ソードアート・オンライン ~黒の剣士と絶剣~   作:舞翼

95 / 144
ども!!

舞翼です!!

いや~、今回は早く投稿できました(^◇^)
今回は短めですね。

誤字脱字があったらごめんよ。

それではどうぞ。


第95話≪今年最後の打ち上げ、忘年会≫

ALOで聖剣エクスキャリバーを入手した後、世界樹に続く螺旋階段に送ってくれたトンキーに手を振って別れ、央都アルンまでの長い螺旋階段を駆け上がり、それから新生アイングラッドの第22層の《森の家》で全員ログアウトした。

俺はリアルに戻ったあとエギルに連絡を取り、午後三時に≪Dicey Cafe(ダイシー・カフェ)≫で打ち上げ兼忘年会を開きたいと伝えた所、即OK貰えたので、参加する全員にOKだというメールを送った。

俺は必要な道具類をハードケースに詰め、外に出た。

 

「「「遅い~」」」

 

「ごめんごめん」

 

俺に尖らせて抗議してきた人物は、木綿季と藍子、直葉だ。

今日は人数が多いという事で、電車で都内を目指す事にした。

 

「じゃあ、行くか」

 

それから四人は横一列になり、目的地に歩き出した。

歩いている途中で、直葉が藍子に問いかけた。

 

「そういえば、藍子さんとお兄ちゃんって、どういう出会い方をしたんですか」

 

藍子は記憶を遡るように、顎に右手を当てた。

 

「そうですね、木綿季の紹介で出会いましたね。 あの時の和人さん、言葉が物凄い詰まってましたよ」

 

「ね~、あの時の和人は、コミュ障を発動させていたからね」

 

木綿季と藍子は、微笑みながら答えていた。

俺は顔を少し赤く染めた。

 

「あの時は緊張しててな……。――それに、二人には感謝してるよ。 あの時から、俺を支えてくれて」

 

「どういたしまして、和人」

 

「どういたしまして、和人さん」

 

それから四人は駅へ向かった。

埼玉県川越市からエギルの店がある御徒町まで、急行を使えば一時間も掛からない。

午後二時過ぎに《Dicey Cafe》のドアを開けた時、先に到着していたのは家が近場の詩乃だけだった。

忙しく料理の仕込みをしている店主に挨拶をしてから、運んできたハードケースから、四つのレンズ可動式カメラと制御用ノート型PCを取り出す。

 

木綿季と藍子、直葉にも手伝って貰ってカメラを店内四ヵ所に設置する。

市販のマイク内臓ウェブカメラを、大容量バッテリーを駆動及び無線接続できるように改造したものだ。

カメラをノートPCで認識し、動作確認を取ってから、川越の自宅にあるハイスペック据え置き機にインターネット経由で接続し、小型ヘッドセットを装着する。

 

「……なに、それ?」

 

眉を寄せる詩乃に、俺は笑みを浮かべた。

俺は此処に居ない、ユイに話し掛けた。

 

「見てからのお楽しみだ。 どうだ、ユイ?」

 

『……見えます。 ちゃんと見えるし、聞こえます、パパ』

 

俺のイヤホンと、PCのスピーカーからユイの可憐な声が響く。

 

「OK、ゆっくり移動してみてくれ」

 

『ハイ♪』

 

返事に続いて、一番近くのカメラの小口径レンズが動き始める。

現在ユイは、この《Dicey Cafe》のリアルタイム映像を疑似3D化した空間で、小妖精のように飛翔していると感じているはずだ。

だが、画質や応答性が低い。 その辺が今後の課題になるだろう。

 

「……なるほど、つまりあのカメラとマイクは、ユイちゃんの端末……感覚器ってことね」

 

詩乃の言葉に、俺ではなく直葉が頷く。

 

「ええ。 お兄ちゃん、学校でメカ……メカトニ……」

 

「メカトロ二クスですよ。 直葉さん」

 

と、藍子が答えた。

 

「そのコースを選択してて、授業の課題で作ってるんですけど、完全にユイちゃんのためですよねー」

 

『がんがん注文してます!』

 

あはは、と笑い合う四人に、俺はジンジャエールを啜りながら反論する。

 

「そ、それだけじゃないぞ! カメラをもっと小型化して、肩とか頭に装着できるようになれば、どこでも連れて行けるし……。 でもまぁ、俺の目標はもっと先にあるけど」

 

「和人は、ユイちゃんを現実世界に展開しようと考えているんでしょ?」

 

木綿季の問いに、俺は頷いた。

 

「だな。 ユイを現実世界に展開して、三人で暮らすのが今の目標だからな。 絶対に展開をして見せるさ」

 

「……あんたって、筋金入りの親バカね」

 

「木綿季も親バカですよ」

 

「お兄ちゃんと木綿季ちゃんは、ユイちゃんのこと物凄く可愛がってますからね」

 

詩乃、藍子、直葉と続いた。

そうこうしていると、明日奈、遼太郎(クライン)、里香&珪子の順でメンバーが集まり、二つのテーブルをくっつけた後、エギルが持ってきた料理を運ぶのを手伝い、卓上に料理と飲み物が並べられ、最後に、見事な照りを纏ったスペアリブの大皿が出てくると、全員で店主に拍手。

それから全員が席に着き、飲み物が注がれたグラスを片手で掲げ――。

 

「祝、《聖剣エクスキャリバー》と《雷槌ミョルニル》ゲット! お疲れ、二〇二五年!――乾杯!」

 

「「「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」」」

 

という俺の省力気味の音頭に、全員が大きく唱和した。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

談笑しながら、左隣に座る木綿季がしみじみ言葉にした。

 

「この一年は、色んな事があったね……」

 

「確かにな。 約一年前にSAOをクリアして、ALOから藍子と明日奈の救出、それから数か月後に死銃事件、今回の聖剣エクスキャリバーの入手。 うん、濃い一年だったな。 不躾だが、SAO事件や死銃事件があったから、木綿季や皆と出会えたんだよな」

 

皆もうんうん、と頷いていた。

 

「まぁ、辛いこともあったが、凄く充実した一年だったよ」

 

「ボクに取っては、これからの人生を決める一年だったよ」

 

「……そういえば、思っていたことがあるんだけど」

 

右隣に座る詩乃がそう呟いたのは、一時間半かけてテーブルのご馳走があらかた片付いた頃だった。

 

「どうして《エクスキャリバー》なの? 大抵は《カリバー》でしょ。 《エクスカリバー》」

 

「詩乃さん。 その手の小説とか読むんですか?」

 

詩乃の向かいに座っていた珪子が訊ねると、詩乃は照れ臭そうに笑った。

 

「中学の頃は、図書館のヌシだったから。 アーサー王伝説の本も何冊か読んだけど、訳は全部《カリバー》だった気がするなぁ」

 

「うぅーん、それはもう、ALOにあのアイテムを設定したデザイナーの趣味というか気まぐれというか……」

 

情諸のない俺の反応に、藍子の左隣に座る明日奈が苦笑いをした。

 

「たしか、大本の伝説ではもっと色々名前があるのよね。 さっきクエストじゃ偽物扱いされてたけど、《カリバーン》もその一つじゃなかったかしら」

 

明日奈の説明に、俺の向かいに座る藍子が答えた。

 

「あの剣には色々な呼び方がありますよ。 基本的には“エクスカリバー”。 ALOで使われていたのが“エクスキャリバー”。 スィアチが偽のクエストで与えようとした“カリバーン”、または“キャリバーン”。 主な所では、“カレドヴルフ”、“カリブルヌス”、“カリボール”、“コルブランド”、“エスカリボール”等がありますね」

 

「藍子さんって、神話に詳しんですね」

 

珪子は、藍子が次々上げた例に驚いていた。

まぁ、他の皆も似たようなものだが。

すると、再び詩乃が口を開いた。

 

「まぁ、別に大したことじゃないんだけど……《キャリバー》って言うと、私には別の意味に聞こえるから、ちょっと気になっただけ」

 

俺が詩乃に聞いた。

 

「へぇ、意味ってどんなのがあるんだ?」

 

「銃の口径のこと、英語で《キャリバー》って言うのよ。 例えば、私のヘカートⅡは50口径で《フィフティ・キャリバー》。 エクスキャリバーとは綴りは違うと思うけどね」

 

一瞬口を閉じた詩乃は、ちらりと俺を見てから続けた。

 

「……あとは、そこから転じて、《人の器》って意味もある。 《a man of highcaliber》で《器の大きい人》とか《能力が高い人》」

 

と、話を聞いていた皆の視線が、俺に集中した。

 

「え、なんだ」

 

「ってことは、エクスキャリバーの持ち主はデッカイ器がないとダメってことよね。 なんか噂で、最近どこかの誰かさんが、短期のアルバイトでどーんと稼いだって聞いたんだけど」

 

里香にそう言われ、俺は肩を落とした。

 

「はぁ、ここは俺が持つよ」

 

総務省の菊岡から、《死銃事件》の調査協力費が振り込まれたのは、まさに昨日のことだ。

しかし、すでにそれを当てにして、ユイの据え置き機パワーアップ用のパーツを色々――あと直葉のナノカーボン竹刀も発注済みで、残高は早速かなり寂しいことになっている。

 

「お、キリの字太っ腹じゃねか!」

 

本日の支払いを請け負うと、クラインが乗り気で言い、他の皆からは盛大な拍手と口笛が響いた。

手を挙げてそれに応えながら、俺は内心で考えていた。

SAO、ALO、GGO三世界での経験を通して、人の器なるものについて何かを学んだとすれば、それは《一人では何も背負えないはしない》ということだけだ。

どの世界でも、俺は何度も挫けそうになりながら、多くの人に助けられて如何にか歩き続けられたに過ぎない。

愛する人がいて、家族がいて、心を支えてくれる仲間がいる。

今日の突発的冒険の展開こそ、まさにその象徴的だったのではないか。

だからきっと、俺の――いや皆の《キャリバー》とは、仲間全員で手を繋いでいっぱいに輪を作った、その内径を指すのだ。

聖剣エクスキャリバーは、仲間たちの為に使おう、俺は心にそう決めた。

 

「よし! じゃあ、もう一回乾杯をするか!」

 

俺の二度目の乾杯の声に、皆も片手にグラスを掲げ、軽くぶつけ合った。

 

 

キャリバー編 ~完結~




今回の話でこの小説の本編が完結しました!!
これまで、この小説を読んでくれた読書の皆さまのおかげです!!
ありがとうございます!!
後、この小説の明日奈さん親子は仲違いはしてませんよ(^O^)

さて、本編は終わりましたが、これから後日談に入ります(^O^)/
まだ続きますが、これからもこの小説、『ソードアート・オンライン~黒の剣士と絶剣~』をよろしくお願いします!!

活動報告のアンケート?してます(^_^)/

ご意見、ご感想、評価、よろしくお願いします!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。