東方双神録   作:ぎんがぁ!

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さぁ奈良編ですね!ここまで来るのも長かった気がします。

今回は視点が少し多く切り替わるので注意して下さい。
最初は双也視点。

では奈良編、開幕〜!


第三章 飛鳥編
第十八話 到着、邂逅


「ん〜…あと少しかなぁ…」

 

時刻はだいたい6時頃。諏訪を旅立ってから二日目の夕方だ。神奈子に方角を教えてもらったのでその方向にずっと歩いている。旅の間は朝の瞑想なんてしてられないので昨日と今日だけやってない。都で落ち着いたら始めるつもりだけど。

 

「えーっと、今日の食材……あ、あのキノコとか食べれそう」

 

昨日もそうだが、暗くなってからではその日の食料を集められないので太陽が沈む前には野宿の準備を始めている。ついでに言うと、俺は火を起こせない故に肉を焼けないため、昼飯合わせてキノコ類しか食べていない。都での最初の夕飯は絶対肉ガッツリいってやると決めている。

 

「おいそこのお前!!痛い目見たくなけりゃ持ち物全部置いてきな!!」

 

俺が泣く泣くキノコ採集に(いそ)しんでいると、背後から怒鳴る声が聞こえた。気配から察するに大体六人くらいだろう。

……ひじょ〜に面倒くさいけど、この手の山賊はちゃんと黙らせないととてもしつこいので、仕方なく相手をする事にした。

 

「はい?何ですか?」

 

「だから、痛い目見たくなけりゃ持ち物全部置いてけ!!」

 

「ああ、そういう事なら俺は全部持っていきますよ。山賊にあげるような物は何一つ持ってないんでね」

 

「テメェ…よっぽど痛めつけられてェみたいだな…」

 

俺はわざと挑発していく。その方が攻撃が直線的になって相手しやすいのだ。だんだん山賊たちの額に青筋が浮き出てきている。あと一言だな。

 

「それに……」

 

「……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛い目見るのはお前たちだしな」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう声を発した瞬間、山賊たちが襲い掛かってきた。うまく乗ったな。初めに攻撃してきたのはもちろん、俺の前にいたリーダー的なやつだ。手に持った剣を振り下ろしてくる。

 

「死ねぇ!」

 

「……ふん」

 

俺は体を逸らして剣を避けると、その腕を掴んで引き寄せ、空いた手の手刀を山賊の首元に放った。

 

「ぐえぇぇぁああ!?」

 

山賊はその場で倒れ、もがき苦しんでいる。

 

「さぁ、どんどんこいよ?」

 

一人が簡単にあしらわれて驚愕している残りの山賊たちに、俺はさらに挑発を加えた。山賊たちは一瞬ビビるが、すぐに目を殺気立たせて俺に向かってきた。

 

 

 

〜数分後〜

 

 

 

「ふむ、能力無しで戦うとこんな感じか」

 

そこには中心に俺、周りを囲うように山賊たちが倒れてもがいていた。俺は最初に声をかけてきたリーダー的な奴に近寄って顔をこっちに向かせた。

 

「なぁ山賊さんよ、これで分かったか?悪い事してると、必ず自分に降りかかってくるってこと」

 

「ひ、ひぃぃいいっ!!は、はい!分かりましたぁ!」

 

俺はいつかだか諏訪子を恐怖させた笑顔で言った。やっぱ怖がってるな。そんなに怖いかな俺の笑顔……。

 

「神はいつだって人を見てるんだ。分ったなら家帰って反省して仕事探せ。力仕事ならすぐに見つかるだろ」

 

「は、はい!!すぐにそうします!!済みませんでしたぁぁああ〜〜!!」

 

山賊たちは一目散に逃げていった。コレだけ言ってやればちゃんと分かったよな?分かってなかったら今度こそ神格化で本格的に天罰下してやる。

俺はもう一度キノコ採集を始めた。

 

 

その夜、俺はキノコも食べ終わって木を枕代わりにして寝転がっていた。

 

「ん〜〜…… 何か…武器が欲しい…かなぁ」

 

今日の戦闘。人間相手だったから能力を一切使わずにやったが、山賊たちを見て思ったことがあったのだ。やっぱり武器はあったほうがいいよなぁ、と。

 

「俺が使うならやっぱり刀だよな。もう昔から使ってて慣れてるし。結界刃で妥協してもいいけど、なんか納得しないな…」

 

まぁまた今度考えればいいか、と考えるのを止めて、俺は眠りについた。

 

 

 

 

「やっと着いたぁぁ!」

 

翌日、半刻もしない内に都に着いた。関所?みたいな門があったけど、特に警備とかはしていない様だ。村…と言うか、町の賑わい様は(さなが)らいつかの大和の国の様だ。

なんかいい匂いがする…あ、あそこにお団子屋さんがある!

 

「すいませーん、みたらし団子二本とお茶下さーい」

 

俺はそう言って団子屋さんに入った。すると中の方から年配の豪快そうな男性が出てきた。

 

「お?見ない顔だが、あんたここ来るの初めてかい?」

 

「あ、はい。ついさっきココに着いたんですよ。歩いていたらいい匂いがしてきたもので」

 

「そうかいそうかい!それなら一回目の団子は無料で食べてっていいぞ!味を確かめて帰ってくれよな!!」

 

おお、ホントに!?諏訪子から銭は一応貰ってあるので支払いはしっかりするつもりだったのだが…お団子屋さんの店主はいつの時代もいい人揃いだ。

うむ、めっちゃ美味い。

 

「あんた、なんだってこの都へ来たんだい?」

 

お団子を幸せに味わっていると、さっきの店主さんが声をかけてきた。

 

「"十人の話を同時に聞ける人がいる"って噂を聞いたもので、その人を見に来たんです。何か知ってますか?」

 

まぁ俺の予想通りなら十中八九知ってるだろうけどな…。

内心そう思いながらも一応聞いた。すると突然店主さんは豪快に笑い出した。

 

「ガッハッハッハッハッ!!兄さん、そんなのは愚問ってもんさ!知ってるも何もその方はこの都じゃ一番の有名人だ!」

 

「ほう?」

 

「それは向こうの屋敷に住んでる摂政、豊聡耳神子(とよさとみみのみこ)さまの事よ!!」

 

やっぱりか。十人の話を聞くとか聖徳太子以外考えられない。ここは東方projectの世界だし、まぁ神子さん以外無いよな。

俺は店主さんにお礼を言うと、また町を散策し始めた。すぐに神子さんとこ行ってもいいけど、どうせ簡単には会えないだろうし、あったとしても接点を作れない。町を見て回った方がいいと判断した。

 

「やっぱ凄い賑わいようだな。下手したら大和の国より………ん?なんだこの音…」

 

町をブラブラ散策していると、どこからかカンッ!カンッ!という音が聞こえてきた。俺は興味を引かれ、フラ〜っと音のする場所に行くとそこには……

 

「ほ〜う?こりゃあいい。ふむ…そうだな…教えてもらったほうがいいかな…」

 

俺は興味のままにそこへ入り、中で仕事をしていた人に声をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜同刻 神子の屋敷〜

 

 

「ふぅ〜…取り敢えずひと段落、ですかね」

 

私は豊聡耳神子。聖徳太子とも呼ばれている摂政だ。今私は朝から書いていた書類を捌き終わり、椅子の背もたれに寄りかかって休憩をしていた。

その様子を見てか、隣に居た屠自古が声をかけてくれた。

 

「お疲れ様です太子様。今お茶を入れてきました。少し一服なさってください」

 

「ああ、ありがとうございます屠自古。ズズズ……」

 

はぁ〜あったかい。仕事の合間のお茶は普段よりも美味しく感じられる。なんと言うか、とても落ち着くのだ。

私がお茶を味わっていると、屠自古が思い出したような声を上げた。

 

「あ、そうだ太子様。例のアレ(・・)、完成したそうですので取りに行かせましょうか?」

 

「ああアレですか。もう完成したんですね。正直、私に必要なものだとはあまり思えないのですが…」

 

「何言ってんですか太子様!もっと立場をわきまえてください!あなたはこの都を取り仕切る大切なお方なのですから、命でも狙われたらどうすんですか!?」

 

ちょくちょく可笑しな敬語が混ざっているあたり、屠自古も少し動揺しているようだ。まぁ護身用の武器(・・・・・・)が必要だと迫ったのは屠自古だし、無理はないのかもしれない。

 

「はぁ、分かりましたよ。あそこへは私が行きます。私の為に作ってくれたものを私が受け取らないのでは失礼ですしね」

 

私がそう言うと屠自古は何か言おうとしたが、やめたようだ。私は早速準備をして門のところまで来た。後ろには屠自古をはじめとした数人の家来が居る。

 

「では行ってきますね。留守をお願いします」

 

「「「「はっ!!」」」」

 

「早めに戻ってきてくださいねー!」

 

私は屠自古たちに見送られて町に出た。

 

 

 

 

 

(ふむふむ、民たちは皆平和に暮らしているようですね♪)

 

私は歩いている途中でも民たちに目を配っていた。私の理想は、どうな人でも平和に暮らせる世。その為にはまず民たちに目を向けていかないといけないと思っているのだ。

 

「え〜…あっちですね」

 

民に目を向けながら目的地を確認する。実は、依頼するのも屠自古がどんどん話を進めてしまって、私自身はまだ行ったことがないのだ。だから教えてもらった道を確認しながら進んでいく。

 

「あ、あった!あそこですね!……………!?何、あの人……!?」

 

「そこをどうかお願いしますよ!!教えてください!!」

 

「ダメだって言ってるだろう!うちは弟子を取るつもりは無いし、そんな簡単に教えられる技術でもねぇんだ!」

 

私がそこに着くと、何やら二人が揉めていた。私が来たのは

町でも有数の鍛冶屋(・・・)だ。どうやら、その技術を教えてもらいたくて揉めているらしい。でも私が驚いたのはそんな事ではない。

 

(な、何なの?この人本当に人間!?抑えているようだけど私には分かる……人間が持つには大きいこの霊力……!!それにこの()…たかだか数十年しか生きられない人間が持つ欲?まるで、ずっと先の未来に希望を抱いている様な…)

 

私は少し意を決して、その人間らしくない人(・・・・・・・・)に声をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

〜鍛冶屋前 双也side〜

 

 

「大丈夫です!俺に時間ならたっぷりあるので!教えてください!」

 

「お前なぁ、鍛冶屋の仕事舐めてるだろ?まだいい年なんだからもっと別の仕事探せ!」

 

う〜ん…中々折れてくれない…。俺が音を聞いて入った場所は鍛冶屋だった。どうやら鉄を打つ音だったらしい。

丁度刀が欲しかったところだし買ってみようと思ったのだが、よく考えると俺は刀をずっと使い続けるつもりだし、そうなると刀本体にも何か細工が必要なわけで。

という訳で今こうして刀の作り方を教えてもらえるよう頼んでいるのだ。全然聞いてくれないけど。

 

「お願いします!!」

 

「あのなぁ…」

 

あーだんだんイラついてきているな。でもこっちも引き下がれないし……。

そう思っていると、横の方から声がした。

 

「そこの者」

 

俺が振り返ると、そこには周りの人よりも少し豪華な装飾の施された薄いクリーム色の着物を着た女性が訝しそうな目でこちらを見ていた。誰?なんか見たことある気が…。

そう思っていると、鍛冶屋の人が声をあげた。

 

「み、神子様!?まさか直々にいらっしゃるとは!」

 

「え?みこさま?」

 

みこさまって事は……この人が豊聡耳神子!?俺が知ってるのと全然服が違うんですけど!?てゆうか、特徴的なあの剣も持ってないんだけど!?

俺が内心結構驚いていると、神子が口を開いた。

 

「ええ、私が受け取りに来ました。でももう一つ、たった今用事が出来ました」

 

神子は視線を緩めないまま、こちらに向き直って言った。

 

「あなた……何者ですか? 本当に………人間ですか?」

 

 

 

 

 

 




神子さんの見た双也の欲。
願い、とも言えるかもしれませんね。

ではでは。

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