魔法少女が許されるのは15歳までだと思うのだが   作:神凪響姫

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よぅしレポートも終わったしあとはテストだけだうははーとか言ってたら二週間くらい放置してました申し訳ありません。

最近PCで絵やり始めたんでまた更新頻度が……。


まぁそんなどうでもいい話はさておき。

なんだか久々で頭の悪いノリが思い出せないまま第六話どうぞ。



第六話 過去なんて適当なんです

 

 

 

 ある日のこと。

 

 

 なのはは大分疲れた顔をして、廊下をふらふらと歩いていました。まるで幽霊のような足取りに、すれ違う者は八つ当たりを危惧してイソギンチャクのように壁に張り付いてやり過ごします。

 

 

 なんでフラついているのかというと、なのはの持っている小さな袋が原因でした。

 

 

 可愛らしいピンクのリボンで閉じられた、手のひらサイズのもの。小刻みに揺れればがさりと擦れる音がして、ふと鼻腔を撫でる香ばしい匂いは、小腹のすいた者の食欲を煽ります。

 

 

 焼いたばかりのクッキーでした―――

 

 

 

 

 

 

 ―――ただし、フェイトが作った。

 

 

 

 

 

 

 さしものなのはも、これの処理にはほとほと困っておりました。フェイトが悪意をもって製作したならば、その場でバックドロップでもキメて頭の髄から反省させてくれようかと真剣に考えていたのですが、

 

 

『頑張って作ったんだっ! ……よ、よかったら、もらってくれない、かな……?』

 

 

 と若干潤んだ涙目で言われてはクイーンオブ外道のなのはも閉口せざるを得ません。

 

 

 これを口にして胃腸の耐久力を下げるか、それともこのままダストシュートすべきか……一年に一回あるかないかといった具合でマジ悩みしたまま歩いていると、近くの部屋から賑やかな声が聞こえてきました。

 

 

 気になったなのはは、なんとはなしに足を向けました。

 

 

 扉が開くと、ユーノとアルフ、エイミィが何かを話していました。

 

 

「わぁ、ユーノひどい!」

「え、別にそうでもないじゃないか」

「あ、なのはちゃん」

「なのは~! 聞いてよ、ユーノの奴がひどいんだよー!」

 

 

 

 

 

 

「まったくだね! 今来たばっかりで何を言ってるかちっとも分からんが、ユーノ君が悪い! 罰を与えよう! ちょっと口を開いてみたまえ!」

 

 

 

 

 

 

 あー、と口を開けて上を向くユーノ。

 

 

 躊躇うこと無く手にしていた袋の中身を注ぎ込むなのは。

 

 

「ふむふむ。……あ、結構美味しい気ががががが」

 

 

 言い終える前にバイブレーションし始めたユーノに誰もが戦慄しました。なのは以外は。

 

 

 しまいには泡を吹いて卒倒するユーノをじっと無感動な目で眺めていたなのはは、うむ、と頷き、ややあってから、くるりと振り向きました。

 

 

「ときにアルフ君。君、虫歯があるね?」

「え? 本当かい?」

「うむ。右奥のところなのだが」

「どこ?」

「うむ。そこの、そう。それだ。そのまま身体の力を抜いて」

 

 

 ポイッ、とクッキーを投げ入れました。

 

 

 あ、とフリーズしたアルフは一瞬顔を強張らせ、少しの間首を傾げていましたが、ややあってから顔を強張らせ、真っ青にし、最終的には無言で倒れました。

 

 

 状況が読めないエイミィは、なのはの持つクッキーから漂ってくる異様なオーラにガタガタ震えながら、なのはの一挙手一投足を見つめていました。

 

 

 ゆっくりと振り返ったなのはは、無表情に問いかけました。

 

 

 

 

 

「一緒にいかが?」

 

 

 

 

 

「勘弁して下さい」

 

 

 クロノ君の気持ちが分かるなぁ。なんて思ってしまったエイミィでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   A’s編第六話 過去なんて適当なんです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 闇の書、という存在を、なのはは初めて耳にしました。

 

 

 場所はなのはの家からそう遠くないマンションの一室。リンディが臨時作戦本部として設けた拠点でした。

 

 

 新居特有の清潔感あふれるフロア。しかも4LDK。どっかの誰かさんが出撃する度に物を大量破壊するため修繕費がかさんでしょうがないアースラの一体どっからそんな金が沸いて出たのでしょうね。

 

 

 リビングに座っているのは、学校帰りのなのは達と、珍しくシリアスな顔をしているクロノとリンディが目の前にいます。話がある、と連れてこられたなのは組とフェイト組は、座って話に耳を傾けていました。

 

 

 アルフとユーノが既に人生の瀬戸際みたいな表情ですが、なのはに視線を向けると方を竦めて首を振りました。我関せずの姿勢を押し通すなのはにクロノが訝しげな眼を向けています。

 

 

「闇の書……なんだか聞くからに不吉な名前だねぇ」

「ええ。アルフさんの予想は正しいわ。過去数度、幾多の次元世界を未曾有の危機に陥れた、ロストロギアの一つでもあるわ」

 

 

 ロストロギア、という単語に、一同は反応しました。

 

 

 なのはは眉を少し動かし、ユーノは明らかに動揺し、アルフは腕を組んで、フェイトは『なんだっけそれ?』とばかりに首を傾げました。ジュエルシードも同じ類のものだなんて夢にも思ってないでしょうねこの子。

 

 

「クロノが子供の頃にも、一度それ関係で事件が起きたし、ね……」

「ああ、忘れようにも忘れられねぇな……。あれは確か、ええと、夏の日差しが眩しい、雪の降った日だったか」

「そこの馬鹿は無視して聞くがどういう状況だったのかね?」

 

 

 クロノが半目を向けていますがなのははどこ吹く風みたいな感じでスルーしました。

 

 

 

 ……闇の書の暴走、それによる艦のコントロール消失。

 

 ……それに搭乗していたリンディとその夫、クライド。

 

 ……わが身を犠牲にクライドは単身船に残り、闇の書の隔離を試みる。

 

 ……涙を流しながら引き留めようとするリンディに、笑いかけるクライド。

 

 

 

『リンディ、このままじゃ俺ら全員やられちまう……! こいつは俺にまかせて、お前は先に行け!』

『いやよ! 貴方だけ置いて行くなんて!』

『大丈夫さ……なんてったって俺は、幸運の女神様に愛された男だからな!』

『クライド……』

『心配すんな、クロノが待ってんだ! あいつ、もうすぐ誕生日だからな……盛大に祝ってやらねぇと』

『……ちゃんと帰って来るのよ? 戻らなかったら、許さないんだからね!』

『ああ、任せておけ!』

 

 

 

「―――なんてことがあったのよ。ふふ、あの人ってなかなかスゴいところあるでしょう?」

「ああ、すごいな……」

 

 

 何がすごいかって、たった十数秒の会話の中で死亡フラグを幾つもブッ立ててることでしょう。

 

 

 そらあんだけ堂々叫べば一つは当たるでしょうよ。

 

 

「その頃からだったかしら。クロノが執務官になるって言い出したのは」

「そうだったな。俺は誓ったんだ……冷たい雨が降る中で、この悔しさをバネに強くなってやるぜって、星空を眺めながらな」

「あえてストレートに言わせてもらうがぶっちゃけ貴様何も覚えておらんだろう」

 

 

 

 閑話休題。

 

 

 

 闇の書に関する情報を聞き、ふむ、となのはは小さく頷きました。

 

 

「成程。闇の書とやらの危険度については粗方理解が及んだ。結局のところ、我々ができるのは、以前出会った三人組……守護騎士とやらをぶち殺――とっ捕まえ――ぶち殺がして主とやらを跪かせることだろうか」

「どっからどう突っ込めばいいのか分からないけれど、とりあえず概ねあってるわ」

 

 

 あってるのかよ、とクロノが驚異的な物を見る目を母に向けました。

 

 

 突っ込みが足りない。ユーノは発言しようとしましたが最近存在感よりも胃の健康と身体の安全が第一なのではと考えてきているので黙っておきました。

 

 

「蒐集行為が依然行われている現状、守護騎士たちと遭遇する機会は少なくないでしょうね。活動範囲はこちらが警戒を強めれば強めるほど狭まっていくし」

「じゃあ、暫くは様子見しかできないの?」

「残念だけど、主の所在も不明。となると、こちらは守護騎士の動向から活動パターンを予測するしかないの」

「後手に回るしかないのかね」

「向こうの出方を窺いつつ待機、としか言えないわ」

 

 

 ううむ、と唸り声一つ。

 

 

 デバイスがないうえに相手の所在も不確かである以上、何もできません。以前のフェイトの時みたいにストーカーして居場所を突き止めるという離れ業をやってのければ話は違いますが、生憎守護騎士らはなのはの住居から大分離れたところに住んでいますので、次元管理局がプライベートなどなんのそのという変態っぷりを発揮して街の隅から隅まで徹底的に調べ上げない限り発見できないでしょう。

 

 

 結局、主とやらを見つけ出すには、守護騎士をストーキングするか、守護騎士を全力でボコるかの二択しかないようでした。どっちも絵面としては最悪なものとなること請け合いです。

 

 

「心配しなくても、なのはちゃん達の出番はもうすぐよ。頼りにしてるわ」

「私は争いは嫌いなのだが……」

「なのは。そんな爽やかな笑顔浮かべながら言わないで」

 

 

 以前撃墜されたときのことをまだ根に持っているようです。

 

 

「まぁよかろう。そもデバイスのない現状、私やフェイトのできることは自然と限られる。今のうちにやれることをするだけだ」

「おいおい、訓練くらいしかやることねぇ人間の台詞じゃねぇぞ」

「愚問だな。人間、為すべきことなど星の数ほどあるだろうに」

「例えば?」

 

 

 なのはは黙ってユーノを見ました。

 

 

 鳥肌を立てたユーノは残像ができる勢いで物陰へ飛びこみました。

 

 

「ね?」

「ね? じゃねぇよ」

 

 

 溜息をつくクロノですが、多少なりとも心配しておりました。

 

 

 何にって? そりゃ決まってますよ。

 

 

 ―――なのはのストレス発散のために守護騎士らが餌食にならないことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻。

 

 

 なのはとフェイトのデバイス修復を一任されたメカニックマイスター、マリエル・アテンザは、浮かびあがる立体画面と睨めっこしていました。

 

 

「うーん……」

 

 

 未だ二十程度の少女に開発室を引き受けるほど優秀な技術屋である彼女ですが、今回ばかりはため息が絶えず、腕を組みながら考え込む時間が多くなっておりました。

 

 

 既にレイジングハートとバルディッシュの修繕はほぼ完了しております。

 ならば何故困惑気味なのか、と問われれば、彼女の眼前に浮かぶ画面に問題がありました。

 

 

「うーん…………」

 

 

 幾度パネルを弄ってもエラーが表示され、首を傾げております。

 

 

 原因は判明していました。彼らはある要求を強く主張しておりました。デバイスの改造案です。

 提示してきた部品名、それがカートリッジシステムの搭載に必要不可欠なものだと知ると、マリエルはますます困った風に頭を掻きます。

 

 

 危険は承知でも、より強力な力を得るためには手段を選ばない。そういうことでしょうか。

 

 

 が、改造案について否定するつもりはありません。元々、なのはやフェイトの希望もありましたので、デバイス自身が望むのは些か予想外ではありましたが、用意は整っていたのです。

 

 

 ではなんでそんなに悩んでんのと問われれば、答えは簡単でした。

 

 

「うーん……………………、ダメだ。『斬新なアイデアに期待する』って言われても分かんないよー」

 

 

 悩んだ末、さじを投げました。

 

 

 折角改造するんだから無骨な外見も一新しようぜ! というのがなのは達の希望、もとい、要求でした。

 余談ですがこの無茶振りのせいで無駄にデバイス改造に時間を要しているのは言うまでも無い話でした。

 

 

 フェイトはちっとも具体的ではない案を口にするだけですし、なのははいい加減にも「パス」の一言で済ませる始末。たまには泣いていいんじゃないかと思いますよ。

 

 ですが一度任されてしまった以上、途中で投げるわけにもいかず、マリエルは必死に考えていました。こういう生真面目な職人気質が足を引っ張っていることに気づくには色々な物が足りてません。常識とか常識とか。 

 

 

 ちなみにバルディッシュ本人が提示した文章(要求)は↓こんな具合でした。

 

 

 

『―――I am the bone of my sword.  

 

 ―――Steel is my body,and fire is my blood.  

 

 ―――I have created over a thousand blades.  

 

 ―――Unknown to Death. 

 

 ―――Nor known to Life. 

 

 ―――Have withstood pain to create many weapons.  

 

 ―――Yet,those hands will never hold anything.  

 

 ―――So as I pray,unlimited blade works.         』

 

 

 

 あまりに厨二臭い文章なのは主人の悪影響を受けまくっているせいですが、マリエルには知る由もありません。

 

 

 ちなみにマリエルが頑張って翻訳したら↓こんな感じになりました。

 

 

 

『 私は剣の骨です。

 

 鋼は私の体です。また、火は私の血液です。

 

 私は1000枚以上の葉を作成しました。

 

 死ぬほど未知です。

 

 および、ライフに知られていました。

 

 多くの武器を作成するために苦痛に耐えました。

 

 しかし、それらの手は何も保持しないでしょう。

 

 私はそのように祈りますが、無制限の葉は作動します。』

 

 

 

 エキサイト翻訳では一生答えに辿り着けないでしょう。

 

 

 しかしバルディッシュはさておき、問題はレイジングハートの方でした。

 

 

「こっちはこっちで、面倒な要求してくるなぁ……」

 

 

 バルディッシュの意味不明な文章よりも遥かに簡単かつ簡潔で、しかしそれでいて、非常に難しい注文でした。

 

 

 マリエルは頭を掻きつつ、どうするべきか指示を仰ぐために、開発ルームから出ていきました。

 

 

 残された部屋には、再生を待ち続けるデバイス二つと、画面に表示された、たった一つの単語。

 そこにはこう書かれてありました。

 

 

 ―――Precia、と。

 

 

 

 

 

      ●   ●   ●

 

 

 

 

 

 ある日の晩、はやては不思議な夢を見ました。

 

 

 不思議な感覚でした。霞がかっている意識と不完全な五感から、夢だということは分かるのに、どこか現実味を帯びた未知の感覚に、はやては少しばかり不安を抱きました。

 

 

 が、

 

 

「なんだこのファンタジーは……」

 

 

 実に冷ややかな目で周囲の光景を見渡しています。

 

 

 夢の割にはなんで車椅子あるねん、なんて思いました。夢の間くらい自由にさせてよと思うあたり複雑なお年頃ということで。

 

 

 ふと、目線を前へ向けました。

 

 

 遥か前方に、誰かがいました。

 

 

「あれは……」

 

 

 一気に意識が覚醒しました。

 

 

 そこには、見覚えのあるような、不思議な女性がいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁー……面倒くさい」

 

 

 白髪の女性は寝そべりながら大きく嘆息しました。

 

 

 床に置いた柿ピーの袋に手を突っ込み、一握り分だけ口に運びます。

 

 

 どこに電源が繋がっているやら、暖かそうな炬燵に下半身を突っ込み、テレビを見ながら退屈そうにしていました。

 

 

「そういえば、今日は燃えるゴミの日か。後で出さないと大家さんに怒られちゃうなぁ……」

 

 

 気だるげに嘆息し、虚空を眺めてから、ふと思い出したかのように言いました。

 

 

「そうだ、今日ツ●ヤはレンタル半額デーだ早く行こ―――」

「何しとんじゃ貴様ぁああああああああッ!!!」

 

 

 スルドいチョップが女性の脳天に直撃しました。

 

 

 地味な痛覚を抱いた女性は「はぅあっ!?」と謎の奇声を上げて転げ回りました。

 

 

「な、何をするのですか! 私が至福の時を過ごしていたというのに!」

「言葉の節々から生活臭が滲み出ておるわ! というか人の夢に出てきて何をしておる!」

 

 

 プンスカ怒りながらはやては言いました。夢に希望など見出してはおりませんが、なんだか台無しな感じがして腹を立てております。

 

 

 そんなはやてを少しの間見、女性は頭が冷静になったらしく、その顔に驚きを浮かべ、ややあってから喜びに染まりました。

 

 

「おお、主はやて! こうしてお話できる日を一日千秋の思いで待っておりました……!」

「今更取り繕っても遅いぞ」

 

 

 はやては冷ややかな目で見ますが女性は口笛を吹いて首を振っております。

 

 

 しかし、この見目麗しくも台無し感大爆発の女性、どこかで見たような……。はやては唸りながら思いだそうと試みますが、まったくちっとも見当がつきません。こんな知り合いがいたら過去の自分の頭を疑いたくなりますよね。

 

 

 あんた誰、とはやてが問うと、女性はちょっと勿体ぶったような口調で、

 

 

「えっとぉ、私の名前は、闇の書ぉ↑? も何かチョー覚えとけって感じィみたいなブクロ長」

 

 

 言い終える前にはやては12ゲージドラゴンブレスをぶっ放しました。

 

 

 容赦なく辺りに突き刺さる金属の破片をひぃひぃ言いながら避ける女性。

 

 

「ちょっ、主! どっからそんな物騒な代物出したのですか!?」

「人間やろうと思えば何でもできるものだ」

 

 

 否定しようにも実際なんでもできちゃう奴が約一名他に存在するので否定し切れません。

 

 

「覚えてませんか? 私は幼少の頃より、貴女を見守っておりましたのに……」

「ほう、貴様ニートまがいの生活をしている癖に年単位でストーカーをやっていたのか。最悪だな」

「なんでしょう、ほぼ同じ台詞のはずなのにこの温度差は一体……」

 

 

 そりゃ第一印象が最悪だったからです。

 

 

 と、はやては唐突に、意識が揺らぐのを感じました。そろそろ目が覚めるのでしょう、身体がどんどん軽くなり、浮き上がって行くような感覚でした。

 

 

「チッ、命拾いしたな……」

 

 

 唾棄しながら言うので女性は真剣にしょげました。

 

 が、すぐに立ち直りますと、はやえの前に立ちました。

 

 

「主……もっと色々とお話したいことはございますが、目が覚めた時にはほとんど忘れてしまっていることでしょう。ですけど、これだけは覚えておいてください……」

 

 

 いきなり真面目な空気を作って悲しげに眉を伏せる女性の相貌に、はやてはきょとんとした顔を向けます。

 

 

 一体何を言い出すのだろう、と思いつつ、何も言わずに女性の発言に耳を傾けました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「燃えないゴミ捨て忘れちゃったんでそこんとこ頼みます」

「知るか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 叫ぶと同時、はやては目を覚ましました。

 

 

 朝日が差し込んでいます。いつもより少々早めの起床でした。

 

 

 乱れた息を整えながら、あれはなんだったんだ、とまるで嫌な物体を目撃したような沈鬱な顔で悩みます。

 

 

 嫌にリアルな夢だったな……さっさと忘れようと固く決心し、額の汗を拭おうとして―――目の先数センチのところでカメラ片手にフリーズするシャマルと目が合いました。

 

 

「………………」

「………………」

 

 

 シャマルはカメラを下げつつ表情を強張らせております。

 はやてはベッド脇に置いてあるP232を取ろうとしております。

 

 

 無表情のはやてにシャマルは危機感を抱いたのか、あー、と前置きを入れてから、言いました。

 

 

「えっとね、はやてちゃん。これには理由があるのよ」

「ほう。何だ、愚鈍な貴様の聞くに堪えない言い訳を申しみよ」

「今日の目標は『不思議なことをカメラに収める』だったの」

「成程。ならば自分をアホ面を写真に撮れば即完遂ではないのか?」

「あ、あはは。イヤね~はやてちゃんたら冗談が上手いこと……」

「ああ。―――で、もう良いか?」

 

 

 シャマルは考えました。いかん、咄嗟のことで何も浮かばない。このままだと自分のニューキャメラの初仕事が己の惨殺死体撮影となってしまう……割とどうでもいいことを危惧したシャマルは、空転する思考回路をフル動員して、やがて一つの結論に至りました。

 

 

 何事も素直が一番。

 

 

 うん、と頷いたシャマルは、両手をうねらせながら叫びました。

 

 

「人体の不思議を激写肢体……!」

 

 

 直後、銃声が轟いたのを合図に、いつもの八神家の一日がスタートしました。

 

 

 

 




多分年内にもう一回更新できたら来年は良い年になるんじゃないかな……(震え声

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