メデル・プルーフ   作:Cr.M=かにかま

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めっちゃ、久々の更新!
内容短くてすみません!


80.挑戦状

 

ライムの乱入により場は騒然とする、村人にとって村長が助かった安堵感よりもヘストを怒らせたのではないかという不安が勝っているようだった。

ノルドの肩に移動したレッドは呆れ、ノルドは目を見開いて驚き、ミスティは何が面白いのかライムの行動に対してクスクスと笑みを浮かべていた。

 

「一体何してんだ、チビ助は!?」

 

「諦めろ。あれがライムだ」

 

「いや、しかしだな!」

 

「−−−いいから行くわよ」

 

「ミスティちゃん!?鳥の兄ちゃんまで、本気で行くつもりか!?」

 

「もう行っちまったんだ、あいつ一人で背負わせるわけにはいかないからな」

 

「.....しゃあねぇな」

 

ノルドも渋々といった様子でミスティの後を追う。

騒然とする村人たちを掻き分けて一人突っ走ったライムの元へと急ぐ、元々彼は治療魔術師だ。

まともな戦闘要員ではないし、そもそも前線に出ること自体が間違いな人間である。

 

「小僧ォ、死にたいのか?」

 

「死ぬつもりはない。お前こそ地面に這いつくばる準備はいいか?」

 

「−−−イノム!」

 

ヘストが叫んだ瞬間、バイソンノワールのイノムが鼻息を荒げながらライムに向かって二本の双角を立てて突進してくる。

ライムの自信はどこから湧いてくるのか、それは本人にもわからない。

だが、ここで退いてしまえば助けた村長を見捨てることとなってしまう。

そんなことはできない、絶対にライムは助けると決めたら助ける。

そして突っ込んだ問題にはとことん足を踏み入れる。

そんな男だ。

 

−−−イノムの突進を遅れてやってきたミスティが杖一本で止める。

鋼鉄の杖に頭を激突させたイノムの脳は揺れ、一瞬動きが止まる。

 

「−−−、ぉお!」

 

「っと!」

 

ライムの魔力を宿した張り手がヘストを狙う、ヘストは剣を盾にして攻撃を防ぐ。

しかし、魔力によって生まれた波はヘストの生身に衝撃を伝える。

一撃入れることができなかったライムは一旦ヘストから離れ、睨み合う。

あのまま攻撃を続けていたら反撃にあっていた可能性が高い。

 

「.....やるじゃん」

 

「そりゃどうも」

 

一触即発の状況、その隙にミスティとノルドは村長を安全な場所に移動させ村人たちに注意を呼びかける。

今、ヘストがライムに興味を向けている今こそがチャンスだ。

この隙に村人たちを避難させてミスティとノルドも合流し一気に奴を叩くつもりだった。

 

「そこまでだぁ、ヘストォ!僕は逃げないぞぉ!!」

 

−−−とある村人、青年の雄叫びがあるまでは

 

「あン?」

 

「なっ!?」

 

ヘストはこれからの楽しみを取られ不機嫌そうに、ライムは突然のことに驚きそれぞれが動きを止める。

 

「お前なんか、お前なんかに頼らなくても村は平和でやっていける!今すぐ出て行け!!」

 

「おい、よせビート!!」

 

「ヘストさんを怒らせんじゃねぇ!」

 

「あんたらはいつまでそうやって怖気づいてるんだ!?見ず知らずの誰かがヘストと向かい合っているのに当事者の僕らは何もせずに見てるだけで終わらせるのか、被害者で終わるのか!?僕はそんなこと絶対にしない!!」

 

「おいおい、こいつよりも雑魚の素人が俺に喧嘩売っちゃってんじゃねぇよ。カッコいいこと言ってっけど、どうせ言ってるだけだろ?」

 

ヘストがビートと呼ばれる青年に手をかざした、瞬間、ヘストの掌から衝撃波が放たれビートの体を容易く弾き飛ばす。

 

「がっ、げほ、げほ!」

 

「不愉快なクソガキだぜ。お前、そこでちょっと待ってろよ、あいつ殺してから勝負しよや」

 

「ふざけんな!!」

 

ライムがヘストを追いかけようとしたが、バイソンノワールのイノムが立ち塞がった。

 

「どけよ牛!」

 

「ライム君!」

 

ミスティも駆け出すが間に合わない、ヘストが抜いた剣はビートの頭上に上げられて振り下ろされる寸前だった。

 

「男と男の戦いに横槍入れやがって、クソ素人が」

 

「−−−待ってください!!」

 

そして、再三として響いた制止の叫びにヘストは動きを完全に静止させる。

ニヤリ、と笑みを浮かべながら。

 

「約束したはずよ、私が20歳になるまで村の人たちに危害は加えないって、村長まで攻撃して、ビート君も殺そうとして、最初から約束なんて守る気はなかったの!?」

 

「エルナちゃん、勘弁してくれや。俺は別に無意味に攻撃してるわけじゃないんだ」

 

「でも、なんで、ひどいよ!」

 

「はぁ、あのなぁ、約束ってのは対等な立場で交わされるものなんだぜ。いい機会だから、お前らにも言っといてやるよ」

 

ヘストは全身から凄まじいほどの殺気を放出させる。

ピリピリとした緊迫感が村全体を包み不穏な空気を作り上げる。

 

「−−−俺がいつお前らと対等になったんだ?お?」

 

村人たちは答えなかった、否答えれなかった。

ヘストの言うことがあまりにも圧倒的で、自分たちがあまりにも無力で惨めで、情けなかった。

 

「チッ、おいそこの、名前は?」

 

「.....ライム」

 

「今回はライムに免じて見逃してやる、気が変わった。あと、ライム!お前は明日俺のアジトに来て一騎打ちするぞ、勝負の続きがあるからな。あの山に俺のアジトがある、いいな、一人でこいよ。村人の命が惜しかったらな。今動いたらこのガキ殺す」

 

「.....わかった」

 

「では、皆様。アディオス!」

 

ヘストはさっきと打って変わって陽気な様子でイノムに乗って山へ戻って行った。

村には再び不穏な空気が訪れ、ライムはさっき助けた村長の元へと向かった。

ノルドが様子を見ていてくれたお陰で被害に遭わずに済んだようだった。

 

「お前さんらは旅のものか?」

 

意識のある村長に治療魔法を掛ける、村長の問いかけにライムはこくりと頷く。

 

「そうか、とりあえずは礼を言う。感謝する」

 

「気にしないでください」

 

「そうか。俺はカルナだ。ここで村長してる片腕の老ぼれさ」

 

「片腕.....」

 

「前にヘストの野郎にスッパリ斬られちまったからな。うまくバランスが取れやしない」

 

へへへ、と笑いながらカルナはゆっくりと立ち上がる。

村人達は集まりライム達を囲むような形になる。

 

「皆無事か?」

 

「えぇ」

 

「なんとか」

 

「とりあえずこの人らに宿を提供してやれ、一泊くらい泊まれるモンは揃ってるだろ」

 

カルナの言葉にライムは気を重くしてしまう、本当にいいのだろうか?

そのままカルナの言葉と勢いに逆らうことができず、ライム達は一泊させてもらうことにした。




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