ここが引っ越し先の町か。綺麗なところだな。
「お前たちもうれしいかい?」
「「「「「「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね」」」」」」」」」」」」」」」
僕の目の前には何とも形容しがたい生物がいる。人の生首をデフォルメした饅頭のような生き物たちだ。最初は僕が街中を歩いていたら見つけ、気になったために家まで持ち帰ってご飯を上げたらなついて住み着いたんだ。そのあと、しばらくするとなぜかもう一匹増えていた。最初の一匹は頭に大きなリボンがあったが次の奴は大きな三角帽子をつけていた。どこから来たかわからないから飼ったがどんどん数が増え、今では大家族だ。
今では八十を越えたために家族に相談したら飼うことのできる新しい家に引っ越そうということになって、今僕たちは引っ越している。
「ほら、ゆっくり達。見てごらん海がきれいだよ」
「「「「「「「「「「「「「「「ゆ、ゆっくり」」」」」」」」」」」」」」」
僕は便宜上こいつらをゆっくりと呼んでいる。家のことを手伝ってくれるし、それぞれが見た目や得意とすることが違い、見ていて飽きないんだ。
「それにしても本当こいつらは何なんだろうな?」
家族会議でも出てきたけどこいつらがなんなのかは結局わからなかった。けど、大型犬に襲われても逆に倒してしまうほどこいつらは強い位しか僕は知らない。大型犬以外にもおとぎ話に出てきそうな妖怪みたいなのと戦ったことはあるけど。
「じゃあ、お父さん。散歩に行ってくるね」
「おう。警察に通報されないように気をつけな」
「「「「「ゆ、ゆ、ゆ!」」」」」
このしゃべり方は喜んでいるようで時たまこういう風に声がそろう。普段はばらばらの声だから聞き取りづらいけど。
散歩のためにロープをたらすとゆっくりたちはどこにつけているかは分からないが体にロープを縛る。
「行ってきま~~す」
「「「「「「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」」」」」」」」」」」」
街中を歩いていると皆こちらを見てくる。というより、唖然として目を離せなくなっている。僕はもうこんな風にみられるのは慣れた。こいつらを金になりそうだと誘拐しようとした奴もいたけどそいつらはゆっくりに退治されたから襲われても心配はない。解剖させてくれっていう医者もいたしね。
「なにあれ?」
「いや、知るかよ。お前こそ何か知らないのか?」
こんな声も聞こえるけど気にしない。そろそろ公園にでも行こうかな?
「公園に行く?」
「「「「「ゆっくり」」」」」
「「「「ゆ、ゆ!」」」」
「「「「「「ゆゆゆ」」」」」」
えー、なになに。賛成が三十六名、反対が二十四名、花を見たいが一名、酒飲みたいが三名、説教したいが一名。ほかにもまだまだいるけど数えていたらきりがない。っていうかあれは食べてもいい人類かーってどのゆっくりが言ったんだ?
「賛成多数で公園に決定」
「「「「「「「「ゆ!」」」」」」」」
「「「「「「「「ゆ~」」」」」」」」
まあ、あのあと噂や騒ぎになったけど無事帰れて今は夜。
明日から行く学校に向けて準備をしないと。
「ゆ」
「あ、ありがとう」
青い髪のゆっくりがノートを持っていてくれた。このゆっくりは満月の日は緑の髪になって角が生えるんだけどよく僕に勉強を教えてくれる。
「ゆゆ!」
そう言って、僕に飛びかかってくるゆっくりがいた。こちらも蒼い髪だけどどこか、その、バカっぽい顔つきのゆっくりは実はさびしがりなのかよくこうやってぼんやりしていると飛びついてくる。
「あはは、忘れてないよ。ホレホレ」
頭をなでてやるとこいつらは凄い喜ぶ。天井近くまで跳ねながら蒼いゆっくりは移動していくと、その後ろには綺麗に一列に並んだゆっくりたちがいた。
「みんなさびしがり屋だな」
「「「「「ゆっくりなでてってね!!」」」」」
どこか顔を赤くしながらもゆっくりは順々に僕に撫でられていく。これが僕の一日だ。皆に囲まれながら布団で眠る。わらわらと集まる姿はちょっと不気味だけど慣れてくるとかわいいものだ。
「おやすみ」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「ゆっくり寝ていってね」」」」」」」」」」」」」」」」」」
ゆっくりたちがいつもより静かな声であいさつしてきてくれる。ああ、明日もまたゆっくりたちとどこに行こうか? そんなことを考え僕は眠っていった。
「驚きましたわ」
私は非常に驚いている。なにせあのゆっくりを従わせている人間がいるなんて。というより、私も知らないゆっくりがいるのだけど。
ある日突然ゆっくりが幻想郷から消えていった。誰も気にも留めなかったけど一応私が調べに来たけどこんな結果になるとは思わなかった。さっきも言ったけどびっくりしたわ。
「「「ゆっくり」」」
「っ!?」
バカな!? 今の今まで眠りこけていたはずなのに!
起きているゆっくりたちに囲まれた!? 囲んでいるのは神奈子・幽香・霊夢・魔理沙・フラン・幽々子・永琳・豊姫・勇儀・白蓮を模したゆっくりたち。というより、私のゆっくりが一番ぐーすか眠っているは何でかしら!? 納得がいかないのだけど。そう思ったらどこからか、「一番納得します、紫様」という声が聞こえたわ。 藍、油揚げ没収ね。
そう心に決めながらもどうやってこの包囲網から抜け出すかを考える。スキマを開くには時間が足りない。開こうとした瞬間に襲われるだろう。
「「「「「「ゆっくり」」」」」」
そうしていると他のゆっくりたちまでも起きだしてきた。というより、私のゆっくりだけはまだ寝ているわね。
『幻巣 飛行虫ネスト』
繰り出された弾幕は眠っていた私のゆっくりに直撃して目を覚まさせる。
「ゆっ!? ゆっくり!?」
ようやく起きたか。これで私のゆっくりが眠りこけていたことなんて誰にも知られないわ。
それよりも、今ので臨戦隊形に並び始めたゆっくりからどう逃げるべきかしら。
「ゆ」
ん? 霊夢のゆっくりが何か私に話しかけてきた?
「何かしら?」
「ゆっくり、死ね!!」
ちょっと!!? いくら何でもひどくないかしら!?
そう思いながらも襲いかかるゆっくりたちから逃げるため結界を張る。体ごとぶつかってくるゆっくりに結界がきしみを上げ始める。時たま威力が桁外れに強くなるのは萃香に勇儀のゆっくりね。けれども結界にあたることで包囲網の一部が崩れた。そこから走って近くにあった窓を開けようとするが烏天狗のゆっくりに止められてしまう。けれど追いついてるのはこの一体だけ。なら
「悪いけど退散させてもらうわ」
そう言い放ちスキマを開き逃げる。すぐさまスキマの入り口は閉じて、中に入れないようにする。
「驚いたわ。ゆっくりが強くなっているなんて」
そう、ゆっくり程度で後れを取るほど私は落ちぶれてはないわ。だけど、今回のゆっくりは集団戦を仕掛けたり、個々の戦闘力が高くなっていた。これは飼い主である彼の影響かしら。
とにかく一旦幻想郷に帰って対策をきちんと立て方が良いわね。そう思いスキマを開き幻想郷に行く「ゆっくり死ね!!」
「え!?」
後ろから私のゆっくりが青筋を立てて攻撃してきた。突然の攻撃に対処できずに撃ち落されてく。そんな私の能力まで使えるなんて。
意識を失いかけながらもなんとか幻想郷への入り口を作ることに成功した。
覚えておきなさい。この痛み、いつか返してやるわ。ここまでが限界で私は意識を失ってしまった。
「う~ん? なんでこんなにこの部屋がボロボロになってんだ?」
「「「「「ゆっくり?」」」」」
「ん。大丈夫。気にしなくていいよ」
「「「「「ゆっくり♪」」」」」
まあ、ゆっくりたちでもそんなことはできないだろう。
「おーい、朝食の時間だぞ! 早くしないと母さんの飯が冷めてしまうぞ?」
「そうよ、早くしなさい」
「あ、はーい。じゃあ皆行こうか?」
僕の後ろをポンポンはねながらゆっくりたちも食卓に向かう。
今日も平和だ。今日はゆっくりたちと何をしよう?
まあ、何でもしよう。時間はたっぷりとあるんだから。
主人公 名無し
能力 ゆっくりを強くする程度の能力
ゆっくりと会話する程度の能力
ゆっくりをまとめ上げる程度の能力