舞翼です!!
いや~、北欧神話って難しいね(^_^;)
ちゃんと調べて書いたけど大丈夫かな?
ご都合主義満載やで~。
誤字脱字があったごめんよ。
それではどうぞ。
王スリュムの序盤攻撃パターンは、左右の拳によるパンチ撃ち下ろし、右足による三連続踏み付け、直線軌道ブレス、そして床から氷のドワーフ兵を十二体生成することだ。
厄介だったのはドワーフ生成だったが、それはパーティーの最後方、シノンの弓による驚異の精密射撃によって、瞬く間に片付けてくれた。
後の直接攻撃は、タイミングさえ見切れば完全回避が可能で、ユイのカウント指示に助けられつつも、前衛の六人はぎりぎりで直撃を避け続けた。
前衛の六人は一瞬のタイミングを逃さず、ソードスキルを撃ち込むも、大きなダメージが与えられない。
そんな戦況で心強いのが、フレイヤの操る雷系攻撃魔法だ。
フレイヤが操る紫の稲妻が降り注ぐたび、スリュムのHPは確実に削られていった。
十分以上経過した頃、最初のHPゲージが消え、巨人王スリュムが大きな咆哮を轟かせた。
「ぬおおぉぉおお!!」
「パターン変わるぞ! 注意しろ!」
叫んだ俺の耳に、隣で剣を構えるリーファの切迫した声が届いた。
「まずいよ、お兄ちゃん。 もう、メダリオンの光が三つしか残ってない。 多分あと十五分ない」
「……そうか、解った」
スリュムのHPゲージは残り二本。
一つ削る時間十五分も掛かってしまったという事は、十五分以内に全てのHPゲージを削り切ることは、相当に困難を極める。
この相手に、
モンスターにディレイ――すなわち
例えソードスキルを四連続繋げても、HPの全体量を考えれば、大ダメージと言えるほどのゲージを奪うのは不可能だ。
俺の一瞬の焦りを見透かしたように、スリュムが両胸を大きく膨らませるように、大量の空気を吸い込んだ。
これは、広範囲攻撃だ!
回避するには、風魔法で吸引力を中和しなければならない。
同じことを考えたリーファが、左手をかざし、スペル詠唱を始める。
しかしこの攻撃は、敵のモーションを見た瞬間に詠唱しなければ間に合わない。
「みんな、防御態勢!」
俺の声に、リーファがスペル詠唱を中断して両腕を身体の前でクロスし、身を屈めた。
その瞬間――。
「ん、ばああぁぁああ」
スリュムの口から直線ブレスとは異なる、広範囲に膨らむダイヤモンドダストが放たれた。
その結果、俺、ユウキ、クライン、リーファ、リズ、シリカのアバターの下半身が凍結され、完全に身動きを封じられた。
前方で身体を起こしたスリュムが、巨大な右脚を持ち上げた。
「ぬうぅぅーん!」
太い雄叫びと共に床を猛然とストンプを行い、其処から生まれた衝撃波が、動けない俺たちを大きく吹き飛ばし、思い切り床に叩き付ける。
この攻撃により、六人のHPが約八割削られた。
HPを削られた直後、柔らかな水色の光が降り注ぎ、傷を癒してくれる。
アスナとランで、高位全体回復スペルを二重で使用してくれたようだ。
先読みして使用したのだろう、絶妙なタイミングだ。
しかし、ALOの大型回復呪文の大部分が
二重に掛けて貰っているので、通常の回復よりは速いが、失われたHPゲージを即座に取り戻してくれる訳ではない。
ようやく立ち上がった俺たちを追い打ちするべく、スリュムが前進する。
長いあご髭が垂れるその喉元に――いきなり赤々と燃え盛る火矢が立て続けに突き刺さり、盛大に爆発した。
シノンの両手長弓系ソードスキル、《エクスプロード・アロー》だ。 物理一割、炎九割の属性ダメージが霜の巨人王の弱点を突き、HPゲージを奪い去る。
「むぬうぅん!」
スリュムが怒りの声を上げ、ターゲットをシノンに変える。
俺たちが態勢を立て直す時間を稼ぐ為、シノンは決死の囮役を買って出たのだ。
「シノン、三十秒頼む!」
「ええ、わかったわ」
俺たちは、その間に赤い液体の入ったポーションを口に流し込み、HPの回復速度を速めさせる。
シノンはGGOの経験を生かして、スリュムの猛攻を躱し続けている。
俺たちのHPが全快になった所で、声を掛けようとした、その時――。
不意に傍らから声がして、俺はぎょっと眼を向けた。
立っていたのは、十人目のパーティーメンバー――フレイヤだった。
「このままでは、スリュムを倒すことは叶いません。 望みはただ一つ、この部屋のどこかに埋もれているはずの、我が一族の秘宝だけです。 あれを取り戻せば、私の真の力も蘇り、スリュムを退けられましょう」
「し、真の力!?」
「そ、そんなのがあるの!?」
俺とユウキは声を上げてしまった。
このまま持久戦を続ければ、クエストの時間切れになってしまう可能性が高い。
ならば、この可能性に
ユウキも同じことを考えたのか、頷いた。
「解った。 宝物ってどんなのだ?」
フレイヤは両手に三十センチ程の幅に広げて見せた。
「これくらいの大きさの、黄金の金槌です」
「……は? か、カナヅチ?」
「金槌です」
ユウキが小さな声で、
「ボクの予想だと、フレイヤさんの正体はあの人かもしれない……」
「だ、誰だ?」
俺がユウキに聞き返した。 その時、王座の間右後方の壁際まで追い詰められたシノンが、スリュムの殴りつけ攻撃のスプラッシュ・ダメージを浴び、HPゲージが二割近く削られた。
「四人とも、先に援護に行ってくれ! 俺とユウキもすぐに合流する!」
「おうともさ!」
クラインは一声叫ぶと、雄叫びを上げながら駆け出した。
他のメンバーもクラインに続き、援護に向かう。
集団戦闘のサウンドエフェクトを聞きながら、俺はぐるりと広大な玉座の間を見回した。
青い氷の壁際には、黄金が幾重にも積み上がっている。
あの中から、たった一つの金槌を探し出すことなんて出来るのか……。
「……ユイ」
「だめです、パパ。 マップデータにはキーアイテム位置の記述はありません。 おそらく、部屋に入った時点でランダム配置されたようです!」
「そうか……うう……~~ん……!」
すると、隣で立っていたユウキが言葉を発した。
「キリト、雷系のスキルを使うんだよ!」
「か、かみ……?」
一瞬唖然と眼を見開いたが、俺は右手の剣を大きく振りかぶった。
「……せああっ!」
気合いに乗せて、思いっきり床を蹴り飛ばし、空中で前方宙返り、同時に逆手に持ち替えた剣を、真下に向けて身体ごと突き下ろす。 片手剣重範囲攻撃、《ライトニング・フォール》。物理三割、雷撃七割。
この攻撃によって周囲に雷鳴が轟き、突き刺さった剣を中心に青紫色のスパークが全方位に駆け抜ける。
俺は身体を起こし、周囲を見渡す。
「あれか!?」
「多分、あれがフレイヤさんが言っていた金槌だよ!」
黄金の山の奥深くで、先程生み出した雷に呼応したかのように、紫の雷光が小さく瞬いた。
俺とユウキは、そこに駆け寄る。
「キリト、この黄金を吹き飛ばして。金槌はここから動かないはずだから」
「おう、了解した」
俺は二刀流OSS、《エンド・リボルバー》計二連撃。物理五割、風五割の範囲攻撃で黄金が一斉に吹き飛び、一つだけ吹き飛ばない
「おもっ!!」
持ち上げて解った事だが、この金槌はかなりの重さで設定されている。
ユウキは、重い金槌であることが何で解ったんだ?
俺は気合いで持ち上げ、振り向くと、この金槌を求めていた人物に投げ渡す。
「フレイヤさん、これを!」
金髪美女は細い右手をかざすと、俺が投げた激重金槌を見事に受け止めた。
直後、長いウェーブヘアが流れ、露わになった白い背中が小刻みに震える。
……え、もしかして違った? なんかマズイもの渡しちゃった……?
俺の耳が、フレイヤの囁き声を捉えた。
「………………ぎる………………」
ぱりっ、と空中に細いスパーク瞬く。
「……なぎる……みなぎるぞ…………」
なんだか、金髪美女から妙な言葉が発せられているぞ……。
今までの艶やかなハスキーボイスが低くひび割れ、
スパークは激しさを増し、ゴールデンブラウンの髪がふわりと浮き上がり、純白の薄いドレスの裾が勢いよく翻る。
「みな……ぎるうぅぅぉぉおおオオオオオオ――――――!!」
雄叫びを上げ、全身に雷を纏い、白いドレスを粉々に引き千切られ、消滅した。
その姿はみるみる巨大化していき、顔の輪郭もゴツゴツに変化して、金褐色の長い髭まで生えている。
右手に握られた金槌もまた、持ち主に合わせて巨大化し、外見は四十代のナイスミドルという感じだ。
「「オッ…………オッサンじゃん!!??」」
俺とクラインの絶叫が部屋の中に響き、反響した。
ユウキを除く他の女性陣は、口をポカンと開けてしまっていた。
「オオオ……オオオオオ―――――ッッ!!」
巨大なおっさんは、広間中にぴりぴりと震わせる重低音の咆哮を放つと、動きを止めているスリュム向けて、分厚い革のブーツに包まれた右脚を踏み出した。
【
♦♦♦♦♦♦♦♦
北欧神話に於いて、主神オーディンや外道神ロキと並んで――有名な《雷神トール》。
その北欧神話の《スリュムの歌》というエピソードの中で、ミョルニルという金槌が巨人の王スリュムに盗まれてしまい、ミョルニルの還元を条件に、女神フレイヤとの結婚を条件に突き付ける。
その際トールは、女神フレイヤに変装してスリュムの花嫁になると偽り、見事ミョルニルを奪い返し、スリュムを殴り殺したとある。
「卑劣な巨人めが、我が宝であるミョルニルを盗んだ報い、今こそ
「小汚い神め、よくも儂をたばかってくれたな! その首切り落として、アースガルズに送り返してくれようぞ!」
雷神トールは、右手に握ったミョルニルを振りかざして突き進み、対する霜の巨人スリュムは、右手に氷の戦斧を造り出した。
互いの武器を轟然と撃ち合わせたインパクトで、城全体を揺るがす。
「トールがタゲを取ってる間に、全員で総攻撃をしかけるぞ! ソードスキルも遠慮なく使ってくれ!」
「「「「「「「「了解!」」」」」」」」
そして九人は一気に床を蹴り、三連撃以上のソードスキルを次々スリュムの両脚に叩き込んだ。
「ぐ……ぬむッ……!」
堪らず唸り声を漏らしたスリュムが、ぐらりと身体を揺らし、遂に左膝を着いた。
王冠の周囲を、きらきらと黄色いライトエフェクトが回転している。 スタン状態だ。
「ここだっ……!――行くぞッ! ユウキ!」
「了解ッ!――トールさんも行くよッ!」
「うむ! 誇り高い妖精の剣士たちよ!」
雷神トールが差し出した右掌を踏み台に大きく飛んでから、俺は二刀流OSS、《ジ・イクリプス》計二十七撃。物理四割、炎三割、闇三割を叩き込み、ユウキは片手剣OSS、《マザーズ・ロザリオ》計十一連撃。物理六割、闇四割を叩き込む。 この攻撃によって、巨人スリュムのHPゲージが三パーセントを切った。
「ぬうゥン! 地の底に還るがよい、巨人の王!」
止めに雷神トールがミョルニルをスリュムの頭に叩き付け、王冠が砕けて吹き飛び、地響きを立てて仰向けに倒れ込んだ。
「ぬっ、ふっふっふっ……。 今は勝ち誇るがよい、小虫どもよ。 だがな……アース神族に気を許すと痛い目を見るぞ……彼奴らこそが真の、しん」
スリュムが全て言い終わる前に、雷神トールの強烈なストンプが炸裂し、氷結しつつあったスリュムの巨体を踏み抜いた。
凄まじいエンドフレイムが巻き起こり、霜の巨人王は無数の氷片となって爆散した。
「…………やれやれ、礼を言うぞ、妖精の剣士たちよ。 これで余も、宝を奪われた
左手を持ち上げ、右手に握るミョルニルの柄に触れると、嵌まっていた宝石の一つが外れ、それは光を放って俺の前に寄ってくると、人間サイズのハンマーへと変形する。
「《
雷神トールは白い稲妻を発生させ、俺たちが反射的に眼を瞑った間に姿を消していた。
受け取った雷槌ミョルニルをストレージに収め、スリュムからドロップしたアイテム郡は、パーティーの
「…………ふぅ……」
「……お、終わったね……」
「……ああ、終わったな」
俺とユウキは、剣を鞘に収めた。
霜の巨人王スリュムと戦闘は、俺たちの勝利で幕を下ろした。
遂にスリュムを撃破しましたね。
最後のコンビネーション技って、オーバキルじゃね(笑)
《ジ・イクリプス》などの属性などは、オリジナルですよ~。
てか、ユウキちゃん。物知りだね。
まぁ、北欧神話の金槌と言えば、雷神トールしか思い浮かばんが(作者だけかも)
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