舞翼です!!
設定が決まりましたよ~。 決めるの結構悩んだな~。
いきなりの変更は出来ないので、ご容赦を…。
1つだけ、ハーレムは無いかな。
まぁ、それは置いといて。
書き上げました。
誤字脱字があったらごめんよ…。
それでは、どうぞ。
第1層 教会
「ミナ、パンひとつ取って!」
「ほら、余所見しているとこぼすよ!」
「あーっ、先生ー! ジンが目玉焼き取ったー!」
「かわりにニンジンやったろー!」
傍目から見ても凄い光景だった。
「これは……、すごいな……」
「ボクはこれくらい賑やかな方が好きだな」
「私も賑やかな方がいいわ」
俺は眼前で繰り広げられる戦場さながらの朝食風景に、呆然としてしまった。
はじまりの街、教会の一階広間。
巨大な長テーブル二つに所狭しと並べられた大皿に載る、卵やソーセージ、野菜サラダを、二十数人の子供たちが盛大に騒ぎながらぱくついている。
「でも、楽しそうだな」
俺が呟いた。
俺たち四人とサーシャは、少し離れた丸テーブルに座っている。
俺とユウキとランとサーシャは、微笑しながらお茶を口許に運んだ。
「毎日こうなんですよ。 いくら静かにって言っても聞かなくて」
そう言いながら、子供たちを見るサーシャの目は心底愛おしそうに細められている。
「子供、好きなんだね」
ユウキが満面の笑みでサーシャに言うと、サーシャは照れたように笑った。
「向こうでは、大学で教職課程取っていたんです。 ほら、学級崩壊とか長いこと問題になっていたじゃないですか。 子供たちを私が導いてあげるんだーって、燃えてて。 でもここに来て、あの子たちと暮らし始めたら、何もかも見ると聞くでは大違いで……。 むしろ私が頼って、支えられている部分のほうが大きいと思います。 でも、それでいいって言うか……。 それが自然なことに思えるんです」
「何となく解る気がするな」
ユウキは頷いて、隣の椅子で真剣にスプーンを口に運ぶユイの頭をそっと撫でた。
ユイの存在がもたらす温かさは驚く程だ。
目に見えない羽根で包み、また包まれるような、静かな安らぎを感じる。
昨日、謎の発作を起こし倒れたユイは、幸い数分で目を覚ました。
だが、すぐに長距離を移動させたり、転移ゲートを使わせる気にはならなかった。
それにサーシャの熱心な誘いもあり、教会の空き部屋を一晩借りることにした。
今朝からはユイの調子も良いようで、俺たち三人は安心した。
しかし基本的な状況は変わっていない。
かすかに戻ったらしきユイの記憶によれば、はじまりの街に来たことは無いようだった。
そもそも保護者と暮らしていた様子すら無いのだ。
ユイの記憶障害、幼児退行といった症状もまるで不明で判らないのだ。
これ以上何をしていいかも思いつかない。
ーーもしかしたら、これ以上出来る事が無いのかもしれない。
「パパ、どうしたの?」
隣に座っているユイが、俺の顔を見て問いかけてきた。
「んっ、何でもないぞ」
俺が考え込んでいると気付いたのか。
俺はカップを置き、話し始めた。
「サーシャさん……」
「はい?」
「……軍のことなんですが。 俺が知っている限りじゃ、あの連中は
サーシャは口許を引き締めると、答えた。
「軍の方針が変更されたのは、半年くらい前ですね……。 徴税と称して恐喝まがいの行為を始めた人たちと、それを逆に取り締まる人たちがいて。 軍のメンバー同士で対立している場面も何度も見ました。 噂じゃ、上のほうで権力争いか何かあったみたいで……」
「権力争い??」
何かの派閥があるのか?
俺が考え込んでいた時、ユウキが口を開いた。
「誰か来るよ」
「ええ、一人教会の入口に近づいていますね」
ランも近づいてくるプレイヤーに気付いたらしい。
俺も索敵スキルを使用した。
確かに、こちらに一人のプレイヤーが近づいて来ている。
「ああ、間違いなく一人こちらに近づいて来ているな」
「え……。 またお客様かしら……」
サーシャの言葉に重なるように、教会内に音高くノックの音が響いた。
教会の扉を開けた先に佇むのは、長身の女性プレイヤーだった。
銀色の長い髪をポニーテールに束ね、
鉄灰色のケープに隠されているが、女性プレイヤーが身に纏う濃緑色の上着と
「みんな、この方は大丈夫よ。 食事を続けなさい」
サーシャの言葉により子供たちは、ほっとしたように肩の力を抜き、食事を続けた。
歩いてきた女性プレイヤーは、俺たちが座っている丸テーブルまで歩を進め、俺たちの座っている前で立ち止まり声を掛けてきた。
「初めまして、ユリエールです。ギルドALFに所属しています」
「「「ALF?」」」
初めて聞くギルド名に、俺とユウキとランは首を傾げた。
「あ、すみません。 “アインクラッド解放軍”の略称です。正式名はどうも苦手で……」
女性の声は、落ち着いた艶やかなアルトだった。
「初めまして、ボクはユウキ言います」
ユウキが最初に口を開いた。
「初めまして、私はランと言います」
続いてランが口を開いた。
「俺は、キリトだ」
最後に俺が自己紹介をした。
ユリエールは、俺たち三人の名前を聞いた途端、目を見開いた。
「……あの、もしかして《黒の剣士》《絶剣》《剣舞姫》ですか……??」
「……ああ、そうだ」
そう言えば俺たちの名前って、アインクラッドの下層まで広まっているんだった……。
「……なるほど、道理で連中が軽くあしらわれるわけだ」
連中、というのが昨日の暴行恐喝集団のことだと悟った俺たち三人は、警戒心を強めた。
「つまり、昨日の件で抗議に来たの」
ユウキのユリエール言葉に応じた。
「とんでもない。 その逆です、よくやってくれたとお礼を言いたいくらい」
この言葉により、俺たち三人は警戒を解いた。
ユリエールは姿勢を正した。
「今日は、お三方にお願いがあって来たんのです」
「「「お願い……?」」」
ユリエールは、銀色の髪を揺らして頷いた。
「はい。 最初から説明します。軍というのは、昔からそんな名前だったわけじゃないんです……。 軍の名前がALFになったのは、かつてのサブリーダーで現在の実質的支配者、キバオウという男が実権を握ってからのことです。 最初はMTDという名前で……、聞いたこと、ありませんか?」
ユウキとランは首を傾げていたが、俺が即答した。
「《MMOトゥデイ》の略だろう。 SAO開始当時の、日本最大のネットワーク総合情報サイトだ。 ギルドを結成したのは、そこの管理者だったはずだ。 名前は……シンカー」
その名前を口にした時、ユリエールの顔が僅かに歪んだ。
「彼は……決して今のような、独善的な組織を作ろうとしたわけじゃないんです。 情報とか、食料とかの資源をなるべく多くのプレイヤーで均等に分かち合おうとしただけで……」
危険を極力減らした上で安定した収入を得て、それを均等に分配しようという思想自体は間違っていない。
だが、MMORPGの本質はリソースの奪い合いだ。
SAOのような異常かつ極限的状態のゲームになってもだ。
理想を実現する為には、組織の現実的な規模と強力なリーダーシップが必要だった。
だが、軍は大きくなりすぎた。
「そこに台頭してきたのがキバオウという男です」
確かキバオウって奴は、第1層ボス攻略会議の時に暴れた奴だ。
「彼は、シンカーが放任主義なのをいいことに、同調する幹部プレイヤー達と体制の強化を打ち出して、ギルドの名前をアインクラッド解放軍に変更させました。 更に公認の方針として犯罪者狩りと効率のいいフィールドの独占を推進したのです。 それまで、一応は他のギルドとの友好も考え狩場のマナーを守ってきたんですが、数の力で長時間の独占を続けることでギルドの収入は激増し、キバオウ一派の権力はどんどん強力なものとなっていきました。 シンカーはほとんど飾り物状態で……。 キバオウ派のプレイヤーは調子に乗って、街区圏内でも《徴税》と称して恐喝まがいの行為すら始めたのです。 昨日、あなた方が痛い目に遭わせたのは、そんな連中の急先鋒だった奴等です」
ユリエールは一息つくと、サーシャの淹れたお茶を含み、続けた。
「でも、キバオウ派にも弱みはありました。 それは、資財の蓄積だけに現を抜かせて、ゲーム攻略をないがしろにし続けたことです。 本末転倒だろう、と言う声が末端のプレイヤーの間で大きくなって……。その不満を抑えるため、最近キバオウは無茶な博打に出ました。 配下の中で、ハイレベルプレイヤー十数人による攻略パーティーを組んで、最前線のボス攻略に送り出したんです」
俺たち三人は、顔を見合わせた。
「……コーバッツか」
俺が呟いた。
「あのパーティーでボス攻略なんて無謀すぎだよ。 あの時、ボク達が切り込まなかったら軍のパーティーは全滅していたよ」
ユウキは、悲しい顔をして言った。
「ええ、そうね」
ランは、ユウキの言葉に頷いた。
「いかにハイレベルと言っても、もともと我々は攻略組の皆さんに比べれば力不足は否めません。……結果、パーティーは敗退、隊長は死亡という最悪の結果になり、キバオウはその無謀さを強く糾弾されたのです。 もう少しで彼を追放できるところまで行ったのですが……」
ユリエールは強く唇を噛んだ。
「三日前、追い詰められたキバオウは、シンカーを罠に掛けるという強硬策に出ました。……シンカーをダンジョンの最奥に置き去りにしたんです。 シンカーは、キバオウの『丸腰で話し合おう』という言葉を信じてしまい、……転移結晶も持っていかなかったんです……」
「転移結晶を持っていかなかった!?」
俺は、声を上げて叫んでしまった。
「それで、シンカーさんは!?」
ユウキはユリエールに問いかけた。
「生きているの!?」
ランもユリエールに問いかけた。
「彼は、まだ生きています。《生命の碑》の彼の名前はまだ無事なので、どうやら安全地帯までは辿り着けたようです」
俺たち三人は、胸をなで下ろした。
「ただ、場所がかなりハイレベルなダンジョンの奥なので、身動きが取れないようで……。 ご存知のとおりダンジョンにはメッセージを送れませんし、中からはギルドの
出口を死地のど真ん中に設定した回廊結晶を使う殺人は《ポータルPK》というメジャーな手法だ。
当然シンカーも知っていたはずだ。
反目していたとは言え、同じギルド仲間、サブリーダーがそこまでするとは思わなかったのだろう。
ユリエールはポツリと『いい人過ぎたんです』と呟き、続ける。
「シンカーが罠に落ちるのを防げなかったのは彼の副官である私の責任、私は彼を救出に行かなければなりません。 でも、彼が幽閉されたダンジョンは、とても私のレベルでは突破できませんし、《軍》の助力は当てに出来ません。 そんなところに、恐ろしく強い三人組が街に現れたという話を聞きつけ、いてもたってもいられずにこうしてお願いに来た次第です。 キリトさん、ユウキさん、ランさん」
ユリエールは深々と頭を下げ、言った。
「お会いしたばかりで厚顔極まると思いでしょうが、どうか、私と一緒にシンカーを救出に行って下さいませんか」
悲しいことだが、SAO内では他人の言うことを簡単に信じることは出来ない。
今回のことにしても、俺たち三人を圏外に誘き出し、危害を加えようとする陰謀である可能性は捨てきれない。
俺たち三人が考え込んでいたら、今まで沈黙していたユイが、カップから顔を上げて言ってきた。
「だいじょうぶだよ、パパ、ママ、ねぇねぇ。 その人、うそついていないよ」
昨日までの言葉のたどたどしさが嘘のような立派な日本語である。
「ユ……ユイちゃん、そんなこと、判るの……?」
ユウキは、ユイの顔を覗き込んで問いかけた。
「うん。……うまく……言えないけど、わかる……」
俺はユイの頭に右手を置き、くしゃくしゃと撫でてあげた。
「そうだな、疑って後悔するよりは信じて後悔しようか」
ユウキとランも、俺の言葉に頷いていた。
俺は、ユリエールに言った。
「シンカー救出に手を貸します」
「ありがとう……。 ありがとうございます……」
ユリエールは、瞳に涙を溜めながら、深々と頭を下げた。
「ごめんね、ユイちゃん。 これからママとパパとねぇねぇは、お出かけするからお留守番していてね」
ユウキがユイの頭を撫でて言った。
「いやだ!! パパとママとねぇねぇと一緒に行く!!」
ユイが足をバタバタさせて言ってきた。
「ユイちゃん、これからお出かけする場所は危ない所なの」
ランが優しい声音でユイに言ったが……。
「やだやだやだ!! 一緒にいく!!」
ユイは、首を左右に振りだした。
「おお……。 これが反抗期ってやつか」
「「キリト(さん)!!」」
俺たち三人は最後には折れてしまい、ユイを連れてダンジョンに向かうことになった。
結構原作と被ってしまったような……。
マジですいません。
これでも頑張って書いたんすよ…。
ランちゃんの影が薄くなってしまった…。ごめんよ。
サーシャさんは、キリト君たちの正体が素で解らなかったっていうことにしてください。
ご意見、ご感想よろしくお願いします!!