色々とおかしいですが気にしないでください(笑)
1.二人と一羽
ここはノレオフィール大陸の南西に位置する小さな集落。
名もなき集落で村人たちも特に気にしている様子もない。削り取られた山肌を基盤として生活しており魔物の襲撃も少ない比較的平和な集落である。
主な生産品は高地で作られる作物が多く、品質が良いため旅人や行商人も訪れることが多い。
そのため宿も多く、温泉もあることから隠れスポットとして有名である。
「ふぅ〜、疲れたー」
「久々の宿だもんね。温泉も浸かりたいしのんびりしていきたい気分」
「でもこの宿に泊まるだけで持ち金ほとんど使っちまったからまたしばらく野宿が続くだろうな」
「じゃあさ、働いて稼ごうよ!」
「.....どうせ俺一人なんだろ?」
「何言ってんの?当たり前でしょ」
「だろうな!お前はそういうやつだもんなミスティ!」
「でも実質私が働くよりもライム君が働く方がお金になるじゃない?」
ぐぬぬ、と反論できずに唸る。
言い返せない少年、ライムはボサボサした赤茶色の髪を掻き毟りながら地団駄を踏む。そしてもじもじとしている女性、ミスティはその場で服を脱ぎ始める。
魔女のような露出が多い服がパサリパサリと音を立てて地面にゆっくりと落下していき、彼女の華奢な裸体が露わになる。
「何故服を脱ぐ!?」
勿論、こんな状況に健全な少年ライム君は赤面せずにはいられなかった。
「あ、ライム君まだ出てなかったんだ」
「なんで俺が出ていっていないのかわからずにキョトンとするのをやめていただけませんかね!?そして続けて脱ごうとするな!」
「.....ライム君のエッチ」
「.....これは俺が悪いのか?」
宿、風隠れの一室はカオス極まりない状態となってしまった。
※
「.....またお前はミスティの裸を見たのか。懲りない男だ」
「待ってくれ、せめて言い訳をさせてくれレッド!俺の理解者はお前しかいないんだ!」
「ライム、俺みてぇな鳥の理解者じゃなくて人間の理解者も必要だと思うぜ。具体的に言うと友達っていう存在が」
「気にしてることズバズバ言うのやめていただけませんか、お願いします」
ライムはそのまま部屋を出て宿の外にいるレッド(ソニックイーグルという種族の魔物、人間ではない)の元へ向かう。
右目を傷付けており隻眼の鳥であり声が低く渋い印象が受けられる。
名前の通り毛並みが深紅のように赤いのも特徴である。
現在の時刻は夜で集落は静まり返り人の気配は感じられない。
「なぁレッド、イルバースにはあとどのくらいで着きそうなんだ?」
「このペースで行くと三日、ミスティの気分次第で一週間ってところだろうな」
「ほんっと、ミスティって自由だよな。人の都合も考えずに他人を振り回してさ」
「そこには同意するが、彼女には彼女なりの考えもあるんじゃないのか?それにイルバースに向かう目的そのものを作ってくれたのはミスティだろ?」
「.....まぁな」
ライムは苦い顔をしてため息をつく。
レッドはニヤリと笑みを浮かべて言ってやった!みたいな感じで胸を張っているようにも見える。
「なぁレッド、治療魔術師って本当にもうほとんどいないのかな?」
「.....あまりナーバスになるな。旅は楽しい方がいい」
「.....そうだな」
レッドはライムの幼い頃から知っている父親のような存在である。
貫禄があり誰よりも男らしく誰よりも誇らしい、鳥だろうが魔物だろうが関係なしにそんな風格が漂っている気がする。
「そういやお前ってなんで喋れるの?」
「さぁな」
そんな彼でも自分のことはイマイチわかっていない。
※
ライムとレッドが外で話している間、ミスティは一人温泉で旅の疲れと汚れを落としていた。
この集落付近は山や岩や谷ばかりだったため水浴びをするための池や川と巡り会えずいたため本当に久々の水浴びとなる。
「はぁ〜気持ちぃ〜」
豊富に育った二つの大きな胸は綺麗な谷間を作っていた。
長い薄紫の髪を一つに束ねて疲れを癒す。
空を見上げて星を眺める、彼女にとってこんな何気ない行動ですら幸せに思えてしまう。
元々ミスティは一人で旅をしていたのだが、偶然と偶然が重なり合いライムと出会い色々あって共に旅をすることになった。
そういえば、と彼女はブクブクと泡を立てながら思い出す。
ライムと出会った夜もこんな感じに星が出ていたな、と。
「ま、大切なのは今よね」
ふふ、とミスティは小さく笑った。
※
翌日、ライムとミスティとレッドは資金を稼ぐべく宿を出て集落の広場にやってきていた。
「ここの人たち皆健康そうだよな」
「そうね、商売にならなさそうね」
「そういうこと言うんじゃねぇよ。健康で元気なのはいいことだ」
「でもねレッド、今お金は必要なのよ。これからも必要になってくるからライム君には頑張ってもらわないと駄目なのよ」
「しかしだな、俺は元々ライムの力で商売すること自体に反対なんだ。こいつの力は金を稼ぐ力じゃないからな」
「俺もレッドに賛成かな」
「ライム君まで!?」
「大体ミスティだってその気になれば商売なんて簡単に出来るじゃん。何で俺に頼るわけ?」
「もう、そこは一緒に旅をしている仲として出来ること出来ないことを補い合うんじゃない!」
そんなものか、とライムは心中で呟く。
ライム自身自分の力で人の為になるならそれでいいとは思っているが、商売に関しては別である。
しかし、生き残るためには必要なことでもあり長年悩み続けている悩みの種でもある。
そんな彼の悩みなど知らん顔で突っ切っていくのが彼女である。
ある意味その決断力が羨ましいと何度思ったことか。
「.....ま、そこまで言うんだったら私も少し仕事探してくる。この集落で手伝えることがあったらの話だけどねん」
「お前なぁ」
「あ、あの!」
ライムとミスティが口論していると突如第三者から話しかけられる。
二人同時に振り向くとそこには幼い少女がいた。
「どうしたの、君。お姉さんたちに何か用?」
「おばさんの間違びぃ!?」
「ひぃ!?」
ライムが真顔で冗談を言うとミスティの鉄拳が顔面に飛んでくる。
その光景に少女は思わず悲鳴をあげる。
「大丈夫よぉ、怖くないわよ」
「お前が言うな」
「きゃあ!?魔物ー!?」
「え、ちょ...!?」
少女が叫ぶとミスティはレッドの頭を掴みアイアンクローを喰らわせる。
理不尽である。
「それでどうしたの?」
「あの、その、さっきお仕事探してるって」
「えぇ、言ってたけど」
「あの、ウチに来てくれませんか?」
少女は涙を流しながら頭を下げた。
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