ソードアート・オンライン ~黒の剣士と絶剣~   作:舞翼

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ども!!

舞翼です!!

いやー、中盤は胸糞が悪かったなー。

これを読んで不快にさせてしまったら、ごめんなさい(>_<)

誤字脱字があったらごめんよ。

それではどうぞ。



第67話≪泥棒の王と鍍金の勇者≫

俺とユウキは、脳神経が灼きつくかと思うほどの速度で、最後の距離を駆け抜けた。

眼前にある、巨大な円形のゲートに降り立つ。

白銀の騎士たちが、白い窓から生み出され、俺たちに押し寄せてくる。

だが、俺たちの方が早い。

ゲートの向こうに、彼女たち――ランとアスナが居る。

しかし――。

 

「……開かない……!?」

 

「えッ!!??」

 

俺の言葉に、ユウキが眼を丸くした。

 

閉ざされた十字の溝は、重く閉ざされている。

俺が剣を抜こうとした直前、ユイが俺の胸ポケットから姿を現し、小さな手でゲートの塞ぐ石盤を軽く撫でた。

 

「パパ」

 

ユイは振り向き、早口で言った。

 

「この扉は、クエストフラグによってロックされているのではありません! 単なる、システム管理者権限によるものです」

 

ユウキが、ユイに訊ねた。

 

「つまり、どうゆうことなの??」

 

「……この扉は、プレイヤーには絶対開けられないということです!」

 

「「……な」」

 

このグランドクエスト――世界樹の上の空中都市に達した者は、真の妖精《アルフ》に生まれ変われるというそれは、永遠に手の届かないニンジンだったということか?

ユウキが思いついたように、ポケットから銀色のカードを取り出した。

あのカードは――《システムアクセスコード》だ。

 

「ユイちゃん――これを使って!!」

 

ユウキは銀色のカードを、ユイの眼前に差し伸べた。

ユイは大きく頷き、小さな手でカードの表面を撫でる。

光の筋が幾つか、カードからユイへと流れ込む。

 

「コードを転写します!」

 

一声叫ぶと、ユイの両の掌でゲートの表面を叩いた。

ユイの手の触れた個所から、放射状に青い閃光が走り、直後、ゲートそのものが発光を始めた。

 

「――転送されます!! パパ、ママ。掴まって!!」

 

ユイが伸ばした小さな右手を、俺とユウキの指先がしっかりと掴んだ。

光のラインは、ユイの体を伝わり、俺とユウキの中に流れ込んできた。

騎士たちが大剣を振り下ろす直前、俺たちの体が薄れ、白く輝くゲートに中へ突入した。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

転送された先は、何も無い、真っ白い空間であった。

ユイはピクシー姿ではなく、白いワンピースを着た少女の姿だ。

ユウキは、ユイに訊ねた。

 

「ユイちゃん、此処どこなの」

 

ユイも困惑した顔で言った。

 

「……判りません。 マップ情報が、この場所には無いようです……」

 

「ユイちゃん。 ねぇねぇとアスナの場所、わかる?」

 

「はい、ママ。 少し待ってくださいね」

 

ユイは一瞬目を閉じ、すぐに大きく頷いた。

 

「はい、かなり――かなり近いです。 上のほう……こっちです」

 

俺とユウキは頷き、ユイを追って数分走ると、扉が見えてきた。

 

「ここの扉を出ると、頂上に到着します」

 

俺とユウキは、勢いよく扉を開け放った。

そこは、世界樹の幹がただ伸びていただけであった。

――ALOのプレイヤーたちが夢見た頂きには、何もなかったのだ。

 

「無いじゃないか……空中都市なんて……」

 

俺は呆然と呟いた。

全ては中身のないギフトボックスであったのだ。

包装紙やリボンで飾り立て、しかしその内側に広がるのは空疎な嘘。

 

「……許されないぞ……」

 

俺は思わず呟いていた。

この世界を動かしている、誰かに向かって。

 

「……キリト……」

 

ユウキが、心配そうな顔で覗き込んでくる。

ユイも、気遣わしそうな顔で見上げていた。

 

「ああ、そうだな。 行こう」

 

全ては、ランとアスナを救い出してからだ。

人工的な小刻みな道を、ユイとユウキの手を握り、走り始めた。

道の先には、夕陽の光に反射して、金色に光る何かがあった。

写真で見た鳥籠だ。

俺は直感で解った。

――あの中には、ランとアスナが居る。

二人も感じているはずだ、あの中に居る人物を。

走る速度が増していく。

 

遂に、鳥籠の前に到着した。

テーブルの椅子には、二人の少女が座っている。

間違いない――ランとアスナだ。

 

「――ラン、アスナ」

 

「――姉ちゃん、アスナ」

 

俺とユウキは、優しく囁きかけた。

ユイも叫んだ。

 

「ねぇねぇ……アスナさん!!」

 

ユイは閉ざされた格子に手を当て、その手を青い輝きが包んだ。

直後、金属の格子が、吹き飛んで消滅した。

開け放たれた入口から、鳥籠内部に駆け込む。

そのまま、ランの胸の中に飛び込んだ。

 

「ねぇねぇ――!!」

 

「ユイちゃん、来てくれたのね」

 

ランは、ユイを抱きしめた。

俺の隣に立っていたユウキも、涙を流しながらアスナの元に駆け寄った。

 

「アスナ、助けに来たよ」

 

「――助けに来てくれるって、信じていたよ。 ユウキちゃん」

 

アスナは栗色の髪を揺らしながら、椅子から勢いよく立ち上がり、大粒の涙を流しながらユウキと抱き合った。

 

「……ごめんな、遅くなった」

 

俺が呟くと、ランが応えた。

 

「信じていましたよ。 絶対に助けに来てくれるって」

 

「ああ、――帰ろう。 現実世界へ」

 

俺はユイに訊ねた。

 

「ユイ、ここからランとアスナをログアウトさせられるか?」

 

ユイは眉を寄せ、首を振った。

 

「ねぇねぇとアスナさんをログアウトさせるには、システムコンソールが必要です」

 

「コンソール……」

 

俺が首を傾げると、アスナが緊張した声で言った。

 

「わたし、ラボストリーの最下層で多分それらしい物を見た」

 

「白い何も無い通路のことか?」

 

ランがアスナに続いて答えた。

 

「そうです。 其処に須郷の手下が居ませんでしたか?」

 

「ちょっと待て、須郷!?――奴がランとアスナを閉じ込めた張本人か!!??」

 

「須郷は此処で恐ろしい実験を実行しているの、その内y」

 

ランの言葉が途中で途切れたのは、いきなり鳥籠の内部が水没したからだ。

鳥籠内部が深い暗闇に覆われていく。

呼吸は出来るが、空気が異常に重くなった。

ユイが声を上げた。

 

「パパ……ママ……ねぇねぇ……アスナさん……気をつけて! 何か……よくないモノが……!」

 

「「「「ユイ(ちゃん)!!」」」」

 

俺たちは同時に叫んだ。

周りを見渡しても、ユイの姿は何処にもなかった。

凄まじい重力が襲った。

俺以外は倒れ込み、俺は片膝を突いた。

その時だった。

粘付くような笑いを含んだ、甲高い声が暗闇の中に響き渡った。

 

「やぁ、どうかな、この魔法は? 次のアップデートで導入する予定なんだけどね、ちょっと効果が強すぎるかねぇ?」

 

それから須郷は、くっくっくと嘲笑った。

俺は唸り声で叫んだ。

 

「――須郷ッッ!!」

 

「チッチッ、この世界でその名前はやめてくれるかなぁ。 君らの王に向かって呼び捨ても戴けないね。 妖精王、オベイロン陛下と――そう呼べッ!!」

 

頭を強く打ち付けられた。

須郷の片足が、俺の頭に載せられていた。

圧し掛かる重力に耐え切れず、俺は床に押し付けられた。

 

「「「キリト(さん)(君)!!」」」

 

アスナ、ラン、ユウキは、必死に俺の名を呼ぶ。

須郷はニヤニヤと笑みを浮かべ、何かを思い付いたように言葉を発した。

 

「そうか、君があの《英雄キリト》君なんだね。――いや、桐ケ谷君」

 

須郷は、くっくっくっと笑いを含んでユウキを見た。

 

「桐ケ谷君と一緒に居た闇妖精族(インプ)の女……。僕は解ってしまったよ!!――桐ケ谷君の婚約者、紺野木綿季だろう!! 明日奈の親友なんだろう。 隣の病室の紺野藍子の関係者だ!!」

 

須郷は言葉を続ける。

 

「僕は最高の人物たちに出会えたよ――そうだ、この子たちを使ってショーを開こうかな」

 

須郷は唇を嘗め回してから、指をパチンと鳴らすと、無限の闇に塗り込まれた上空から、じゃらじゃらと音を立てて六本の鎖が落ちてきた。

ぶら下がった鎖の先端には、幅広の金属リングが輝いていた。

それを、俺の眼の前に倒れている、ランとアスナとユウキの両の手首に、音を立てて嵌めた。

六本同時に、真っ直ぐ伸びている鎖を軽く引く。

 

「「「きゃあっ!」」」

 

三人は、両手から吊り上げられた。

爪先がぎりぎり床につくかどうかという所で、停止する。

 

須郷は、ひっ、ひっ、と笑うと芝居がかったように両手を広げた。

 

「いい光景だねぇ。 全員、僕の伴侶にしてあげるよ。 僕に全てを捧げるんだ。 身も心もね、可愛がってあげるよ。 クククッ」

 

そう言うと、須郷は下品な口笛を吹いた。

須郷は、順番に三人の髪を一握り取り、鼻から大きく息を吸い込む。

 

「うーん、全員いい匂いがするね。――香りを再現したのは明日奈だけなのに、黒髪の二人からもいい香りがするねぇー。 ひっ、ひっ」

 

「貴様――――ッッ!!」

 

俺は絶叫した。

耐えがたい怒りが俺の全身を貫く、体に圧し掛かる重力を吹き飛ばした。

 

「ぐ……おっ……」

 

右手を突っ張り、体を床から引き剥がした。

片膝を立て、全身に力を込めて体を持ち上げていく。

 

「やれやれ、観客おとなしく……這いつくばってろッ!!」

 

両足を真横に払われ、俺は支えを失って、再び床に叩き付けられた。

 

「ぐはッ!!」

 

凄まじい衝撃に、思わず声を上げてしまう。

 

「システムコマンド!! ペインアブゾーバーをレベル8に」

 

――須郷は、俺が背に装備している鞘から純白の片手剣を抜き、俺の背に突き刺した。

 

「がっ……!!」

 

鋭い痛みが全身に駆け巡る。

 

「和人ッ!!」

 

不意にユウキが叫んだ。

アスナとランも、涙を浮かべながら俺を見ていた。

 

「くくく、まだツマミ二つだよ君。 段階的に強くしてやるから楽しみにしていてたまえ。 レベル3以下にすると、ログアウト後もショック症状が残る恐れがあるらしいがね」

 

さて、最初は誰にしようかな、と言い俺の元から離れて行く。

 

「最初は、君の婚約者にしようかな?」

 

こいつ、ユウキに変な事をする気か!!??

アスナとランが叫んだ。

 

「最初は私にしなさい!!」

 

「いえ、最初は私にしなさい!!」

 

須郷はニヤニヤしながら、

 

「ヒヒッ、立候補が居るのか。……じゃあ最初は、明日奈にしようかな。キャハハハ!!」

 

須郷はアスナ頬を人差し指で撫で、指先はアスナの顔を縦横に這い回り、

 

「そうだね、ここまでにしようか。 次は君だよ」

 

そう言ってから、須郷はランの頬を人差し指でなぞり、ゆっくり下に降ろして行く。

 

「やめてッ!!」

 

耐えられなくなったユウキが叫んだ。

須郷は手を止め、ユウキを見た。

 

「ふーん、神にそんな口を聞くんだ。 君にもやってあげるよ」

 

須郷はユウキの元まで歩き、頬を撫でた。

やがて首筋に降りた。

 

「やめろ――――ッ!!」

 

俺は必死に体を起こそうとしながら、叫んだ。

須郷は、ユウキのコートの中に手を入れようとする。

 

「貴様――ッッッ!! その手をどけろ――ッッッ!!」

 

「ああ……君の婚約者が涙を我慢している……なんて美しい光景なんだ!!」

 

全てを焼き尽くす程に白熱した怒りが、俺の頭の中を一直線に貫き、視界を激しくスパークさせた。

立ち上がろうとしたが、貫いた剣は小揺るぎもしない。

もがきながら、咆哮した。

 

「貴様……殺すッ!! 殺すッ!! 絶対に殺すッッ!!」

 

ランとアスナが叫んだ。

 

「キリトさんッ!! その言葉を使ったらダメよッ!!」

 

「キリト君ッ!! その言葉はダメだよッ!!」

 

俺の耳にはその言葉は届かない。

俺の耳に届くのは、須郷の狂ったような声だけであった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

今、俺に立ち上がる力を与えてくれるなら、何を代償にしてもいい。

命、魂、全て奪われても構わない。

鬼でも悪魔でもいい、あの男を斬り倒す力を与えてくれるなら。

――俺は誓ったんだ、守ると、絶対に泣かせないと。

――誰でもいい、俺に立ち上がる力を、システムの神に抗う力を!!

 

『ほう。 やはり君は、意志の力を知らしめようとするか』

 

――誰だ貴様は?

 

『私は、君の意志の力を感じ取った者だ』

 

――そうか、お前は。

 

『――そうだ。 立ちたまえ、キリト君』

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 

その声は雷鳴のように轟き、稲妻のように俺の意識を切り裂いた。

遠ざかっていた感覚が、一瞬で全て接続された。

俺は両目を見開いた。

 

「う……お……」

 

喉の奥からしわがれた声が洩れた。

 

「お……おおぉ……」

 

俺は歯を食いしばり、右手を床に突き、肘を立てた。

――背筋を貫いた剣が重く圧し掛かる。

――あの世界の刃はもっと重かった、もっと痛かったはずだ。

 

「う……おお……」

 

俺は力を込めて上体を起こし、立ち上がった。

須郷は俺を見て、芝居じみた動作で大きく肩を竦める。

 

「やれやれ、オブジェクトの座標を固定したはずなのに、妙なバグが残っているなぁ。 運営チームの無能どもときたら……」

 

須郷は俺の前まで歩き、右拳を振り上げて俺の頬を殴り飛ばそうとした。

だが、俺は須郷の右手を空中で掴んだ。

 

「お……?」

 

訝しい顔の須郷を見てから、言葉を紡ぐ。

 

「システムログイン。 ID《ヒースクリフ》。 パスワード……」

 

複雑な英数文字の羅列を唱え終えた途端、俺を包んでいた重力が消滅した。

次いで、背の鞘から漆黒の片手剣を放剣し、剣を投げ、ユウキを拘束している鎖を斬り落とした。

 

「なに……!? 何だそのIDは!!??」

 

須郷は驚愕の声を上げると後ろに飛び退き、システムウインドウを出現させる。

俺は奴より速くコマンドを唱えた。

 

「システムコマンド、スーパーバイザー権限変更。 ID《オベイロン》をレベル1に」

 

須郷の手からウインドウが消滅した。

須郷は苛立ったように左手を振った。

しかし、何も起こらない。

――妖精王の力が消滅した。

 

「ぼ……僕より高位のIDだと……!? 有り得ない……有り得ない……僕は支配者……創造者だぞ……この世界の帝王……神……」

 

甲高い声で須郷は捲し立てた。

俺は醜い顔に視線を向け、言った。

 

「そうじゃないだろ? お前は盗んだんだ。 世界を。 そこの住人を。 盗み出した玉座の上で、一人踊っていた泥棒の王だ」

 

「こ……このガキ……僕に……この僕に向かってそんな口を……後悔させてやるぞ……その首すっ飛ばして飾ってやるからな……」

 

須郷は俺に人差し指を突き付け、金切り声を上げた。

 

「システムコマンド!! オブジェクトID《エクスキャリバー》をジェネレート!!」

 

システムは須郷の声には応えなかった。

 

「システムコマンド!! 言うこと聞けこのポンコツがッ!! 神の……神の命令だぞ!!」

 

俺は須郷から視線を外し、後ろを見た。

自由になったユウキが、腰の鞘から剣を放剣して、ランとアスナを拘束していた鎖を切り落としていた。

――三人は、大丈夫だよ、と言っていた。

須郷に視線を戻した。

須郷を見た途端、新たな怒りの炎が噴き上がった。

俺は視線を上空に向けると、言った。

 

「システムコマンド!! オブジェクトID《エクスキャリバー》をジェネレート!!」

 

俺の手の中に一本の剣が形を作った。

美麗な装飾を施されたロングロード。

間違いなく、ヨツンヘイムの中心部の尖端に封じられていた、最強の剣だ。

――たった一言のコマンドで、最強の武器を召喚出来るとはな……。

ロングソードを須郷の足許投げた。

床に転がったままの剣の柄頭を強く踏むと、剣は音を立てて、回転しながら垂直に飛び上がった。

落ちてくる剣の柄に向け、右手を横薙ぎに振る。

重い響きと共に、剣が手の中に収まる。

純白の片手剣の刀身を須郷に向け、言った。

 

「決着を付ける時だ。 泥棒の王と鍍金の勇者の……。 システムコマンド、ペインアブゾーバーをレベルゼロに」

 

「な……なに……?」

 

俺の言葉を聞き、須郷は二、三歩、後退く。

 

「逃げるなよ。 あの男は、どんな場面でも臆したことはなかったぞ。――茅場晶彦は」

 

「か……かや……」

 

須郷はその名を聞いた途端、顔を大きく歪めた。

 

「茅場……ヒースクリフ……アンタか。 またアンタが邪魔をするのか!!」

 

須郷は金属を引き裂くような声で絶叫した。

 

「死んだんだろ! くたばったんだろアンタ!! なんで死んでまで僕の邪魔をするんだよ!! アンタはいつもそうだよ……いつもいつも!! いつだって何もかも悟ったような顔しやがって……僕の欲しい物を端から攫って!!」

 

須郷は更に叫んだ。

 

「お前みたいなガキに……何が、何が解る!! アイツの下に居るってことが……アイツと競わされるのがどういうことか、お前に解るのかよ!?」

 

「ああ、解るさ。 俺もあの男に負けて家来になったことがあるからな。――でも、俺はあいつになりたいと思ったことはないぜ。 お前と違ってな」

 

「ガキが……このガキが……ガキがぁぁああ!!」

 

須郷は悲鳴と共に地を蹴り、剣を振り下ろしてきた。

俺は一歩踏み込み、その間合いに入り、軽く剣を一薙ぎした。

須郷の頬に剣が掠めた。

 

「いたッ……」

 

須郷は頬を抑え、飛び退った。

 

「――痛い、痛いだと!!??」

 

この男は二ヵ月に渡り、ランとアスナを鳥籠の中に閉じ込めていた。

ユウキにも手を出した。

俺はこの男を許さない!!

怒りの炎は更に燃え上がった。

大きく踏み込み、須郷の両の手を斬り飛ばした。

次いで、肩から斜めに切り裂く。

両の手首は高く飛んで、暗闇の中に溶けていった。

澄んだ落下音が響いた。

――だが、足りない、足りるはずがない!!

 

「アアアァァァアアアッッッ!! 手が……僕の手があああぁぁぁあああ……体があああぁぁぁあああッッッ!!」

 

須郷は、床にごろごろと転がっている。

 

「ヒギィィィイイイッッッ!!」

 

俺は須郷の髪を掴み、持ち上げてから、剣を力任せに薙ぎ払った。

須郷の胴は、振られた剣により真っ二つになった。

下半身は、白い炎に包まれ消滅した。

 

「グボアアァァアアッッ!!」

 

上半身だけになった須郷を、左手で持ち上げた。

見開かれた両目からは、涙を流し、口をぱくぱくと開閉させていた。

左手を大きく振って、須郷の上半身を垂直に投げる。

耳障りな絶叫を撒き散らしながら、落ちてくるモノに向かって、剣を真上に突き立てた。

 

「うおおぉぉおお!!」

 

俺は全力で剣を撃ち込んだ。

刀身が須郷の右眼から後頭部へ抜け、深々と貫いた。

ペインアブゾーバーをゼロに設定してあるので、凄まじい痛みが襲っているはずだ。

 

「ギャアアァァァアア!!」

 

数千の錆び付いたような歯車を回すような、不快なエフェクトの掛かった悲鳴が暗闇に響き渡った。

剣を挟んで左右に分断された右眼から、粘りある白い炎が噴き出し、それがすぐに頭部から上半身に広がり、悲鳴を上げながら消滅していった。

須郷は、燃え尽きるまで途切れることなく叫び続けていた。

静寂が戻ると、左右に剣を払い、背の鞘に戻した。

俺は三人の元に駆け寄った。

三人は、座り込んでいた。

 

「――終わったよ」

 

俺は優しく囁きかけた。

 

「全てが終わりましたね。 帰れますね、現実世界に」

 

「ああ、そうだな」

 

ランが言葉を返してくれた。

 

「――ユウキちゃん……」

 

アスナは涙を流しながら、ユウキに抱き付いていた。

ユウキも、アスナの背中に手を回している。

 

「ボクとアスナの親友だよ。 ボクはどんな時もアスナを助けるよ。 ボクはアスナの味方だからね」

 

「ありがとう、ユウキちゃん」

 

俺とランは、笑みを浮かべながら見ていた。

 

「ずっと、二人を信じていましたからね」

 

「俺たち二人にとって、ランとアスナは大切な人だ。 助けに行くに決まっているだろう――さて、現実世界に帰ろうか」

 

左手を振り、普通とは異なるシステムウインドウを出現させた。

転送画面まで移動させ、指を止めた。

 

「現実世界では、もう夜だ。 でも、すぐに会いに行くよ、俺とユウキでな」

 

「うん。 待ってるよ、ユウキちゃん」

 

「待ってますよ。 キリトさん」

 

俺はログアウトボタンに触れ、青く発光する光が、ランとアスナの体を包み込んだ。

青い光が収まると、二人の姿は消えていた。

――現実世界に帰ったのだろう。

 

「終わったね」

 

「ああ、全て終わった」

 

俺とユウキは、アスナとランの救出に成功した。

俺たちの旅に終止符が打たれた。

 




うん。 下種郷にお仕置きしたね(笑)

ユウキちゃんは、愛されているね。

さて、下種郷は原作よりも懲らしめないとね(笑)

今回は、キリト君がメインでしたね。

次回は、ランちゃんが何で鳥籠に居たか?を書くでー。

ご意見、ご感想、評価、よろしくお願いします!!

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