹に叩き込んだ。それを何発も何発も、この地面が揺れるほどに叩き込み続けた。
僕はその光景を見つめることしか出来なかった。
「おぉぉらぁああああ!!!」
風見さんは暫く拳で乱打すると、動きを止め、構えなおして最後の一撃を叩き込んだ。ズドンッと鈍い音が響き、その風圧で並んで咲いた花が大きく揺れた。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…」
風見さんは肩で息をし、とても大変そうな顔をして言った。
「ちっ…本当に強いわね、あなた…!」
「かふっ……お互い様だ…。まさか強化してもここまでダメージが来るとは…恐れ入るよ」
神薙さんは辛そうな表情をしながらもそう言った。
……あの乱打を食らって生きてるなんて…やっぱり普通じゃない…。神薙さんも妖怪なのか?
僕がそう考えを巡らせていると、今度は神薙さんから動いた。
「ちょっと、邪魔!」
神薙さんがそう言うと、彼の周囲に青いモノが発生した。
それを見た風見さんがすぐ様距離を開けるが、服の裾が当たって切れてしまった。
アレは…刃なのだろうか?
神薙さんは風見さんが着地する前に追撃の準備をした。
「風刃!!」
地面に切っ先を当てた刀を神薙さんが切り上げると、地面を伝い、風見さんに向かって線が伸びた。そしてその線からは先ほどの青い何かが勢いよく吹き出す。
風見さんはそれを傘で受けるも、体ごと飛ばされてしまった。
「頑丈な傘だな!この刀と鍔迫り合いするだけはある!」
「く…その青いの、どうやら何かの刃みたいね!」
「ご名答!そして……」
神薙さんは体制を立て直した風見さんに、まるで戦いを楽しんでいるかのような笑みを浮かべて言った。
「まだまだ終わらない。捌ききってみせろ!」
神薙さんが空いている片手に青いモノを集めると、なんと刀の形になった。その両刀を構え、風見さんに突っ込んでいく。それを見据えている風見さんもまた、楽しそうな、少し狂気染みた笑顔を浮かべていた。
「おぉぉおおおお!!」
「はぁぁぁあああ!!」
……最早僕の目では追えない。分かるのは、二人が楽しそうに得物をぶつけ合っていることと……
「そこぉ!!」
「ぐっ!」
若干、神薙さんが押しているという事。風見さんもうまく捌いている様だが、時折血が舞い、苦痛の声が聞こえる。
暫くそうした戦いが続いていたが、神薙さんが風見さんを蹴り飛ばし追撃に"旋空"とやらを放って区切りをつけた。風見さんは土煙で見えない。
「ハァ…ハァ…ハァ…もう終わりか幽香?」
神薙さんは土煙の中にいるであろう風見さんに向かって言った。神薙さんも所々傷があり、肩で息をしている状態だ。
土煙が晴れていくと、傘を神薙さんに向けて立っている風見さんが見えてきた。その風見さんが小さな声で一言。
「…マスター…スパーク!!」
「!! やっべ!!」
瞬間、風見さんが構えた傘の先から極太の光線が放たれた。その光線は地面を抉りながら神薙さんに迫っていく。
神薙さんは少し焦った表情で刀を腰に構え、叫んだ。
「大霊剣『万象結界刃』!!」
刀は青く強い光を放ち始め、神薙さんはそれを光線に叩きつけた。
バチィ!!と激しい音がして、光線を止めている。
「うぐぅ…くっ…くそぉぉ…」
だが威力が強過ぎるのか神薙さんが押されている。その間にも、光線から漏れた光の粒が神薙さんに掠って血が流れていく。僕は手で影を作りながらその様子を見ていた。
「ぐぅぅぅ……ぉぉぉおおおお!!」
このままでは負けると悟ったのか、神薙さんは力み始めた。声に合わせて、光線を受け止めている刀も前に進んでいく。
「ぉぉおおらああああ!!!」
神薙さんは渾身の力で刀を振り抜いた。すると凄まじい光が起こり、僕は思わず目を瞑ってしまった。
すぐさま目を開けると…
弾かれた光線が僕の方に迫っていた。
たまにはこう言う三人称視点も良いなと思ったり…。
風刃について。・・・はい、またあのアニメです。刃は引かれた線の全てから吹き出ます。以上。
ではでは。