機動戦士ガンダムSEED Gladius   作:プワプー

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今年まで、あとわずか…。
間に合うか?


第8話 別れ、そして旅立ち Ⅷ

 

 ジンが逃げる輸送機に突撃銃を撃とうとした。

 が、撃つ直前に、タイミングよくスピアヘッドに邪魔された。

 「くっ。」

 マシューは毒づいた。

 うまく近づこうとしても、輸送機の後部からのリニアガン・タンク、スピアヘッド、それらの連携に阻まれた。

 しかも、雨も降っているため、視界も悪い。

 

 

 

 「アーチボルト軍曹、もう少しスピード上げてください。」

 「リニアガン・タンク、撃ちます。デュラク大尉、ロフマン中尉、射線上から避けてください。」

 リニアガン・タンクから発射される。

 「どうですか?」

 ユリアが上方、入り口で顔を出している、ロブに尋ねた。

 「当たってはいないが、牽制できている。向こうも雨で不慣れだしな!」

 すると、

 「それでいい。俺たちは倒すのが、目的ではない。逃げ切ればいいんだ。」

 前方コクピットで待機しているガウェインから通信が入った。

 

 

 

 「マシューさん、これじゃ埒が空きません。格納庫を制圧します。スピアヘッドの方お願いします。」

 もう一人のパイロットがグゥルを加速し始めた。

 「待て、フリッツ!無茶するな!」

 マシューは止めようとしたが、行ってしまった。

 

 

 近づいてくるにジンにユリアはリニアガンを撃った。

 当たりはしたが、かすり傷であった。

 「こんなもので…ジンはヤられはしない!」

 伸ばしたジンの手が格納部の上方に捕まえた。

 

 ふいに輸送機のバランスが崩れる。

 「まずい…三人とも戦車に入って!」

 ウェインはとっさに突撃銃を放った。

 驚いたジンのパイロットは手を離した。

 「大丈夫ですか?」

 ウェインは三人に無事を確認した。

 「大丈夫だ!だが、タンクから繋いでいた。ケーブルがどっかで抜けたか切れた!」

 「え?」

 ウェインはあたりを見回した。リニアガン・タンクに繋げてたケーブルが抜けてしまったらしい。

 「あそこです!」

 フェリナがその場所を見つけ、その場所に向かおうと飛び出た。

 「待って、フェリナ!曹長、お願いします。」

 フェリナでは危険だと、ユリアも出てきた。

 その時、

 再び、ジンが来た。

 コクピットも開いている。

 「まずい!」

 ウェインは再び撃とうとしたが、この状況では、フェリナとユリアを巻き込んでしまう。

 撃つことはできなかった。

 ロブも機関銃を取り出し応戦しようとしたが、間に合わなかった。

 ジンが再び取りついた。

 パイロットがコクピットより銃を撃ってきた。

 

 「危ない!」

 銃声が響いた。

 その時、

 なんとかクレイグのスピアヘッドがやってきて、輸送機に取りついたジンを離すことができた。

 

 

 「なんだ?どうなっている!」

 「アカマツ軍曹、メンブラード伍長、応答してください!」

 輸送機のコクピットでは後ろの方で何が起こったか、わからなかった。

 フィリップとダレンが後ろに通信を入れても、応答がなかった。

 「フィリップ、ダレン、お前たちは基地に進ませていろ。俺が行く。」

 そう言い、ガウェインが銃を持ち、格納庫へ向かった。

最悪の状況を想定して。

 

 ガウェインは格納庫近くになってきたところで、慎重に歩き始めた。

 銃声がない?

 大丈夫か?

 すると、フェリナの声が聞こえてきた。

 一瞬、ガウェインはほっとしたが、その声を聞き急いで向かった。

 「アカマツ軍曹!…ユリアさん!」

 そこで目にしたのは、

 ユリアが血を流し、倒れていた。

 「ガウェイン大佐…私のせいで…ユリアさんが…」

 フェリナはどうしたらいいかわからず、泣いていた。

 ウェインが必死に応急措置をしていた。

 

 

 「まずい!また近づいてくるぞ!」

 ロブが叫んだ。

 「どっちでもいい!指示をくれ!」

 「どうなっている?」

 スピアヘッド二機がうまく、まいてくれてるが、時間の問題だった。

連携によってうまくバランスを保っていたが、今、崩れそうだった。

 ここから退避すべきか、そうガウェインが思った瞬間、

 「フェリナ…ここを頼む。」

 ウェインは何か決意したのか、応急措置をフェリナに変わらせ、ジンのコクピットに向かった。

 「カースティ曹長、戦車どかしてください。ジンを出します。」

 「ウェイン、それは…」

 それはジンを置いてしってしまう可能性が高い。

 ロブが言いかけた時、ウェインに遮られた。

 「ジンをグゥルから引き離せれば、こちらが有利になります。それはMSでしか出来ません。」

 ガウェインは黙り、一瞬瞑目した。

 「わかった。だが、輸送機から離れるな!ロブ、戦車をどかせ!」

 ガウェインは決断し、ウェイン、ロブに指示出した。

 ロブも苦渋ながらも彼に従った。

 おそらく、ガウェインもそうであろう。

 「フィリップ、ジンをパージする!ジンより上の位置につけ!」

 そして、コクピットにいるフィリップに指示出した。

 「え?」

 わけがわからず、一瞬戸惑ったが、ガウェインの語気に押され、ジンのパージをし始めた。

 

 リクライニングされたジンが出されようとした。

 「ガウェイン大佐、ありがとうございます。」

 ウェインはコクピットで上官に聞こえないが、お礼を述べた。

そして、ジンは放出され、宙を舞った。

 

 

 ガウェインはユリアの下へ向かった。

 「フェリナ、ここは俺がやる。お前は、オペレータとしての仕事をしろ。」

 「…しかし、」

 フェリナが反論しようとした。

 「今、それができるのはおまえしかいない…。早く!ロブ…フェリナのサポートしてやれ。」

 そう言い、フェリナを戦車に向かわせた。

 「…大…佐。すみ…ま…せん。」

 呼吸が苦しいながら、途切れ途切れに言葉をユリアはつないだ。

 「しゃべるな。基地までの辛抱だ。」

 ガウェインは出血を止めようと、応急処置しようとした。

 「大…佐、自分で…わかって…い…ます。今まで…MS…データ…まとめ…ありますので…。あり…がとう…ごさい…ま…した。」

 ガウェインが何がだ、話したが…もう返事はなかった。

 もうユリアは話すことはなかった。

 

 ガウェインはしばらく動けなかった。

 

 

 

 「くっ…あと一歩なのに!ナチュラルども!」

 「もういい、輸送機の足を止める!」

 輸送機が上に上がっていき、先ほどから何度も試みて焦っているフリッツにマシューは止めようとした。

 「しかし…」

 反論しようとした時、何か上から来た。

 「え…?」

 気づいたとき、遅かった。

 パージした時の勢いを利用し、ウェインのジンはフリッツのジンを蹴飛ばした。

 そして、剣で片足を切った。

 「うわぁ…。」

 片足を失い、姿勢制御ができない。

 このままでは…

 フリッツは焦った。

ジンはそのまま落下し、大破、炎上した。

 「しまった…。」

 マシューはそう思い、応戦しようとしたが、ウェインの方が早かった。

 主を失ったグゥルを蹴り、再び、その勢いで飛び込んできた。

  やられる…

 そう思った、マシューはグゥルから離れ、地面に着地した。

 ウェインのジンも着地した。

 

 

 そして、そのままマシューのジンに向かって剣を振りかざした。

 キィィン!

 マシューも剣を抜き、防いだ。

 

 「なあ…ウェイン、思い出さないか。」

 通信を開き、マシューはウェインに話しかけた。

 「プラントの警察保安組織からザフトに変わる時…俺たちがザフトに入った時、MSの演習のことを。これが俺たちの力だ、って。その時のことを!」

 「…何が言いたいんだ、マシュー。」

 「もう…あの時には戻れないってことだ。」

 その間もお互い鍔迫り合いになった。。

分はウェインの方が有利であった。

 ウェインはそのまま、バーニアを吹かし押し出した。

 「マシュー、さっきから何言っている。君はいつもそんな風に敵と会話するのか。」

 「いいや…。そうさ…、俺はいつも相手を知らず殺す。名前も、その家族も、友人も、知らずに!それが…戦争だ!俺たちは人殺しさ!」

 マシューも押し出そうとした。

 その時、

 ウェインのジンが引き下がった。

 そして、下へスライディングする形で、滑り込み、マシューの後ろへ回り、ジンを蹴った。

 思いがけない行動に、バランスを崩したマシューのジンはそのまま倒れた。

 「俺とウェインじゃ、腕の違いがありすぎる…」

 しかし、

 「ここで、俺が撃つ…。アルテナには撃たせるか…。」

 引くことはできなかった。

 起き上がろうとしたが、後ろではウェインのジンは銃を構えていた。

 「…撃てよ。」

自分でもわかっていた。無謀だと。

 もう自分ではどうにもできない、マシューは思った。

 「くっ…」

 ウェインは銃の引き金を引くのを躊躇っていた。

 何をいまさら…自分は善人ぶっている…。

 こうなることはわかっていたはずだった。自分の知る者に引き金を引くことに。そのために、こういう道を選んだのに…。

 だが、ウェインは撃てなかった。

 その時、現れたシグーがウェインにジンに体当たりした。

 ウェインもいきなりの事だったので、飛ばされた。

 「アルテナ…、ノヴァーク隊長?」

 「マシュー、あなたはリックと共に輸送機を追って。まもなく後方のブライスたちも来る。ここは私が相手をする。」

 それを聞いたマシューはしかし…と言った。

 「輸送機にMSのデータがあるはず。そのデータによって、ナチュラルがMSを開発してしまう。そのためにも。これは命令よ。」

 「…わかりました、ノヴァーク隊長。」

 マシューは悔しながら、輸送機へ向かった。

 

 

 「くっ、ジンが追ってきました!」

 ロブがガウェインに報告し、リニアガン・タンクの砲身をジンに合わせ始めた。

 「ギュンター中尉、戻ってきてください。」

 フェリナがウェインに呼びかけた。

しかし、応答はない。

このままでは…

すると、

 「ジェローム、クレイグ、お前たちは輸送機の方へ戻ってこい!」

ガウェインがインカムでクレイグとジェロームに指示を出した。

 ガウェインの指示にみんな驚いた。

 今、ここで輸送機の方に向かうと、ウェインは…。

 ジェローム、クレイグは反論しようとしたが、ガウェインに逆に言い返された。

 「どの道スピアヘッドでは…援護することしかできない。」

 「しかし…」

 「それが限界なんだ!俺たち、MSのない、地球軍には…これが限界なんだ!」

 なおも反論しようとした二人にガウェインは叫んだ。

 何も言うことができなかった。

 二人はウェインのジンを後に輸送機へ向かった。

 悔しい思いを胸に。

 

 

 


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