ゆっくりとゆっくり隊長   作:koth3

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後篇です。
独自設定がありますがそれが気になる方は戻るをお勧めします。


ゆっくりとゆっくり隊長と半人半霊 後半

 冥界。そこに建てられている豪邸白玉楼。そこに今日用があって私は来た。唯あの子も広い神社に一人だけは寂しいだろうと思って連れてきた。あそこには都合の良い半人半霊もいるしね。しばらくはあの子の面倒を頼むとしよう。そんな事を考えていたのがいけなかったのだろう。もう少し考えて、いやいくらなんでも勘が働かなかった時点で無駄だったわね。これから先如何しましょう? そんな事を隣にいる黒い笑みを浮かべている幽々子を見ながらずっと考え続けるしか私はできなかった。

 

 

 

 私達はあの子と別れて白玉楼の一室でこれから先についての大事なことを話し始めた。

 

 「幽々子、紫が今どこにいるか知らないの?」

 「そうね、残念ながら私も知らないわ。ここ最近白玉楼にも近寄っていないのよね」

 

 そう。私たちがこうして話をしているのはあの子が帰れるように必要な紫の居場所を探すためだ。あの子が来た日から紫は幻想郷で一切の目撃情報が無い。腐っても大妖怪。何かあったとは思えない。おそらくは何らかの理由で姿を隠していると見たほうが良い。そう私の勘が告げている。

 

 「それならあの化け猫に聞いてみたら如何かしら?」

 「それで解決したら良いでしょうけどね」

 

 それはもうすでにしている。尋ねてみたら知らないと。実際この頃橙の元に藍も来ないようだ。橙が涙ぐみながらそう言っていた。最後にして一番紫が今いる場所を知っていそうなこの亡霊を尋ねたんだけど知らないか。これから如何しましょう。

 

 「ハァ、仕方がない。あとは萃香の結果を待つしかないわね」

 「あら、あの鬼にも協力させているの?」

 「当り前よ。ただ酒飲みを置いておくほど私は寛容じゃないわ。少しは働いてもらわないと」

 「じゃあ、貴方も少しは修行するべきね」

 

 うっ。痛いところを突いてくるわね。けどその程度で私が修行をするとでも?

 

 「ドヤ顔のところ悪いけどそれは一応巫女としては間違っているのは認識しておきなさい。だから博麗神社に参拝客が訪れないのよ」

 

 ピキリと一部の血管が鳴ってはならない音を立てるけど我慢。だから落ち着け私。袖から取り出した札は元の場所に戻すのよ。

 私が心中で理性と本能の戦いをしているうちに幽々子は立ち上がり縁側に出ていく。気になった私もついていくけど何を見るつもりなのかしら。

 

 「あらあら久方ぶりに楽しそうな笑みを浮かべているわね」

 

 幽々子が笑いながら見ているのはあの子と遊んでいる妖夢?

 

 「ふふふ。あの子ね、普段から無理しているのよ。眉間にこんなしわなんて作っちゃて。本当はあの子はやんちゃでいつも楽しそうに笑っているような子なのだけどね。魂魄家としての責務を果たそうとするあまり常々無理しているのよ。その所為か本当の自分を隠して仮面をかぶり続けているから周りに異常なほど影響を受けやすくなっているのよ?」

 「ふうん。で、その話が何だというの?」

 「何でもないわ。唯ね、ああして楽しそうに遊ぶ事もあの子には必要なんだという事を再確認しただけよ」

 

 そう言って扇子で口元を隠す幽々子を見ながら私はあの子たちの方を見る。今はあの子が鬼として手つなぎ鬼をしているようね。……確かに楽しそうに笑っているわね。

 ゆっくりたちを捕まえてどんどん鬼が増えていくのを見ながら私は幽々子の方に向き直り一つ訪ねる。

 

 「妖夢の事は今は良いわ。此処に紫が来ないのならせめて心当たりはない?」

 「そうね、う~ん。……ごめんなさいね。ちょっと思い当たらないわ」

 

 そう。残念だけど仕方がないか。顔を目の前の庭に向けてあの子たちの遊びを見ているとゆっくりたちの動きが変わっていることに気が付いた。というより何か軍隊じみた動きをしているような。

 いやいや待て待て私。あの子の指示がまるでじゃなく本当に軍隊のように、軍師のように指示しているなんてありえないでしょう。うん。そうだきっとそうだ。

 

 「やったーー……?」

 

 あの子が頑張って妖夢のふわふわ浮いている半霊に飛びかかって捕まえたのを見ながら妖夢の発した次の言葉に噴いてしまった。

 

 「責任を取ってもらってください!!」

 「ぶふうぅぅぅぅ!!!!!?」

 

 あらあらという声が聞こえるが今はそんな場合じゃない。急いで止めないと!

 

 「? 貰えるのなら頂戴」

 

 間に合わなかった!!

 

 「あらあら、すごいわねあの子。もうお嫁さんを見つけたのね。勝ち組っていうのね、あの子のような子が」

 「幽々子! そんな事を言っている場合じゃないでしょう!?」

 「あら、二人が納得しているのだから良いじゃない。それにあの子は妖夢の半霊に触れたんだし」

 「良くないわよ! それに半霊に触れたってどういう意味よ?」

 「あら、霊夢は知らなかったかしら? 魂魄家、つまり半人半霊にとって半霊を触られることは裸を触られることと同義よ。だからあの子は責任を取れって言っているの」

 「だからと言って子供のあの子に―」

 「あら、それを言ったら妖夢だって幾ら子供でも裸を触られたいと思う? こういったとき男は責任を取るものよ」

 

 確かにそうかもしれないけどけれど。そう考えていると事態はさらに進行して。

 

 「あやややや!!? 特ダネです!!」

 

 どこかで聞いた烏の声がして翼をはためかせる音ともに消えていった。クソ、もう少し来るのが、もしくは飛び立つのが遅かったらいくらでも対処できたのに。

 

 「あら、既成事実の完成ね」

 

 如何しましょう? これであの子が外に帰るのが難しくなっちゃったじゃない。




はい、例え知らないとはいえ男なら一度いった事には責任を持たないといけません。さて、彼らは如何なるでしょうか。

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