魔法少女が許されるのは15歳までだと思うのだが 作:神凪響姫
空白期というか、中学時代の頃とかも書いてみたいと思っているのですけど、なんだかStrikers編を期待している方が多いみたいで。
とりあえず本編を全部終わらしてから、やるかどうかを決めていこうかなと思っております。
A's編 第十話
説得なんて冗談なんです
なのはは説得を諦めました。
「仕方ない。そこまで君が言うなら、私も力で応戦するしかないよね……?」
そんな嬉々とした顔で言わないで下さい。
なのはは見た目は非常に重そうなアトミックバズーカ、もとい、レイジングハートを軽々と掲げます。
「喰らうがいい、我が新たな力を……!」
身の丈以上の長さを誇るレイハさんを右肩に掲げました。
狙いを定めると、即座にトリガーを引きます。
「ディバインバスターッ!」
パシャッ
何故かシャッター音が聞こえました。
「…………ぬ?」
一向に発射されないディバインバスターに疑問を抱いたのか、なのははもう一回トリガーを引きます。
再びフラッシュ。これはどういうことだと思って横のボタンを押すと、カートリッジのような何かが出てきました。
フィルムケースでした。
「いや確かに似ているが……!」
投げ捨てました。
あのババア、カートリッジシステム搭載したと言っていたではないか。なのはは内心苛立たしげに罵倒しますが、突然眼前にモニターが表示されました。
訝しげに眺めていると、アースラ艦内にいるプレシアの姿が映りました。
『どう? そちらの状況は』
「ああ、プレシア女史かね。―――レイジングハートがカメラに魔改造されているぞどうなっている!」
『高性能でしょ?』
「そんなドヤ顔で言われても死ね役立たずとしか言えん」
『心配しないで。ちょっと砲塔の横を見てちょうだい』
言われるままに見てみると、さっきのものとは別に、三つほどボタンがついておりました。赤・青・黄の三種類です。
『赤いボタンを押してごらんなさい』
「これかね?」
と、勢いよくプッシュしました。すると、
ピュウッ
黒い液体が吹き出しました。
『醤油が出るわ』
「誰がそんないらん機能を披露しろと言った! さっさとカートリッジシステムを起動させたまえ!」
しょうがないわねぇ、と渋々プレシアはカートリッジシステムの説明をし始めました。戦闘中だというのにそんな余裕ぶちかましている暇あるんでしょうか。
「……おい。あたしはいつまでコントを見てりゃいいんだ?」
最早呆れて言葉も出したくないような具合のヴィータが言いました。
ヴィータは余裕綽々な態度ですが、それも止むなしといったところでしょうか。確かになのはの武器はバージョンアップを果たしているみたいですが、あんな外見がとり回しづらそうな武器であれば見かけ倒しと思われても仕方ないでしょう。実は強いんじゃ、という懸念も先程のソイソース噴射で消し飛んでおります。
しかしなのはとて余裕の態度を崩しません。
「貴様は何か勘違いしている」
「んだと?」
怪訝に顔をしかめるヴィータに、なのはは胸を張って言いました。
「私の武器がレイジングハートだけだと思っているのなら大間違いだぞ」
《mjd?》
レイジングハートはキャラも忘れるくらいビックリしました。
一体何をするつもりなんだ、とヴィータが注視する中、なのははレイジングハートを一度収納しました。一体どこにしまったのか分からない人はスカートの中だと思えば夢が広がるんじゃないでしょうか。
大きく腕を掲げ、何事かを呟くと、眼前に魔法陣が浮かびました。
見たことのない魔法陣を展開したなのはに、自然と警戒心が高まります。
なのはは、ニヤリ、と笑い、声高々に死刑宣告を発しました。
「秘儀……十二王方牌大車併!」
その光景を見た某管理局員は、後にこう語りました。
「ありゃこの世の悪夢だったさ……。なんでかって? アンタな、ただでさえ恐ろしい魔王が、それそっくりのちっちゃい魔王を大量に召喚して突撃していく光景を見たらどうよ? 俺なんかビビッちまって……ぅおお寒気が」
魔法陣から次々と飛び出す手のひらサイズのなのはに、さすがのヴィータもビックリ仰天しました。
一体全体、どういう手品を使ったのかサッパリ分かりませんが、とにかく一体だけでもすえ恐ろしいのに突然八匹も増えたら日本沈没なんて目ではありません。
一匹残らず消し潰すとばかりにアイゼンを構えます。
鉄球を作り、放り投げると、全力で打ち抜きました。
が、空中でスラロームして回避したミニマムなのは8体は瞬く間に接近し、ヴィータの身体に飛びつきました。
「くっ……! このぉ!」
全力でひっぺがそうと手を伸ばしますが、ミニマムなのはは危なくなると虚空へ飛びのき、隙を見てまた身体のどこかしらにくっ付いてきます。まるで餌にむらがるハエのような動きにヴィータの怒りのボルテージがぐんぐん上がって行きます。
そしてそれに拍車をかけるように、ミニマムなのはが口々に言いました。
『ハハハアタラナイヨ』
『フフフドコヲネラッテイルノカネ』
『チイサイナァチイサイナァ』
『オットチイサイノハナカミダヨハハハ』
『マッタクキミハチイサイナァフフフ』
あまりのウザさに頭が沸騰しかけたヴィータは、やけ気味にアイゼンを一回転させました。
運良くハンマーヘッドが三体ほどにぶちあたり、ミニマムなのはは消滅しましたが、消える寸前に悲鳴を残していきました。
『アアッシンジョウクン!』
『アアッシンジョウクン!』
『アアッシンジョウクン!』
腹の立つ嬌声にヴィータは殺意を抱きました。
「ははは、手間取ってるみたいだね? 次の攻撃をかわせるかな?」
はっと我に返ったヴィータは、なのはが健在であることに遅ればせながらも思い出しました。
ミニマムなのはだけで手いっぱいという状況なのに、この上本体のなのはの相手もしなければならないのです。今砲撃を撃ち込まれれば、ヴィータなどひとたまりもないでしょう。
思わず目を瞑ってしまったヴィータは、ややあってから、音が静かになったことに気が付きました。
恐る恐る目を開くと、いつの間にかすぐ前にまで来ていたなのはが佇んでいました。
目が合いました。
なのはは小さく微笑みました。まるで安心しろと語りかけてくるような、爽やかな笑みでした。
ヴィータは知らず知らずのうち、四肢から力が抜けていました。
ああ、そうだった。
彼女は確かにムカつくけど、何度も何度も話し合いで解決しようとしていたじゃないか。
今だってそうだ、隙だらけで攻撃する時間は幾らでもあったのに、仕掛けてこなかった。この小さいなのはだって異常に腹立つけど、こちらに危害は一切加えていない。これはヴィータを無力化させるために放ったものではなかろうか? そう考えるのは別段不自然なことではないはずだ。
こいつは今でも、話し合おうというのだろうか。
だとしたら馬鹿じゃないのか。いや、きっと馬鹿だ。
けど、そんな馬鹿に心を動かされようとしている自分も、大馬鹿だ。
感情が動いたヴィータが、何かを言おうと言葉を探していた、その時でした。
くるりと後ろへ振り返り、こちらに背を向けたなのはは、右手を鳴らして叫びました。
「爆発!」
ちゅどぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおんっ!!!
カラフルな爆発が生じました。
もうもうと立ち込める粉塵と焔に照らされ、なのはの微笑みがまるで悪魔のように見えましたがこれは前からなので仕方のないことでしたね。
やがて焔の壁を突き抜けて、怒り心頭顔のヴィータがハンマー片手に飛び出してきました。
「やっぱテメェ許さねぇ! 絶対ブッ殺してやるからな!」
「はははやれるものならやってみたまえ」
その頃、アルフとザフィーラはというと、
「貴様はいつも邪魔をしてくれるな……! 今日という今日は絶対に許せん!」
「ウチの御主人ガン見しながら言ってんじゃねぇ! このロリコンがぁあああああッ!」
「おのれ……! 日本の快男児たる俺を侮辱するか!」
「この日本の恥がーっ!」
一番盛り上がっておりました。
一方でフェイトとシグナムは、また見てる方が和むようなほんわかプレイを繰り広げているのかと思えば、そんな予想を見事に裏切って、激しい戦闘を繰り広げておりました。
ぶっちゃけシグナムはヴィータの釣り餌作戦の影響でやる気がマックスに引き出され、フェイトは新しいおもちゃ……もとい、武器を手に入れて気分が有頂天だからでしょう。
「そりゃあぁあぁああああッ!」
「きえぇえええええええいッ!」
紫電が瞬き、黄色い刃や光弾が空気を切り裂き、素早く回り込んだ桜色の影が刹那のうちに肉薄し、一閃を放ちます。
どちらも目にもとまらぬ速さで上空を飛翔し、一瞬で交差しては再び距離をとり、また激突という工程を繰り返しています。お互いに攻め入る隙を窺っているのでしょう。ガッカリ侍と似非ピ●チュウが繰り広げているとは思えない戦いです。
しかし普段ちゃらんぽらんな彼女らが、今一体どんなことを考えて戦っているのでしょうか。一度頭の中を覗いてみたいところですね。
せっかくなので、一度彼女らの視点に変更してみましょうか。
ではスタート。
~フェイト視点~
がきぃんばちばち!
「うりゃぁああぁあああああッ!」
「なんのぉ! まぁぁぁずぃぃぃんけん!!」
きらきらばしゅーん! ズドドドド! どっかーん!
くぅっ、当たらない!
「ハーケンセイバァーッ!」
これならどうだ!
ズバァアァアアアアーッ!
「そんな大味な攻撃が当たると思うな……!」
うそっ、これも避けるなんて!
「今度はこちらの番でござる!」
「なんのぉ!」
ズドォーン! ドガーン! グッパォーン!
なっ!? 斬撃でビルを!
「以前の拙者と同じだと思うな……」
「く……!」
こいつ、手強い……!
けど負けるもんか!
~シグナム視点~
「今宵は全力で戦わせて頂こう」
以前は油断したが、今度はそうもいかぬ。
我はシグナム、守護騎士ヴォルケンリッターの切り込み隊長として、若輩者の後塵を拝するわけにはいかぬ!
テスタロッサよ。今ここで、貴様を打ちとってみせる!
あ、今お星様が見えました。きっとオリオン座で御座ろう。
「ちょえりゃーッ!」
「くらぇえぇえええええーッ!」
刃と刃が交錯し、熱き火花が激しく散る。
こやつ、やはりできる……!
久方ぶりの好敵手の存在に、拙者の心も次第に高鳴って行く!
おっと、ポッケからおやつのビスケットが。
「く……! お主、なかなかやるな!」
「そっちこそ!」
激しい剣戟の嵐!
まさにデッドヒート! 両者互いに一歩も譲らぬ膠着状態!
この戦い、長くなりそうでござるな!
今、8時になりました。そろそろお腹がすいて来たでござる。
「だが拙者は負けん!」
「それはこっちの台詞だ!」
激突が続く。
戦場に幾度も鉄の弾ける音が響き渡った。
今夜は鍋がいいでござるな。
※病み上がりの作者の頭がゲシュタルト崩壊を起こしたのでここからは普通に書きます。
戦闘はまだ続いていました。
フェイトはシグナムと、アルフはザフィーラと交戦中で、なのははヴィータと楽しくキャッキャウフフしていました。こんな言い方するとR18な催しが起きているかと大いに勘違いされそうですが、実際はそんなことはなく、
「はははお嬢さん、捕まえてごらんなさいまぁできればの話だがねフフフ……!」
「テメェ待ちやがれコラァアアァアアアアアアアーッ!」
お花畑をスキップするかのように空中を飛ぶなのはと、それを鬼気迫る表情で追い回すヴィータがおりました。
すっかり手玉にとられて最早闇の書とかそんなことが記憶の彼方へ飛翔している様子のヴィータでしたが、突如頭に割り込んだ念話の声に我を取り戻しました。
『ヴィータちゃん、大変よ! 管理局の大群がこっちに押し寄せてきてる!』
「なんだと!?」
『あと美少年がビルの屋上で倒れてる!』
「それはどうでもいい」
まさかこれが狙いだったのか、とヴィータは歯噛みしつつなのはを睨みました。
同時に、なのはの元へもクロノから念話が入っていました。
『おいなのは! そろそろこっちも到着するぜ!』
「おやクロノ君、もうすぐ決着がつきそうというところで登場とは、良い御身分だね?」
『これでも急いで来たんだよ!』
なのはは鼻息荒いクロノの通信を切りました。
見れば、同じく念話を切ったと思しきヴィータと目が合いました。
「さて、こちらは増援が到着するそうだが……どうするかね?」
「……ちっ」
ヴィータとしては、ここでなのはをボコボコにしてから帰らないと腹の虫がおさまりませんが、これ以上彼女の相手をしていても状況が悪化の一途を辿るでしょう。管理局の増援が到着してしまえば、最早戦いにすらならないでしょうから。
舌打ちしたヴィータは、アイゼンを下ろしました。
「おい、高町なのはとか言ったな」
「―――む? 私かね?」
一瞬驚いたように目を丸くして、なのはは答えました。
何で驚くんだ、と思いつつ、ヴィータは憎々しげに言います。
「話し合いなんて無駄だってのは、もう分かっただろ! これ以上、もうあたし達につきまとうな!」
捨て台詞を残し、踵を返して、上へ上へと飛翔して行きます。
追いかけようか、と一瞬なのはは考えましたが、頭上に撃ち出された閃光弾のようなモノの輝きに視界を奪われてしまいました。
再び目を開くと、そこに守護騎士らの姿はありませんでした。
「逃げたか。まぁ、よかろう」
溜息でもつかんばかりに肩を下ろしましたが、なのははどこか満足げでした。
そりゃあんだけ人をおちょくれば満足でしょうよ。
やがて結界が崩れていき、色を失っていた景色が元に戻って行きました。
ひとまず戦いは終わりました。まずはフェイトやアルフの無事を確認しようと、なのははその場から立ち退きました。
その手に何かを握り締めたまま。
ビルの上でのびているユーノの存在に気づくのは、それから十分後のことでした。
~没シーン~
結界が解ける寸前。
ようやく到着したクロノは、結界をどうにか突き抜けて侵入に成功しました。
「おっしゃあ! 主役登場だぜ!」
流れがヒットしました。
「さよならー!」
落ちていきました。
終わり
途中の爆発シーンはAA挟んでみようかと企んでいたのですが上手くいきませんでした。
貼れたらもっと面白かったんですがね。
ううむ。