魔法少女が許されるのは15歳までだと思うのだが   作:神凪響姫

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ホントは続くはずだった普通の転生モノ。


これがプロトタイプと言っても過言ではないかもしれない……

ついでに一応本編と関係ある……かもしれない。



外伝1

 

 

 

 

 

 目覚めると、少年は知らない空間で横たわっていました。

 

「……夢か」

 

 あっさり結論を出すとそのまま寝転がって寝始めました。素でそう言っていました。

 

「おーい、そこな少年。ワシの声が聞こえとるかー?」

 

 声が聞こえました。老人のものと思しき声でした。

 

 不愉快なので知らんぷりしていると、焦りを帯びたものが今一度。

 

「もしもーし、ちょっとおじさんのお話聞いてはくれんかなぁ? このまま無視されると話が一向に進まんのでな」

 

 少年は渋々顔を向けます。

 すると、今まで誰もいなかったはずの空間に、白い法衣のようなものを纏った眼鏡の老人が、嬉しそうな笑みを浮かべて立っていました。

 

 少年は瞬きしました。そして目線を合わせました。合わせただけでした。それきり興味を失ったかのように明後日の方向を見てまた寝始めました。

 

「おいっ! おいっ! ちょっとそこな少年、ワシとトーク! レッツパーリー!」

 

 支離滅裂なことをわめきながら暴れ始めたので、少年は止むを得ず起き上がりました。

 

「何だ貴様、さっきから騒音公害しおって。害虫駆除と称した八つ当たりで末梢するぞ社会的に」

「か、神に対してその口のきき方はどうかと思うぞっ!?」

 

 神……髪……紙……神?

 

「ほう。つまり貴様が神様というやつかね」

「……あ、あっさり信じるなぁ。君、ちょっとは疑ったりせんのか?」

「自分から言い出しておいてその言い草、主体性というものがないのかこのジジイは」

「あらやだこの子ったら反抗的……!」

 

 身体をスネークして身悶えしているのを少年は普通に無視しました。

 

「しかし神とお会いできるとは、なかなか得難い経験だね?」

「そうでな。君がこうして神と謁見することが叶うのはワシのお陰だぞ」

「そうか。ははは」

「ふははははは!」

 

 何がおかしいのか、少しの間笑いあっていましたが、唐突に少年は尋ねました。

 

「ところで神よ。一つ言うべきことがある」

「何かな? 言ってごらん」

 

 促すと、少年は、ああ、と頷いてから、言いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この私と勝負じゃぁああぁぁあああああッ! 勝ったら私が今から神じゃァアァアァァアアアアアアアッ!!!」

「ええぇぇぇえええええええぇええええええええ!!!???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一時間後。

 

 全身から煙を出して横たわる少年がいました。

 

「ワシ、長年多くの人間を見てきたが、いきなり喧嘩ふっかけてくる奴見るの初めてじゃよ……」

 

 何故か神も疲れたように肩で息をしています。どんだけヘボいんでしょうか。

 

「まぁこのまま放置しとくと本格的にどうしようもないでな。そら、回復だ」

 

 光が降り注ぐと、少年の身体は全快しました。ご都合主義でした。

 

「ほう。これはまた便利なモノだね」

「傷を癒やす程度なら別に人間でも力があれば可能でな」

「つまり私が神になればもっとスゴいことになると……ゴクリ」

「あーこれこれ。話がどんどん逸れるから構えるのはやめい」

 

 閑話休題。

 

「して。何故私がこのような場所に招かれたのか理由を聞きたいものだが」

「あまり声を大きくして言えんのだが、少々問題が起きて、君に迷惑をかけてしまってなぁ。君の願いを一つ叶えてやろうと思った次第でな」

「何と。ならば願いを叶える権利を百回分寄こせ、さぁ! さぁ!」

「いや、そういうのはちょっと……」

「何かね、なんでもとほざきながらその体たらくは。貴様さては詐欺師だな? ん? イッツオールフィクションかね? はい皆さん! ここに詐欺師がいますよー! 怪しいジジイの詐欺師がいますのよー!」

「君、死んでも一瞬一秒さえ満喫しとるなぁ……」

 

 今、聞き逃せない言葉がありました。

 

「ふむ、私は死んでいるのかね?」

「うむ。一応そういう事情でな」

「何故? 私が記憶している限り、意識を失う直前まで健康体だったし、危険な場所をうろついていた覚えはないのだが」

 

 神は言いづらそうに躊躇って、ややあってから、語り始めました。

 

「君はバタフライ効果というものを知っておるかな?」

「地球の裏側で蝶が羽ばたくと竜巻が生じるという諸説のことか? あれはデマの類かと思っていたが」

「そう、それじゃな。時に君は世界が幾つも隣接した存在しているというのをご存知かな?」

「……並行世界や異世界という与太話のことを指しているのか」

「事実なんじゃよ。君の住む星、地球が存在する世界と同様、高度な知能を持つ知的生命体が文明を築く星が存在する世界が存在している。それらは基本的に世界の壁を越えて干渉することはまず無いが、稀に高度な技術を生み出した挙句、世界の壁を越えた先にまで影響を及ぼす力を解放する場合がある」

 

 大抵、星が耐え切れず滅亡するがの。神はそう呟きました。

 

「……我々の世界で言う、核兵器のようなものか」

「もっと性質が悪いものと考えてもらって結構。そして、異世界に悪影響が及ぶと、例えば星の環境が劣悪化したり、突如本来存在しない惑星が出現したりと、様々な現象を引き起こすわけでな」

 

 それが神の言うところのバタフライ効果でした。

 なんとなく話が読めてきた少年は、神に問いました。

 

「私の星も、異世界とやらのせいで何かが起きたと?」

「そうじゃな。本来そうなる前に我々が抑止力となり人間たちの世界の安全を確保すべきなんじゃけど、今回のケースは特別でな。いきなり発生したがために対応が遅れ、君のように何ら言及される点も無い無辜の民が犠牲になってしまった。神を代表し、お詫びの意思を伝えたい」

「成程。……つまりこういうことかね? 私は見知らぬ人間の愚行のとばっちりを受けたと」

「そういうことになるでな」

「そうか。ははは」

「うん。ふははは」

 

 楽しげに笑い合う二人。

 

 

 

「やはり貴様を殺し神になるしかない……!」

「どうやったらそんな結論に辿り着くんかい!?」

 

 

 

 三十分後。

 

「で。結局私はどうなる?」

「うーん……既に君は地球だと死者だし、生き返ったら確実に騒ぎに発展するでな。ここはひとつ、他の世界に行ってもらいたいのが本音かな」

「その辺の情報操作など神ならば余裕だろう」

「スマンが一度確定した情報はそう容易く変更できんのでなぁ」

「ふむ、つまり無理か。ならば無理を問うたな。死ね役立たず、と言っていいだろうか」

「ワシ一応罪悪感抱いておるんで頼むからそう罵倒せんでくれんかなぁ……」

「貴様の謝罪一つで高貴な私の心を動かせるとでも?」

 

 どこまでも偉そうな少年に神は呆れました。

 

「……というわけで、他の世界に行ってもらいたい」

「ははは、これまた自分勝手だね。見知らぬ世界に放り込まれて生きていけるとでも? 私なら余裕だが」

「自己完結しとるぞ君」

「しかし貴様の不手際でこちらが迷惑を被っているのだ。何かあるのだろう?」

「だから最初に言ったでな? 君の望む願いを叶えてみせようと」

「だから最初に言っただろう? ドラゴンボール百回分寄こせと」

「そんなの無理に決まっとるでな」

「所詮神などこの程度か……ペッ」

 

 唾を吐き捨てると神は床に女座りして泣き始めました。少年は無視しました。

 

「ではこうしよう。貴様の提案通り、他の世界に行ってやろう。ただし条件が一つある」

「何かな? 先程のような無茶でない限りはなんでも叶えてやりたいが」

「何、簡単なことだよ。……その場に応じた時に限り、必要な力を引き出せる力を寄こせ」

「それ、言い方を変えただけでさっきとそこまで変わらんと思うが……」

 

 まぁいいか、と思考放棄したのか、神はえい、と指先を突き付けると、少年の身体に光が降り注ぎます。

 

「これで君の望んだ結果となったぞ。家が欲しいと思うなら定住できる結果を引き寄せられるし、強い力を欲するなら比較的短い工程で手に入れられる」

「なかなかセコい力だな」

「それくらいはまぁ、サービスということで」

 

 成程、と少年は頷きました。

 

 神に向き直ります。お礼でも言ってくれるのかな、と思っていた神は、直後、少年の叫びを聞きました。

 

 

 

 

 

「さぁ我が新たな力よ。神を倒し私が新世界の神となる力を授けたまえ……!」

「ハイもう予想通り―――ッ!!」

 

 

 

 

 

 こうして、少年は異世界に旅立って行きました。

 怪我だらけの状態で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※あくまでおまけなのでやるはずだった話の展開を簡単に。

 

 

 

●外伝第1話

 

 

 地面に降り立つ。ここはどこかと自問すると、地名がすぐ浮かんだ。これぞまさに都合のよい能力か、とびっくりするほどフリーダムな非常識スキルに驚いた。二秒で落ち着いた。環境適応力は随一だった。

 青木ヶ原樹海だった。今度あったらあのヒヒ爺いめしこたま殴りこんでくれようと固く決意。ひとまず人気の多い場所へと移動する。

 

 転生というより転移に近いと判断。近くに流れていた川を覗き込んで自分の身体が己のものと分かると安堵する。

 

 水がきれいだなー、なんて思っていたら、後ろから「早まるんじゃない!」と怒鳴りながら特攻してくる男。誰やねんな、と驚くのも束の間、光速の縮地で接近した男にタックルされる。川へドッポンする男二人。何がしたかったんだ。

 

 入水自殺かと思ったと土下座する青年。場所が場所だけに仕方ないことだと笑って許す……なんて思ったら大間違い。足を掴んで地獄車、そしてブン投げる。三回くらい水面を跳ねて沈んでいく男を無視してその場を後にする。

 

 いかん人里まで案内させれば良かったか、と日が傾きかけてから後悔する。三秒で立ち直る。アマゾンじゃねぇんだから車くらい道通るだろー、と珍しく鼻歌を歌いながらスキップする馬鹿。トラックに轢かれる。林の中をパチンコよろしく吹き飛ぶ。そのまま木をキックしてUターン、武空術使って帰還する。トラック野郎の兄ちゃんの胸倉掴んでテメェ慰謝料払えよコラと言外に脅す。どっちが被害者か分からない構図に遠くで見ていた神が呆れた。

 

 ひとまず近くの町に、というか病院に運ばれる。これはアレか、頭を調べてもらえよという遠まわしな挑発行為なのかと思うも、さすがに撥ね飛ばしてピンシャンしている子供などおらんという常識的思考に基づく行動だったらしい。

 

 ひとまず診察を受ける。保険証ねぇ。というか多分戸籍もない。どないせいっちゅーんですか……と若干鬱になってると、車椅子に乗る女の子発見。若いのに大変だねとジジ臭い感想を抱いていると、段差に引っ掛かって困惑する少女の姿を捉える。これだからバリアフリーの行き届かない片田舎の病院は、などと愚痴をこぼしつつ助けてあげる。「おおきになぁ」と聞き慣れない方言に目を丸くする馬鹿。珍しいねと思わず口にすると、見た目が同年代な子供なせいか親しげに話しかけてくる少女。10分らい話しこんだところで主治医らしき女性に呼ばれる。お互いに名前を聞いて別れを告げた。転移後三時間でフラグを立てる。

 

 しかし家が無いぞ困ったなと途方に暮れていると、よく考えたら都合のよい能力とやらで空き家横取りして居座れるのでは、いやそれどころか高級マンション最上階を乗っ取ってフハハ見ろ人がゴミのようだ展開も可能……! と頭が良いようで馬鹿でも考え付くことをダラダラ考えていると、『助けて……!』というソウルフルなシャウトが聞こえてくる。無視した。そしたら『助けて……ッ!』と更に悲痛そうな声がした。うるせーバカヤロー的なニュアンスで怒鳴ったら向こう困惑。魔導師とか才能とかヘルプミーとか色々呟いていた。うるさいので念話を切った。無意識のうちに魔法を使用して管理局に後々目をつけられることに気づかない馬鹿そのまま公園の傍を通過。

 

 なんかバリアっぽいのがあるなーと横目に流す。ひとまず衣食住を確保するよりまず街の概要を知らなければと真面目な思考をする。考える。理解した。一瞬で解決。超絶便利な我儘スキルにご満悦な馬鹿。

 

 人気の無いところがいいなと考えた結果、川の橋の下に居を構える。川の水で服を洗濯してたら近所の悪ガキにズボンを奪取される。てめぇファイナルフラッシュ叩き込むぞオラァとなりかけるも、大人げないと我慢我慢。でもムカついたのは事実なので武装解除魔法ぶちかましてマッパにして帰した。外道すぎた。高い所に届かずどうしようと悩み、空飛ぶのはまずいよなぁとパンツ一丁でよじ登り始める。脱げかける。偶然通りかかった金髪少女が顔を真っ赤にして危ないですよと忠告してくれる。無視する。しかし寸でのところで落っこちる。金髪少女これには真っ青。助けようと自分も飛び込む。荒川アンダーザブリッジ的な展開に傍観していた神が突っ込んだ。

 ブクブク沈みながら馬鹿は思う。ああ、ズボン創造すりゃ良かった……。頭の悪い自分に嫌気が差したところで浮上しようと試みる。しかし急いで飛び込んだ金髪少女と額から激突。二人仲良くどざえもんと化した。

 

 すぐに意識を取り戻した馬鹿は仕方ないと嘆息しつつ少女救出。もとはと言えばお前のせいだじゃろ的な突っ込みが聞こえた気がした。無視した。とりあえず服乾かさないと風邪ひくと思い、ポケットに手を突っ込む。「瞬間クリーニングドライヤ~♪」。何故かドラ○もんだった。意識のない金髪美少女にブォーと熱風吹きつける無表情の少年という実にシュールな光景。

 乾燥完了。しかし目を覚まさない。腹パンしたら目覚めるだろうか、とかなりおかしいことを考えていると、少女覚醒。「う……私は何を……」とうめく少女。前後の記憶が不確かっぽい様子を見て、良いこと考えたと頭に電球浮かべる馬鹿。

 

 貴方は誰? 君を助けたんだよ。私を? いきなりフラッと体勢崩したと思ったら川に落ちたんだよ。そうなんですか? うん、疲れていたんじゃない? そういえば最近ジュエルシードを探して……。え? あ、な、なんでもないです……。

 

 人の良い爽やかな笑みと無意識に発する良い人オーラに充てられたのか、金髪少女はアッサリ信じた。おいおい大丈夫かよく今まで誘拐されなかったなとどうでもいいことを考える馬鹿。罪悪感? はて……。

 

 ありがとうございます、と頭を下げる金髪少女。いやぁアハハと誤魔化し笑い浮かべてとっととオサラバすればいいのに、「君が無事で良かったよははは」と爽やかに言ってのける天然ジゴロ。ニコポ入手まであとレベル6。

 良い人だなぁ、と感心した金髪少女。さすがに惚れはしないが憧れに近い思いを抱く。後々面倒くさい展開になること請け合いなフラグヴィンヴィン。

 

 金髪少女と別れ、居場所となる橋の下へと戻る。やっと休めると肩をほぐしつつ降りようとする。するとどこからともなく疾走しながら突撃する音が。「止めろそこは危ないぞ!」と絶叫する青年のパワーチャージ直撃。助ける気ナッシングな男に軽い殺意を抱きつつ川へドッポーン。本日三度目の水の冷たさに、明日から真面目に生きようと決心する。

 

 川からサルベージされる。いやぁまた君かつくづく運命めいたものを感じるねハハハと豪快に笑う青年。いい加減堪忍袋の緒が切れかけていた馬鹿は抗議する。無視される。ところで君家帰らないのご両親が心配してるよと常識人的発言。んなもんいるか永遠の一人身じゃワレェ舐めとんのかおんどりゃあーと言わんばかりの勢いで叫ぶと、じゃあお詫びと言っては何だが家に来なさい是非そうしなさいさぁさぁと連行される。やべぇこのままだと893事務所に売買されちまうと本気で抵抗する。無駄だった。使い勝手悪い能力に世界は理不尽ばかりだとどっかで聞いた感想を抱く。これもしかして定住できる家欲しいと思ったせいか……? と疑りだすともう何もかもやる気がしなかった。

 

 

 

 

 




続かない(多分

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