ソードアート・オンライン ~黒の剣士と絶剣~   作:舞翼

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どもっ!!

舞翼です!!

前回は不快な投稿をしてしまい申し訳ない。

圏内事件の編集できる場面は編集出来たと思っています。

ちゃんと編集出来ているか不安ですが…。

今回は新年初投稿です。

それでは、どうぞ。


第24話≪笑う棺桶≫

第19層 十字の丘

 

この場所は、黄金林檎リーダー、グリセルダさんのお墓がある場所だ。

だが、いま彼女が眠っているお墓の前で最低最悪の出来事が起きている。

何者かが投げた、毒ナイフを受けて倒れているシュミット。

この現象を見て、動けなくなってしまった、ヨルコとカインズ。

そして彼らは絶対に遭遇してはならない人物達と遭遇してしまうことになる。

 

SAO殺人ギルド≪笑う棺桶≫(ラフィン・コフィン)

“此処”での“死”が現実の“死”となるSAOにおいてPKを行う快楽殺人集団。

頭陀袋(ずだぶくろ)を思わせる黒いマスクで顔を覆っている毒ナイフ使い『ジョニー・ブラック』。

赤をイメージカラーにしており、髪と眼の色を赤にカスタマイズしている針剣使い(エストック)

『赤目のザザ』。

膝上までを包む、艶消しのポンチョ。目深に伏せられたフード。

中華包丁のように四角く、血のように赤黒い刃を持つ肉厚の大型ダガーを扱う人物。

 

「…………PoH(プー)…………」

 

シュミットから漏れた一言は、恐怖と絶望を映していた。

笑う棺桶≫(ラフィン・コフィン)が結成されたのは、SAOというデスゲームが開始されてから一年後。

それまでは、ソロあるいは少人数のプレイヤーを大人数で取り囲みコルやアイテムを強奪するだけだった犯罪者プレイヤーの一部が、より過激な思想のもとに先鋭化した集団。

 

その思想とはつまり《デスゲームならば殺して当然》。

 

現代の日本では許されるわけもない《合法的殺人》がこのアインクラッドなら可能になる。

なぜならあらゆるプレイヤーの体は現実世界では完全ダイブ中、無意識状態であり、本人の意思では指一本動かせないからだ。

プレイヤーを殺すのはナーブギアを開発した『茅場明彦』であり自分達では無い。

デスゲームとなったSAOにおいて

『ならば殺そう。ゲームを愉しもう。それは、全プレイヤーに与えられた権利なのだから』という劇毒じみたアジテーションによって、オレンジを誘惑、洗脳し、狂的なPKに走らせたのが《笑う棺桶》のリーダー『PoH』であった。

 

「Wow……。 確かに、こいつはでっかい獲物だ。 DDAのリーダー様じゃないか。 さて、どうやって遊ぼうか?」

 

「あれ、あれやろうよ。 ヘッド《殺し合って、生き残った奴だけ助けてやるぜゲーム》。 まぁ、この三人だと、ちょっとハンデつけなきゃっすけど」

 

「ンなこと言って、お前こないだ結局残った奴も殺したろうが」

 

「あっあーっ! 今それ言っちゃゲームにならないっすよヘッドぉ!」

 

緊張感のない、しかしおぞましいやり取りであった。

現在、シュミットが装備をしてる鎧は最高レベルの鎧だ。

だが、PoHの持つ大型ダガー≪友切包丁(メイト・チョッパー)≫は、現時点で最高レベルの鍛冶職人が作成できる最高級の武器を上回る性能を持つモンスタードロップ、いわゆる《魔剣》だ。

フルプレートアーマーの装甲値をも容易く貫いてくるはずだ。

体は動かない。

装備している鎧も意味をなさない。

もう抗う術がない……。

シュミットは死を覚悟した。

 

だが次の瞬間。

主街区の方向から、一直線に近づいてくる白い燐光(りんこう)が見えた。

小刻みに上下する光が闇夜に溶けるような漆黒の馬の(ひづめ)を包む冷たい炎であると見て取れたのは数秒後だった。

馬の上には、二人の人影が見える。

その勢いに押されるように≪笑う棺桶≫(ラフィン・コフィン)の三人は数歩下がった。

目的地まで運んでいた馬が後方の足だけで立ち上がる。

 

“いでっ!!”

 

“きゃ!!”

 

「ユウキ大丈夫か?」

 

「うん、大丈夫。 それよりも間に合った?!」

 

「ぎりぎりな」

 

マジで、ぎりぎりだったな。

 

「シュミットさんよ。 タクシー代はDDAの経費にしてくれよな」

 

俺は握っていた手綱を引き、馬に尻を向けさせ、その尻を叩き、レンタルを解除した。

 

「よう、PoH。 久しぶりだな。まだその趣味悪い格好してんのか」

 

「ねぇ、キリト。 なんで≪笑う棺桶≫(ラフィン・コフィン)リーダー、PoHのこと知っているの?!」

 

「オレンジを潰し終わった後に偶然遭遇してな。 その時、何回か剣を合わせたんだ」

 

「へぇー、そんなことがあったんだ。 なんでそんな重要なことボクに隠していたのかな?」

 

ユウキさん、マジ怖い……。

《笑う棺桶》PoHより怖い……。

なんて返せばいいんだ。 

 

「えっと……、俺にとってお前は“大切な存在”だからかな。 だからこの件に巻き込みたくなかったんだ」

 

「……そっか」

 

「オイ!! お前ら俺達を無視すんな!!」

 

PoHが俺達に向かって叫んだ。 しかも殺気が籠っていた。

 

「ンの野郎……!! 余裕かましてんじゃねーぞ!! 状況解ってんのか!!」

 

ジョニー・ブラックが毒ナイフを振り回して聞いてきた。

 

「こいつの言うとおりだぜ、キリトと絶剣の嬢ちゃん。 お前達だけで俺達三人を相手にできると思っているのか?」

 

PoHは、ジョニー・ブラックの肩を≪友切包丁(メイト・チョッパー)≫を持っていない手で叩いていた。

 

「ま、無理だな」

 

「うん。 無理だね」

 

「でも耐毒POT(ポーション)飲んでるし、回復結晶ありったけ持ってきたから、ユウキと合わせれば二十分は耐えられるよ。それだけあれば、援軍が駆けつけるには充分だ。 いくらあんたでも、攻略組三十人を三人で相手にできると思っているのか?」

 

フードの奥で軽く舌打ちするのが聞こえた。

 

「…………Suck」

 

PoHは、≪友切包丁(メイト・チョッパー)≫を持った手を上げ、真っ直ぐ俺達を指し低く吐き捨てた。

 

「《黒の剣士》、お前は絶対に絶剣の嬢ちゃんの前で殺してやる……。 期待しといてくれよ」

 

「出来るものならやってみな。 あと忠告しといてやるよ、こいつ(ユウキ)に手を出したらお前らをこの仮想世界と現実世界からログアウトさせるからな。 覚えとけよ」

 

この言葉を聞いてから、PoHは、仲間のジョニー・ブラック、赤目のザザを連れて夜の闇の中に消えていった。

 

 

Side キリト

 

俺は≪笑う棺桶≫のリーダー、PoHとは、一度剣を合わせたことがあるが、『子供っぽい態度と外見の毒ナイフ使い』と『ボロボロ服を着たエストック使い』。

この二人は初対面であった。

次に会う時は“殺し合い”をする時だな…。

とりあえず、クラインにメッセージを飛ばさないと。

≪ラフコフは逃げた、街で待機していてくれ≫と送った。

あとは、シュミットの解毒だな。

 

Side out

 

 

「解毒ポーションだ」

 

俺は、シュミットに解毒ポーションを渡した。

 

「ああっ……、悪いな」

 

シュミットは震える手で解毒ポーションを飲んでいた。

後は、あの二人から話を聞くか。

 

「また会えて嬉しいよ、ヨルコさん。 ……それに初めましてかと言うべきかな、カインズさん」

 

「初めまして、……ではないですよ。 キリトさんとはあの瞬間、一度だけ目が合いましたね」

 

多分、あのときだな。

 

「確か、あなたが死ぬ、じゃない、鎧の破壊と同時に転移する瞬間だろ?」

 

「ええ、あの時、この人達には偽装死(ぎそうし)のカラクリを見抜かれてしまうかもしれない、って予感したんですよ」

 

「まぁ、俺は完璧に騙されたな。 こいつは違ったが」

 

俺はこう言いユウキを見る。

 

「ボクがこのカラクリに気付けたのは、キリトと調査や相談をしたからだよ」

 

鎧を鳴らして状態を起こしたシュミットは、いまだ緊張が抜けていない言葉で俺達に話しかけた。

 

「キリト、ユウキさん。 助けてくれてた礼は言うが……。 なんで判ったんだ。 あの三人がここを襲ってくることが」

 

「判ったわけじゃない。 あり得ると推測したんだ。 相手がPoHだと最初から知ってたら、ビビって逃げたかもな」

 

「ボク達がおかしいと思ったのは、ほんの三十分前だよ」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦

 

第56層 NPCレストラン

 

「今回の事件は一見落着だな」

 

「そうだね」

 

「俺たちは、ヨルコさんとカインズに綺麗に騙されたな」

 

しかし、こんなトリックを思い付くなんてな。

 

「ねぇ、キリト。 結局のところ指輪ってどうなったの?」

 

「あっ」

 

指輪の事が完全に頭から離れていたな。

 

「でも、確実なことはグリセルダさんのストレージにあったことだよね?」

 

「それは、確実にあったはずだ。 グリセルダさんは指輪を持って、最前線の大きい競売屋に委託しに行ったのだからな」

 

「じゃあ、指輪はグリセルダさんが亡くなったと同時に消滅したということ? でも本当に消滅したとは限らないよね」

 

「消滅はしていないと思う。 でも、死んでしまったらアイテムを見る事は不可能になるな。 アイテムストレージが開けなくなってしまうからな。 ストレージを何かしらの方法で確認することが出来るなら別だけどな」

 

「ねぇ、キリト。 今なんて言った?」

 

「『ストレージを何かしらの方法で確認することが出来るなら』って言ったぞ」

 

「ねぇ、キリト。 前にアスナから聞いた話だけど、この世界で結婚をするとストレージが共通化されるらしいんだよ」

 

結婚をしたらストレージ共通化をするのか。

じゃあ、離婚をしたらどうなるんだ? 特に無条件離婚を?

 

「じゃあ、グリムロックはグリセルダさんのアイテムストレージが何時でも見ることができたということか? でも、グリセルダさんが死んでしまったらストレージが見れなくなるぞ。 もし……、無条件離婚したらストレージはどうなるんだ? この場合は無条件離婚が当てはまるからな」

 

「えっと、離婚したら、アイテムストレージは元に戻るんじゃないかな? でもこの場合は相手が亡くなってしまったんだからアイテムはもう一人の結婚相手に全部渡る……、のかな?」

 

「じゃあ、グリセルダさんが死んだ瞬間に彼女が持っていたアイテムはすべてグリムロックに渡るということか? それで、持ちきれないアイテムは足許にドロップするということなのか」

 

「ボクたちの考えが正しければだけど……」

 

「急いでヨルコさん達が居る層に行く!」

 

このままだと、三人が危険だ。

 

「ボクも付いて行くからね」

 

「……わかった。 俺の傍を離れるなよ」

 

「わかった」

 

俺たちは、急いで、第19層 十字の丘に向かった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦

 

「なぁ、カインズさん、ヨルコさん、あの武器はどうやって入手したんだ?」

 

「グリムロックさんに作ってもらったの?」

 

俺達の質問にヨルコさんとカインズは首を縦に振った。

 

「グリムロックさんは、最初は気が進まないようでした。返ってきたメッセージには、もう彼女を安らかに眠らせてあげたいって書いてありました。 でも、僕らが一生懸命頼んだらやっと武器を作ってくれたんです」

 

「残念だけど、グリムロックがあんたたちの計画に反対したのはグリセルダさんの為じゃないよ。 《圏内PK》なんていう派手な事件を演出し、大勢の注目を集めれば、いずれ誰かが気付いてしまうと思ったんだ。 結婚によるストレージ共通化が、離婚でなく死別(・・)で解消されたとき……。 その中のアイテムがどうなるか」

 

「えっ…?」

 

意味が解らない、というようにヨルコさんたちが首をかしげた。

無理もない、アイングラッドではいくら仲が良くても結婚まで行うプレイヤーはごく稀だ。

それにアイングラッドでの結婚はお互いを信頼し、信じ合わなければできないことだ。

この中で離婚する者たちはもっと少ないだろうし、その理由が死別(・・)となれば尚更だ。

俺達もこの結論に至るまで指輪は殺人者の懐にドロップしたのだろうと信じて疑わなかったからな。

 

「……じゃあ、グリムロックがこの事件の犯人なのか? ……グリセルダを殺したのも…?」

 

ひび割れた声でシュミットが答えた。

 

「いや、直接手を汚しはしなかっただろう。 たぶん《笑う棺桶》に依頼したんだ」

 

「そんなはずはありません。 グリムロックさんが犯人なら、なんで私達の計画に協力してくれたんですか!?」

 

「あんたたちは、グリムロックに計画を全部説明したんだろう? たぶん、グリムロックはこの計画を利用して《指輪事件》を永久に闇に葬り去ろうとしたのだろうな。 この場でシュミット、カインズさん、ヨルコさん三人を……、纏めて消してしまえばいいからな…」

 

「……そうか。 だから……、だから、あの三人が……」

 

虚ろな表情でシュミットが呟いた。

 

「そうだ。 笑う棺桶のトップスリーが現れたのはグリムロックが依頼したんだろうな。

三人を殺害してくれと。 グリセルダさんの殺害実行を依頼したときから、パイプがあったんだろうな」

 

「そんな……」

 

膝から崩れ落ちそうになったヨルコさんをカインズさんが支えた。

 

「そうだな。 詳しいことは、直接本人から聞こうか。 そろそろ出てきたらどうだ? 真相を知る三人の殺害は失敗したぞ」

 

この言葉を発した後、丘の上からある“人物”が姿を現した。

 

「見つかってしまったね」

 

声の人物は、真犯人のグリムロックであった。

 




圏内事件は書くの難しいですな。

こう思っているのは僕だけですよね…。

圏内事件も終盤に入りましたね。

これからも頑張って投稿します。

ご意見、ご感想、よろしくお願いします!!

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