東方双神録   作:ぎんがぁ!

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はい、今回で諏訪大戦はお終いです。
ちょっと短すぎる気が……

それでは第十四話!どうぞ!


第十四話 決着、諏訪子VS神奈子

「あ、アマテラス様?ちょっとおふざけが過ぎますよ?」

 

 

 

 

突然現れたアマテラスが俺に言い放った言葉、お友達になりたい。この一言でしばらくこの場が静まり返ったが、静寂を打ち破ったのはタカミムスビ、創顕だった。

それを聞いたアマテラスは少し不服そうに顔をしかめた。

 

「ふざけているわけじゃありませんよ!私はあの子に"双也に出会ったら頼む"と言われたんです。それならお友達になるのが早いと思っただけです!」

 

「しかし、何もこの場で言わなくても…」

 

創顕は、アマテラスの言い分は分かる様だが少し納得がいっていなさそうに言った。俺はそれよりもアマテラスの言葉にわからないところがあった。

 

「アマテラス、今言った"あの子"って言うのは?」

 

「はい、それはあなたもよく知っている人ですよ。

とりあえず、私とお友達になってくれますか?」

 

「え?あ、うん。いいよ友達になろう」

 

なんだかマイペースだな、人の疑問より友達の方が優先なのか。俺は差し出された手を握って握手した。光が溢れてくるような暖かい手だった。

 

「はい!よろしくお願いします双也。私はアマテラス、名を伊勢日女と言います。名で覚えてください」

 

「ああ、分かった日女。それで?あの子っていうのは?」

 

さっきの流された質問を繰り返した。今度は答えてくれるだろう。

 

「そうですねぇ、私の妹って言えば分かりますか?」

 

「ッ!ツクヨミか?」

 

「はい、その通りです。あの子が月へ向かった後、もしあなたを見つけたら気にかけてやってほしい、と頼まれたのです。

心配していましたよ?自分たちの犠牲にしてしまったと少々後悔もしている様です」

 

そうか、ツクヨミか…俺を心配してくれているのか。でもこれはしっかり伝えておかなきゃいけないな。

 

「日女、ツクヨミに伝えて欲しい。俺は今とても元気だ。あの戦に参加した事にも後悔はしていないし、誰も恨んでない。だから思い詰めるのは止めてくれ、って」

 

「……はい、伝えておきましょう。気にかけろとは言われたけど、心配はいらなそうですね。人格もしっかりしているし、能力も暴走はしていない。気軽に話せそうで良かったです」

 

日女は溢れるような笑顔をこぼした。少しそれに見とれたがすぐに切り替えて二人に行動を促した。

 

「さて、日女と創顕はこれからどうするんだ?俺は諏訪子を見にいく。心配だからな」

 

「ふむ、我はお前に付いて行こう。我も戦に参加した身、決着は見届ける」

 

創顕は一緒に来るようだ。日女は……マイペースだから多分帰るとか言うだろうな

 

「私は国に戻ります。目的は達成したし、疲れたので」

 

「そうか、じゃあな日女。そのうち友達として遊びに行くよ」

 

「はい!楽しみにしています!」

 

予想通りだった。俺は日女に別れを告げて、創顕と共にもう一つの戦場へ向かった。

 

 

 

俺たちが諏訪大社に着くと、地形がおかしな事になっていた。所々地面がめくれ上がり、岩がそこかしこに埋まっている。巨大な柱の様なものもいくつか刺さっており、竜巻が起こった後の様に地面が抉れた場所もある。

天変地異でも起こったのか?と思ってしまった程だ。

だが創顕は特に驚いた様子はない。むしろどこか呆れている感じもする。

 

「はぁ、派手にやっとるなぁ神奈子。天変地異みたいじゃないか。いずれ手にする領土の事も考えんか…」

 

「……まぁいいとしよう。諏訪子達は湖の方か?行こう創顕」

 

「ああ、急ぐぞ」

 

創顕の、いずれ手にする領土、と言う言葉に反論しようと思ったがどうせ平行線になると考え直し、口を噤んだ。

湖の方から神力を感じるので急いで向かう。

 

 

 

 

 

〜諏訪大社 裏手の湖〜

 

 

「ハァ、ハァ…ぐっ、やはり簡単には行かないな諏訪子よ」

 

「そりゃあ、いっぱい修行したんだもん…簡単には、負けられないよ…っつぅ…」

 

俺たちが駆け付けると諏訪子と神奈子は湖の上で向かい合っていた。お互い所々傷があり、肩で息をしている。かなりの接戦なんだろう。

先に動いたのは諏訪子だった。

 

「だから…勝つ!!」

 

諏訪子がそう叫ぶと、湖から高圧の水柱が幾つか噴き出し、神奈子に向かっていく。予備動作がほとんど無かった所為か、神奈子は一瞬遅れて技を放った。

 

「っ! 神祭『エクスパンデッド・オンバシラ』!!」

 

神奈子の周りに沢山の巨大な柱が出現すると、向かってくる水柱の方へ飛んで行き、水柱を遮った。余った幾つかは諏訪子へ向かっていく。しかし諏訪子は冷静に、

 

「またそれ?もう見飽きたよ!」

 

そう言い、避ける構えをはじめた。おそらくもう何度も放った技なんだろう。諏訪子だってバカじゃない、簡単に避けられると思っていた。

だが神奈子は不敵に笑い、言った。

 

「私が何も考えていないとでも?」

 

諏訪子は直前でオンバシラの異変に気付き、早い段階で避けようとした。だが何故か、柱は避けた筈なのに諏訪子の腕には少々深い切り傷が出来た。俺は少し驚愕し、神奈子の能力を知っているだろう創顕に尋ねた。

 

「どうなってる、柱は完全に避けたよな?」

 

「…神奈子の能力は"乾を創造する程度の能力"、すなわち天候を操る能力だ。その中でもとりわけ風雨に関する力が強い。おそらくオンバシラに竜巻を乗せていたために生じた細かいカマイタチで斬ったんだろう」

 

天候を操る!?そんな能力アリか!?

俺は神奈子の予想外に強力な能力に度肝を抜かれた。

天候を操るってことは文字通り天変地異をも起こせるという事、自然の力を味方につけているのとほぼ同義だ。

俺は心のどこかにあった不安が大きくなっていくのを感じた。

 

「中々えげつないことするね、神奈子」

 

「これでも軍神なんでね、有利になる事はとことんするのさ!」

 

今度は神奈子が仕掛けた。空に雲を呼び、いくつもの竜巻を起こして諏訪子に向けて放った。諏訪子はそれを目にすると、水柱で竜巻の威力を軽減しながら後退し、地面に着地すると直径2mはあろうかという大岩を作り出して放った。

 

「何!? がっ!」

 

神奈子の竜巻はその大岩を削りきることは出来ず、虚を突かれた神奈子に直撃した。

その隙に諏訪子は後ろに回り込み、現時点では最も強い技を放った。

 

「神具『洩矢の鉄の輪』!!」

 

諏訪子の中で最高の武器、鉄製の輪。フラフープ大のその輪は非常に切れ味がいい。諏訪子はそれを顕現させて神奈子に斬りかかった。

勝った!と思ったその時、

 

 

 

 

 

 

 

神奈子の笑う顔が見えた

 

 

 

 

 

 

「なっ!?鉄の輪が!?」

 

「残念だったね諏訪子。惜しかったけど……私の勝ちだ!!」

 

神奈子はオンバシラを諏訪子に叩きつけて湖のほとりに吹っ飛ばした。あまりの驚愕に完全に我を失っていた諏訪子は当然避ける事は出来ず、防御することも出来ず、地面に思い切り叩きつけられて立ち上がれなかった。

赤く錆びきった鉄の輪は砕けて飛び散った。

 

「諏訪子!!大丈夫か!?」

 

俺はすぐに諏訪子の下に駆け寄った。見ると気を失ってはいない様だが目尻に涙が溜まっている。

 

「ま、まさか"藤の蔓"を使ってくるなんて…もう、私には手が残ってない………」

 

諏訪子はもう戦えないのを認め始めていた。悔しさから拳が強く握り締められ、薄く血が滲んでいる。

 

「……うぅ…ぐすっ…うあぁぁああぁあ!!そうやぁああ!」

 

そして諏訪子は勢いよく俺に泣きついてきた。俺はそっと諏訪子の頭を撫でてやった。

 

「よく頑張った諏訪子。誰もお前を責めたりしない。泣きたいだけ泣け」

 

「あぁぁぁああぁあ!!ごめん…!ごめんねみんなぁ!負けちゃったよぉぉおお!」

 

諏訪子は俺の胸でごめん、ごめんと泣いている。俺は諏訪子が落ち着くまで頭を撫でていた。

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたか?」

 

「う、うん。ありがと、双也」

 

十数分後、諏訪子はやっと泣き止んだ。まだ少し目尻が赤いがもう大丈夫だろう。

俺たちはいつの間にか消えた神奈子達の事など気にせず、一先ず大社に戻った。

 

「諏訪子、とりあえず何か食べて元気をだそう」

 

「うん…」

 

まだ少し元気の無い諏訪子に声をかけた直後、鳥居の方から歩いてくる者たちがいるのが見えた。

それは何だか不服そうに顔をしかめた神奈子と、何か考えている様な顔の創顕だった。どうやら諏訪子が泣いている間に町に下りていた様だ。

 

「ちょいと邪魔するよ」

 

神奈子は不機嫌な顔のまま、少し挨拶をして俺たちの居る居間に上がってきた。それを横目で見た諏訪子は顔を少しだけ神奈子に向け、落ち込んだ顔と声で言った。

 

「……何さ神奈子、信仰の譲り渡しなら好きにやって。私にはもうどうにもできないし」

 

「その事なんだが…どうやら私たちはお前を越えられなかった様だ」

 

「越えられなかった…?戦いには勝っただろ?どういう意味だ?」

 

俺たちは神奈子の言葉に疑問を持っていた。越えられなかったってどういう…?

それは顔をしかめたままの神奈子では無く、考え事をしていた創顕によって語られた。

 

「今まで町で信仰対象を変えるようにと言ってまわっていたんだがな、どうやら"多大な恵みを与え、比較的平和に国を治めてくれているお前以外を信仰する気はさらさら無い"そうだ」

 

「信仰を得られないのでは勝った意味がない。神だから民に手を挙げるなんて以ての外だし…そういう意味で"お前を越えられなかった"と言ったんだ」

 

神奈子は益々不機嫌な顔になって言った。諏訪子は、今度は嬉し涙を目尻に溜めて俺と視線を合わせた。

 

「そ、双也……」

 

「あ、ああ」

 

 

 

「「やっっったぁぁあああ!!!!」」

 

俺たちは国中に響きそうな程の声で、揃えて歓声を上げたのだった。

 

 

 

 




終わり方が変ですいません。
え!?もう終わり!?と思う方もいるかと思いますが、戦闘描写に慣れてないんです…すいません…

諏訪編ももうすぐ終わりです。あと二、三話…かな?

ではでは。

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