憑依系男子のIS世界録   作:幼馴染み最強伝説

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みなさんお気づきかと思いますが、タイトルを変更しました。

ついでにタグも変更しました。話の流れ的に箒とセシリアのWヒロインの方向でいきます。これ以上ヒロインは何が何でも増やしません。多少無理矢理になっても全員一夏行きです。ハーレムだけは絶対に回避します!

それと箒とセシリアのWヒロインにした事に不満がある方もおられるかと思いますが、何卒長い目で見ていって下さい。

それでは最新話をどうぞ。


口は災いの元

「という訳でっ!藤本くんクラス代表決定おめでとう!」

 

『おめでと〜!』

 

ぱん、ぱんぱーん。クラッカーが乱射され、寮の食堂では将輝を中心に盛大なパーティーが開かれていた。

 

ちらりと壁を見てみれば、其処には『藤本将輝クラス代表就任パーティー』とかかれた紙が掛けてあり、女子一同はこれはめでたいと各自飲み物を手にしてやいのやいのと盛り上がっているが、祝われている本人からしてみれば何もめでたくはない。今すぐ部屋に帰って寝たい。というのが本音であるが、一応このパーティーの主役とされている以上、帰るという選択肢は選べないし、そもそもない。あったとしても『しかし回り込まれてしまった!』というドット文字が出るに違いない。ともかく、将輝は盛り上がっている中心でただただ項垂れていた。

 

「いやー、これでクラス対抗戦も盛り上がるねぇ」

 

「ほんとほんと」

 

「ラッキーだったよねー。同じクラスになれて」

 

「ほんとほんと」

 

(おい、君は二組だろうが。何で一組のパーティーにいるんだ。ていうか、総勢がクラス人数よりも多いとはこれいかに)

 

一つのクラスの人数は凡そ二十九人。にもかかわらず、此処にいる女子達は軽く数えただけでも四十人はいる。まあ、ここまでくれば割とどうでもいい事ではあるし、他クラスが参加してはいけないというルールもないので、突っ込む意味はない。

 

「人気者だな、将輝」

 

「だね。日本に初めて来たパンダの気持ちが凄くわかるよ」

 

「………うむ。お前の言いたい事は何となくわかった」

 

もちろん嬉しいなどというプラスなものではない。環境の変化によるストレスや周囲の視線によるストレスなど軽く寿命が三分の一は縮みそうなくらいのストレスの事だ。実際野生パンダの平均寿命は十四歳から二十歳なのに日本に初めて来たパンダは九歳で没している。しかしながら飛行機に乗りまくってメキシコを三往復もしたパンダは二十二歳まで生きたと言うのだから、環境の変化が必ずしもストレスになるという訳ではないのかもしれない。とはいっても、純粋な好奇心とは時に悪意にすらなり得るのもまた事実。横で他人事のように初対面の女子とすら普通に会話が出来る(ついでに無意識で落とす)一夏のような未来型超ハイスペック男子はともかく、将輝はそんな超ハイスペックではない。いや、普通の男子は初対面の女子と饒舌に話す事など出来ない。例え話せたとしても会話は弾まないだろう。何が言いたいのかと言われれば『頼むから話しかけて来いオーラを出して、こっちを見てくるな』というのが将輝の心情だ。

 

「はいはーい、新聞部でーす。話題の新入生、藤本将輝くんと織斑一夏君に特別インタビューをしに来ました〜!」

 

オーと盛り上がる一同。将輝はオーじゃねえよと言いそうになるのを堪えて、お茶を飲む。『話題の』とは何を指すのかは大体想像はつく。上げられるワードとしては男子、専用機持ち、クラス代表などが挙げられる。

 

「あ、私は二年の黛薫子。よろしくね。新聞部副部長やってまーす。はいこれ名刺」

 

ごく自然な流れで名刺を渡され、受け取る。一連の動作に無駄が無い彼女はそういう職業が向いているのかもしれない。

 

「ではではずばり藤本君!クラス代表になった感想をどうぞ!」

 

ボイスレコーダーをずずいっと将輝に向け、薫子は無邪気な子供のように瞳を輝かせる。その瞳は一夏や将輝が入学初日のSHRでクラスメイト達に向けられていた視線と同じだ。好奇心と期待に満ち溢れている。よく見れば周囲の女子達も無言で聞き耳を立てていた。

 

(確かこの人、面白いように捏造するんだったよな。下手に捏造されるくらいなら、言い過ぎず、それでいて捏造されない程度の良さげな発言を……)

 

思案する将輝はこれならと一つ咳払いをしてから言った。

 

「俺と踊ってみるかい?覚悟しないとヤケドじゃ済まないよ…………………なんて」

 

深く考えず、咄嗟に思いついた言葉を噛み締めるようにゆっくりと(早口にならないように)そして真剣な眼差しで(目を逸らさないように)そう口にした。

 

しーんとしたままの食堂。これはちょっと言い過ぎかと訂正しようとした直後、薫子がいち早く蘇生した。

 

「良いよ良いよ!藤本くん!さっきのキメ顔といい、これは新聞部副部長として明日の校内新聞は何としてでも最高のものに仕立て上げなきゃ!」

 

「ね、捏造とかは勘弁を……」

 

「捏造?しないしない。ありきたりだったらしたけど、さっきので充分どころかお釣りが返ってくるレベルだから、いらない尾ひれは付けないよ」

 

良かった。とホッとひと息つく将輝だが、先程の台詞を脳内で反復している内に後から羞恥心が押し寄せ、頭を抱えて悶絶していた。

 

「恥ずかしいなら言わなければ良いではないか」

 

「ホントそれ。俺馬鹿だね」

 

「流石に今回ばかりは私もそう思った」

 

「ぐはっ‼︎だ、だよね〜」

 

基本的にそういう事は否定する箒にすらそう思われた事に将輝のライフがゼロを超えてマイナスになった。軽く生ける屍状態だ。

 

「わたくしはよろしかったと思います」

 

「ごはっ‼︎そ、そのフォローは寧ろ逆効果だよ、セシリア」

 

ゾンビ状態からの優しさという聖なる攻撃に将輝はそのまま机に突っ伏した。しかもそれが心の底からそう思っての発言なのだから、余計にダメージが大きい。純粋な優しさとは時に口撃へと変化するのだ。

 

「それじゃあ次は織斑君!かっこいいのを一つお願い!」

 

ダウンした将輝をよそに薫子は一夏へとボイスレコーダーを向ける。

 

「え⁈えーと……」

 

先程薫子が『藤本君と織斑君にインタビューしに来た』と言っていたのを一夏は忘れていたらしく、他人事のように見ていたら急に話を振られたので、言葉を詰まらせた。

 

「まあ、なんというか、頑張ります」

 

「えー。それじゃあつまんないよー。もっと熱いコメントをちょうだい」

 

そもそもインタビューのコメントに面白さを求める方がおかしいのだが、言われた所で薫子は聞く耳を持たないだろう。乗り気ではない一夏だが、期待を裏切る訳にもいかない。仕方ないので日本の誇る名優の言葉を借りることにした。

 

「自分、不器用ですから」

 

「うわ、前時代的!………織斑君の方は適当に捏造っと」

 

一夏の発言はどうやら薫子には響かなかったようで目の前で隠す気もさらさら見せずに捏造すると口にした。こうして情報発信者の独断と偏見で世の中に誤った情報が流れるという社会の闇を一端を垣間見る事になった。

 

「ああ、最後にセシリアちゃんもコメントちょうだい」

 

「わたくし、あまりこういったコメントは好きではないのですが……」

 

渋い顔をするセシリア。セシリア的は必要でなければあまり自己主張はしない方だ。イギリスではモデルもしているのだが、取材をされても基本的にコメントなどはしない。稀にする事もあるが、それは昔から付き合いのある会社であったり、何かしらの理由がある。

 

「う〜ん。やっぱりセシリアちゃんからのコメントは貰えないか〜。結構レアだから新聞部の一員としては欲しかったんだけど」

 

薫子もダメ元で言っていたらしく、断られるとあっさりと引いた。部活動とはいえ、薫子とて記者の端くれで何より将来的にはその道に進む事も選択肢の一つである以上、男子ほどではないとはいえ、レアなセシリアからのコメントが欲しかったというのが本音だ。因みに男子が断っていた場合、新聞部全員で話し合い、適当にコメントを捏造する予定だったりもする。

 

「ま、いいや。それじゃあ三人並んでくれる?写真撮るから」

 

「わたくしも……ですか?」

 

「注目の専用機持ちだからねー。あ、三人とも手を重ねる感じで置いてくれる?」

 

薫子に促され、将輝、一夏、セシリアの三人は右手を中心で重ね、並び立つ。

 

「うんうん。いい感じいい感じ、それじゃあ撮るよー。35×51÷24は〜?」

 

「74.375」

 

「正解」

 

パシャっとデジカメのシャッターが切られる。

 

「なんで全員入ってるんだ?」

 

十代女子の恐るべき行動力を持って、一組のメンバーが撮影の瞬間に三人の周りに集結していた。さりげなく箒も将輝の横に立っている。

 

「クラス写真と思えばいいか。ちょっと弾けすぎだけど」

 

専用機持ちのスリーショットが図らずもクラス写真へと変貌した。だがそれはそれで悪くはない。将輝も一夏もセシリアもそう思い、不平不満を口にはしなかった。

 

ともあれ、『藤本将輝クラス代表就任パーティー』は十時過ぎまで続き、女子のエネルギーに圧倒された男子二人は部屋に帰ったと同時に泥のような眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「織斑くん、藤本くん、おはよー。ねえ、転校生の噂聞いた?」

 

「一応はね」

 

噂を聞いたというよりも既に知っていただけだがそれを言ったところで意味はないし、何より今は昨日の疲れが抜けきらず眠かった。

 

「俺も知ってるぞ。というか、幼馴染みだしな」

 

ごく自然に呟いた事実にクラス一同が驚きの声を上げ、その驚きの声に一夏も驚きの声を上げるという連鎖反応が起きた。

 

「ねえねえ!織斑くん!その転校生ってどんな子?」

 

「うん?なんというか……台風?」

 

「その子との関係は?」

 

「ただの幼馴染みだぞ。後、俺の心労を増やす問題児」

 

思い返せば一夏と彼女の思い出は常に破天荒な事ばかりだった。おまけに被害者は何時も自分や親友ばかり。本人に悪気がない辺りが余計にタチが悪い。そんな忙しない日々も存外悪くはなかったと彼女がいなくなって気がついたのは記憶に新しい。

 

「それにしてもこの時期に転校生って珍しいねー」

 

女子の言う通り、今はまだ四月。にもかかわらず、入学ではなく、転入。そしてこのIS学園は転入条件がかなり厳しく、何より国の推薦がないと出来ないようになっている。

 

「なんでも中国の代表候補生で専用機持ちだって言ってたけど………」

 

「中国の代表候補生ですか。そういえば近頃、中国も第三世代型ISの開発に成功したと聞きましたが、その実戦データを取るための転入でしょうか?」

 

「惜しい。けどだいたい当たりかな」

 

口々にその転校生について話し合っていると、突然教室の入り口からふと声が聞こえる。それは一夏がつい先日聞いた声と全く同じものだった。

 

「単純にあたしが来たかったから……っていうのが大部分を占めてるわ。経験値稼ぎっていうのも理由の一つではあるけどね。あ、自己紹介が遅れたわね、あたしの名前は凰鈴音。中国の代表候補生にして専用機持ちよ。ついでに二組のクラス代表はあたしになったから、そう簡単に優勝出来るとは思わない事ね」

 

ビシッと指をさし、鈴は小さく笑みを漏らす。それを見た一夏は昔から変わらない幼馴染みの態度に自身もつられて笑みを漏らした。

 

「宣戦布告に来たんだけど、クラス代表って誰?」

 

話を聞かずに即行動を起こした辺りも幼馴染みは相変わらずだった。

 

「将輝だよ。ほら其処に座ってるもう一人の男子」

 

一夏が指で指し示すと鈴はスタスタと歩いて将輝の目の前まで行く。というか、息がかかりそうなくらい顔を近づけていた。

 

「なななな、何をしている鈴!」

 

「そそそそ、そうですわ!離れて下さいまし!」

 

「二人ともなんで慌ててるかは知らないけど、問題ないぞ。あれも箒にやったのと似たような事だから」

 

つまりは人間観察。鈴曰く、わかりやすい人間は握手である程度わかる。握手でわからない人間は目を覗くとわかる。とは言ってもわかる事は限られているのだが、人付き合いをしていく上で鈴のこれは最早挨拶代わりと言っても過言ではない。

 

「ふぁ、凰?俺もどっちかっていうと離れてほしいんだけど……」

 

「無駄だぞ、将輝。その状態の鈴に話しかけても」

 

実際、鈴はなんの反応も示さずにただ将輝の瞳を覗き込んでいる。顔を逸らそうとすれば、両手でガッチリホールドされ、目を逸らしてもそれを追ってくる。鈴がこの行為を始めて一分が経過した時、ようやく離れた?

 

「……………………うん。わかった」

 

「な、何が?」

 

「それは秘密。将輝だっけ?あんたがクラス代表なんでしょ、取り敢えず宣戦布告するわ!」

 

「お、おう。受け取った」

 

「今回の目的は達成したし、鬼が来る前にとっとと退散す「ほう。誰の事を言っている?」それはもちろん千冬さ……ん……」

 

ギギギ……と壊れた人形のような動作でおそるおそる後ろを振り返る鈴。振り返った場所にいたのは阿修羅もといブリュンヒルデ織斑千冬だった。

 

「お久しぶりです。千冬さん、それではさような「待て」な、なんでしょうか?」

 

逃げ去ろうとした鈴だったが、相手は世界最強。そう簡単に逃してくれるはずもなく、すぐに先回りされて頭を掴まれる。

 

「何、お前とは一度話をした方が良いと思ってな。SHRの方は心配いらんぞ、私の方から話をつけておいてやる。それに授業も一日逃した程度では支障をきたす事はないだろう。なぁ?代表候補生?」

 

ニヤリと笑う千冬のその顔は獲物を手中に収めたハンターの顔そのもの。因みに鈴はその逆である。

 

「鈴」

 

「い、一夏ぁ……」

 

「骨くらいは拾ってやる」

 

「で、ですよね〜……」

 

「さあ逝くとするか、凰」

 

「字面が違う気が………い、嫌ぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

悲鳴をあげながら鈴は生徒指導室(拷問部屋)へと連行されていった。その方角に向けて、一夏はおろかその場にいた全員が黙祷を捧げるのだった。

 

 

 


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