ソードアート・オンライン ~黒の剣士と絶剣~   作:舞翼

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ども!!

舞翼です!!

いや~、北欧神話って難しいね(^_^;)
ちゃんと調べて書いたけど大丈夫かな?
ご都合主義満載やで~。

誤字脱字があったごめんよ。

それではどうぞ。


第93話≪神の協力、打倒スリュム≫

王スリュムの序盤攻撃パターンは、左右の拳によるパンチ撃ち下ろし、右足による三連続踏み付け、直線軌道ブレス、そして床から氷のドワーフ兵を十二体生成することだ。

厄介だったのはドワーフ生成だったが、それはパーティーの最後方、シノンの弓による驚異の精密射撃によって、瞬く間に片付けてくれた。

後の直接攻撃は、タイミングさえ見切れば完全回避が可能で、ユイのカウント指示に助けられつつも、前衛の六人はぎりぎりで直撃を避け続けた。

前衛の六人は一瞬のタイミングを逃さず、ソードスキルを撃ち込むも、大きなダメージが与えられない。

そんな戦況で心強いのが、フレイヤの操る雷系攻撃魔法だ。

フレイヤが操る紫の稲妻が降り注ぐたび、スリュムのHPは確実に削られていった。

十分以上経過した頃、最初のHPゲージが消え、巨人王スリュムが大きな咆哮を轟かせた。

 

「ぬおおぉぉおお!!」

 

「パターン変わるぞ! 注意しろ!」

 

叫んだ俺の耳に、隣で剣を構えるリーファの切迫した声が届いた。

 

「まずいよ、お兄ちゃん。 もう、メダリオンの光が三つしか残ってない。 多分あと十五分ない」

 

「……そうか、解った」

 

スリュムのHPゲージは残り二本。

一つ削る時間十五分も掛かってしまったという事は、十五分以内に全てのHPゲージを削り切ることは、相当に困難を極める。

この相手に、剣技連携(スキルコネクト)によるゴリ押しは恐らく通じない。

モンスターにディレイ――すなわち行動遅延(のけぞり)を引き起こすには、《一撃の重い、しかも連続した大ダメージ》が必要になる。

例えソードスキルを四連続繋げても、HPの全体量を考えれば、大ダメージと言えるほどのゲージを奪うのは不可能だ。

俺の一瞬の焦りを見透かしたように、スリュムが両胸を大きく膨らませるように、大量の空気を吸い込んだ。

これは、広範囲攻撃だ!

回避するには、風魔法で吸引力を中和しなければならない。

同じことを考えたリーファが、左手をかざし、スペル詠唱を始める。

しかしこの攻撃は、敵のモーションを見た瞬間に詠唱しなければ間に合わない。

 

「みんな、防御態勢!」

 

俺の声に、リーファがスペル詠唱を中断して両腕を身体の前でクロスし、身を屈めた。

その瞬間――。

 

「ん、ばああぁぁああ」

 

スリュムの口から直線ブレスとは異なる、広範囲に膨らむダイヤモンドダストが放たれた。

その結果、俺、ユウキ、クライン、リーファ、リズ、シリカのアバターの下半身が凍結され、完全に身動きを封じられた。

前方で身体を起こしたスリュムが、巨大な右脚を持ち上げた。

 

「ぬうぅぅーん!」

 

太い雄叫びと共に床を猛然とストンプを行い、其処から生まれた衝撃波が、動けない俺たちを大きく吹き飛ばし、思い切り床に叩き付ける。

この攻撃により、六人のHPが約八割削られた。

HPを削られた直後、柔らかな水色の光が降り注ぎ、傷を癒してくれる。

アスナとランで、高位全体回復スペルを二重で使用してくれたようだ。

先読みして使用したのだろう、絶妙なタイミングだ。

しかし、ALOの大型回復呪文の大部分が時間継続回復(ヒール・オーバー・タイム)、即ち《何秒間で何ポイント回復する》というタイプだ。

二重に掛けて貰っているので、通常の回復よりは速いが、失われたHPゲージを即座に取り戻してくれる訳ではない。

ようやく立ち上がった俺たちを追い打ちするべく、スリュムが前進する。

長いあご髭が垂れるその喉元に――いきなり赤々と燃え盛る火矢が立て続けに突き刺さり、盛大に爆発した。

シノンの両手長弓系ソードスキル、《エクスプロード・アロー》だ。 物理一割、炎九割の属性ダメージが霜の巨人王の弱点を突き、HPゲージを奪い去る。

 

「むぬうぅん!」

 

スリュムが怒りの声を上げ、ターゲットをシノンに変える。

俺たちが態勢を立て直す時間を稼ぐ為、シノンは決死の囮役を買って出たのだ。

 

「シノン、三十秒頼む!」

 

「ええ、わかったわ」

 

俺たちは、その間に赤い液体の入ったポーションを口に流し込み、HPの回復速度を速めさせる。

シノンはGGOの経験を生かして、スリュムの猛攻を躱し続けている。

俺たちのHPが全快になった所で、声を掛けようとした、その時――。

不意に傍らから声がして、俺はぎょっと眼を向けた。

立っていたのは、十人目のパーティーメンバー――フレイヤだった。

 

「このままでは、スリュムを倒すことは叶いません。 望みはただ一つ、この部屋のどこかに埋もれているはずの、我が一族の秘宝だけです。 あれを取り戻せば、私の真の力も蘇り、スリュムを退けられましょう」

 

「し、真の力!?」

 

「そ、そんなのがあるの!?」

 

俺とユウキは声を上げてしまった。

このまま持久戦を続ければ、クエストの時間切れになってしまう可能性が高い。

ならば、この可能性に(すが)ってみるべきだ。

ユウキも同じことを考えたのか、頷いた。

 

「解った。 宝物ってどんなのだ?」

 

フレイヤは両手に三十センチ程の幅に広げて見せた。

 

「これくらいの大きさの、黄金の金槌です」

 

「……は? か、カナヅチ?」

 

「金槌です」

 

ユウキが小さな声で、

 

「ボクの予想だと、フレイヤさんの正体はあの人かもしれない……」

 

「だ、誰だ?」

 

俺がユウキに聞き返した。 その時、王座の間右後方の壁際まで追い詰められたシノンが、スリュムの殴りつけ攻撃のスプラッシュ・ダメージを浴び、HPゲージが二割近く削られた。

 

「四人とも、先に援護に行ってくれ! 俺とユウキもすぐに合流する!」

 

「おうともさ!」

 

クラインは一声叫ぶと、雄叫びを上げながら駆け出した。

他のメンバーもクラインに続き、援護に向かう。

集団戦闘のサウンドエフェクトを聞きながら、俺はぐるりと広大な玉座の間を見回した。

青い氷の壁際には、黄金が幾重にも積み上がっている。

あの中から、たった一つの金槌を探し出すことなんて出来るのか……。

 

「……ユイ」

 

「だめです、パパ。 マップデータにはキーアイテム位置の記述はありません。 おそらく、部屋に入った時点でランダム配置されたようです!」

 

「そうか……うう……~~ん……!」

 

すると、隣で立っていたユウキが言葉を発した。

 

「キリト、雷系のスキルを使うんだよ!」

 

「か、かみ……?」

 

一瞬唖然と眼を見開いたが、俺は右手の剣を大きく振りかぶった。

 

「……せああっ!」

 

気合いに乗せて、思いっきり床を蹴り飛ばし、空中で前方宙返り、同時に逆手に持ち替えた剣を、真下に向けて身体ごと突き下ろす。 片手剣重範囲攻撃、《ライトニング・フォール》。物理三割、雷撃七割。

この攻撃によって周囲に雷鳴が轟き、突き刺さった剣を中心に青紫色のスパークが全方位に駆け抜ける。

俺は身体を起こし、周囲を見渡す。

 

「あれか!?」

 

「多分、あれがフレイヤさんが言っていた金槌だよ!」

 

黄金の山の奥深くで、先程生み出した雷に呼応したかのように、紫の雷光が小さく瞬いた。

俺とユウキは、そこに駆け寄る。

 

「キリト、この黄金を吹き飛ばして。金槌はここから動かないはずだから」

 

「おう、了解した」

 

俺は二刀流OSS、《エンド・リボルバー》計二連撃。物理五割、風五割の範囲攻撃で黄金が一斉に吹き飛び、一つだけ吹き飛ばない黄金(金槌)を発見した。

 

「おもっ!!」

 

持ち上げて解った事だが、この金槌はかなりの重さで設定されている。

ユウキは、重い金槌であることが何で解ったんだ?

俺は気合いで持ち上げ、振り向くと、この金槌を求めていた人物に投げ渡す。

 

「フレイヤさん、これを!」

 

金髪美女は細い右手をかざすと、俺が投げた激重金槌を見事に受け止めた。

直後、長いウェーブヘアが流れ、露わになった白い背中が小刻みに震える。

……え、もしかして違った? なんかマズイもの渡しちゃった……?

俺の耳が、フレイヤの囁き声を捉えた。

 

「………………ぎる………………」

 

ぱりっ、と空中に細いスパーク瞬く。

 

「……なぎる……みなぎるぞ…………」

 

なんだか、金髪美女から妙な言葉が発せられているぞ……。

今までの艶やかなハスキーボイスが低くひび割れ、()れているようだ。

スパークは激しさを増し、ゴールデンブラウンの髪がふわりと浮き上がり、純白の薄いドレスの裾が勢いよく翻る。

 

「みな……ぎるうぅぅぉぉおおオオオオオオ――――――!!」

 

雄叫びを上げ、全身に雷を纏い、白いドレスを粉々に引き千切られ、消滅した。

その姿はみるみる巨大化していき、顔の輪郭もゴツゴツに変化して、金褐色の長い髭まで生えている。

右手に握られた金槌もまた、持ち主に合わせて巨大化し、外見は四十代のナイスミドルという感じだ。

 

「「オッ…………オッサンじゃん!!??」」

 

俺とクラインの絶叫が部屋の中に響き、反響した。

ユウキを除く他の女性陣は、口をポカンと開けてしまっていた。

 

「オオオ……オオオオオ―――――ッッ!!」

 

巨大なおっさんは、広間中にぴりぴりと震わせる重低音の咆哮を放つと、動きを止めているスリュム向けて、分厚い革のブーツに包まれた右脚を踏み出した。

Freyja(フレイヤ)】と表示されていたはずの部分は、何時の間にか【Thor(トール)】に変化していた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

北欧神話に於いて、主神オーディンや外道神ロキと並んで――有名な《雷神トール》。

その北欧神話の《スリュムの歌》というエピソードの中で、ミョルニルという金槌が巨人の王スリュムに盗まれてしまい、ミョルニルの還元を条件に、女神フレイヤとの結婚を条件に突き付ける。

その際トールは、女神フレイヤに変装してスリュムの花嫁になると偽り、見事ミョルニルを奪い返し、スリュムを殴り殺したとある。

 

「卑劣な巨人めが、我が宝であるミョルニルを盗んだ報い、今こそ(あがな)ってもらおうぞ」

 

「小汚い神め、よくも儂をたばかってくれたな! その首切り落として、アースガルズに送り返してくれようぞ!」

 

雷神トールは、右手に握ったミョルニルを振りかざして突き進み、対する霜の巨人スリュムは、右手に氷の戦斧を造り出した。

互いの武器を轟然と撃ち合わせたインパクトで、城全体を揺るがす。

 

「トールがタゲを取ってる間に、全員で総攻撃をしかけるぞ! ソードスキルも遠慮なく使ってくれ!」

 

「「「「「「「「了解!」」」」」」」」

 

そして九人は一気に床を蹴り、三連撃以上のソードスキルを次々スリュムの両脚に叩き込んだ。

 

「ぐ……ぬむッ……!」

 

堪らず唸り声を漏らしたスリュムが、ぐらりと身体を揺らし、遂に左膝を着いた。

王冠の周囲を、きらきらと黄色いライトエフェクトが回転している。 スタン状態だ。

 

「ここだっ……!――行くぞッ! ユウキ!」

 

「了解ッ!――トールさんも行くよッ!」

 

「うむ! 誇り高い妖精の剣士たちよ!」

 

雷神トールが差し出した右掌を踏み台に大きく飛んでから、俺は二刀流OSS、《ジ・イクリプス》計二十七撃。物理四割、炎三割、闇三割を叩き込み、ユウキは片手剣OSS、《マザーズ・ロザリオ》計十一連撃。物理六割、闇四割を叩き込む。 この攻撃によって、巨人スリュムのHPゲージが三パーセントを切った。

 

「ぬうゥン! 地の底に還るがよい、巨人の王!」

 

止めに雷神トールがミョルニルをスリュムの頭に叩き付け、王冠が砕けて吹き飛び、地響きを立てて仰向けに倒れ込んだ。

 

「ぬっ、ふっふっふっ……。 今は勝ち誇るがよい、小虫どもよ。 だがな……アース神族に気を許すと痛い目を見るぞ……彼奴らこそが真の、しん」

 

スリュムが全て言い終わる前に、雷神トールの強烈なストンプが炸裂し、氷結しつつあったスリュムの巨体を踏み抜いた。

凄まじいエンドフレイムが巻き起こり、霜の巨人王は無数の氷片となって爆散した。

 

「…………やれやれ、礼を言うぞ、妖精の剣士たちよ。 これで余も、宝を奪われた恥辱(ちじょく)をそそぐことができた――どれ、褒美をやらねばな」

 

左手を持ち上げ、右手に握るミョルニルの柄に触れると、嵌まっていた宝石の一つが外れ、それは光を放って俺の前に寄ってくると、人間サイズのハンマーへと変形する。

 

「《雷槌(らいつい)ミョルニル》、正しき戦のために使うがよい。では――さらばだ」

 

雷神トールは白い稲妻を発生させ、俺たちが反射的に眼を瞑った間に姿を消していた。

受け取った雷槌ミョルニルをストレージに収め、スリュムからドロップしたアイテム郡は、パーティーの一時的(テンボラリ)ストレージに自動格納されていく。

 

「…………ふぅ……」

 

「……お、終わったね……」

 

「……ああ、終わったな」

 

俺とユウキは、剣を鞘に収めた。

霜の巨人王スリュムと戦闘は、俺たちの勝利で幕を下ろした。

 




遂にスリュムを撃破しましたね。
最後のコンビネーション技って、オーバキルじゃね(笑)
《ジ・イクリプス》などの属性などは、オリジナルですよ~。

てか、ユウキちゃん。物知りだね。
まぁ、北欧神話の金槌と言えば、雷神トールしか思い浮かばんが(作者だけかも)

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