結局五時間かかったけど、あの子を見つけられない。いったん霊夢の動きも見ておかないとあの子が危ないと思った私は博麗神社を目指して飛んでいる。それにしてもどこに行ったんだ? 萃香曰く幻想郷中を探したって言ってたんだが。
あとは博麗神社。つまりはゆっくり殲滅兵器であり、最終兵器霊夢がいるこの地帯なんだが。
「落ちなさい!! このゆっくりが!!」
「ゆ、ゆゆゆっゆ、ゆゆ」
なんてことだ竜神様。アンタでも私の願いはかなえられなかったか。あんなに幻想郷中を飛び回った私の苦労はなんだったんだ。きっと、最後に早苗を言ったのが悪かったんだな。うん。そうしよう。そうでもしないとやってられるか!!
「喰らいなさい!!」
「ゆっくり喰らっていってね」
二人の放つ陰陽玉。っておい、ゆっくりも陰陽玉使えるのかよ!! お互いの陰陽玉が交差してはじけ飛ぶ。それを見た二人は弾幕を放ち牽制を仕掛ける。
「っち、手ごわいわね」
「ゆ、ゆっくり倒れていってね」
「だれが倒れるか。アンタが倒れなさい」
「ゆっくりしていってね」
二人? の言い争いも激化し始めている。
私が止めるしかないか。そう気合を入れた瞬間、
「アンタらゆっくりなんかにあの子を任せられるか!!」
「ゆゆ、ゆゆっゆゆくり、ゆっくり育てるよ」
ん? あれ? 今、霊夢はなんて言ったんだ? 私の聞き間違いじゃないよな? あの子を任せられるかって言ったよな。どういう事!!? えっ、私がいない間にいったい何があったんだよ!! ていうかさりげなくゆっくりが~してねじゃなく~するって言えるようになっているし!!
うう、頭が痛いよ。なんだろう。頭がガンガンする。ゆっくりが跳ねる音も妙にうるさく感じる。けれど、それよりも問題なのは
「なんでゆっくりたちは少なくなっているんだ?」
そう。ゆっくりが少なくなっているのだ。ゆっくり霊夢。ゆっくり魔理沙とほか十数匹。ほかの奴は? そう考えようとすると頭がまた痛くなってしまう。かろうじてわかるのはここが山の中であたりが木々に覆われているということだけだ。
「イタタタタ」
「み~つ~け~た~!!」
ビクッ!! いきなり聞こえた地獄の怨霊のような声に驚いて飛び上がり、そして、
『霊符 夢想って、っちょっと危な!!」
飛び上がった後、地面に着地した後ふらふらと体が後ろ向きに勝手に動きその声の主の方に倒れこんでしまう。
「イタタタ アンタね! いきなり倒れないでよね。まった「気持ち悪い。吐きそう」って、ちょっと待ちなさい!! せめて私の上から離れてから「オエエエエエエ」ぎゃああああああああああああああああああ!!」
……僕が原因だけど女の人が出す悲鳴じゃないような。
なんなの、あの子!! いきなり人の上で。間一髪外れたからいいけど。というより、どんだけ酒の匂いをさせているのよ、コイツ。
「気持ち悪い~」
「ゆっく~りしていってね」
ゆっくりもなんかあの男の子を介抱しようとしているし。
「あの~」
「もう大丈夫なの?」
「たぶん。その、ごめんなさい」
私の上でしたけど何とか外れて私の足元にはいていたし、謝っているなら私もこれ以上おこるべきじゃないわね。ムカつくけど。
「まあ、いいわ。ところで何であんたみたいな子供がそんなに酒の匂いをさせているの?」
「え? えっと。
」
? どうしたのかしら。突然動きが止まったけど?
そう思っていたら。
「うわ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!」
いきなり泣き出した!? え? なんで? そしてなによりムカつくのがゆっくりが私を睨んでいることなんだけど。私が悪いの?
「こんな時どうすりゃいいのかしら?(ボソ)
ほら、泣かない。泣いていると鬼が来てさらっちゃうぞ?」
「うわ~~~~~~~~~~ん!!!」
「うわ、泣き方が強くなった! なんで?」
「ゆっくり、ゆっゆっくゆ」
「いや、アンタが何言いたいかなんてわからないから」
なんかゆっくりが私に言いたいようだけど、私にはこいつらが何言っているかわからないし。
「ヒック、ヒグ」
「よかった。泣き止んできた」
そう思って、あの子を見るといきなり倒れこんで後ろにある岩に頭をぶつけそうになっている。あわてて頭を支えてやり、文句を言おうとして顔を覗き込み、
「ちょっと!? どんだけアンタって、寝てる?」
こ、こいつは……。落ち着け私。うん。握りしめている拳をまずは放すのよ。私は博麗の巫女。人を傷つけるための存在なんじゃないわ。でも、この子ってこうしてみるとずいぶんとかわいらしい外見ね。それにこんなに軽いなんて。一体この子って何歳なのかしら? 萃香たちも同じような体格だけど何でできているのかが気になるほど重いのよね。
「七歳よ」
「え?」
誰!? 周りには誰も見当たらない。萃香や紫なら何らかの痕跡が残るはずなのに。
「どこを見ているのよ。本当にあなたは鈍いのね」
ムカ。いったい誰がこんな失礼なことを。
「貴方の足元よ」
「嘘でしょ?」
「何で嘘をつかなきゃいけないの? 嘘をついたらなんかくれるのなら嘘をついてもいいけど」
嘘だ。なんで私が、これの、こいつらの言葉をわかるんだ!!? 有り得ない!! あっちゃなら無い事よ。いうなれば映画版のジャ〇アンがいつものガキ大将のような状態よ。
「否定しても仕方ないでしょう」
「さりげなく心を読むな」
「ただの勘よ。貴方も勘は強いでしょう?」
確かに強い。そしてその勘が間違いなくこの言葉を発しているのは足元にいる謎の生物といっているが認めるわけにはいかないわ。それを認めたら最後、私の人間という部分は確実に終わる。
「貴方の感傷なんてどうでもいいからご主人様を早く寝かせてくれない? いろいろあって疲れているのよ? それともそのまま立たせていると? それとさっさと現実を認めなさい」
「分かったわよ」
分かった。認めましょう。私が会話しているのが、その、この
「早くしなさいよ」
私の考えていることに突っ込むな!!
ゴホン、このゆっくり霊夢だということを。
「ようやく認めたのね」
「うるさい。というよりなんで私がアンタらゆっくりの言葉が分かるの?」
「私たちの能力の一つよ。そうね、貴方の貧相なそのおつむでもわかるように言うと『共有する程度の能力』よ」
「『共有する程度の能力』?」
っていうか、さりげなく私を貶してるわよねこいつ。
「まあ、私たちの言葉が分かったのはご主人様に何らかの良い感情を持ったからよ。その中で私たちゆっくりの感情とおなじ感情を持っていたらそのゆっくりと話せるようになるわ。そして、そのゆっくりを通じてほかのゆっくりと話せるようにもなれるわ」
「良い感情って、私がこの子に? っていうか私はそんなことを認めてないけど」
「そう、たとえあなた自身は認めていなくともよ。厳密に言うと貴方の場合は『母性愛』ね」
は? こいつは何を言っているんだ? 私があって間もないこの子にそんな感情を持つわけ
「知らないの?あなたって意外と母性愛あるのよ?」
いきなり言われて納得できるか!!
「少し考えてみなさい。貴方は神社でよく宴会を許しているでしょ? 貴方は興味がないだけって言いそうだけど、興味がないなら宴会をしている奴らを追い出せばいいだけ。なのに、それをしない。なぜなら、貴方は宴会をしている奴らに呆れを含みながらも見守り続けているからよ。見守ることも母性の表れ。大概の博麗の巫女は母性が強いのよ?」
「いや、そんなことを言われても」
「まあ、とにかくそういうことと思っていればいいわ」
いや、納得してないって言っているわよね。私は。
「貴方の考えなんてどうでもいいわ」
ダメ。落ち着きなさい。今すぐピチュらせてもいいけどそうしたらこの子が起きちゃう。
……あれ? この考え方って今ゆっくりが言っていたことじゃ……。
「認めたわね」
ハァ、とにかく一旦この子を地面に寝かせて、このゆっくりたちと話し合うとしましょう。
今回は霊夢がゆっくりの仲間入りした話です(違います)。
それではまた次回よろしくお願いします。