ゆっくりたちと船に乗る。一緒にいるのは映姫さん。地獄の最高裁判長であって、生前悪い事をしたら、この人に捌かれて極楽へ行けるか、地獄へ行くかが決まるらしい。
「ゆ」
「貴方達は基本的に死なないでしょう」
如何やら、先ほどからゆっくりたちは映姫さんが気になっているようだ。そして、何でゆっくりの言葉が分かるのだろう?
「それは閻魔だからです」
「あ、あの、心を読まないでください」
「ああ、失礼」
怖い。閻魔様って怖い!
それにしても、このゆっくりたちは。あの子供に聞かれないように気を付けながら、私はゆっくりたちへの説教を続ける。
「何よ。何か文句でもあるの?」
「そうだぜ。私達が何かしたか?」
「ゆっくり魔理沙は、他のゆっくりから借りたものを返さない。ゆっくり霊夢は少々お金に意地汚すぎる」
まったく。何よりもあの子の事を心配しているくせに、ゆっくりたちは自分の悪癖を治さない。周りの環境は成長に大きな影響を与える。それは特に幼い子供には。下手をすれば、お金に意地汚く、借りたものを返さないで、乱暴者に、大酒飲み。そういった大人になってしまう可能性が高いというのに。
「良いですか。貴方達がしっかりしないとあの子が悪人になるかもしれないのですよ? そもそも話を聞けば、貴方達があの子を船に乗せたそうですね。そういった事を軽々しく行うから……」
だんだんと熱が入ってきてしまい、ゆっくりたちに本格的な説教をし始めてしまった。ですが、
「そんな固い事ばっか言っていたら、何もできなくなるわよ」
「そうだそうだ。それにあの子は優しい子だ。私たちの悪いところは真似しなさいさ」
そう言われても、貴方達がしてきた事を視れば。
「私が何をしたって言うのよ。私は他の奴よりは安全でしょう?」
「ゆっくり霊夢。貴方が一番危険なのですよ。貴方が最初にしでかした行為、忘れたとは言わせませんよ?」
「忘れたわよ」
バシン
気が付いたら悔悟棒で思いっきり、ゆっくり霊夢を叩いていた。
「痛いわね! なにするのよ!」
涙目になっているゆっくり霊夢だが、私は彼女に思わず言った。
「泣きたかったのは私です! 貴方が外であの子と会ったとき、どれだけのしわ寄せが来たのか分かっているのですか!」
あの時、冥界の住民は十王を含めて全員が混乱して、行動する事が出来なくなり、私は上からにらまれたというのに!!!
「あ、ああ。そういえば、確かにいろいろやったけど」
「いろいろやったではありませんよ! あの時どれだけ私たちが現世に干渉する羽目になったか! いまだに私、あの事件の所為で上から疎ましく思われていて、給料も休みも減らされたんですからね!」
「わ、悪かったわよ。でも、しょうがないじゃない。あんなことが起きたんだから。そりゃ、やりすぎた部分もあるけどさ」
「なら、大人しくしていなさい! 今回のような事をこれ以上しないように!」
何だろう。さっきから後ろでゆっくりたちと映姫さんがすごい騒いでいる。
「やあ、すっごいね」
「あ、居眠りしていた死神さん」
「それは言わないでほしいな。なに、シエスタって奴さ」
「居眠りでしょう。それはスペインの人に失礼なんじゃ……」
「固い事は言わない。そんな事を言っていたら、あの映姫様のようになるよ」
それは嫌だな。ああ、怒ってばっかだと人生もつまらなさそうだし。
「そうだろう。やっぱり生っていうのは楽しくなくっちゃ」
うん。そうだとは思うよ。頭の上にあるたんこぶの五重の塔が無ければね。
「うう、痛い。というよりそこは突っ込まないでおくれ」
「それは良いけど、僕も一つ言って良い?」
「なんだい?」
「さっきから心が読まれているのは何で?」
「私も死神だからね」
「答えになっていないよ」
あ、後ろでとうとう映姫さんが泣き出した。
「うう、貴方達には分かりませんよ。上からいびられ、下はさぼり放題。注意してもだれも話を聞いていないことくらい、分かっています。でも、それでも注意し続けなければならないのですよ。だけど、誰も聞いてくれないから変わることはない。だんだんと注意が煙たがれて、今では私の顔を見ると露骨に顔をゆがめるものもいるのですからね!」
「わ、悪かったって。ホラ、だから涙なんか流さないで!」
「中間管理職の辛さが貴方に分かるはずないでしょう! 貴方達みたいな饅頭は、飲み屋で食べられていればよいのです!」
「いや、何で飲み屋!? あれ、何だろう。この閻魔すごく面倒くさい。絶対こいつ酒飲んでいるよ」
「飲んでいませんよ! 職務中にのむわけないでしょう!」
「ああ、良かった。正常だ」
でも、本当にこいつは面倒ね。絡み酒と泣き上戸が混ざったような状態でさっきから泣いているし。ああ、もう如何しようかしら。
「なあ、ゆっくり霊夢」
「何よ、ゆっくり魔理沙」
「逃げない?」
「いやいや! 今それしたら止めをさすことになるからね!」
「あ、やっぱり?」
「やっぱりじゃないわよ。今は大人しく映姫のストレス発散に付き合わないとダメでしょう」
といっても付き合うのはうっとしいけど。
「うっとうしいってどういう意味ですか!」
「貴方はさとりじゃないでしょう!」
「そんなの関係ありませんよ! 私はそんなにうっとうしいのですか!」
うわ、本当にうっとうしい。
「やっぱりみんなそう思っているんですね!」
如何しよう。そう私たちが困っていると、うしろからあの子の声が聞こえた。
「大丈夫、ゆっくり?」
「ゆっくり助けていってね!」
何だか映姫さんが泣き始めて、だんだんとすごい状態になってきたため話しかけたら、ゆっくりまでもが泣きそうな顔で助けを求めてきた。
「あの、映姫さん? 一体どうしたんですか?」
「うう、誰も私の苦労を知らないで説教が長いやら、説教姫なんてあだ名つけたりして。私だってそんなに怒りたくはないというのに。でもそうしなければならないからこそ、説教することできっと良くなってくれると信じて説教するのに」
如何しよう。ゆっくりたちが泣きそうな理由が分かった。
「あ、あの」
「私は部下たちが嫌いなわけじゃないんです。だというのに」
「お、落ち着いてください。ね?」
なんていうかお酒のんで駄目になった大人みたい……。
「お酒なんて飲んでいません!」
「そ、そうですか。お酒は飲んでいないんですね?」
「そうですよ」
とにかく少し落ち着いてもらわないと。
「とにかく、いったん泣き止みましょう? 大人で威厳のある閻魔様がそんな顔をしていたら、説教が台無しになりますよ」
「そんな事はないです。私の説教なんて誰も聞いていないんですから。特にこの舟を漕いでいる死神は!」
思わずジト目で死神を見ると、慌てて頭をかきながら口笛を吹いてそっぽを向いた、
「~~~~♪」
うわ、何だろう。イラッとする。
そう思ったのは僕だけじゃなかったようで、ゆっくり霊夢にゆっくり魔理沙によって後ろから突き飛ばされて、川に落ちた。
「「ゆっくり流れていってね♪」」
「三途の川は拙いって!」
慌てて船にしがみついて、這い上がってきた死神を、今度はちがうゆっくりが突き飛ばして遊んでいる。
「うおおおおおお! ちょ、やめ! あたいが死ぬ! 死神だけど死ぬって!」
「ゆっくり罪を流していってね」
「そしたら間違いなく死ぬって!?」
うん。後ろは見なかったことにしよう。
「そんなことないですよ、映姫さん。映姫さんが裁判でしていた説教はためになりましたから」
「……本当に?」
「本当ですって。悪い事をしていたらいけないって、僕の中に映姫さんの教えが身に染みましたもの」
さすがに目の前で地獄行きになった人とか見るとね……。
「そうですか。私の説教はきちんと他の人にも伝わっているんですね!」
「そ、そうですよ。きちんと伝わっていますよ」
そこまで言うと、急に元気になった映姫さんはゆっくりたちに近づいて、元気に説教を始めた。
「こんなことをしてはいけません。良いですか……」
「ゆ!? ゆっくりしないでいってね!!!!!」
「そんな事よりあたいを助けてください!」
ま、まあ、元気なのは良い事だよね?
この話について、一つ決めました。
元々短編だったこの話は、今まで多くの人によって愛されてきましたが、作者の限界です。だんだんとグダグダし始めて、面白みが少なくなってきてしまいました。
ですので、この作品はここで一旦終わりにします。本当は神霊廟までは行きたかったのですが。ですが、終わったとはいえネタが思いつき、それがうまくいくのだとしたら、完結した後も話は少しづつ更新します。