ゆっくりとゆっくり隊長   作:koth3

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最終回です。しかし、ネタが思いついたら、優先的に書くつもりでもあります。


ゆっくりとゆっくり隊長と幻想郷 前編

 ずるずると私は後ろに転がしたものを引っ張る。

 

 「全く、あんなとこに隠れやがって! 探すのどれだけ大変だったと思う!」

 

 思わず怒りを上げるが、それは仕方がないと思ってほしい。だって、誰が考えられる。霧の湖の地下に潜伏していたなんて。

 

 「さあ、あの子が帰れるよう、結界を緩めてもらうぜ」

 「う、うう。ち、力が。普段なら魔理沙位!」

 

 失礼なことを言いやがって。少しムカッとしたので、私は縛っていたロープを通じて一つの魔法を発動させる。熱と光の魔法を得意とする私だが、実はもう一つだけ得意な魔法がある。それは、

 

 「あびばばb!!!?」

 「如何だ、私の電撃魔法(・・・・)は!」

 

 これだけは魅魔様にも褒められたんだよな。筋が良いって。けど、好きじゃないから、めったに使わないけど。

 プスプスと黒煙を上げる物体Yを引きずり、私は博麗神社目掛けて進んでいく。飛べば簡単なのだが、武士の情け。こんな弱り切った姿を衆目にさらすのは可愛そうというものだ。それにそんなことをしたら、幻想郷が滅茶苦茶になってしまうからな。

 

 

 

全く、魔理沙の奴。今日は時間を空けてくれって言った割に、来るのが遅いじゃない。

 

 「ぉ……ぃ」

 

 ん? 何か聞こえたかしら?

 あたりを見回してみると、階段の所に見覚えのある黒い三角帽子を見つけた。

 

 「お~い!」

 「遅いわよ、魔理沙。私だって暇じゃないのよ? それをここまで待たせて」

 「お前はいつも神社にいるだろうが。いやそれよりだ、これを見てくれ」

 

 そう言って魔理沙は一つのロープを差し出してきた。一体何だろうと思って、さきを見ると黒焦げの物体が縛り付けられていた。

 

 「……魔理沙」

 「へへん。如何だ! 苦労したんだぜ!」

 

 何か言っているようだけど、私の耳には入ってこない。だって、

 

 「アンタ、とうとう殺ちゃったの!?」

 「ハァ!?」

 「大丈夫! 今なら私が弁護してあげるから! ね? 自首しましょう?」

 「ちょ、一寸待て! 何か勘違いしているぞ!」

 

 いや、これ如何見ても『弾幕はパワーだZE』って言って殺っちゃった。っていう犠牲者でしょう!

 

 「大丈夫。私以外にも、アリスとパチュリーは絶対弁護してくれるから」

 「いや、弁護とか必要ないから! この物体は紫だよ!」

 「えっ?」

 

 木枯らしがひゅうひゅうと吹くのを聞き、私は冷や汗を流しながらごまかしに入る。

 

 「そ、そう! 紫なのね!」

 「霊夢、私はお前に少し話をしたいんだが」

 「そ、それより紫は何処にいたの!?」

 

 うう、すごい目で見ている。さとりのジト目の五倍くらいは凄い目で。瞳をずらすと、疑いの目で私を睨み続け、近づいてくる。

 

 「一寸社務所に行こうぜ」

 「いや~、私は神社の掃除が……」

 「何時も何時もゆっくりが済ましてしまう、って愚痴を言っていたのは何処のどいつだ?」

 

 拙い! 逃げられない!

 

 「は、放して!」

 「いいや、放さないね。私は少しお前と話す必要がある。主に私のイメージについて」

 

 この後、私は魔理沙にこってりとしぼられた。っていうより、あの黒焦げの物体が紫? えっ、ウソ?

 

 

 

 まったく! 彼奴は私を何だと思っているんだ。無理やり聞き出したが、余りにもひどかったぞ。

 

 「というより一体何処にいたのよ、紫は」

 「それが霧の湖の地下にスキマを作って、そこに居た」

 「霧の湖? そんなところにいた訳。っていうか、アンタは如何やって気づいたのよ」

 

 これだから何でも勘で解決しようとする巫女は。

 

 「アンタ何か変なことを考えている?」

 「そんな訳ないだろう」

 

 やっべ、やっぱりこいつの勘は。

 

 「まあ、私もな、少し考えたわけだ。私から探しても、紫は見つからない。だったら、紫の居場所を知っている奴に出てきてもらえば良い、ってな」

 「はぁ? そんな相手……、居たわね。そして、まだ紫よりは簡単に御する事もできるわね」

 

 まあ、出てこさせるまでが苦労したが。  

 

 「そういう訳さ! で、彼奴をおびき寄せるために橙に協力してもらったんだ」

 

 まあ、それ以外方法が無かったという事。ありとあらゆる手で誘い出そうとしたんだが、反応しなかったんだよな。

 

 「如何いう風に?」

 「橙に悲鳴を上げさせてな。そうしたら、彼奴が出るだろうと睨んで、私は隠れていたんだぜ」

 「ふうん。それで?」

 「そして、隠れている所から出てきた彼奴を」

 

 ミニ八卦炉を取り出して構える。

 

 「マスタースパーク、って訳ね」

 「そういう事」

 「やっぱりあんた、自首したほうが良いんじゃない?」

 「何でだよ!」 

 

 別に何もしていないだろうが!

 

 「いや、結局黒こげにしたんでしょ?」

 「まあ、そうだけど」

 「やっぱり自首した――」

 「三回目だぞ。次は許さないからな」

 

 念を押してから、続きを話す。

 

 「で、だ。彼奴に主の居場所を聞いてな。中々話さないんでな。少々とりたくはない手段も取っちまったぜ」

 「まり――」

 「何度も言うが、これ以上は私だって怒るぞ?」

 「っち! それで、何をしたの?」

 「鬼の鎖で縛って、目の前で油揚げを食い続けた」

 

 血の涙を流しながら泣いていたな。……一寸悪いと思った事は、内緒にしとこう。だって、彼奴怖いだもん。「呪ってやる、呪ってやるぞ!」ってすごい顔で言うからな。後ろで橙がビビっていたし。

 

 「まあ、それで場所を聞きだした後、彼奴にスキマを開かせて紫も捕まえたっていう訳さ」

 「ふうん。そういう事」

 「まあ、そういう訳さ」

 「なら、あの子が帰ってきたら、きちんと話しておくわ。帰れるけど如何するかって?」

 「? 帰さないのか?」

 「此処にも色々大切な者が出来たみたいだしね。きちんと聞いておくべきでしょ?」

 「そりゃそうだな。あの子が帰ってきたら聞いておいてくれ」

 

 霊夢に紫を預けて、私は箒にまたがり、空を飛ぶ。さて、後はあの子次第か。私の感情は、此処に居てもらいたい。みていて飽きないからな。でも、私の理性は帰すべきって言っている。あの子を心配している親もいるんだ。なら、帰った方が良い。何時しか、親には会えなくなるんだから。

 ……。

 ……ふぅ。益体も無い事を考えても仕方ない。家に帰って、新しいキノコの実験でもしよう。


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