バイトが忙し過ぎて、日付が変わっちゃいました。
眠気を押しての投稿なので、おかしな点があるかもしれませんが、その時は是非指摘してください。
それにしてもバイトで痛めた腰が死ぬ程痛い。
「ごめん!セシリア!」
一夏顔負けのラッキースケベを発動してしまった将輝は全力でセシリアに土下座をしていた。何せ押し倒すだけではなく、見事に彼女の左胸を鷲掴みにするという側から見れば確実にセシリアを襲おうとしているようにしか見えない。そんな事をした以上、将輝に出来るのは取り敢えず謝罪。プライドなどありはしない。というか、この状況でプライドがどうとか言える男などいない。
セシリアは既に裸ではなく、IS学園の制服を着て、将輝の前に立っている。将輝はちらりとセシリアの方を見るが、「わたくし、怒ってます」とばかりに腕を組んで、そっぽを向いていた。当然といえば当然の反応であり、寧ろ教師或いは警察を呼ばれていないだけマシで、
「わたくし、本当にびっくりしました」
「すみません…」
「おまけにわたくしのむ、胸まで……」
「弁明のしようもございません」
「将輝さんでなければ、今頃警察に引き渡していましたわ」
「セシリア様の慈悲深さに私は涙が止まりません」
「本当に反省していらっしゃいますか?」
「全身全霊を持って反省しております。納得がいきませんのであれば、この首すら差し出す次第です」
とは言ったものの、首を差し出すのはゴメンだ。学園に入学した初日に死ぬなど絶対に嫌な将輝だが、それと社会から汚物扱いを天秤にかければ、この場で殺された方が良い。とは思う。だが、出来れば死にたくない。
「では、将輝さん。わたくしのお願いを三つ程、聞いてください」
「…………それでいいの?」
上げて落とすつもりなのではと警戒する将輝だが、セシリアはこくりと頷く。
「俺に叶えられる範囲でなら」
「本当ですか⁉︎」
「う、うん。ていうか、俺に拒否権ないし」
自分の立場を弁えるのが社会で生きていく為の鉄則。何時の時代も男の立場は弱いものだ。女尊男卑などISがない時代にも至る所に存在したのだから。
「それならば、もうこの件はなんの憂いもなく万事解決ですわ♪」
先程の怒ってますオーラとは打って変わって、鼻唄を歌い出す程にセシリアは上機嫌となった。将輝としてはどんな
「将輝〜。飯食いに行こうぜ………」
「おい、一夏。ノックくらいして………何故将輝は正座をしているのだ?」
ノックもせずに堂々と入ってきたのは、経緯を全く知らない一夏とその後ろで制しようとしていた箒だった。一夏は相変わらずの無神経具合で、それが何時も彼にラッキースケベを起こさせる要因なのだが、どれだけ警戒しても起こるものは起こるとわかってしまった以上、一概にそうも言えなくなっていた。
「織斑さん?他人の部屋に入る時はノックをして、確認を取るのが礼儀でしてよ?」
「あ、ゴメン。オルコットさん。それにしても将輝の同居人はオルコットさんか、良かったな、将輝も顔見知りみたいで」
「ああ………本当に良かったよ」
悟ったような表情で噛みしめるようにいう将輝。実際。顔見知りでなければ、今頃パトカーに乗せられて、警察署に送られている最中だろう。この世には神も仏もあったものではなかったが、地獄に救いは存在したようだ。
「ところで将輝さんはこれから織斑さんと篠ノ之さんと夕食を摂りに行かれるのですか?」
「そうだけど、それが?」
「もし宜しければ、わたくしもご一緒させていただいて、宜しいでしょうか?」
「良いよ。一夏も箒も良いよな?」
特に断る理由もなかった将輝は一夏と箒にそう聞く。二人も断る理由はなかったので、その提案を承諾した。
「では、早速参りましょう♪」
「な⁉︎」
因みに今のは箒の声。何に対して驚きの言葉を上げたのかというと、将輝の横まで歩いてきたセシリアが自然な動きで左腕を取り、身体を密着させたからだ。しかもかなり密着させている所為で、先程手で感じた女性特有の柔らかな膨らみが将輝の理性を再度刺激していた。
「何をしている‼︎」
「レディが殿方にエスコートしてもらうのは当然の事ですわよね?将輝さん?」
「ま、まあな」
本心は「そういうものなのか?」と疑問系だが、さっきの今でセシリアに対して強く出るという挑戦的な真似は出来ない以上、将輝は同意するしかなかった。ついでにいえば、何故セシリアがこのような行動を取っているかがわからないので、もしかしたら本当にそうなのかもしれないと思っている部分もあった。
「な、ならば……!」
「あら……」
一夏の脇をするりと抜けて、今度は箒が将輝の右腕に身体を密着させた。そしてその右腕にはセシリア以上の豊かな双丘が、更に将輝の理性を削る。
(あがががががっ!?!?!?俺のSAN値がピンチだぁぁぁ‼︎)
思春期の男子高校生にとって、この状況はかなり幸せであると同時にかなり危険な状態だ。欲望に身を任せれば、それは一時的な快楽を与えるが、後に待つのは後悔のみ。後悔先に立たずと先人は言ったが、まさしくその通りになるだろう。だが将輝のSAN値が削り切られる事はなかった。いくら彼がこの手の事態に耐性がなくとも、目の前にはもう一人の男たる一夏がいる。それだけで将輝のSAN値は残るには十分な理由だった。
「成る程。そういう事ですの………ライバル出現と言ったところかしら」
将輝には聞こえぬようにボソリと呟いたセシリア。その瞳には静かな闘志が宿っている。それに気づいたのは隣にいた箒で、その闘志に返すように自らも瞳に闘志を宿らせて、睨むように返した。
「じ、じゃあい、行くか。一夏」
間に挟まれていた将輝は地味に空気が薄くなってきた事で、その状況を打開しようと食堂へ向かうように一夏へと促す。普通の人間なら、何処と無く察して、逃げるように将輝達を置いていくが、其処は我らが唐変木。織斑一夏。全くと言っていいほど気づいていなかった。
「おう」
右腕を箒。左腕をセシリアに取られたまま、将輝は一夏と共に食堂へと向かう。その光景を見た女子達は羨望の眼差しを送りながら、口々に何かを言っている。二人はその羨望の眼差しに何処か心地良さを感じていた。
「両手に花ってやつか?将輝はモテるな」
「前者に対しては激しく同意だが、後者はノーと答えさせてもらう。俺は生まれてこの方モテた事なんて一度もない」
少なくとも、将輝は告白された記憶などない。もしかしたら失われた記憶にはあるのかもしれないが、目標が「彼女を作る」と書かれていた以上、一夏のようなモテているのに唐変木で気づいていないという可能性もあるが、モテていなかった可能性の方が高い。
「そうなのか。まあ、俺も生まれてこの方モテた事なんて一度もないから、将輝と一緒だな」
「なあ、一夏。俺は全世界の男性の気持ちを代弁して、お前を半殺しにしなければならない気がする」
両手が塞がっている為、握り拳こそ出来なかったが、殺気全開で一夏へと微笑みかける将輝。例え将輝以外の人間がそれを聞いたとしても同じ反応をするだろう。もし殺しても何の問題もなければ、世の男性に血祭りにあげられているに違いない。
「ぶ、物騒な事、言わないでくれよ………」
「冗談だ」
殺気を引っ込め、はははと笑う将輝だが、目が笑っていない。将輝の瞳は「てめー、一体どのツラ下げて、そんな事言ってんだこの野郎、ああん?」と物語っていた。一夏は背筋に悪寒を感じ、「風邪かな?」とまたズレた事を考えていた。
因みにこの日、将輝は自分が食べた料理の事について、殆ど覚えていなかった。理由は言わずもがな、箒とセシリアをエスコートした?事で削岩機もびっくりの威力で削られた理性を必死に保つ事とその度に頭の中をチラつく押し倒した時に見えたセシリアの裸体が原因だった。