東方双神録   作:ぎんがぁ!

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奈良編のバトルシーンその二!
細かいのはカットしますけど。

三人称視点。

では第二十二話!どうぞっ!


第二十二話 太子様の頼み事 その2 『娘探し』

双也が都に訪れて約三ヶ月。双也という存在が現れた事を除けば、神子は今まで通りハードな仕事を黙々と続けていた。今日もその例に漏れることはなく、神子は午前に行う民の申し出を聞く仕事をしていた。

 

「ですので太子様!あの橋はそうした方がいいと思うのです!」

 

「いやいや、そんな事をしては他に迷惑がかかるだけですぞ。ここはやはり、私の申し出を…」

 

ガヤガヤ、ペラペラ。そんな擬音が似合いそうなほどに、神子の前に並んだ人達は自分の意見を話している。"十人の話を同時に聞く事が出来る程度の能力"を持つ神子は、当然すべての話を理解していた訳だが、神子の超人並みの眼や頭脳はその裏にある本質をも見抜いていた。

 

(はぁ…どの人も欲にまみれて自分の利益の事だけ考え、周りのことなど見向きもしない…これでは民の声を聞いている意味がありません…)

 

神子が見抜いた本質は、自分さえよければ良いという欲にまみれていた。今まで人間の汚い心を見てきた神子が気を狂わせずに居られるのは、ひとえに神子の精神力の強さ故と言えるだろう。

だんだんうんざりしてきた神子が端の方を見やると、ずっと話さずに座っているだけの若い女性に気が付いた。

 

「…あなたは何も話さないのですか?」

 

「あっ、えと…その…」

 

神子の言葉に気が付いた女性は、少し慌てたような素振りをしてまた黙ってしまった。

 

「大丈夫です。慌てる必要はありませんよ。ゆっくり、自分の言葉で話しなさい」

 

神子がそう言うと、少し安心した様に、女性はゆっくり話し始めた。

 

「あの、ここで言うのはどうなのかと思って今まで言えなかったのですが…広場で遊んでいた筈の私の娘が…き、消えてしまったのです!都中走り回ったのですが、どこにも、居なくて…。ですから、娘の捜索に…手を貸していただきたいのです!」

 

女性は話していくうちに涙声になり、最後には完全に泣いてしまった。泣き喚いている訳ではないが、神子は瞬時にこの女性が本当に助けを求めている事を理解した。

民の事を想っている神子は当然手を差し伸べた。

 

「分かりました。手を貸しましょう。後で私の部屋へ来てください。案内はさせますので」

 

「…!! はいっ!!」

 

女性はとても嬉しそうに返事をし、神子の家来に連れられていった。

 

 

 

 

一通りの仕事が終わり、神子の部屋。そこには座って何かを書いている神子と、向き合うように立っている先ほどの女性がいた。

暫くすると、神子は筆を止めて女性の方に向き直った。

 

「ここに書いてある場所に居る若い男に頼みなさい。この手紙と、私の名前を出せば直ぐに協力してくれるはずです」

 

そう言って手紙を渡された女性は、少し戸惑った表情をして言った。

 

「あの…太子様は手伝って下さらないのですか…?」

 

「私よりも、その男の方がいい仕事をしてくれますよ。心配はいりません」

 

神子は笑顔で言った。少し納得出来ていなさそうだが、女性は頷いて言った。

 

「ありがとうございます太子様!このご恩は決して忘れません!」

 

「いえいえ、直ぐに見つかるといいですね」

 

女性は神子に礼を言って屋敷を出て行った。その足が向かう先は紙に記された場所。

 

 

 

 

 

鉄を叩く音の響く、活気にあふれたあの場所。

 

 

 

 

〜鍛冶屋の工房〜

 

 

「えっと…この紙に…ほっ!………よし、出来た!」

 

双也は現在、工房の中で紙に向かって何かを呟いていた。それなりに付き合いのできた工房の仲間達でさえ首をかしげる様な光景がそこにはあった。

双也がそうしていると、お頭の声が工房に響いた。

 

「お〜い双也ぁ〜!!客が来てるぞ〜!!」

 

「客?」

 

双也は身に覚えがなく、不思議に思いながら外に出た。するとそこには何か紙を握りしめた若い女性が立っていた。

 

「おう双也、この人だ。お前に急用があるらしいぞ。出かける許可はしとくから、頑張れよ」

 

お頭は双也が来るのを確認すると、そう言って工房へ戻っていった。お頭はよく双也が用事で工房を抜ける事があるのを知っている。それを見越しての言葉だろう。

双也はお頭の配慮に感謝しながら女性に話しかけた。

 

「それで、何の用です?」

 

双也がそう聞くと、女性は握りしめていた紙を差し出して言った。

 

「太子様にあなたを頼れと言われて来ました。力を貸してください!」

 

「神子に?コレは…手紙か」

 

女性が差し出してきた紙は神子が書いた手紙のようだった。双也はそれを手に取り、黙読し始めた。

 

 

こんにちは双也。今回は手紙という形であなたに頼みごとをする事になりました。

単刀直入に言うと、コレを渡してきた女性の娘を探すのを手伝ってあげて欲しいのです。広場で遊ばせていたらいつの間にか消えてしまったそうです。都中探しても居なかったそうなので、都の外に行ってしまった可能性があります。同時に、妖怪に連れ去られた可能性も。

今は屠自古も布都も別の仕事で手が離せません。妖怪相手でも双也なら大丈夫だと思い、この手紙を書きました。どうか力を貸してあげてください。 豊聡耳神子より

 

 

双也は読み終わると、顔を上げて女性に言った。

 

「いいでしょう。力をお貸しします。ですが、少々危険がつきまとうかもしれませんので、私に全てお任せください」

 

「あ…ありがとうございます!!」

 

女性は何度も頭を下げて礼を言った。その様子に双也も少し困っていたが、すぐに女性を落ち着かせて準備を始めた。

 

「これをここに貼って…出来た!!」

 

工房に戻った双也は、たった今完成した太刀を腰に差して、女性と共に都の門の前に来た。

 

「ココからは私だけで行きます。大丈夫、安心して待っていてください。必ず娘さんを連れて帰ってきますので」

 

「お願いします!!」

 

その女性に見送られながら、双也は外へ走って行った。

 

 

 

 

双也は神子の手紙に書いてあった事を思い出し、妖力のまとまっているところを探して走っていた。因みに、もう人目のつくところでは無いのでスピードは自重していない。

程なくして、大量の妖力がある場所を見つけた。

 

「よし、あっちだな」

 

双也はさらにスピードをあげて走った。

 

着いた場所には大きな山がそびえていた。

双也は、大量の妖力と山というキーワードに覚えがあった。

 

「参ったな…コレって妖怪の山(・・・・)じゃないのか…?原作でも結構な危険区域の…」

 

双也の前世の知識の中に妖怪の山という物があった。天狗と鬼が住み、立ち入れば即座に攻撃を受けるという危険区域だ。だが入らなければならない理由がある。

 

「う〜ん、でもここに弱い霊力も感じるんだよなぁ…。おそらくは探してる子なんだろうけど…うわぁ、入りたくねぇ…」

 

入れば間違いなく戦いになる。面倒ごとの嫌いな双也は、いつも戦いは面倒ごと以外の何者でもない、と思っている。出来れば自ら戦いを招きたくないのだ。

 

「仕方ない…行くか!」

 

双也は決心をして山に足を踏み入れた。

瞬間、双也の周囲を何かが囲い大量の矢を放ってきた。

 

「魂守りの張り盾!」

 

双也は予想していたように…と言うか実際予想していたが、冷静に盾を発動し、身に迫る全ての矢を斬り落とした。

 

「!…貴様、ただの無謀な人間では無いようだな」

 

「俺はちょっと強いだけの人間さ。つーか、山に入っただけの人間を快く受け入れる事も出来ないのか?天狗ってのは随分短気だな」

 

双也を囲んでいたのは、背に黒い翼を生やし、手に剣や盾、団扇などを持った天狗たち、双也の知識では白狼天狗に当たる者たちだった。

双也の挑発に簡単に乗ってしまった天狗たちは次々に武器を構え、

 

「ぬぅ…お前たち!かかれ!!」

 

という掛け声と共に双也に襲いかかった。

しかし、双也は至って冷静であった。霊力を少し解放し、太刀を抜かないまま(・・・・・・・・・)天狗達に言った。

 

「お前たちじゃあ刀を使うまでもないな。…天狗の力、見せてくれよ!!」

 

天狗達と双也の戦いが始まったのだった。

 

 

 

 

〜神子の屋敷〜

 

 

双也の戦いが始まった頃、神子は自室で大量に積まれた書類を片付けていた。

 

「あと少し、ですね」

 

神子は積まれた書類を見て言った。実は今積まれているのは最初の量からはかなり少なくなった量なのだ。それでも常人がみたらうんざりする程の量なのだが。

再び書類に目を通し始めた神子は、不意に誰かの視線を感じた。

 

「!!……誰?」

 

神子は立ち上がって腰に付けていた七星剣を抜いた。

視線の主はまだ現れない。

神子は以前、双也に教えられた戦いの三つの基本を思い出し、神経を研ぎ澄ませて気配を探った。すると…

 

「そこだ!!」

 

僅かな気配の揺れを感じ、そこへ向かって七星剣を振り抜いた。しかし手応えはなく、そこに誰かいたという感覚だけが残った。

 

「ふふふっ お見事ですね。気配はなるべく消す様にしていたのに」

 

不意に神子の背後から声がした。未だ気配を探っていた神子はさして驚く事もなく向き直って剣を構えた。

そこには、青色を基調とした服と髪、フワフワ浮いているように見える羽衣を纏った女性が、妖艶な笑みを浮かべて神子を見つめていた。

 

「………あなたは…?」

 

「私は霍青娥(かくせいが)と言いますわ、太子様」

 

「何をしにここへ?」

 

神子は警戒を解かない。寧ろ、どこか余裕さえ見て取れる青娥に対して警戒心を強めている。青娥はそれをさして気にもせず言葉を発した。

 

「そんなに睨まないで下さい。私は太子様に提案があって来たのですよ」

 

「……………なんです?」

 

「太子様、あなたは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不老不死に興味ありませんか?(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




書くのが楽しくなって来たら二時間で書き終わっちゃいましたw
毎回この調子だと良いんですけどね…

ではでは。

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