ゆっくりとゆっくり隊長   作:koth3

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題名から察するとおりです。


ゆっくりとゆっくり隊長の裁判長見学 前編

 厳かな空気の中、私は次々と死者たちに裁きを伝えていく。人が多すぎる今の時代だが、幻想郷の閻魔は他の地域の閻魔ほど忙しいわけではない。

 

 「次の者を!」

 「はい」

 

 こうしてまた一人の人間の魂が地獄へ落ちた。彼は悪事を働きすぎた。人を騙して生活するなんて言語道断。

 

 「ゆっくり!」

 「さて、次のし――」

 

 今何か変な声が聞こえなかったかしら?

 

 「ゆっくり」

 「ダメだよ、ゆっくり映姫。お仕事の邪魔をしちゃ」

 

 何故だろう。この場で聞いてはいけない声がしたのは。

 おそるおそる声がした方へ顔を向けていく。

 

 「ああ、落ち着いて! 興奮しないで!」

 「……」

 

 何故、生者がこの冥界(場所)に?

 

 「ゆっゆっゆ!」

 「誰か助けてぇ!?」

 「何で生きている者たちがいるんですか!?」

 

 思わず大声で叫んでしまったのは悪くはないと思って良いと思う。私は目の前の子どもたち目掛けて、心の底から疑問をぶつけた。

 

 「え? あ、こんにちわ」

 「こんにちわではありません! 良いですか。此処は死者のいるべき場所であり、生者がいるべき場所ではありません」

 「そうは言われても。ね、ゆっくり」

 「ゆっくりしていってね!」

 「ゆっくりさせませんよ!」

 

 私よりはるかに小さい幼子に怒鳴ってしまっているが、それも致し方ない。彼らとその周りのゆっくりに気が付かなかった私も問題だが、これほどの数が集まれば裁判の邪魔になっている。

 

 「早く、彼岸へ帰りなさい!」

 

 まったくどうやってこの地へ来たというのか。方法が分かったらすぐに対処方法を作らなければ。

 

 「あの~」

 「何ですか」

 「ここってどこ?」

 「え?」

 

 

 

 

 いろんな屋台の店を眺めながら、僕はゆっくりたちと一緒に商品を見ている。

 探しているのは御守りに、ガラスでできたコップ。あと、綺麗なかんざし。それぞれお世話になっている霊夢さん、萃香さん、そして妖夢さんに送るためのものだ。

 

 「ねえねえ、オジサン」

 「なんだい、坊主。何か探しているのか?

 それならこれなんかどうだ! 新商品、食べればすべてがどうでも良くなって一発で昇天できるラムネのつぶだ!」

 「語呂が悪すぎるよ」

 「む、むう。やっぱりそうか」

 「それよりも、一つ聞いて良い?」

 「ん、なんだ?」

 

 良かった。気の良い人で。さっき聞いた大柄な人は、僕を問答無用で捕まえようとしてゆっくりたちにボッコボコにされちゃって。それを見た周りの人が僕たちから離れて行っちゃって、誰にもなかなか話を聞けなかったんだよね。

 

 「ここら辺でいろんなものがある場所ってどこにあるかな?」

 「そりゃ、やっぱり彼岸の先だろうな。あそこなら大抵の物がそろっている」

 「分かった! ありがとうね!」

 「あっ! お前さん、彼岸の先は……って行っちまった」

 

 

 

 う~ん。先に行きたいんだけど、渡し守の人は眠っていて起きてくれない。

 

 「起きてください!」

 

 いくら叫んでも、鎌を枕にした女の人は起きてくれなかった。それを見て、ゆっくり映姫はぷりぷりと怒り出したけど。まあ、このゆっくりは非常にまじめだからね。こういったのが許せないんだろう。

 

 「如何しよう?」

 「ゆっくりしていってね!」

 

 そう言って、ゆっくり魔理沙は船に飛び乗った。

 

 「えっ? でも、それは大丈夫なのかな?」

 

 う~ん? 勝手に使っても大丈夫なのかな? でも、ゆっくり魔理沙達はもう船に乗っているし。如何しよう。

 ……そうだ! この人ごと向こう岸に向かえば大丈夫。僕は向うに渡れるし、この人も船を漕がなくて済む。そして、向こう岸でお金を渡せば大丈夫。

 

 「じゃあ、行こうか」

 「ゆっくり!」

 

 船に女の人を引きずりながら入れて、僕は船を漕ぎ始める。初めての事だから上手くは進まないけど、舟を漕ぐのはなかなか面白い。ゆっくりと船は川を横切っていく。

 漕ぎ始めて十分もしないうちに、向こう岸が見えてきた。

 

 「そろそろ着きそうだよ」

 「ゆっくり漕いで行ってね!」

 「ゆっくり漕いでこれなんだけどね」

 

 ゆっくりも船に乗るのが楽しかったのか、不満そうにしていたけどそろそろ降りないと。

 

 「到着~~」

 

 コツンと舳先が岸に着いて、船は止まる。

 ここが彼岸か。なんていうか豪華な建物があるけど、辛気臭いな。もっと明るければ良いのに。幻想郷のように。

 

 「ゆっくり」

 「え? あの建物に行きたい? 良いけど」

 

 ゆっくりたちが行きたいといった建物にお邪魔させてもらった。途中、萃香さんのような鬼の人が道案内してくれもした。鬼って悪いイメージしかなかったけど、優しい人? もいるんだな。そう思いながら大きな扉の前で待っていた。

 なにかここで大切なことをしなければ、何処にも行けないらしい。だからこうして待っているんだけど、早く僕の番が来ないかな?

 それにしてもこの建物って複雑な作りなんだね。如何やって戻るかわからないや。

 前の人の受付か何かが終わったのか、今度は僕の番らしい。大きな鎌を持った人が僕を扉の中に案内してくれる。

 けど、ゆっくり映姫が興奮して、僕の中で暴れだしてしまった。

 

 「ゆっくり!」

 

 あわわ! 止まらない。このままじゃ、受付の人の邪魔になっちゃう。

 そう思ったけど、案の定怒られて帰りなさいって言われちゃった。けど、一回だけじゃ道順なんて覚えられないよ。

 

 

 

 目の前にいる子供たちの話を聞いて、まず私は説教をすることにした。当り前だが、いくら人が寝ているからと言って、勝手に人の物を使って良い道理はない。

 

 「良いですか! 確かに彼女は起きなかったかも知れません。ですが、それでも勝手に使ってはいけません。これは常識です!」

 「ごめんなさい」

 

 正座をさせて子供と、ゆっくりは項垂れている。

 

 「そもそもここは死者が住む世界。生者である貴方達は来てはいけない場所です! 貴方達の話を聞きましたが、少々人の話を聞かなすぎる! 貴方達がすべきことはもっと人の話をよく聞くことです!」

 

 子供には少々難しいかもしれないが、この子なら理解してくれるでしょう。唯怒られて反省しているのではなく、怒らせるようなことをしてしまったという事を理解して、反省している子なら。

 

 「まぁ、今回は大目に見ましょう。如何やら悪いのはあの死神(・・・・)のようですから。私が仕事を終わったら、責任を持って家に送り返します。それまで余計な事をしないように!」

 

 一時間近く説教をしてから、私は彼らを傍聴席へと案内させるように管理官へ命じる。

 せっかくの機会。最後の審判というものを見せましょう。あの子は人の悪意を視すぎている。悪事を働いたらどうなるか。それと人は悪人だけではないという事を理解させなければならない。でなければ何時か、人を平気で蹴落とすような人間になってしまうかもしれない。ついでに、最後にはサボリ癖がつくとどうなるかも教えましょう。 




次回、ゆっくりたちが大暴れ。の予定です。

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