ソードアート・オンライン ~黒の剣士と絶剣~   作:舞翼

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ども!!

舞翼です!!

ALOの本編が始まりましたね。

後、少しだけ間が空いたね。

すまんな。

あんまり間を開けないように頑張るよ。

それでは、どうぞ。


ALO編
第51話≪妖精の世界≫


部屋に戻った俺と木綿季は、先程エギルから受け取ったゲームパッケージ、《アルヴヘイム・オンライン》をバックの中から取り出した。

 

「この中に二人が居るんだよね」

 

「ああ、そのはずだ」

 

俺は本棚の下に置いてあったナーヴギアを手にした。

実は、木綿季のナーヴギアも此処にある。

木綿季は、ゲームパッケージに入っていた説明書を見ながら聞いてきた。

 

「和人は、何の種族にするの?」

 

新規プレイヤーは九つの種族の内、どれか一つを選択しなければいけないらしい。

 

「……解っているくせに」

 

「まぁね~」

 

と言い、木綿季は『ははは』と笑っていた。

俺はナーブギアに電源を入れ、スロットにカードを挿入する。

ベットに横たわり、ナーヴギアを頭に装着した。

 

「じゃあ、俺は先に行っているな」

 

「うん。 わかった」

 

「ダイブする時、俺の隣を使っていいからな」

 

「了解―」

 

俺は目を閉じ、妖精の世界にダイブする言葉を言った。

 

「リンク・スタート」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦

 

今俺が居る場所は、暗闇に包まれたアカウント情報登録ステージだ。

頭上にはアルヴヘイム・オンラインのロゴが描き出され、同時に柔らかい女性のウェルカムメッセージが響き渡る。

 

俺は合成音声の案内に従って、アカウント及びキャラクターの作成を開始した。

新規IDとパスワード、キャラクターネームを入力し、次に種族を選択する。

妖精の種族によって、得手不得手があるらしい。

 

俺は、黒を基調とした《スプリガン》という種族を選択した。

初期設定が終了し、幸運を祈ります、と人口音声に送られて、光の渦に包まれた。

説明だと、それぞれの種族のホームタウンからゲームがスタートするらしい。

床の感触が消え、落下感覚が俺を襲う。

だが落下している途中で、あちこちでポリゴンが欠け、世界が溶け崩れていく。

 

「な――なんだ!?」

 

俺は再び落下状態に陥った。

広い暗闇の中を、果てしなく落ち続けていく。

 

「どうなっているんだぁぁぁぁぁ!?」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦

 

「フムグ!!」

 

途方もない落下の末、俺は何処ともしれぬ場所に墜落した。

声がくぐもって響いたのは、最初に地面に接したのが足では無く顔面だったからだ。

深い草むらに顔を突っ込んだ姿勢で数秒間静止した後、ゆっくり背中から仰向けに倒れる。

 

夜だ。 深い森の中。

 

虫の鳴き声や遠く響く獣の遠吠え、鼻腔をくすぐる植物の香り。

SAOと何ら遜色ないように思える。

 

「あっ、そういえば木綿季って何の種族を選んだんだ」

 

種族が判らないと合流が出来ないぞ。

と、その時。

上空から声がした。

 

「どいてくださ―――い」

 

人影は、俺に向かってどんどん迫ってくる。

ヤバい……、 避けられない……。

……こうなったら受け止めるしかない。

数秒後。

凄まじい衝撃音が深い森の中に響いた。

周りは、凄まじい砂埃が舞っている。

 

「痛ててててて」

 

「ごめんなさい!」

 

声と雰囲気が木綿季に似ているな。

一か八か聞いてみよう。

 

「あの~、すいませ~ん」

 

俺が言うと、胸の中に飛び込んで来たプレイヤーが顔を覗かせた。

女性プレイヤーだ。

 

「貴方の名前って木綿季かな?」

 

「え、なんでボクを知っているの? ……和人なの?」

 

「おう、和人だ。 この世界ではキリトだけどな」

 

SAOのように顔が瓜二つまでいかないが、木綿季の面影が微かに残っている。

醸し出す雰囲気は木綿季ものであった。

俺は木綿季の背中を左手でポンポンと優しく叩いた。

木綿季が顔を少し赤くして言ってきた。

 

「……和人、ボクの胸を掴んでいるよ」

 

と木綿季に言われ、俺は右手を確認した。

俺の右手が、木綿季の胸を鷲掴みしていたのだ。

 

「うわッ」

 

俺は、すぐに木綿季の胸から手を離した。

 

「ごめん……。 木綿季」

 

「怒ってないから大丈夫だよ。 ……それに、和人が触りたかったら……いつでも触らせてあげるよ。 …… 現実世界でも、ね」

 

いや、木綿季さん。

顔をもっと赤くして言われても……。

それに、そういう機会はないはずだ……、 たぶん……。

 

「そっそうか……。取り敢えず、合流できてよかったな」

 

「……うん。 結構すごい合流しかただったけどね」

 

俺の上から退いてもらわないと。

 

「とっ取り敢えず、起き上がろうか」

 

「うん」

 

俺と木綿季は起き上がり、周りを見回す。

 

「で、何でこんな森の中にログインしたんだ?」

 

「う~ん、わかんない。 この場所、ホームタウンじゃないよね」

 

「おい、まさか……。 まさかね……」

 

先程のオブジェクト表示異常、謎の空間移動、そして今の場所。

俺は片頬を引き攣らせながら、右手を上げ、揃えた人差し指と中指を振り、ウインドウを呼び出す。 が、何も起こらない。

 

「ウインドウを呼び出すには、左手の指を振るんだよ」

 

と木綿季に言われ、俺はさっきのチュートリアルで言っていたことを思い出した。

メニューの呼び出しと飛行コントローラ操作は左手と言っていたな。

俺は、左手の指を振った。

今度は、聞きなれた効果音と共にメニューウインドウが開いた。

右に並ぶメニューを食い入るように見つめる。

 

「あ、あった……」

 

一番下に、《Log Out》と表示されたボタンが光っていた。

俺は、木綿季見て言った。

 

「木綿季は、何の種族にしたんだ?」

 

「ん、ボクは《インプ》にしたよ。 てか、やっぱり和人は《スプリガン》にしたんだね」

 

「種族には興味が無かったからな。 黒を基調としたスプリガンにしたよ」

 

「ボクの予想通りだね」

 

「そうだな。 ダイブする前から予想していたからな」

 

と、木綿季と会話を交わした後、再びウインドウに目を落とす。

 

「「うあ……」」

 

「もしかして和人も」

 

「ああ……」

 

俺と木綿季を驚かせたのは、スキル欄だった。

並んでいるのは、《片手剣》やら《体術》、《武器防御》といった戦闘系スキルから《釣り》のような生活系スキルが表示されていたからだ。

殆んどが九〇〇台で、中には一〇〇〇に達してマスター表示させているものまである。

 

「ん、ちょっと待てよ」

 

このスキルデータには見覚えがある。

片手剣一〇〇〇……体術九九一……釣り六四三……。

《二刀流》を始め幾つか欠損しているが、これはSAOでの《黒の剣士》キリトのものだ。

待てよ、《あれ》もあるはずだ。

アイテム欄も凄くなっていた。 謎の漢字、数字、アルファベット。

俺は、高鳴る心臓の鼓動を抑えながら、ウインドウをスクロールさせる。

その中で、《あれ》を見つけた。

 

「あった!」

 

「ん、何が?」

 

木綿季が俺に聞いてきた。

 

「これだよ」

 

俺は木綿季に、《MHCP001》と表示された文字を見せる。

 

「それって」

 

「ああ」

 

俺はその名前に触れた。

すると、無色透明のクリスタルが展開された。

神様、お願いします――。

と念じながら、俺は人差し指の先でそっとクリスタルを二度叩いた。

すると、俺と木綿季の目の前で純白の光が爆散した。

光からは、四方にたなびく長い黒髪。 純白のワンピース。 すらりと伸びた手足。

瞼を閉じ、両手を胸の前で組み合わせた一人の少女が輝きを纏いながら、俺と木綿季の目の前に舞い降りてきた。

やがて、両目が静かに開かれる。

 

「俺だよ……ユイ。 解るか……?」

 

「ボクのことも解る……?」

 

俺と木綿季は、あの世界と異なる姿だ。

だが、心配は杞憂だった。

ユイの唇がゆっくり動き、懐かしい鈴のような声が響いた。

 

「また、会えましたね、パパ、ママ」

 

大粒の涙を流しながら、ユイは俺の胸の中に飛び込んで来た。

 

「パパ……パパ!!」

 

「久しぶりだね。 ユイちゃん」

 

と木綿季が言い、ユイの頭をくしゃくしゃと撫でてあげた。

 

「また会えて嬉しいです!! ママ!!」

 

「ボクもだよ。 ユイちゃん」

 

ユイ。 今は無きSAOの世界で出会い、数日だけ一緒に暮らし、そして消えてしまった少女。

あの日々は、俺の中でかけがえのない記憶として焼きついている。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦

 

「で、こりゃ一体どういうことなんだろ?」

 

「だよね~」

 

森の中、近くにあった切り株を見つけて腰を掛けた俺と木綿季は、俺の膝の上に座っているユイに訊ねた。

 

「…………?」

 

俺の胸に頬をすり寄せて笑みを浮かべていたユイは、きょとんとした顔で見上げた。

 

「いや、ここはSAOの中じゃないんだよ実は……」

 

「うん。 アルヴヘイム・オンラインっていうゲームの中なの」

 

ユイが消滅してからの経緯を掻い摘んで説明する。

サーバーから消去されようとしていたユイを、データの一部として保存したこと。

ゲームクリアとアインクラッドの消滅。

この世界に存在する俺と木綿季のSAOのデータのこと。

 

「ちょっと待ってくださいね」

 

ユイは目を瞑ると、耳を澄ますかのように首を傾けた。

 

「ここは――」

 

ぱちりと目を開け、俺と木綿季を見る。

 

「この世界は、《ソードアート・オンライン》サーバーのコピーだと思われます」

 

「「コピー……?」」

 

「はい。 基幹プログラム群やグラフィック形式は完全に同一です。 わたしがこの姿を再現出来ていることからも、それは明らかです。 ただカーディナル・システムバージョンが少し古いですね。 その上に載っているゲームコンポ―ネントはまったくの別個のものですが……」

 

「じゃあ、何でボク達の個人データがここにあったの……?」

 

「ちょっとパパとママのデータを覗かせてくださいね」

 

ユイは再び目を閉じた。

 

「……間違いないですね。 これはSAOでパパとママが使用していたキャラクター・データそのものです。 セーブデータのフォーマットがほぼ同じなので、二つのゲームに共通するスキルの熟練度を上書きしたのでしょう。 ヒットポイントとマナポイントは別形式なので引き継がれなかったようです。 所持アイテムは…破損してしまっているようですね。 このままではエラー検出プログラムに引っかかると思います。 アイテムは全て破棄したほうがいいです」

 

俺と木綿季は、文字化けしているアイテムを全て選択した。

この中には、思い出の詰まった品が幾つもあるはずだが、今は感傷を捨てて動かなければならない。

それに、どうせもう名前も解らず、オブジェクト化も出来ないのだ。

選択したアイテムをデリートすると、残ったのは正規の初期装備品だけとなった。

 

「このスキル熟練度はどうしたもんだろう」

 

「システム的には問題ありません。 プレイ時間と比較すれば不自然ではありますが、人間のGMが直接確認しない限り大丈夫でしょう」

 

「そ、そうなんだ。 ボクのデータは最早チートだよ……」

 

「こりゃもうビーターというよりチーターだよな……」

 

だがまぁ、キャラクターが強力であるに越した事はない。

これから世界樹とやらに登り、アスナとランを探し出さねばならないのだ。

俺はウインドウを閉じ、ユイに聞いた。

 

「そう言えば、ユイはこの世界でどういう扱いになっているんだ……?」

 

「ボクも気になる」

 

「えーと、このアルヴヘイム・オンラインにも、プレイヤーサポート用の疑似人格プログラムが用意されているようですね。 《ナビゲーション・ピクシー》という名称ですが……わたしはそこに分類されます」

 

直後、ユイの体がぱっと発光してから、消滅してしまった。

 

「「ユイ(ちゃん)!!」」

 

俺と木綿季は、慌てた声を上げる。

立ち上がろうとした俺だが、膝の上に可愛らしい小さなモノが、ちょこん乗っているのに気付いた。

身長は十センチほど、ライトマゼンダの花びらを象ったミニのワンピースから細い手足が伸びている。背中には半透明の羽根が二枚。

まさに妖精の姿だ。

愛くるしい顔と黒髪は、サイズこそ違うがユイのままである。

 

「これがピクシーとしての姿です」

 

ユイは俺の膝の上で立ち上がると、両腰に手を当てて翅をぴこぴこと動かした。

 

「「おお……」」

 

俺と木綿季は、ユイのほっぺたを突いた。

 

「くすぐったいですー」

 

ユイは、笑いながら俺と木綿季の指から逃れ、羽根を羽ばたかせ空中に浮き上がった。

そのまま俺の肩に乗る。

 

「ユイちゃん。 なら、前と同じように管理者権限もあるの?」

 

木綿季がユイに訊ねた。

 

「いえ……」

 

少ししゅんとした声。

 

「できるのは、リファレンスと広域マップデータへのアクセスくらいです。 接触したプレイヤーのスターテスなら確認できますが、主にデータベースには入れないようです……」

 

「そうなんだ……」

 

「ユイ……実はな……」

 

俺は表情を改め、本題を切り出した。

 

「ここに、ねぇねぇと……ママの友達がいるらしいんだ」

 

ユイは俺の肩から飛び上がり、俺と木綿季の顔の前で停止した。

 

「どういうことですか……?」

 

木綿季が口を開いた。

 

「えっとね……。 ねぇねぇとママのお友達は、SAOが消滅しても現実世界に復帰していないの。 この世界で、似た人を見たという情報を貰ってここにきたんだ」

 

「……そんなことが……。 ごめんなさいパパ、ママ。 わたしに権限があればプレイヤーデータを走査してすぐに見つけられるのに……」

 

俺が口を開いた。

 

「いや、大体の居場所の見当は付いているんだ。 世界樹……といったかな。場所判るかい?」

 

「あっ、はい。 ええと、ここからは大体北東の方向ですね。 でも相当遠いです。 リアル距離置換で五十キロメートルはあります」

 

「「うわ……遠い(な)(ね)……」」

 

「そういえば、何で森の中にログインしたのかな?」

 

木綿季が、俺も疑問に思っている問いをユイに訊ねた。

ユイは首を傾げた。

 

「さぁ……位置情報が破損したのか、あるいは近傍の経路からダイブしているプレイヤーと混信したのか、何とも言えません」

 

「どうせなら、世界樹の近くに落ちてくれればよかったのにな」

 

「だねー」

 

「そういえばここでは飛べるって聞いたなぁ……」

 

「試してみようよ」

 

俺と木綿季は立ち上がった。

 

「おお、羽根がある」

 

俺と木綿季の背中からは、黒く透き通る鋭い妖精の羽根が伸びている。

 

「どうやって飛ぶんだろ」

 

「感覚?」

 

マジですか、木綿季さん。

 

「補助コントローラがあるみたいです。 左手を立てて、握るような形を作ってみてください」

 

俺は、再び肩に乗ったユイの言葉に従って、手を動かした。

すると手の中に、スティック状のオブジェクトが出現した。

 

「えと、手前に引くと上昇、押し倒すと下降、左右で旋回、ボタン押し込みで加速、離すと減速となっていますね」

 

「あっ、できたよ」

 

俺は木綿季を見た。

木綿季は、すでに随意飛行を可能にしていた。

マジか……。

俺は、ユイの指示通りスティックを使ってみた。

 

「おっ、飛んでいるぞ」

 

上昇、下降、旋回、加速、減速、を一通り試した。

 

「なるほど、大体わかった」

 

木綿季は羽根を羽ばたかせながら、俺の隣までやって来た。

 

「ボクは完璧かな」

 

「とりあえず、近くの街に行こうぜ」

 

「西のほうに《スイルベーン》という街がありますね。 そこが一番……、あっ……」

 

突然ユイが顔を上げた。

 

「どうしたの、ユイちゃん?」

 

「はい、ママ。 プレイヤーが近づいています。 三人が一人を追っているようですが……」

 

「おお、戦闘中かな。 見に行こうぜ」

 

「あいかわらずパパはのんきですねぇ」

 

「まぁ、それがパパだからねぇ」

 

ユイと木綿季に溜息をつかれた。

俺はウインドウを操作して初期アイテムの片手用直剣を背中に装備した。 抜いて、数回左右に振ってみる。

 

「うわぁ、なんかちゃっちい剣だな。 軽いし……まぁいっか……」

 

鞘に剣の刀身を収めた。

 

「だね」

 

木綿季も腰に装備した片手用直剣を抜いて、言っていた。

木綿季も数回左右に振った後、片手剣の刀身を腰に装備している鞘に収めた。

 

「じゃあ、行こっか」

 

「おう。ユイ、先導頼む」

 

「了解です」

 

飛び立ったユイを追って、俺と木綿季は空中移動を開始した。

 




鳥籠の内部、何時書こうかな……。

まぁ、一応考えましたよ。
あと、呼び方は、次回変わりますね。

ご意見、ご感想よろしくお願いします!!

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