魔法少女が許されるのは15歳までだと思うのだが   作:神凪響姫

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~どうでもいい作者の謝罪コーナー~

「一か月どころか三か月も放置しているではないかね」


……はい、お久しぶりです。神凪響姫です。ご無沙汰しております。

新学期始ってレポートやらプレゼンやらで色々多忙を極めておりました。3月のなのは劇場版のBDが発売する頃に書こうかーなんて思っていたらもう五月ですよ。

しかも書き始めて一周年じゃないですか。……二か月前が。もうなんというかダメですね。


やっと自分の時間が確保できるようになったので、ゆっくり更新を続けていきたいと思っておりますので、どうかお許し下さい。


では始めます。


……そろそろ書いてきたとこ修正したいなぁ。ふぅ……


第十一話 真実なんて……なんです

 

 某次元世界にて。

 

 篠突く雨の中、泥土の上を、ヴィータは歩いていました。

 

 

 既に満身創痍、自慢のアイゼンを握る手にはほとんど力が入っておらず、ひきずるように歩いていました。まるで幽鬼のような足取りで、俯き加減に進む様は亡霊と見紛うほどです。

 

 一歩、一歩と進み、やがて身体に力が入らなくなったヴィータは泥に足をとられ、前のめりになり、倒れてしまいました。

 

 

 しかし、

 

 

「こんなの、ちっとも痛くねぇ……」

 

 

 ヴィータはくぐもった声を上げました。

 

 

「はやてはもっと、ずっと苦しいんだ」

 

 

 闇の書が完成し、はやてが本当の主になったところで、彼女が本当に喜ぶかどうかは分かりません。

 

 はやては怒るかもしれません。

 彼女達を嫌いになってしまうかもしれません。

 

 

 だけど。

 

 

「あと、もうちょっとなんだ……」

 

 

 ぎゅっと拳を作ると、地面に手をついて立ち上がりました。

 

 

「闇の書が完成さえすれば、はやては元通りになるんだ……」

 

 

 生きてさえいれば、死ななければ。

 ずっと一緒にいられる。

 

 それだけは、確かな事実でした。

 

 

 既に息は荒く、傍目にも疲労困憊加減が窺えます。けれども泣きごと一つさえ漏らさず、静かな足取りで進んでいきます。

 

 

 やがて泉の傍までやって来ると、音もなく飛翔しました。すると彼女の魔力を察知したのか、水面がボコボコと粟立ち、水の中から魔物が飛び出してきました。

 

 蛇のような外見をした魔獣、それが何匹も現れ、獲物のお出ましとばかりに牙を剥きました。

 

 

「みんな一緒に、静かに暮らせるんだ……!」

 

 

 しかし、ヴィータは決して引き下がりませんでした。

 

 血が流れ、身体は痛み、いつ倒れてもおかしくない状態です。

 

 だけど、ここで倒れてしまっては、大事なものを失ってしまうかもしれない。大切なものを守れないかもしれない。そう思えば、臆する心など彼方へ消えてしまいます。 

 

 

 守りたいと感じて、守ると約束したあの日から。

 

 ヴィータはいつだって、主を守る守護騎士であり、阻むモノ全てを打ち砕く、鉄槌の騎士なのですから。

 

 

「やるぞ、アイゼン!」

《Jawohl.》

 

 

 獰猛に口を開く巨大な獣を前にして、ヴィータは果敢に攻め込みました。

 

 偏に、主のため。

 ただ、自分達の幸せのために。

 

 鉄槌の騎士・ヴィータは、鉄の伯爵・クラーフアイゼンを振りかざしました。

 

 最初から、全力で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに他の三人はというと、監視が厳しくやることがないので揃ってパチスロをやって散財していましたが、後にヴィータにバレてハンマー片手に追い回されていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   A's編 第十一話

 

   真実なんて……なんです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……つまり、こういうことかね? 闇の書とやらは、元々『夜天の書』という、各人の個人情報や緻密な環境データなどを保護し、後世に伝えるための情報収集機関だったのだが、ある時に自動防衛運用システム・ナハトヴァールとやらが組み込まれたせいで、集めたデータを強制的に撒き散らすものへと変貌してしまった、と」

『大体そんな感じよ』

 

 

 なのはの解釈にリンディは小さく頷きました。

 

 

 ユーノが(自分が空気にならぬよう)必死こいて調べ上げた結果、守護騎士らの擁する『闇の書』は、長年の転移期間中に改変を受け、それが存在自体を歪めるほどの悪影響を及ぼしているそうです。

 少なくとも、持ち主に多大な影響を与えているのは間違いないと、ユーノは語ります。

 

 ただでさえ、クライドの一件で危険視されているのですから、徐々に判明し出した事実に一同は緊張の息を呑みますが、

 

 

「まぁ結局のところなるようにしかならんよ」

 

 

 あまりにも自信大爆発ななのはの声を聞くとシリアスの株価が一瞬で大暴落してしまうのでした。

 

 

 現状、守護騎士らの動きが活発化していますので、接触の機会は多いでしょう。以前の交戦で警戒されているでしょうが、向こうの動きに焦りが見られましたので、遅からず顔を合わせる機会が訪れる……というのが、リンディの意見でした。

 

 

『ただ気をつけてね。今回の闇の書は、何かに引き寄せられている感じがするって、ユーノ君が言ってたわ。嫌な予感がするって、まるで何かに怯えるように』

 

 

 ほとんどいつものことなのでまるで緊迫感が伝わってきませんが、とにかく危険であることに相違ないので、なのはは黙って頷きを返し、通信を終えました。

 

 

 無音になった部屋で、なのはは小さく息をつきました。

 何事か考え込んでいるらしく、その横顔はやや沈鬱そうです。

 

 

「……何か、違和感がある」

 

 

 ここ数日、なのはは胸にしこりのようなモノを感じていました。物理的なものではなく、胸の奥の辺りに筆舌に尽くし難い何かを抱えていました。

 最近欠かさず行っている魔法の練習の悪影響でしょうか、それとも魔力を蒐集されたからでしょうか、健康面にはまったく悪影響が無かったのでちっとも気に留めていませんでしたが、以前の蒐集行為を受けた辺りから強まっている気がしていたのです。

 

 リンカーコアが極度に小さくなるほど魔力を吸い上げられたのですから、身体の不調も止むなしと言いたいところですが、あれから暫く時間が経っていますし、デバイスの修復が完了した時点で、医師の診断は健康そのもの、というものでした。

 

 

「何かがおかしい気がする、しかし……何がだろうか」

 

 

 珍しくシリアスな空気を漂わせるなのはでしたが、ふと、突然ひらめいた答えに、フッと不敵な笑みを浮かべました。

 

 

「そうか、私も大人の階段を上っているということか」

 

 

 台無しすぎです。

 

 結局答えは分からないまま、母親の呼ぶ声に誘われ、部屋を後にしました。

 

 

 

 

 

 

 その日、はやてはいつもより遅くに目が覚めました。

 

 いつも一緒に寝ているヴィータがいないため、抱き枕にしがみついた状態で起床したはやては、朝の陽ざしに目を細めました。

 

 

「……ぬ。ヴィータは今日いないのか」

 

 

 どことなく寂しそうに言ってから、はやては首を振りました。八神はやては強い子です、孤独に負けず、世間の冷たい視線にも挫けず、一人で生きてきた逞しい少女なのです。抱き枕にしがみついてないと寝られないとか夜中に催した時には寝ぼけ眼のシグナムを伴わないとお手洗いに行けないとかそんなのは知りません。

 

 一日や二日留守にしても咎めない、心の広い主であらんとするはやてでした。これがシャマルやザフィーラなら即刻ヘッドショット撃沈コースでしょうね。

 

 そろそろ他の皆を起こそうかと思い、ベッドから降りようとしました。

 

 

 と、その時。

 

 

「くっ……!?」

 

 

 突如、胸に鈍痛がはしりました。

 

 尋常ではない痛みに、はやては車椅子にかけた手がすべり、勢い余ってベッドから転げ落ちてしましました。

 

 

 その音を聞きつけたのでしょうか、それとも最初からスタンバってたのでしょうか、シャマルがタイミング良く飛び込んできました。

 

 

「どうしたのはやてちゃん! 朝から激しいわね! お姉さんちょっとお手伝いしてもいいかしら……って、あら?」

 

 

 ノックもなしに突撃をかましたシャマルは、胸を押さえて蹲るはやてを見てすこぶる驚きました。

 

 

「だ、大丈夫はやてちゃん!? 胸が薄いのが嫌なら私が豊胸テクを今ここで伝授しても!?」

「き、貴様は平常運転、す、ぎ……」

 

 

 はやては苦しげに言いました。

 

 いつものキレが無い弱弱しいツッコミに尋常ではないと悟ったのでしょうか、これにはさすがのシャマルも血相を変えて慌てました。

 

 

「た、大変よぉっ! 大変大変たいへんたいへんたい―――へんたいよヴィータちゃん!」

「誰がヘンタイだコラァアァアアアアアアッ!!」

 

 

 ヴィータが扉ごとぶち抜いてきました。

 

 

 

 

 

 

 病態が悪化したため緊急入院。

 

 石田先生の一言で、守護騎士たちは凍りつきました。

 

 

 診察室から出た四人は半ば呆然としながら、病院の外でたむろしています。それぞれが思い思いの場所で俯き、或いは呆然と外を見つめていました。

 

 予想していたことなのに、分かっていたことなのに。あらためて直面してみると、ショックが大きかった四人は、沈鬱な面持ちで佇んでいました。

 

 

 シャマルは思わずといった具合に泣き崩れました。

 

 

「はやてちゃん、あんなに苦しんで……辛かったでしょうに、可哀そう!」

「なんという不幸……! 我々が四六時中ついていながら、主の不調を見抜けんとは!」

「己の力不足をこのようなところで実感するとは……!」

「オメェら日々の所業振り返ってみろや」

 

 

 青筋を浮かべたヴィータが突っ込みました。三人は口笛を吹いて誤魔化しました。

 

 

 もう時間がない。

 

 はやての症状が悪化の一途を辿っている今、悠長に構えているわけにはいきません。一刻も早く蒐集を終え、闇の書を完成させねばなりません。

 

 

「活動範囲を広げたのはいいけど、効率が低下しちまうんだよな……。どうする?」

「そうね。……とりあえず景気づけに一発回しておく?」

「もうエ●ァはこりごりでござる」

「攻殻●動隊は今日当たりが近そうだ」

 

 

 デカいパチンコ玉が飛来しました。大当たりでした。

 

 あー、と爆発に呑みこまれる三人。アイゼンをそっとしまうヴィータ。

 

 

「……仕方ねぇ。こうなったら多少危険度が増すが、近くの次元世界で漁るしかねぇな」

「じゃ、じゃあ私は無邪気系の幼子専門ということで」

 

 

 当たりが出ました。

 

 ホーミングする鉄球から必死に逃げようとしているシャマルを完全に無視して、ヴィータはふぅ、と息をつきます。

 

 

 ふと、ヴィータは思い出したかのように呟きました。

 

 

「……なんか重大なこと忘れてるような気がする」

 

 

 何かが頭から抜け落ちているような、ぽっかりと重大な部分だけを抜き取られたような気がしました。

 

 忘れてはいけない何かが、あったような。

 

 闇の書を完成させた、その後に、何かがあったような……。

 

 

 ぽん、と。

 

 考え込むヴィータの肩を、頭がアフロになったシャマルが叩きました。

 

 

 彼女は優しげに微笑み、ヴィータを元気づけるよう、努めて明るい口調で、

 

 

「ヴィータちゃん、大丈夫よ。守護騎士だって成長するのよ? ……根拠はないけど。だからヴィータちゃんが近頃食べ過ぎてお腹のお肉を減らすために蒐集に出かける機会多くしてダイエットしてるのは無駄なんかじゃな――」

 

 

 シャマルがフィーバーしました。

 

 

 

 

 

     ●   ●   ●

 

 

 

 ある朝のことでした。

 

 

「ふぇ? お友達が入院した?」

 

 

 いきなりオメェ誰だよ的な発言が出ましたが、帰り支度をしていたなのはの驚きを含んだ台詞です。久々なので忘れかけておりました。

 

 

 すずかは心持ち元気がなさそうな顔をして続けます。

 

 

「うん……この間まで車椅子を使って公道を爆走していたくらい元気だったのに、昨日突然入院しちゃって」

「それは元気の範疇を超えてるね」

 

 

 なのはが冷静に突っ込みました。

 

 

「それで、お見舞いに行こうと思うんだけど、なのはちゃんもどうかなって」

「え? 私も?」

「うん。きっとはやてちゃんも喜ぶと思うんだ」

 

 

 すずかは純粋に、そのお友達のことが心配なのでしょう。既にアリサも誘ったと言っていますが、初対面の人間を連れていくのはどうなのかと思わなくもありません。

 

 しかし事情を聞けば、はやてという少女は友人が少なく、すずか一人で行くより皆と一緒に行った方が楽しいのでは、というすずかなりの心遣いでした。

 

 

(友人が少ないとは……なんとも涙を誘う話だね?)

 

 

 オメェはどうなんだよオメェは、と大声で突っ込みたいです。

 

 最終的になのはは了承しました。どの道守護騎士らが動かないとどうしようもないので暇だというのが現状ですしね。

 

 で、もう一人暇をもてあまし気味のフェイトはというと、あまり乗り気でないようで、

 

 

「んー。ボクは別にどうでも――」

「フェイトが来てくれた方が私も嬉しいのだが」

「やっぱりボクも行く!」

 

 

 あっさり意見を翻し、ホイホイついて行くことになりました。

 

 

 

 

 

 同日。

 

 守護騎士四名は、はやての見舞いの準備をしていました。

 はやての病態が少々安定したので、再びヴィータとシグナムが出向くことになりました。シャマルとザフィーラは病院に入って早々小児科へ突撃を仕掛けることが多々あるので今回は見送りになりました。病院の警備は完璧です。

 

 

 ふと、ヴィータは顔を上げて、思い出したことを言いました。

 

 

「ああ、そういえば、今度はやての友達が見舞いに来てくれるらしいぞ。すずかっつったっけな?」

「なん……だと……?」

 

 

 シャマルが違う世界の住人みたいな顔をしていました。

 

 

「どういうことだ……『あの』主に友人がいるだと?」

「それはひょっとしてヴィータなりのギャグなのでござろうか……」

「きっと子供を使う新手の詐欺じゃないの?」

「オメェら疑り深すぎだろ」

 

 

 まったく信じてないようでした。

 

 

「ヴィータちゃん。一応聞くけど、それって人間のお友達?」

「他に何があるんだ」

「いえ。てっきりシル●ニアファミリーか何かだとばかり……」

「せめてぬいぐるみにしとけよそこは」

 

 

 五十歩百歩ですね。

 

 

「驚いたな。若干コミュ障入った厨二全開の主に友達ができるとは……」

「今年一番の驚愕だったでござる」

「ちょっと二人とも、はやてちゃんに失礼よ。いくらはやてちゃんが頭に厨二インラント喰らってるイタい子でも、お友達ができる可能性は一パーセントくらいあるはず」

 

 

 こいつら『敬意』って言葉知らないんじゃなかろうか、とヴィータが半目で睨んでいると、シグナムがむっとした顔で言いました。

 

 

「ぬ。ヴィータ、何か勘違いしているかもしれぬが、我々は主をきちんと敬っているぞ」

「そうか、悪かったなシグナム。……ところでオメェが持ってるチョコはなんだ」

「ああ、これは主のためにと思って買っておいたゴデ●バのチョコでござる」

「なるほど。――食ってんじゃねぇよ!」

 

 

 ヴィータがチョコを取り上げました。シグナムは涙目で蹲っております。

 

 一方、シャマルはザフィーラが鎮まり返っている事に気づきました。最初こそ驚いた様子を見せていたものの、相手の名前に心当たりがあったのか、腕を組んで黙っています。変な妄想している可能性が濃厚。

 

 

「あらザフィーラ、もしかして知ってるの? そのすずかって子」

「ああ。以前一度だけ会った事がある」

 

 

 静かな返答にシャマルは少なからず驚きました。

 

 

「ザフィーラが何も反応しないなんて……もしかしてそのすずかって子は幼女じゃなくて筋肉満点のタフガイとかそういう感じ?」

「ちょっと頭沸き過ぎだろう貴様。……幾ら俺とて時と場合は考慮するぞ」

 

 

 考えるだけで実行するとは限りませんよね。

 

 

「そういえばこないだザフィーラが随分熱心にページを増やしてくれたけど、まさかその子から……」

「違う。それは以前大人数の大人連中から吸い上げたものだ」

「え? もしかして管理局相手に?」

「いや。――通学路を歩いていたら思わず本能が目覚めてしまって、人間形態のまま小等部に突撃したら警備員がそこかしこから現れてな。雄叫びを上げながら逃走していたら指名手配されそうになったので、目撃者を片っ端から蒐集してしまえばいいやと思いちょっと……」

「やめてよザフィーラそうやって人様に迷惑かけるの! こないだお巡りさんに見つかって連行されたの忘れたの!? また謝りに行かないといけないじゃない!」

 

 

 最早常習犯でした。

 

 

「何がいけなかったんだろうな。ちゃんと道行く子供たちには断りを入れたぞ『私は怪しいことなど何もしていないから安心しておくれ』と。――当たり前のように通報されたが」

「ぶっちゃけ見た目が怪しいと何されても文句言えないわよね」

「何だと! この俺のどこが怪しいか声に出して言ってみろ!」

「前かがみになってなければまだ怪しくなかっただろうな……」

 

 

 ザフィーラが「なんで分かったんだ」みたいな顔をしていますが普段の所業が動かぬ証拠です。

 

 

「さ。こうしてはおれん。主のために、今日も蒐集に勤しまねば」

 

 

 露骨に話題を逸らしました。

 

 

「……まぁいいけどよ。ともかく、今度のクリスマスにははやての友達がくっから、そん時までにはひと段落させておきたいんだよ」

「なら近場で蒐集するしかないのだな」

「大丈夫かしら……近隣の次元世界じゃ管理局に気づかれそうね」

「案ずるな。近く連中がにいれば俺の鼻が気づく」

 

 

 非常に頼もしげですが言ってる事は変態スレスレです。

 

 

「本当? ザフィーラの鼻って案外あてにならないし……」

「失礼なことを言うな! 貴様のような加齢臭漂う骨董品など地平線の先からでも分かるわ!」

 

 

 シャマルが旅の鏡を出そうとしたので急いで止めました。

 

 

 

 

 

 それから数日後。

 クリスマス、それは聖なる日……性成る日とか考えた人は即刻退場して下さい遠慮せずに。

 

 

 なのは達は以前の約束通り、はやてという子が入院している病院へやってきました。

 

 

 予め場所を教えてもらっていたので、なのは達は現地集合し、そこから病室へ向かう手筈でした。

 

 

 フェイトは一番最初に着きました。まぁ途中で5回ほど迷子になりかけて涙目となっていましたがどこぞのロリコン疑惑のある某執務官の通信によって助けられてなんとか辿り着きましたけど。

 

 

 が、待っているとなのはがやってきました。

 

 ―――病院の中から。

 

 

「ねぇなのは。なんでお見舞いする人が怪我してるの?」

 

 

 しかも何故か全身擦り傷だらけで、肩で息をしていました。

 

 

「ああ、これは失礼。……予定よりも早く到着したので、病院内を探索していたら鼻息荒い医者に『検査! 問診! ゲットだぜ!』などと訳分からんことを叫びながら突撃してきたので階段から蹴り落としたら、今度は廊下から御老体の医師がワラワラと出てきて『ジャンクフード漬けの若者に負けはせん! ストレイツォ容赦せん!』と言って献血を求めてきたので全て撃墜していたのだよ」

「た、大変だったんだね……」

「ああ、さすがに予想外だった……。まさか病院に医者がいるとは」

 

 

 じゃあどこにいるって言うんでしょうか。

 

 

 すずかとアリサが到着するまで暇になった二人は、玄関前で待ちぼうけすることになりました。

 

 そういえば最近二人きりになることなかったな――思春期男児みたいなことを考えたフェイトはちょっと嬉しくなり、何か言おうと口を開きましたが、その前になのはが言いました。

 

 

「フェイトは病院に来たことがあるかね?」

「? ううん、ないよ。病気になってもお母さんが治してくれたから」

「そうか。それは何よりだ」

「なのははあるの? なのはって元気なイメージあるけど」

「私か? 私は……」

 

 

 と、そこで、不自然にもなのはは口をつぐんでしまいました。

 

 不可解な閉口にフェイトが目を向けると、なのはは虚空を眺めていました。何かを考えているようにも見えますし、何も考えてないようにも見えました。

 

 

 どうしたんだろう。心配になったフェイトは、何か言いたげな顔をしましたが、

 

 

「なのはー! フェイトー!」

「ごめんねー! 待たせちゃったー?」

 

 

 アリサとすずかの到着によって、中断を余儀なくなくされました。

 

 もう一度なのはを見ると、いつもの無表情に戻っていました。気のせいだったのかな、フェイトはそう思い、この事は気にせず胸の奥にしまっておきました。

 

 

 

 

 


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